著者
森 一平
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.153-172, 2014-05-31 (Released:2015-06-03)
参考文献数
20

本稿の目的は,授業会話における順番交替組織の一側面を明らかにすることである。小学校の授業会話においては,教師から児童たちへと発言の順番が移行するさい,主に一斉発話と挙手によってこれが成し遂げられる。しかし両者は,ともに同じく教師の質問によって児童たちに要求される。では,授業会話の参与者たちはいかにしてこの2種類の要求を区別し,またいかにしてそれに応えているのだろうか。本稿はこの問いを解くことを通して,上記の目的を果たそうとするものである。 分析の結果明らかになったのは次のことである。第1に教師は,基本的にはsK+質問と sK+/K-質問という2種類の質問を使い分けることによって,一斉発話と挙手の要求をそれぞれ区別していた。第2に児童たちは,事前の発言をきちんと聞いていたことを示しうるような適切なタイミングで挙手を開始していた。第3に,教師の要求に対して児童たちが誤った,あるいは分散した反応を示してしまった場合には,これを事後的に適切な反応へと方向づける付加的な技法が用いられていた。 一斉発話と挙手は授業会話において,その限られた発言の機会を児童たちへとなるべく公平に行き渡るよう分配するための,あるいは授業全体をより効果的なしかたで組織するための,有益な道具として用いることができる。本稿の知見は,この2つの道具を区別し使い分けるための,基礎的な技法を明らかにしたものである。
著者
森平 爽一郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.707-712, 2005-10-01

年金の目的は長期にわたる年金保険料の支払いに対し, 退職後の長期の年金受給が確保されるかどうかである.年金が長期かつ不確実な予測に依存し, システムが複雑であることが, 問題を複雑にしてきた.事実, これまで年金の歴史は破綻の歴史であった.年金のリスク, つまりその破綻に関して, ポートフォリオとデリバティブズ理論に代表されるファイナンス理論と最適化やシミュレーション手法に代表されるオペレーションズ・リサーチのさまざまな考え方, 理論と手法が如何に貢献しうるか概観することにする.
著者
宮地 秀樹 小谷 英太郎 岡崎 怜子 吉川 雅智 松本 真 遠藤 康実 中込 明裕 草間 芳樹 磯部 光章 新 博次
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.1388-1390, 2011-05-10
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

症例は21歳,女性.不明熱のため各種精査を行うも原因を同定できず.骨病変精査目的で施行したFDG-PET/CTにて大動脈弓部に異常集積を認め,早期の高安動脈炎と診断した.狭窄閉塞,拡張病変が明らかでない早期高安動脈炎の早期診断は現在のガイドラインでは困難である.しかし高安動脈炎は若年女性に好発し,重篤な心血管合併症が生じることからFDG-PET/CTによる早期診断が重要と考え報告する.<br>
著者
小田 きく子
出版者
昭和女子大学
雑誌
學苑 (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
vol.794, pp.66-77, 2006-12-01

Onigiri is one of the traditional, most popular Japanese rice ball snacks.The author conducted a questionnaire research on onigiri targeting high school and university students nationwide in 2003.The total number of schools and universities that cooperated was13, the total answers returned were 1, 386, and the recovery rate was94.9%. The results are, 1.They called rice balls onigiri, omusubi and nigirimeshi. 2.The familiar forms of rice balls they ate were triangle, circled, and oval. 3.The top three of the fillings they thought common were umeboshi, salmon and konbu. 4.The most favored wrapping material was nori. 5.The top three of their favorite varieties were with salmon, umeboshi, and tuna with mayonnaise sauce.
著者
和智 妙子 渡邉 和美 横田 賀英子 大塚 祐輔 Lamb Michael E.
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.87.16002, (Released:2016-11-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

This study examined the relationships between the reasons for confessions and interviewing styles by administering a self-reported questionnaire to new male adult prison inmates across Japan. The three factors proposed by Gudjonsson and his colleagues (1991, 1992, 1994, 1999), namely, perception of proof, internal pressure, and external pressure, were investigated. When participants had decided to confess prior to interviews, they were more likely to confess due to perception of proof and internal pressure compared to their counterparts. Furthermore, participants who experienced a relationship-focused interviewing style, which stressed active listening and rapport-building while talking about the criminal incidents directly, were more likely to confess due to internal pressure and less likely to confess due to external pressure.
著者
丸尾 美保
出版者
梅花女子大学
雑誌
梅花児童文学 (ISSN:13403192)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.67-85, 2002-07-30
著者
二村 郁美
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.87.15045, (Released:2016-11-10)
参考文献数
35
被引用文献数
1

This study examined the influence of prosocial behaviors on evaluations of morality and warmth. There were four patterns of interaction: positive reciprocity (with both cost and benefit), only-cost (with cost but without benefit), negative reciprocity (without either cost or benefit), and only-benefit (with benefit but without cost). Three-hundred-fourteen undergraduate students participated in this study. The participants read an example of interaction and evaluated the actors’ morality and warmth. Results of one-way ANOVA showed that the ratings of morality and warmth differed significantly between the conditions. There was no significant difference of perceived morality between only-cost and positive reciprocity. In contrast, warmth was evaluated higher in only-cost than in positive reciprocity. This suggests that people evaluated morality and warmth differently depending on whether the prosocial behavior was obligatory or optional.
著者
山崎 諭 小市 俊悟 鈴木 敦夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.31-52, 2013-12

本研究では,災害時に代替経路が確保された道路ネットワークを実現するために,どの道路を改良すればよいかという問題に対して,解決への一つの指針を示す数理モデルを提案する.そのために,まず,代替経路の厳密な定義を与えた.その定義は,災害時における道路寸断に対する耐性と,目的地までの所要時間に着目した定義となっており,それを満たす経路を増加させることで,災害に備えた道路ネットワークの実現を図る.提案する数理モデルにおいて,改良すべき道路は線形計画問題の解として得られる.その線形計画問題は,最短経路問題の感度分析により得られる情報と,最短経路と代替経路の候補となる経路の重複率を用いて定式化される.また,その問題は連続型ナップサック問題へ書き換えることができ,それにより,改良する道路の優先順位も明確になる.具体的な問題例として,(i)愛知県庁と大阪府庁間,(ii)愛知・静岡県主要都市間,および(iii)関東の一部の主要都市間について,既存道路の整備による代替経路の確保を想定した計算機実験を行った.(i)については,平成7年の道路データを用いたところ,平成17年開通の新名神高速道路に類似した経路が得られたが,これは本研究で提案するモデルの有効性を示していると考えられる.(ii)については,平成15年の道路データでは,新たに得られる代替経路は沿岸部を通る経路に限られるが,それに新東名高速道路のデータを加えたところ,浜松・静岡間に新東名高速道路を用いた代替経路を確保することができた.この結果は,本研究で提案するモデルの有効性を示すとともに,新東名高速道路により静岡県の道路ネットワークが危惧される東海地震に対して頑健になったことを示すものと考えられる.(iii)については,災害時に機能する代替経路が得られる一方で,改良予算によっては既存の代替経路が消失することを紹介する.これは,改良予算のみを制限とする提案モデルの問題点とも言え,今後の課題である.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.198, pp.150-152, 2001-03

販売力の弱い中小企業の救世主と期待された電子商店は、いまや死屍累々の状態だ。ネット上で成功する店舗は、際立った個性のある商品とサービスを提供しているところに限られる。我々がいま学ぶべきなのは、高級オーディオ、中古カメラといったマニア市場に特化した専門商店の、こだわりの商品管理と顧客サービスではないだろうか。
著者
春原 昭彦
出版者
上智大学
雑誌
ソフィア : 西洋文化ならびに東西文化交流の研究 (ISSN:04896432)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.125-128, 1993-09-30
著者
関戸 堯海
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:18840051)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.1300-1307, 2014-03-25

文永九年(1272)二月,寒風が吹きつける佐渡の塚原三味堂で,日蓮は『開目抄』を書き上げた.「日蓮のかたみ」として門下に法門を伝えるための論述である.日蓮は『開目抄』において,諸経にすぐれる『法華経』が末法の衆生を救う教えであることを力説する.まず,あらゆる精神文化と仏教を比較して,その頂点に『法華経』があることを論述する.一切衆生が尊敬すべきは主徳・師徳・親徳であり,学ぶべき精神文化は儒教・仏教以外の宗教思想・仏教であるとして,それぞれの思想的特徴を精査して,仏教が最もすぐれるとし,なかでも『法華経』が釈尊の真実の教えであることを「五重相対」の仏教観によって証明する.続いて,『法華経』のすぐれた思想的特色として,一念三千および二乗作仏・久遠実成を挙げて詳細に論じている.そして,『法華経』迹門の中心をなす方便品は一念三千・二乗作仏を説いて,爾前諸経の二つの失点のうち一つをまぬがれることができたが,いまだ迹門を開いて本門の趣旨を顕らかにしていないので,真実の一念三千は明らかにされず,二乗作仏も根底が明らかにされていないと述べ,本門を中心とした法華経観を提示する.また,末世の『法華経』布教者に数多くの迫害が待ち受けていることを『法華経』みずからが予言している(未来記).その経文を列挙して,数々の迫害の体験は予言の実践(色読)にほかならないとして,日蓮は末世の弘経を付嘱された上行菩薩の応現としての自覚に立ち,不惜身命の弘経活動を行なった.ことに龍口法難(佐渡流罪)を体験した日蓮は法華経の行者であることを確信した.そして,『開目抄』には「我れ日本の柱とならむ,我れ日本の眼目とならむ,我れ日本の大船とならむ」の三大誓願によって,人々を幸福な世界へと導くという大目的が表明されている.
著者
左文字 克哉 高木 康文 林田 圭司 大島 直樹 朴 康司 米津 宏雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス
巻号頁・発行日
vol.95, no.37, pp.31-36, 1995-05-18

InP-on-Siヘテロエピタキシーの最大の問題点は格子不整合が8%と大きいことである。そこで、InP-on-Siとほぼ同じ格子不整合を有するInP-on-GaPにおいてInPエピ層の成長様式と貫通転位発生の関係をRHEEDとTEMを用いて調べた。その結果、InP層は1〜2MLで二次元成長から三次元成長へ移行した。また、貫通転位は3〜4MLで発生した。この結果は、貫通転位が三次元成長島の拡大または合体の過程で発生することを示唆する。したがって、エピ層の三次元化を抑制することで貫通転位の発生を低減できると考えられる。そこで、InP-on-Siに対して、格子緩和後も二次元成長を維持する歪短周期超格子(SSPS)を導入し、エピ層の三次元化を抑制することを試みた。その結果、エピ層は二次元的に成長し、貫通転位密度の明らかな低減がみられた。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.973, pp.55-58, 1999-01-11

私たちの日常生活と切っても切り離せない存在なのが、「紙」だろう。毎朝読む新聞や通勤途上で目を通す雑誌はもちろん、オフィスで使うOA用紙や段ボール、トイレットペーパー、ちり紙…周囲を見回せばそこかしこで紙が使われている。 実はこれらの紙のうち、半分以上は利用済みの古紙を再生してつくっている。