著者
佐藤 慎一郎 根本 裕太 高橋 将記 武田 典子 松下 宗洋 北畠 義典 荒尾 孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.560-568, 2016 (Released:2016-11-04)
参考文献数
62
被引用文献数
1

目的 本研究は地域在住の自立高齢者を対象に,膝痛の包括的な関連要因を男女別に明らかにすることを目的とした。方法 山梨県都留市下谷地区在住の65歳以上の要介護認定を受けていないすべての高齢者1,133人を対象に,健康状態,生活習慣に関する調査を行った。調査内容は基本属性,健康状態,生活習慣,膝痛,身体活動であった。膝痛は,過去 2 週間の平地を歩く際の痛みの有無について調査した。身体活動は,国際身体活動質問紙短縮版の日本語版を用い,週あたりの総身体活動量と 1 日あたりの座位時間を算出した。世界保健機関による健康のための身体活動に関する国際勧告に基づき,週あたりの歩行および中等度強度以上の総身体活動量が150分以上を身体活動量充足群,150分未満を身体活動量非充足群の 2 群とした。座位時間は中央値を基準値とし,5 時間以上を長時間群,5 時間未満を短時間群の 2 群とした。基本属性は,年齢,性別,最終学歴,婚姻状態,健康状態は体格指数(Body mass index:BMI),現症歴,生活習慣は食生活,飲酒状況,喫煙状況を調査しそれぞれ 2 値に分類した。解析は,男女別に行い,膝痛の有無を従属変数とし,身体活動量,座位時間,食生活,飲酒状況,喫煙状況,BMI を独立変数とした。また,不可変変数である年齢,最終学歴,婚姻状態,現症歴を調整変数として一括投入した多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 有効回答数は801人(有効回答率70.7%)であった。解析対象者801人のうち,男性は365人(74.9±6.9歳),女性は436人(74.9±6.9歳)であった。膝痛の関連要因を性別にて検討した結果,男性においては,身体活動量(P=0.035)のみが有意な関連要因であった。身体活動量非充足群に対する身体活動量充足群の膝痛のオッズ比は0.605,95%信頼区間は0.380-0.964であった。女性においては,BMI(P=0.023)と食生活(P=0.004)が有意な関連要因であった。BMI では25 kg/m2 以上群に対する25 kg/m2 未満群の膝痛のオッズ比は0.595,95%信頼区間は0.380-0.931であった。食生活は,食生活不良群に対する食生活良好群の膝痛のオッズ比は0.547,95%信頼区間は0.364-0.823であった。結論  本研究結果から,男性では身体活動量,女性では BMI と食生活がそれぞれ膝痛の関連要因であることが示唆された。
著者
瀬戸 心太 井口 俊夫 Robert MENEGHINI 阿波加 純 久保田 拓志 正木 岳志 高橋 暢宏
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.205-237, 2021 (Released:2021-04-19)
参考文献数
50
被引用文献数
51

全球降水観測(GPM)計画主衛星搭載二周波降水レーダ(DPR)の降水強度推定アルゴリズムを開発した。DPRは、Ku帯レーダ(KuPR; 13.6GHz)およびKa帯レーダ(KaPR; 35.5GHz)から構成される。KuPRアルゴリズムは、熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載の降雨レーダ(PR)のアルゴリズムと同様であるが、降水強度Rと質量重み付き平均粒径Dmの関係(R-Dm関係)を、減衰係数kと有効レーダ反射因子Zeの関係(k-Ze関係)の代わりに使用している。R-Dm関係は、KaPRアルゴリズムおよび二周波アルゴリズムにも使用できる。一周波アルゴリズムおよび二周波アルゴリズムともに、R-Dm関係の修正係数εに暫定値を仮定した前進法によりプロファイルを推定し、その結果を評価して最適なεを選択する。二周波アルゴリズムの利点は、εの決定のために二周波表面参照法およびZfKa法(KaPRの減衰補正反射強度Zfを用いる手法)を用いること、およびKuPRまたはKaPRの観測を選択的に利用できることである。また本論文では、R-Dm関係と散乱テーブルの導出およびビーム内非一様性補正手法を詳細に説明している。さらに、アルゴリズムの出力結果を統計的に解析し、各アルゴリズムの特性を示している。
著者
野中 敬 君塚 善文 坂口 隆 今城 健人 千葉 秀幸 岡田 和久 斯波 忠彦 厚川 和裕 高橋 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1556-1562, 2009 (Released:2012-07-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は62歳女性.心窩部痛を主訴に来院し,精査加療目的で入院した.上部消化管内視鏡検査で幽門前庭部に浅い地図状の潰瘍を認め,胃体部から胃底部では特異な扁平隆起性病変が多発していた.酵素抗体法にて胃生検組織中にTreponema pallidumを証明し胃梅毒と確定診断した.本例では駆梅療法開始前に胃病変の部分的な自然緩解がみられ,第2期梅毒においては皮疹と同様,胃病変も自然緩解する事が推察された.
著者
荻野 敏 高橋 桜子 川嵜 良明 水津 百合子 入船 盛弘
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.31-36, 2000-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
9

アスピリン喘息 (AIA) を対象に日常の食事などにより発作を増悪させる可能性のある物質 (添加物) について問診により検討した。9名中6名で何らかの物質により症状の悪化、出現を見た。誘発物質は (1) 歯磨き、 (2) たくあん、漬物類、 (3) 缶ジュース類、 (4) カレー、香辛料、 (5) 野菜、果物類の5群に分類でき、それぞれにAIAの誘発に関連の可能性がある防腐剤や色素が含まれていた。また見られた症状は喘息、鼻炎の出現から喉のイガイガ感、異物感、咳などであった。このようにNSAIDs以外にも多くの物質により発作の増悪がみられ、このことがAIAの治療を難しくし、またこれらの指導が治療に重要であると思われた。
著者
水上 香苗 高橋 さおり 楠木 伊津美 高瀬 淳 Kanae MIZUKAMI TAKAHASHI Saori KUSUNOKI Itsumi TAKASE Atsushi 藤女子大学非常勤講師 北海道大学大学院文学研究科・大学院生 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科 岡山大学大学院教育学研究科 Part-time Lecturer Fuji Women's University Graduate Student Hokkaido University Fuji Women's University Okayama University
出版者
藤女子大学QOL研究所
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.35-42, 2010-03

2006年にマスコミ等で大きく取り上げられた学校給食費の未納問題は、従来から学校が潜在的に抱える問題であった。その対策として、学校給食の教育における意義、必要性等の配慮から、就学援助制度等の整備も行われてきている。しかし、その対応については、給食費の徴収・管理を始め実に様々であることがわかった。一方で、食育基本法の制定に伴い、法の制定以来改正されてこなかった学校給食法の改正が行われ、教育における学校給食の位置づけも変わることとなった。これらのことを踏まえ、今後給食費の未納問題を未然に防ぐためには、学校給食の事前説明と公会計による給食費の管理が必要といえる。
著者
北澤 文章 寺田 智祐 高橋 一栄 松本 繁巳 乾 賢一
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.337-342, 2009 (Released:2010-07-31)
参考文献数
19
被引用文献数
3 2

The aim of this study was to clarify the influence of renin-angiotensin (RA) system blockers on the anti-cancer effect of chemotherapy with bevacizumab and its adverse effects.Twenty-six patients treated for metastatic colorectal cancer at Kyoto University Hospital between August 2007 and July 2008 were assessed.All of the patients received bevacizumab plus mFOLFOX 6 or FOLFIRI,and were divided into a control group (23 patients) and an RA system blocker group (3 patients).Regarding background factors,which included chemotherapy doses,the only significant difference between the groups was with respect to age.However,hypertension grades in the RA system blocker group were significantly higher than those in the control group,and RA system blockers had no significant antihypertensive effect.There was no severe proteinuria in either group.As for anti-cancer effects,in the control group,6 patients exhibited a partial response and in 16 patients,the disease was stable.In only one patient was the disease progressive.On the other hand,the disease was progressive in all patients in the RA system blocker group.These findings indicate that anti-hypertensive agents which provide better hypertension control than RA system blockers may be necessary as first line medication for the management of bevacizumab-induced hypertension.Although RA system blockers are useful antihypertension agents,they might not be able to control bevacizumab-induced hypertension and proteinuria,and could reduce the anti-cancer effect of bevacizumab.
著者
高橋 正雄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1032, 2019-10-10

芥川龍之介が大正10年に発表した『藪の中』は,関山から山科へ向かう山中で,多襄丸という盗賊が,通りすがりの夫婦の妻を夫の面前で凌辱するという話である. ところが,そこで起きた事実に対する3人の当事者の陳述が異なるために真相は藪の中ということになるのだが,この事件を性的暴行事件という視点から捉えた場合,注目されるのは,「清水寺に来れる女の懺悔」として記されている妻の陳述である.
著者
高橋 統一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第45回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S4-2, 2018 (Released:2018-08-10)

非臨床毒性試験に用いられる正常実験動物と,実際に薬剤を服用するヒトでの薬剤(化学物質)への反応性の違いは数多く報告され,このような違いが生じる大きな要因として薬剤を服用するヒトの個体差(人種・性別・年齢・生活環境・生活習慣・疾患の有無など)が報告されている。これらのヒトにおける個体差のうち,非臨床毒性試験で評価・対応可能な要素として生活習慣(疾患の素因)や病態(化学物質誘発あるいは自然発症病態モデル動物)があり,多くの研究者がヒトの病態に類似した実験動物を作出して化学物質の安全性や毒性発現機作を調べている。これらの研究で判明した知見,すなわち正常実験動物と病態モデル動物の化学物質への反応性の違いやその理由を,新たな薬剤の開発のために実施される非臨床毒性評価に生かす努力がなされているが,選択する病態モデル動物によって同一薬剤でも異なる結果が得られる等,病態モデル動物を利用した毒性試験の評価系確立には,さらに知見の収集や解析が必要と考えられる。このような背景から,我々はヒトの糖尿病と表現型が類似したSDTラットやSDT fattyラットを安全性評価に用いる試みを続けている。SDT fatty(SDT.Cg-Leprfa/JttJcl)ラットはSDTラット(自然発症の非肥満2型糖尿病モデル)に肥満遺伝子Leprfaを導入した肥満2型糖尿病モデル動物である。SDT fattyラットの糖尿病性合併症やその病態プロファイルは特に慢性病態において他の糖尿病モデルラットよりもヒトの病態に類似性が高いことが報告されている。さらに,SDT fattyラットでは糖尿病発症による栄養学的な修飾により,正常動物と比較し薬物代謝も異なる可能性があり,糖尿病に関連した研究に最適な病態モデル動物の1つであると考えている。我々はこれまでにいくつかの薬剤や化学物質について肝臓を中心に病態モデル動物における毒性修飾を調べており,これらの結果は非臨床安全性評価の向上に寄与するものと考える。
著者
高橋 良一
出版者
東京動物學會
雑誌
動物学雑誌
巻号頁・発行日
vol.32, no.384, pp.308-318, 1920
著者
鈴木 進吾 河田 恵昭 高橋 智幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_1346-I_1350, 2013 (Released:2013-11-12)
参考文献数
11

This research aims to analyze the characteristics of the tsunami that had stricken Osaka Bay Area in the initial Jomon period. The bathymetry of Osaka Bay and topography of Osaka Plain of 11,000 years before present are reproduced rigorously from boring data and acoustic profiling data for tsunami numerical simulation. Tsunami numerical simulations assuming ordinary level and maximum level of Nankai Trough earthquake tsunami are carried out with the water levels of every 1,000 years of initial Jomon period. It is found that tsunamis in early initial Jomon period were relatively low, and by contrast, tsunamis in late initial Jomon period were high. The area where high tsunami struck in the initial Jomon period were found from the simulation results.
著者
高橋 誠一
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.113-144, 1975
被引用文献数
1

Many works have been proposed as to the location of settlements in <i>Yayoi</i> era. But the problems about the character and origin of upland settlements have been not yet solved. There are a variety of views about its character and origin. There are as follows; (A) Hill-Fort or Camp, (B) settlement for arable farming, (C) upland settlement refuged from flood, (D) religious settlement etc.<br>In this article I examined sites of <i>Yayoi</i> settlements in Osaka prefecture and arrived at the following conclusions.<br>i) The location of sites are different from the 1st period to the 5th period in <i>Yayoi</i> era.<br>ii) The number of settlements are rapidly increased in the 3rd and the 5th period. In the former period settlements increased on upland and in the latter they increased both on upland and on lowland.<br>iii) Great disturbances happened two times in <i>Yayoi</i> era, at least in Osaka prefecture. These disturbances correspond to the great rebellions before and after Queen &lsquo;<i>Himiko</i>&rsquo; recorded in historical writings of ancient China.<br>iv) Some settlements on upland surely had the militaly function under the background of the disturbances above mentioned.<br>v) Some settlements refuged from flood were also formed in the 4th and the 5th period.<br>vi) In the 3rd and the 5th period the population growth with the advance of product and the spread of the space of life are notably recognized.
著者
高橋昌
雑誌
新潟県医師会報
巻号頁・発行日
vol.737, pp.2-9, 2011
被引用文献数
1
著者
古舘 信生 高橋 修
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.366-377, 2013

銀塩カメラがデジタルカメラに置き換わっている中で,銀塩プリントが市場で活躍していることは,銀塩プリントの基となる銀塩カラーペーパーの品質,コスト,簡便さに負うところが大きい.<br>本「解説」では,銀塩カラーペーパーを構成する主要技術である写真用カプラー技術,特に,色相と画像保存性に関する技術の変遷について,イノベーションの成果が現れた4つの時期に焦点を当てて概観する.第1期は,1970年頃の近代的カプラー群の誕生の時期であり,第2期は1984年~85年頃で,日本企業がコダックに一部の技術で先行した時期である.第3期は,マゼンタ新骨格導入を巡り日本国内企業が大競争を展開した1989年~91年頃である.そして,第4期の1999年~2004年頃は,最後に残された課題(シアン,イエローの色相,画像保存性)を抜本的に解決した時期である.<br>銀塩カラーペーパーは,第4期のプリント感材完成の技術によって,デジタルプリントやフォトブックなどのサービスを通じて今後とも市場で生き続けて行くことであろう.
著者
高橋 正樹 三須 俊彦 合志 清一 藤田 欣裕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1672-1680, 2005-08-01
被引用文献数
22

画像内の物体(オブジェクト)抽出技術を用いて野球映像からボールを抽出し, その位置情報をもとに投球軌跡CGを作画する手法を考案した. 複数の画像間差分を利用して高速移動オブジェクトを抽出し, 様々な画像特徴のフィルタリングを行うことでボールオブジェクトのみをロバストに選定する. またカルマンフィルタと最小二乗法を併用したボールの位置予測処理を行い, 高速な自動追跡処理, 及び高輝度領域(打者のユニフォーム部分や白字広告部分等)での軌跡作画を実現した. 本手法を利用し, 投球軌跡作画装置(B-Motion)を開発した. 野球中継においては新たなカメラの設置やキャリブレーションの必要がないため, 運用が容易である. 2004年よりNHKプロ野球中継, スポーツ教育番組にて放送応用を実現している. 本論文ではまず高速なボール抽出・追跡手法について述べ, 続いて軌跡作画手法及び装置の構成や特徴について述べる. 最後に本装置を放送へ応用した結果を報告する.