著者
王 飛 高橋 光輝
雑誌
研究報告コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21888604)
巻号頁・発行日
vol.2016-CDS-15, no.7, pp.1-7, 2016-01-14

戦後女性が社会生活で活躍し,同時にアニメ作品の内容も変貌した.特に近年における日本のヒットアニメはフェミニズムが色濃く反映されていると言っていい.影響を及ぼしているオタク文化やコスプレ文化など,フェミニズムがアニメに浸透している.日本のアニメにおけるフェミニズムの歴史に遡り,近代ヒットアニメのフェミニズム的要素,市場ニーズなどを通じ,ヒットとフェミニズムの関連性を分析し考察する.
著者
高橋 泰子
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.106-112, 1992-06-20 (Released:2011-06-09)
参考文献数
17
被引用文献数
2
著者
高橋 英之 寺田 和憲 上出 寛子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第29回全国大会(2015)
巻号頁・発行日
pp.2K5OS14b2, 2015 (Released:2018-07-30)

その実在の議論とは別に,我々がかみさまを知覚する際に,他者やエージェントを知覚するのと同様な神経回路を用いていることが近年示唆されている.我々は,宗教,そして神は古代から人が作り上げてきた最も成功したHAIの一つであるという仮説を提起し,その誕生と機能について,宗教の歴史や形態と既存のHAI研究との比較を行いながら議論を行いたい.
著者
高橋 春成
出版者
奈良大学総合研究所
雑誌
総合研究所所報 (ISSN:09192999)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-12, 2015

近年、我国ではイノシシの分布拡大が顕著である。その中で、イノシシが海を泳いで周辺の島々に渡っている事例もみられる。今回は、そのような地域の一つである南西諸島において実態調査を行った。その結果、奄美群島では、主として海岸部で行われる猟犬を使った狩猟圧や駆除圧によって在来のリュウキュウイノシシが周辺の島に渡っていることが明らかになった。今後はさらに、食料獲得など生態的な要因に関する調査も必要である。一方、慶良間列島では、持ち込まれたニホンイノシシが野生化し、周辺の島に侵入している実態が明らかになった。当地は、ラムサール条約湿地として登録され、国立公園にも指定されている。アオウミガメの産卵地、ベニアジサシやコアジサシなどの海鳥の繁殖地があり、侵入したニホンイノシシによる卵や孵化した子などの食害、営巣の妨害などが懸念され、今後の早急な対応が求められる。
著者
高橋 正雄
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.1164, 2015-12-10

イタリア・ルネサンス期の詩人ルドヴィコ・アリオスト(1474-1533)が1532年に完成版を発表した『狂えるオルランド』(脇功訳,名古屋大学出版会)は,中世騎士物語を代表する叙事詩とされているが,物語の後半第24歌から39歌には,東国の姫アンジェリカに失恋した後に勇者オルランドが発狂する様子が描かれている. たとえば,第29歌には,オルランドについて,「裸の姿になるまでに物狂いした」,「想いに囚われ,放心していた」,「いずこにか知らねど,思慮を失くして来た」,「方々さまよい歩いた」などの記述があるほか,次のような狂気を思わせる表現もみられる.「眼はほとんど額の中に落ち窪み,顔は干からび,髑髏さながら.その蓬髪はすさまじく,また惨めたらしく,髪茫々で,恐ろしく,また汚らし」,「食い物が欲しいときには,村々,家々荒らしてまわり,果物や,肉やら,パンを奪い取り,腹に詰め込み,人々に暴力振るい,殺めたり,怪我をさせたり,一つ所にじっとせず,絶えず前へと進みつづける」.
著者
高橋 ひとみ 佐治 伸郎 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.315-325, 2018 (Released:2018-12-17)
参考文献数
39

本研究は,調理の初心者と熟練者の調理行動を分析し,調理操作,調理の段取りの特性を明らかにすることを目的にした。豚肉のしょうが焼き,ほうれん草のお浸しの2品の組み合わせを2回連続して調理させ,1回目調理と2回目調理の差を検討した。 調理操作で初心者と熟練者で有意差がみられた項目は,全調理時間,レシピを見た時間,レシピを見た回数,総移動距離,キャベツせん切り時間とせん切り太さ,ほうれん草の加熱時間,及び仕上がりの硬さであった。 調理の段取りでは,初心者の1回目調理は,レシピの提示順に則った段取りであった。一方,熟練者は時間のかかる操作を先にした効率のよい段取りを導きだすことができた。初心者も2回目調理では,熟練者の段取りに近づいた。 すなわち,段取りの策定に関しては,自ら調理することは,1回の経験でも学習効果が得られることが示された。
著者
高橋 信博 Nobuhiro Takahashi
雑誌
東北大学歯学雑誌 = Tohoku University dental journal (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.18-32, 2002-06-01

歯科の二大細菌性疾患, う蝕と歯周病の発症と進行に関わる最大の病原因子は歯垢である。とりわけ, う蝕原性細菌としてのミュータンス・レンサ球菌, 歯周病原性細菌としてのPorphyromonas gingivalisについては多くの研究がなされてきた。しかし, 歯垢中のこれらの病原性細菌の割合は高くはなく, むしろ, 病状の進行とともに歯垢内環境が変化し, その結果として徐々に病原1生細菌が増加することを示唆している。筆者らは, 歯垢を歯垢細菌と歯垢環境が相互に影響し合う関係の総体(歯垢生態系dental pIaque ecosystem)として捉え, 歯垢生態系を構成する細菌の生態, とくにその代謝活性とそれに伴う病原性の発現について生化学的に検討してきた。その結果, 歯肉縁上歯垢生態系では糖の供給と糖代謝に伴う歯垢環境の嫌気的酸性化が, 歯肉縁下歯垢生態系では歯肉溝浸出液からのタンパク質・ペプチド・アミノ酸の供給とその代謝に伴う歯垢環境の嫌気的中性化が, それぞれの歯垢生態系を特徴づける因子であると考えられた。さらにこれら生態系に生息する細菌の代謝活性が, それぞれの歯垢生態系のう蝕病原性と歯周病原性の発現に直接関係していることが明らかになった。我々は無菌動物にはなれず「如何にパラサイトと共存してゆくか」が重要である。口腔からはじまる消化管細菌生態系をコントロールするためには, その環境と細菌叢を構成する個々の細菌の生態, すなわち生態系の理解が不可欠である。
著者
高橋 浩
出版者
特定非営利活動法人 横断型基幹科学技術研究団体連合
雑誌
横幹 (ISSN:18817610)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-50, 2019 (Released:2019-04-12)
参考文献数
22

IoT has attracted attention as a method for transferring the non-digital world to the digital world. And the launch of the IoT platform is generalized for entry into this field. However, the launch of the business based on the IoT platform has not been scaled and there is a big difference compared with the platform business by GAFA and the sharing economy represented by Uber, Airbnb. Meanwhile, it is anticipated that IoT equipment popularization will reach 20 billion by 2020. There is a big gap between these two situations. Therefore, in this paper, I explore the cause of the above gap and consider solutions for high added value specific to IoT field. Focus mainly on scaling the IoT system, such as appropriate choice of platform governance and trade-offs.
著者
高橋 綾
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度も引き続きFDG-PET/CTを用いた乾癬患者における関節症の評価を行った。60名の乾癬患者が参加された。内訳は関節症性乾癬 (PsA) 患者31名、尋常性乾癬 (PsV) 患者29名であった。PsV患者では無症候性の付着部炎の評価のため、全身療法を受けていない18名の患者において詳細な解析を行った。その結果、全身療法を行っていないPsV患者18名のうち6名(33.3%)において付着部炎が検出され、これらの患者を無症候性PsAと診断した。6名中3名では2箇所以上の付着部炎が検出されており、好発罹患部位としては股関節周囲が最多で(50%)次いで四肢末端関節(33%)であったが、脊椎炎はみられなった。次にPsA、PsVおよび無症候性PsA患者の3群間で臨床的・血液学的相違点の検討を行った。PsA発症の臨床的予測因子と考えられる、爪、頭部および臀部の乾癬の合併率は無症候性PsA患者群でそれぞれ66.7%、100%、83.3%であり、PsV患者群(42%、67%、25%)に比べ高い傾向がみられた。一方、PsA患者における、爪、頭部および臀部の乾癬の合併率はそれぞれ64%、54%、14%であり、頭部と臀部乾癬の合併率はPsV患者より低い結果であったが、これはPsA患者の半数が全身療法をうけており、治療による修飾があると考えた。血液検査では炎症反応の指標として、白血球数、CRPと血沈値を3群間で比較した。PsV患者と無症候性PsA患者で明らかな差は見られず、PsA患者群でCRPと血沈の上昇がみられた。HLAタイピングにおいても、PsV患者と無症候性PsA患者において特記すべき違いはみられなかった。無症候性PsA患者6名のうち1名は数ヶ月後にPsAへ移行した。1名はその後約2年間関節症状は出現していない。残り4名は皮膚病変のために全身療法が導入され、以後も関節症状はみられていない。
著者
高橋 篤史 木村 泉美 樋口 貴洋 伊藤 克彦 向山 弘昭 譚 策 笹川 裕
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.737-742, 2015-11-25 (Released:2016-01-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

イムノクロマトグラフィ法に白黒写真の銀増幅技術を応用した高感度インフルエンザ自動判定キット富士フイルム(株)「富士ドライケムIMMUNO AGカートリッジFlu AB」と他2社のインフルエンザ迅速診断キットについて比較検討を行った。対象患者131名から得られた鼻腔拭い検体を用いて,RT-PCRを基準とした各キットの陽性一致率/陰性一致率/全体一致率を算出した。インフルエンザA型に対して本キットで100% / 96.0% / 97.7%,対照キット①で83.9% / 98.7% / 92.4%,対照キット②で75.0% / 100% / 89.3%であった。またインフルエンザB型に対しては本キットで86.7% / 98.3% / 96.9%,対照キット①で73.3% / 98.3% / 95.4%,対照キット②で60.0% / 99.1% / 94.7%であった。本キットは対照キット①,②に比べA型,B型に対する陽性一致率,全体一致率が共に高かった。RT-PCR陽性,問診票で38℃以上の発熱があった症例にて発症時間と各キットの陽性率を比較した。発症から24時間以内の症例で,本キットは対照キット①,②よりも陽性率が高かった。本キットは高感度であるためウイルス量が少ない検体でも陽性判定できる可能性が高く,早期診断に有用であると考えられる。
著者
三浦 輝 栗原 雄一 山本 政儀 坂口 綾 桧垣 正吾 高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.195, 2019 (Released:2019-11-20)

福島原発事故により、放射性セシウム(Cs)を含む不溶性微粒子(Type-A)が環境中に放出された。Type-Aは134Cs/137Cs放射能比などから二号機もしくは三号機由来であると考えられている。その後、一号機由来と考えられる新たな不溶性微粒子(Type-B)が報告された。本研究では放射光X線を用いた分析により、Type-A、Type-B中に含まれるそれぞれのUの化学状態を調べることを目的とした。分析の結果、Type-B中のU粒子の大きさは数ミクロンであり、Ochiai et al. (2018) で報告されたType-A中のUを含むナノ粒子よりも大きいことが分かった。この違いはType-A中のU粒子が蒸気から生成されたのに対し、Type-Bではメルトから生成された可能性を示唆する。Type-Bにおいて、Uが検出される部分では燃料被覆管に用いられているZrも検出されることから、Type-BでもType-Aと同様にUはZrと共融混合物を形成していると考えられる。
著者
根本啓一 高橋正道 林直樹 水谷美由起 堀田竜士 井上明人
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2013-GN-87, no.17, pp.1-8, 2013-03-11

近年,自発的・持続的な行動変革を誘発するためのアプローチとして,ゲーミフィケーションというアプローチが着目されている.ゲーミフィケーションとは,ポイントやランキングに代表される,ゲームに利用されてきた様々な要素や仕掛けを現実世界の活動に援用するアプローチである.このゲーミフィケーションを活用して,多数のユーザの行動変容を促すことで,社会的な課題を解決する活動なども生まれている.本稿は,このような社会的課題の解決にゲーミフィケーションを活用することに関するものである.従来のゲーミフィケーションは,ウェブ作成者など特定の作者が作成した仕組みを使って,ユーザに対して特定の行動を喚起するために利用されることが多かった.しかし,個々のユーザやコミュニティが抱えている課題は多種多様であるため,課題解決の観点では,従来の方法では本質的課題を捉えることが難しい.課題を抱えるユーザ自身が行動をデザインすること,必要に応じて改良を施していくことが可能な参加型の仕組みが必要である.そこで,課題を持つユーザ達自身による課題解決のための自発的・持続的な行動の設計と実行をゲーミフィケーションのアプローチを利用して支援する仕組みを提案する.我々は,参加者が自らの課題に取り組むためのゲームを設計するワークショップを設計・実践し,さらに,そのアイデアをゲームにして実行に移すことができる,ゲーミフィケーション・プラットフォームと呼ぶウェブサービスを試作した.ゲーム作りのワークショップを計 3 回実施し,48 名が参加した.プラットフォーム上には 9 つのゲームが作成され,課題プレイを通じて,827 個の行動がなされた.本論文では,これらの結果をふまえ,動機付け,能力,誘因という 3 つの観点から自発的・持続的な行動を生み出すための課題について考察する.
著者
稲葉 通将 大畠 菜央実 高橋 健一 鳥海 不二夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2392-2402, 2016-11-15

本研究では,人狼ゲームにおけるプレイヤの発話内容を表現するタグを設計し,それらのタグを人狼BBSにおけるプレイヤの発話に付与し分析を行った.分析では,襲撃対象,および処刑対象の決定にプレイヤごとの発話の傾向がどのように影響するのか,また,ゲーム全体のコミュニケーションの傾向とゲームの勝敗の関係について調査した.分析の結果,人間側,人狼側の各プレイヤが自陣営の勝利のために効果的なコミュニケーション戦略,および特定のコミュニケーションとプレイヤの行動の関係が明らかとなった.We focus on a communication game "Werewolf". Our final objective is making a werewolf player agent. In this paper, as a first step, we analyze this game using players' utterances. We define a tag set that describes player's dialogue act and annotate utterances in the Werewolf BBS with these tags. By using these annotated utterances, we analyze the relationships between the trend of the types of the utterances and decision-making and victory or defeat. The results of the analysis clarify effective actions in werewolf in order to win.
著者
原山 智 高橋 正明 宿輪 隆太 板谷 徹丸 八木 公史
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.Supplement, pp.S63-S81, 2010 (Released:2012-01-26)
参考文献数
28
被引用文献数
2 7

飛騨山脈の北半部中央を南から北へ流下する黒部川の流域はいまだ踏査の行われていない地域が残る地質学的秘境の状態にある.近年に至っても様々な発見が相次いできており,その代表的な例が第四紀黒部川花崗岩の発見である.黒部川花崗岩は黒部川右岸中流域の祖母谷温泉から黒部ダム- 扇沢にかけてバソリスとして露出している.黒部川流域は日本国内ではもっとも多数の花崗岩貫入時期が確認される地域であり,ジュラ紀(190 Ma 前後),白亜紀前期末(100 Ma 前後),白亜紀後期初頭(90 Ma),白亜紀後期末(70 Ma前後),古第三紀初頭(65-60 Ma),鮮新世初頭(5 Ma),鮮新世(3 Ma),第四紀更新世前期(2-1 Ma)の貫入ユニットが確認できる.この流域には源頭部から黒部川扇状地に至るまで多数の温泉や地熱地帯が知られており,祖母谷,黒薙地域には80℃を超える高温泉がある.また黒部峡谷鉄道の終点,欅平から名剣温泉にかけてはマイロナイト化した花崗岩類中に熱変成した結晶片岩類が捕獲され,その帰属が議論されてきた.本見学旅行では,飛騨山脈の形成という視点で黒薙・鐘釣・祖母谷の温泉と,欅平-祖母谷温泉間の鮮新世-更新世の花崗岩および剪断帯を取り上げ,観察する.
著者
高橋 阿貴
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
pp.62.2.5, (Released:2012-12-28)
参考文献数
68

This review is an introduction to a recently developed technology “optogenetics” that allows researchers to directly manipulate the activity of aimed neurons with millisecond (ms) order in a behaving animal. Two types of microbial opsin, channel rhodopsin 2 (ChR2) and halorhodopsin (NpHR), are commonly used as the tools for optogenetics. ChR2 responds to blue light to induce neuronal firing via cation influx, whereas NpHR responds to yellow light to inhibit neuronal activity via Cl- influx. This review first introduces these and other opsins that have been used for optogenetics. Next, three methods to introduce these foreign genes into mouse nervous system are going to be explained: 1) viral infection, 2) in utero electrophoresis, and 3) transgenic mouse. Then, this review illustrates how neuron-type specific expression of the opsin gene can be achieved, and also how the optic stimulation of opsins that expresses in the deep brain structure can be accomplished. Finally, how the optogenetic technique has been used for behavioral neuroscience will be discussed by focusing on the studies about amygdala microcircuit that mediates conditioned fear.
著者
岡 暁子 高橋 日出男 中島 虹 鈴木 博人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.233-245, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

本研究では,東京都と埼玉県を主な対象とし,15年間の夏季(6~9月)における,稠密な降水量観測網(290地点)の時間降水量データを用いて,降水域(≧5 mm/h)の局地性と広域性に着目して強雨(≧20 mm/h)発現の地域的な特性を解析した.その結果,関東山地東麓と都区部西部や北部で局地的強雨の頻度が高く,それによる降水量も多い.全強雨に占める局地的強雨の頻度割合は,都区部北部から埼玉県東部で大きく,総降水量への寄与も大きい.一方,関東山地や埼玉県西部,多摩地域では広域的な降水に伴う強雨の頻度や降水量が多い.また,南風時に都心の数十km風下側の埼玉県東部で夏季を通して局地的強雨の頻度割合が大きいことに関し,強雨発現と風系との関係を調べた.局地的強雨には基本的に風の収束が関与しており,いわゆるE-S型風系だけでなく,関東平野内陸からの北風に伴う収束や,相模湾からの南風と東京湾からの南東風との収束も重要と考えられた.