著者
池澤 優 近藤 光博 藤原 聖子 島薗 進 市川 裕 矢野 秀武 川瀬 貴也 高橋 原 塩尻 和子 大久保 教宏 鈴木 健郎 鶴岡 賀雄 久保田 浩 林 淳 伊達 聖伸 奥山 倫明 江川 純一 星野 靖二 住家 正芳 井上 まどか 冨澤 かな
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、欧米において成立した近代的宗教概念とそれに基づく宗教研究が、世界各地、特に非欧米社会においてそのまま受容されたのか、それとも各地域独自の宗教伝統に基づく宗教概念と宗教研究が存在しているのかをサーヴェイし、従来宗教学の名で呼ばれてきた普遍的視座とは異なる形態の知が可能であるかどうかを考察した。対象国・地域は日本、中国、韓国、インド、東南アジア、中東イスラーム圏、イスラエル、北米、中南米、ヨーロッパである。
著者
前川 要 千田 嘉博 高橋 浩二 村越 潔 酒井 英男 モリス マーティン 宇野 隆夫
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

研究成果の慨要を下記の3つに分けて記す。(1)遺跡の年代われわれの唐川城跡における3年間の測量・発掘調査の最大の成果は、中世城館ではなく古代環壕集落であることを明らかにしたことである。いままで、中世城館として考えられ、環境集落の研究史では全く採り上げられなかった。それは、第1次調査における土塁の盛り土から出土した土師器碗破片と土塁の上から検出された鍛冶炉跡SX02の埋土基底部から出土した土師器甕口縁部より明らかとなった。遺跡の存続年代は、従来の土器編年観から10世紀半ばから11世紀初頭頃で、年代的には、50年から60年ほどの期間である。(2)規模・機能と集住唐川城跡については、従来略測図のみ公表されていたが、今回トラバース測量を実施して正確な測量図を作成した。その結果、面積が約8万2千m^2、浅い空堀状の遺構,2条の空堀跡と外土塁、竪穴住居跡あるいは鉄生産関連遺構と考えられる窪みを多数確認した。これらのことから、唐川城跡は,二条の空堀と浅い空堀状の遺構によって,北から3つの郭で構成され、そして中心の郭が最も大きく高いことが判明した。また城城内に竪穴住居跡,鍛冶関連遺構が41箇所存在することを確認した。また、小鍛治の関連と想定される小型の窪みは16箇所以上存在する。第2次発掘調査では、2軒の住居跡を検出したが、いずれも新旧2時期存在した。そのことから、41箇所の2倍程度、つまりすくなくとも百軒弱の集落であることが推定できる。井戸は、井戸は北側郭と南側郭に各1基確認した。どちらの井戸も上端幅約10m,深さ約2.5mを測る。第1次調査では、南側郭の井戸を半分断ち割りしたが、湧水層が確認できず溜井戸の可能性がある。また、井戸周辺に竪穴住居跡あるいは,鍛冶関連遺構と推察する円形の窪みを確認した。鉄生産の際の水を溜める遺構の可能性がある。(3)手工業生産今回の大きな成果の一つは、精錬炉が盛り土をした階段状遺構の頂上から2碁見つかったことである。付章の深澤・赤沼論文によると、鯵ヶ沢町杢沢遺跡と同様の竪型炉であり、関連性が考えられる。従来、環壕集落からは、小鍛冶炉を検出した例はあるが、精錬炉を検出したのは初めてである。北側井戸周辺では直径約2m前後の窪みが約7箇存在しており鉄滓が地表面採集できる。さらに南側井戸東側平坦面にも10基以上の窪みがあり、ここでも鉄滓が地面採集できる。これらのことは、少なくとも北郭と南廓では、精錬と小鍛冶を一連の工程で、土木工事を含めて、大規模かつ組織的に行っていたことを示している。また、内面漆塗りの土師器甕が出土したことは、漆容器として使用された可能性がうかがわれ、漆生産工房があったことを推測させる。
著者
山岸 俊男 渡部 幹 林 直保子 高橋 伸幸 山岸 みどり
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.206-216, 1996-03-30 (Released:2016-12-04)
被引用文献数
2

An experiment was conducted to test three hypotheses concerning effects of social uncertainty and general trust on commitment formation, hypotheses derived from Yamagishi & Yamagishi's (1994) theory of trust. First two hypotheses were supported, while the last one was not. First, increasing social uncertainty facilitated commitment formation. Second, low general trusters formed mutually committed relations more often than did high trusters. Finally, the prediction that the effect of general trust on commitment formation would be stronger in the high uncertainty condition than in the low uncertainty condition was not supported. Theoretical implications of these findings for the theory of trust advanced by Yamagishi and his associates are discussed.
著者
高橋 伸幸 山岸 俊男
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-11, 1996-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
35
被引用文献数
5 7

本研究は, 利他的行動が特定の社会関係の中で果たす役割についての一連のコンピュータ・シミュレーションによる分析を通して, 特定の社会的状況のもとでは, 利他的に行動することが本人にとって有利な結果をもたらす可能性のあることを明らかにしている。本研究での分析の対象となっている利他的行動は, 集団内で成員が他の特定の成員に対して純粋に利他的に振る舞うかどうかを決定する (個人対集団場面ではなく, 個人対個人の関係) 状況での利他的行動である。このような状況での利他的行動が行為者本人にとって有利な結果をもたらす条件として本研究で明らかにされたのは, 集団の全員が下方OFT戦略を用いており, しかも下方OFT戦略の適用に際して「ほどよい」基準を用いている場合である。具体的には, 集団成員が利他的に行動する相手を選択するに際して, その相手が過去に少なくとも自分と同じくらい利他的に振る舞ってきた人間であるかどうかを決定基準として用いている場合には, より多くの他者に対して利他的に振る舞う方が成員の方がそうでない成員よりも, 結局はより大きな利益を得ることができることが, コンピュータ・シミュレーションを用いた分析により明らかにされた。
著者
高橋 圭
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.58-81, 2010-09-30 (Released:2014-03-31)
参考文献数
36

This paper aims to reveal some modern aspects of the criticism of ṭarīqas in nineteenth-century Egypt, by illustrating the abolition of dawsa, one of the most Well-known Sufi rituals in nineteenth-century Egypt, in 1881. The abolition was actually a unilateral measure taken by Khedive Tawfīq with the support of the Europeans, who had repeatedly criticized it as a barbarous and inhuman ritual. While this harsh criticism of dawsa was obviously based on modern Western concepts such as humanism, enlightenment, and laicism, an analysis of the official circular announcing the abolition of dawsa proves that these concepts were also shared by the Egyptian authority. On the contrary, the majority of ordinary Egyptian Muslims had long appreciated dawsa as the manifestation of a miracle; therefore, they were naturally dismayed at its sudden abolition. However, it must be noted that a few Muslim intellectuals supported this measure, and the most well-known among them was Muḥammad ‘Abduh. In his articles on the dawsa issue, ‘Abduh justified its abolition by claiming that it was irreligious in nature and harmful to human dignity. Further, he expressed his conviction that its abolition was a marked occasion for the Egyptian society to get rid of superstitions and to advance into the stage of enlightenment. ‘Abduh’s reasoning indicates that he also shared the Western concepts mentioned above in his criticism, and in this regard, we may locate the modern aspects in the criticism of ṭarīqas in this period. However, this does not indicate that ‘Abduh’s criticism was a mere reflection of the Europeans’ concepts. Actually, he had derived these modern concepts from his own reinterpretation of Islam, and in this respect, we can safely conclude that Islam was the ultimate basis for his criticism.
著者
高橋 幸司 高畑 保之 今井 敏彦 志斎 金一
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 = Kagaku kogaku ronbunshu (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.479-482, 2011-11-20
被引用文献数
1

持続可能な開発が望まれている近年,バイオマスエネルギーはカーボンニュートラルであるため環境負荷が少なく,注目を集めている.その中で最も実社会への普及が進んでいるのがBDF(バイオディーゼル燃料)であろう.BDFは植物油を原料として製造され,廃棄の面倒な廃食油からも製造可能である.加えて軽油に比べ硫黄酸化物の排出が少なく,環境に優しい.このようにさまざまなメリットを有することからも,より一層の利用の拡大が望まれている.日本では近年小型のBDF製造装置が開発され,企業だけではなく自治体や学校,福祉介護施設などで導入され,BDFがその団体のバスやトラック,公用車などに使用されている.しかしながら市販されている装置は液体混合に基づいた最適化が成されているとはいえず,操作性が悪いことに加え価格が高く,普及のための大きな障害となっている.<br>本研究ではBDF製造工程に配慮して装置を見直し,すでに市販されているものよりも高性能な装置の開発を目的に種々の検討を加えた.実験結果よりBDF製造においては円錐底円筒槽よりも四角錐底角型槽の方が撹拌状態において有効であることを明らかにし,このことにより操作時間の大幅な軽減と,装置の小型化に成功し,低価格の実現を可能とした.さらに,本研究成果に基づきBDF製造装置を開発し市販するに至った.
著者
今井 利宏 笠石 義広 原田 晴康 高橋 竜太 倉持 恵子
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.65-67, 2011-05

クロメンガタスズメAcheronitia lacnesis(F.)は、インド・パキスタン・ネパール・インドネシア・フィリピン・中国・台湾・日本に渡る熱帯~温帯東洋区に広く分布するスズメガである.(Beck and Kitching、2000-2010).国内の分布は、1982年に刊行された日本産蛾類大図鑑では九州・屋久島と記載されているが、1997・1998年に環境省が実施した「種の多様性調査(動物分布調査)」では佐賀を除く九州全県に加え、愛媛・高知・広島・山口・和歌山・三重で記録されている(井上ら、1982;自然環境センター、2002).近年になって、分布は急速に東進しており、関東においては、2007年に神奈川県および千葉県で、2009年に埼玉県で、それぞれ発生が記録されており、ナガサキアゲハPapilio memnon thunbergii SieboldやツマグロヒョウモンArgyreus hyperbius hyperbius(L.)などとともに、分布の拡大が温暖化と関連付けられて語られることも多い(岸ら、2009;加藤、2010;工藤、2010;尾崎、2010;嶋村、2010).Acherontia属は、本種を含め世界で3種が記載されているが、いずれも成虫がミツバチの巣に侵入し、密を摂食する習性を有するため、ミツバチの巣内で死骸が発見されることが知られている(Kitching、2003).栃木県内でも、2008年にニホンミツバチApis cerana japonica Radoszkowskiの巣箱で死骸が発見されているが、本種は大型で飛翔力が高く、長距離飛翔が可能であるため、元来の生息域である西日本から飛来したものと推定されている(増渕・中村、2008).幼虫は広食性で、食草には、ゴマ・ナス・ジャガイモ・トマトなどゴマ科・ナス科に属する農作物が含まれているが、農林有害動物・昆虫名鑑には害虫としてリストアップされていない(一色ら、1965;井上ら、1982;日本応用動物昆虫学会、2006).タバコも本種の寄主植物とされているが(Scott、1941;一色ら、1965).旧来の分布域である九州のタバコ産地を含め、これまで国内に本種による経済的な被害は発生していない(高橋明、私信).2010年7月に栃木県小山市の日本たばこ産業株式会社葉たばこ研究所内のタバコ畑でタバコを食害する本種幼虫が広範囲から多数発見された.その生息状況および食害状況について調査を実施したので、結果について報告する.本事例は、本種の栃木県内における初めての発生記録である.
著者
高橋 淳一
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
pp.5-81, 2015

早大学位記番号:新7133
著者
市川 裕 佐藤 研 桑原 久男 細田 あや子 高井 啓介 月本 昭男 高橋 英海 菊地 達也 長谷川 修一 葛西 康徳 江添 誠 牧野 久実 小堀 馨子 鎌田 繁 中西 恭子 土居 由美 嶋田 英晴 志田 雅宏 櫻井 丈 小野 塚拓造 山野 貴彦 アヴィアム モルデハイ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ユダヤ教の歴史を調べていくと、のちに出現する二つの一神教、キリスト教とイスラーム、を生み出す基盤になっていることがわかる。宗教学の歴史は信仰を基盤とする西欧のキリスト教を宗教の一般モデルとしたため、このモデルから外れる諸要素は関心から外れた。しかし、イスラームとラビ・ユダヤ教はそれぞれ、シャリーアとハラハーを特徴とする啓示法の宗教であり、預言者に啓示された神の意志は、日常生活の行動様式を詳細に規定している。これら一神教の二つの異なる類型がともに古代ユダヤ社会に起源を有することを示して、一神教の歴史全体を動態的に理解する道筋を示すことは、人類の宗教史を考察する上で文明史的意義を持つものである。
著者
高橋 誠一郎
出版者
九州大学
雑誌
Comparatio (ISSN:13474286)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.8-23, 2004

Recently we find many articles highly evaluating Shiba Ryotaro's Saka no ue no Kumo as a historical novel which glorifies the Russo-Japanese War. Indeed, in the first half of this novel Shiba takes the war as the "self-defensive war" fought against Russia, "the barbarous Empire", by democratic Japan, which was the first country to have the "Constitution". When he refers to the "High Treason Incident" after the war, however, he writes that Tokutomi Roka, a Japanese novelist, abhors the "nation becoming the prosecution against its own people". Moreover, in the last chapter he notes that Akiyama Masayuki, one of the protagonists who defeated the Russian Fleet, falls into the same depression as Roka. In this paper I intend to examine the relation between Roka and his brother Soho, a nationalist, and to compare Roka's Tolstoy, a biography of the Russian writer, and some of his novels with Shiba's Saka no ue no Kumo and his other novels. What I would like to show through this study is that Shiba supported pacifism like Roka, for after careful researches into a good deal of material of the Russo-Japanese War he became aware of the misery of the wars in the modern ages and the problems of westernization and chauvinism which caused the Pacific War.
著者
高橋 真奈茄 小出 洋 近藤 秀樹
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.40, pp.247-254, 2017-08-10

本研究は,具体的な機能をもつソフトウェア開発を行う実践的なプログラミング演習授業のための支援環境の開発において,学習者の学習進度を把握する機能の実現を目的とする.学習進度把握機能の実現するために,同じ授業を受講する学習者の PC 上の網羅的な活動履歴を利用し,学習者ごとの活動パターンを抽出する手法を提案する.実践的なプログラミング演習授業における目標は,プログラミング言語の機能を組み合わせて具体的な機能を実現するソフトウェアを開発することである.学習者が目標を達成するためには,プログラミング熟達者が利用するソフトウェア開発環境と同等であること,つまり,プログラミング言語の機能を十分に活用できること,統合開発環境以外のツールを利用できること,仕様書や講義資料,インターネット上の情報といった様々な資源を利用できること,といった条件を満たす制約のない環境が必要である.このような制約のない環境において学習者の学習進度を把握するため,網羅的な活動履歴を利用する.その中でも,PC 上のアクティブアプリケーションウィンドウの遷移に注目する.属人性の高い情報を分析するため,K-means 法を用いた活動履歴の分類を試みる.実際に開講されているプログラミング実習授業を受講する学習者のうち 24 名の活動履歴を分析した結果,属人性を抑えた活動パターン抽出の可能性,学習者は予想より多様性に富んだ活動パターンを示すこと,同じ授業を受講する学習者は制約のない的環境であっても共通したアプリケーションを利用することが示唆された.