著者
屋名池 誠
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.日本語は、縦書き・横書き両方が可能であるという、世界的にもめずらしい表記システムをもつ言語である。もともとあったのは縦書きで、横書きは江戸時代末期・明治時代初期に生じてきたものである。西欧との接触により、多くの文物が取り入れられる中で、(画面に)水平な文字配列や(在来の右から左へという方向に対し)左から右へという方向の文字配列が必要な場合が生まれたからである。この必要によって、横書きのほか、横倒しの縦書きや、右方向へ行がかわってゆく縦書きなども生じたが、みな明治末期までには横書きにとってかわられた。2.横書きには、ほぼ同時に、それぞれ使用者が異なる、右横書きと左横書きが生じた。その後両者の使い分けの条件は、使用者によるものジャンルによるちのなど順次変わっていったが、結局、平面上レイアウトで果たす役割は同じであるため、昭和23年ころまでに、(アラビア数字との共存などの点で)より効率的な、左横書きに統一された。3.横書きであることが必要な用途、縦書きするのがふさわしい用途のほか、どちらであってもかまわない用途がある。こめ第3の用途には長い間縦書きがもちいられてきたが、次第に横書きに取って代わられつつある。近い将来、日本語の書字方向は縦書き:無標横書き:有標という現在の体制から横書き:無標縦書き:有標という体制に変わるものと予想される。
著者
但馬 康宏
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

文脈自由言語の部分言語族のひとつである単純決定性言語について,そのある部分言語族は多項式教示可能であることを示した.この結果は,多項式時間での教示可能性と多項式時間での質問による学習可能性の本質的な違いの一例となっている.さらに,本研究により得られたアルゴリズムを文書の段落分割アルゴリズムに応用し,テキストデータを話題に応じた段落に分割する手法を開発した.この手法は,分割精度において従前の良く知られた手法よりも高性能であることが実験的に示された.またこれらを思考ゲームの着手決定アルゴリズムに応用し得ることを示し,実験的にその有効性を示した.
著者
大場 秀章 塚谷 裕一 秋山 忍 若林 三千男 宮本 太 池田 博 黒沢 高秀 大森 雄治 舘野 正樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.現地調査:ネパール、ミャンマーおよび中国にて下記の調査を行った。調査の主目的は、種子植物相を詳細に調査し、標本を収集すること、ならびに繁殖システムと動態、変異性を観察し、さらに帰国後の室内での分析に必要な試料を採取することである。(1)ネパール:ジャルジャル・ヒマール地域(1999年8月から9月);東部地域(2001年5月から6月)。(2)ミャンマー:中部地域(2000年8月)。(3)中国:雲南省梅里雪山・中旬県(1999年8月から9月);チベット東部(2000年7月から8月);雲南省西北部、チベット東・中部(2001年7月から8月)。2.収集した標本・試料等にもとづく分析 (1)分類学的研究:採集した標本を中心に同定を行い、新種ならびに分類学上の新知見について発表を行った。(2)細胞遺伝学的解析:Saxifraga(ユキノシタ科)、Potentilla(バラ科)、Impatiens(ツリフネソウ科)、Saussurea(ともにキク科)等で、染色体を解析した。(3)帰国後の分子遺伝的解析:Rhodiola(ベンケイソウ科)、Saxifraga(ユキノシタ科)、Impatiens(ツリフネソウ科)、Saussurea(ともにキク科)等で分DNAを抽出し、rbcL、ITS1、trnF-trnL non coding region(trnF-L)の遺伝子領域で解析を行っている。
著者
阿久澤 さゆり 藤田 直子 早川 文代
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本晴を親にして、澱粉合成酵素の働きを抑えて特性を変化させた変異体米(SSIIIa)を作出し、その米の精白米と分離した米澱粉の特性を検討した。その結果SSIIIa の精白米は、日本晴と近似していたが、炊飯によって縦に長くなる形状で、粘らずもろい特性を示した。これらの特徴は、澱粉中のアミロペクチンの構造変化によるもので、国内産米の利用の拡大につながると期待された。
著者
穴澤 貴行
出版者
福島県立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

膵島移植において、高い細胞収量と分離過程の細胞障害回避の両立は重要な課題である。ClassI/II比を最適化したcollagenaseにneutral proteaseを併用すると、従来法であるThermolysinの併用より高い収量が得られることが明らかにされた。また、膵島分離過程にClイオン阻害剤の添加、Clイオンフリーとした細胞外溶液の使用を導入して、膵島分離収量やViabilityはClイオンの制御により改善されることが明らかとなった。さらに、本邦での臨床背景にそって、心停止ドナーモデルを構築し、心停止モデルでも同様の結果が得られることを明らかにした。
著者
樋口 京一 森 政之 澤下 仁子 亀谷 富由樹 内木 宏延 前田 秀一郎
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アミロイドーシスとは蛋白質がアミロイド線維に異常凝集し、生体に傷害を与える疾患群である。アミロイド線維による伝播現象に注目して、合成ペプチドを用いた新たな線維形成解析システムと新規のアミロイドーシスモデルマウスの開発を行い、アミロイドーシスの発症機構や治療方法に関して体系的な解析を行った。その結果、1)糞や骨格筋を介した新たな伝播経路の発見、2)線維形成阻害ペプチド、熱ショック転写因子(HSF1)、アポリポプロテインA-I(apoA-I)等の治療ターゲットの発見、3)今後アミロイドーシス研究者が利用可能なモデルマウスの開発、などの成果を得た。
著者
豊島 裕子 遠藤 陽一 木村 直史 小幡 徹 衛藤 謙
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

(1) ヒトは、大きく分けてストレスが身体反応を起こしやすいタイプと、そうでないタイプに分けられる。前者では、ストレス負荷に対して脳血流が急激に増加する、脳波の伝達が速くなる、心電図所見で交感神経優位になっているなど、過剰な反応が確認された。(2) また、ヒトにストレスが加わると、血小板が活性化され、血栓を作りやすくなることがわかった。つまり、ストレス耐性の低いヒトでは、ストレス負荷で、血栓性疾患を起こしやすいことがわかった。
著者
北原 淳 田坂 敏雄 滝沢 秀樹
出版者
神戸大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

1.韓国経済について次の分析がなされた。(1)外から、上からの工業化が本来的都市化を伴わず両者が相克している。都市化は都市非公式部門を肥大化させている。(2)農業部門は70年代末不作と保護政策後退によって緑の革命も後退し全般的落層化が生じている。(3)農村から都市への人口移動は工業化のテンポを上まわった。(4)民主化を担う主体は労働者、雑業層等の民衆である。2.韓国資本主義論争を検討した。かつての民族経済論は現在国独資論にひきつがれて従属理論と相対立する形となっている。国独資論反対論者の一部はその前身である民族経済論をも批判しているが、本来内包的自立的工業化をめざす民族経済論は従属理論の立場からみても正しく評価されるべきである。3.タイ農村の地域労働市場の展開と就業構造について検討した。(1)大都市周辺農村は通勤形態による兼業が一般化し、農村内部では兼業化と緑の革命により急速な階層分化が進んでいる。(2)その中で上層界の脱農化は顕著ではないので中農標準化傾向はあらわれていない。(3)辺境農村では全階層的な遠隔地出稼労働が盛んである。4.NICS的発展の特徴を論じるシンポジウムを、山口博一,劉進慶、駒井洋、加納弘勝、大倉秀介、スリチャイ・ワンケオ各氏の参加のもとに開催し、次のような諸点を議論した。(1)NICS一般を論じるだけでなく国別にきめ細く見てゆくべきである。韓国はナショナリズムが強いのに台湾は弱く外国投資にも積極的である等のちがいがある。(2)NICS的発展は第三世界の不均等発展や日米関係にもとづいた特殊な発展形態であり、必ずしも一般化できない。(3)都市化、工業化は新中間層、労働者、都市雑業層を増加させており、民主化は上下どの階層の利害を代表するかで性格が異なりうる。
著者
杉山 陽子
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

培養気道上皮細胞においてTNFα刺激で産生されるIL-8が麻酔薬プロポフォールによりGABAA受容体を介して増加した。GABAB受容体作動薬はIL-8産生量を変化させなかった。TGFα刺激における分泌型ムチンMUC5ACの産生を麻酔薬ミダゾラムが抑制したがGABAA受容体拮抗薬はその作用を抑制しなかった。気道炎症に重要なIL-8の産生過程をGABAA受容体が修飾している可能性があり、今後新しい治療ターゲットとなりうる。
著者
濱崎 雅弘
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,ソーシャルネットワークとソーシャルタギングを用いた情報流通基盤の研究を行う.利用者にとって価値のある情報を発見し届けるには,まず情報の価値を計量する方法が必要であり,そして利用者にとっての情報の価値を計量するためには,利用者の社会的関係や情報の位置づけを捉え利用する方法が重要である.本研究では既存の動画共有サイトにおける作者のソーシャルネットワークを,ソーシャルタギングを用いて分析し,コミュニティ内の構造を明らかにした.
著者
杉本 恵司
出版者
奈良県立吉野高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

研究目的 森林のもつ多様な機能を幅広く学習できる教材は甚少である。そこで、本研究は特用林産物(山菜類・きのこ等)が人々の生活に密着している例を多く取り入れ、生徒自らの体験と照合して学習できるデジタル教材を開発する。また、里山地域の小・中学校向けの教材として、広葉樹林帯と針葉樹林帯での生物多様性を比較する教材もあわせて開発する。研究成果(1)デジタル教材 Excelを利用し、特用林産物を学習できるをデジタル教材を作成した。学習対象とした特用林産物は、山菜類・きのこ・薬用植物・生活利用物の4品目で、生徒自らの操作で学習でき、CDディスク1枚に収納したデジタル教材となった。その教材を活用した実践授業を11月4日に、勤務校の科目「森林科学」において行った。授業の前後でアンケートにより生徒の特用林産物に関する意識を調査した。その結果、生徒が知る特用林産物の平均個数と、利用例の平均個数がともに授業後に増えた。また、複数の生徒から「特用林産物は、国産・無農薬なので安心して食べられる」の感想があり、今後「食育」の視点から本教材の活用が期待できた。一方、学習概念の構成要素を対象とした因子分析は、今回のデータが十分でなく課題を残した。(2)生物多様性教材 4月から5ヶ月間、広葉樹林帯と針葉樹林帯において、ピットホールトラップを設置し、甲虫類・節足動物類等の種と数を調査した。その結果、広葉樹林帯の方が捕獲生物の種類も数も多かった。その原因は、広葉樹林帯では光が内部にまで届いて明るく草本層の発達があるが、針葉樹では草本層の発達がないことに因ると考察された。次に、土性調査により最大容水量を比較した結果、広葉樹林帯の方がその値が大きかった。その原因は、植物の草本層の発達が土性の腐食層の形成に大きく影響したことに因ると考察された。そして、これらの成果をCD1枚に格納した教材に仕上げた。
著者
夏目 雅裕
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

トマトの根滲出液に含まれる青枯病菌の走化性誘引物質の探索を行った。トマト根滲出液を酢酸エチル抽出画分、活性炭吸着画分および非吸着画分に分画して走化性誘引活性を調べた結果、活性炭非吸着画分が最も強い活性を示し、活性炭吸着画分にも活性が認められた。活性炭非吸着画分のアミノ酸分析を行い、根滲出物に含まれる量のアミノ酸混合物と分析に用いた画分の活性を比較した結果、アミノ酸以外の誘引物質の存在が示唆された。非宿主植物であるイネ、ナタネ、アルファルファの根滲出物の各画分の活性を比較した結果、トマトの活性炭非吸着画分が他の植物より強い誘引活性を示した。
著者
戸田 徹子
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

米国プロテスタント日本伝道に関する事例研究として、キリスト友会フィラデルフィア年会ミッション・ボードの戦間期における日本伝道の方針と活動を検証した。太平洋戦争下における日系人強制収容への抗議活動についてボードの書簡資料を紹介する論文と、同ボードと協力関係にあった米国フレンズ奉仕団の日本との関係-関東大震災時の救援活動、排日移民法と日本人留学生基金、太平洋戦争下での日系人支援活動-を概観し、従来ミッション・ボードが担ってきた活動の一部が国際NGOである米国フレンズ奉仕団の手に移行しつつあったことを指摘する論文を作成した。
著者
日鷹 一雅 嶺田 拓也 渡邊 修 本林 隆 東 淳樹 大澤 啓志
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

まずはカメ類、両生類、畔畔の高等植物、昆虫等について現状の生息状況を在地の多様な研究者と検討した。その結果から、トノサマガエル、イシガメ、チガヤ、ススキ、ヒメゲンゴロウなどの水生昆虫などの水田普通種が地域的に減少傾向であった。これらの普通種減少について、激減仮説(新農薬・侵入生物・栽培環境・圃場整備など)のそれぞれが減少要因に関与していた。減少傾向の種のうち、とくに減少傾向の顕著な種群に悪影響を及ぼす要因について影響評価実験を行った。メソコズムとマイクロコズムを考案し、半致死濃度を求め、ある殺虫剤の悪影響をつきとめた。昆虫種の中には地域個体群の激減に一部の普及農薬の化学成分が影響していた。減少種とその要因の関係性は多様であり、在地の研究者の役割は大きい。
著者
山本 勝
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

金星や地球を含めた地球型惑星大気力学の理解を深めるために,金星大気大循環モデルの高度化に向けた微細擾乱の数値実験を行った.地表付近と雲層内の3次元マイクロスケール気象シミュレーションによって,対流調節や対流混合が静的安定度の鉛直構造や地表風の構造に与える影響を調査した.微細擾乱の数値実験と並行して,高度化するベースモデル(大気大循環モデルと微物理モデル)の整備を行った.特に,金星大気大循環モデルの妥当性を議論するために,モデルの中の極渦の力学等を明らかにした.
著者
古川 匡恵
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

オフィスブリーチは現在審美歯科において人気のある漂白法である。しかしながら、オフィスブリーチ法は熟練した術者においても術中に歯肉や口腔粘膜に漂白剤が付着してしまうことがある。その場合、歯肉に一過性の疼痛および白色化が起こるが、数時間後には症状は緩和し、白色化も消失してしまう。この漂白剤の歯肉に対する影響については文献などでは知られていないため本研究では、漂白剤の歯肉に対する為害性をin vitroで検討した。
著者
松村 瑞子 因 京子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

(1)社会的身分や年齢に差がある話者間の会話やテレビのインタビュー番組など公開を目的とした会話のデータを収集し、文字化を行なった。次に文字化したデータをタイプ1(ある程度親しいが上下関係のある対話者間の会話(大学教授と学生等)、タイプ2(医者が患者を診察してる場面の会話)、タイプ3(テレビのインタビュー番組における女性司会者と客の会話)に分類した。(2)次に、日本語における丁寧さの基準とは何かを考察するために各々のタイプのデータを分析した。その結果、日本語のポライトネスには、ポライトネス・レベルの基準となる言わばポライトネス・レジスターを決める「わきまえ」を示す部分と、そのレジスターの枠内で会話を成功させるために用いられる「ストラテジー」が存在することが分かった。井出(1989)はアンケートに基づいて「わきまえ」は話者の意図的選択ではなく社会的慣習によって決まってくるものであると論じたが、本研究では実際の会話の綿密なデータ分析を行なった結果、「わきまえ」の表現は会話参加者の相対的地位によって決まっていること、また使用されるストラテジーの種類や頻度も会話参加者の相対的地位や状況によって左右されていることを示した。さらに、この結果を国際学会(International Symposium on Linguistic Politeness : Theoretical and Intercultural Perspective.Dec.7,1999.Chulalongkorn University, Thailand)にて発表した。(3)最後に、日本人および日本語学習者がそのポライトネスの基準をどの程度認識しているかの調査を行い、日本人と学習者の間の意識のずれを特定した。収集したデータやアンケート結果を基盤にして、日本語会話における丁寧さの実態を日本語学習者に合理的に提示するための資料・教材を作成した。
著者
小林 信之
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高速搬送される柔軟体の挙動解明のために,Absolute nodal coordinate formulationを用いてモデル化し,ローラと柔軟体の接触を拘束方程式で記述した運動方程式の構築を行った.MATLAB上でプログラム化して,一定速度で搬送される場合と周期的に往復動する場合について数値シミュレーションを行った.その結果,一定速度で搬送される場合には,搬送速度が速くなるとダイバージェンス型の不安定が生じ,周期的に往復動する場合には,柔軟体の曲げ1次固有振動数の2倍の振動数で駆動することによりパラメトリック共振が生じることが明らかになった.Finite segment methodを用いたモデル化も行い,さらに既存の実験装置の改造と実験を行い,数値シミュレーション結果と比較した.その結果,一定速度で搬送される場合には低い速度領域でフラター型の不安定が,また,早い速度領域で搬送される場合にはダイバージェンス型の不安定が生じることが分かった.実験と解析に若干の差異があったことから,実験装置の改良およびモデル化に関する更なる検討を行う必要がある.また,柔軟体が周期的に往復動する場合には,柔軟体の曲げ1次固有振動数の2倍の振動数で駆動することによりパラメトリック共振が実験によっても計測されて,数値シミュレーションと実験が比較的良く一致することが分かった.接触問題をユニラテラルコンタクト問題と考えたモデル化手法について検討を行い,多点接触問題を伴う柔軟構造物の地震時の挙動解析に適用した.MATLAB上でプログラム化して,重心位置の高い大型構造物を対象に地震応答シミュレーションを行った.その結果,構造物のロッキング振動と下端部のすべりが連成した地震応答特性が明らかになり,本研究で展開した解析方法の有用性を示すことができたとともに柔軟体の不安定挙動についての知見を得た.
著者
西田 宗弘 畠中 憲之
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

超伝導系で起こる現象の多くは、量子化された渦電流である量子渦の運動に支配される。この量子渦が対を形成すれば、一種の移動可能な人工分子が実現する。本研究では、量子渦対が生じ得る系として、超伝導/強磁性/超伝導伝送線路と一次元超伝導干渉素子列を考案し、量子渦対の運動の詳細を明らかにした。これにより、強磁性層の磁区構造やラチェット効果を用いて量子渦対の運動制御が可能と分かり、新規量子機能デバイス実現への可能性が開かれた。
著者
作田 裕美 坂口 桃子 佐藤 美幸 新井 龍
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

上肢リンパ浮腫は、リンパ節郭清を行った乳がん患者にしばしば発症する。リンパ浮腫の有効な治療手段が確立されていない中、国際リンパ学会において標準治療として認められている「複合的理学療法」を各施設で施行しつつある。しかしながら、標準化には至っていない(複合的理学療法とは、スキンケア、リンパドレナージ、圧迫療法、圧迫下での運動療法の併用を指す)。複合的理学療法の効果を「リンパ浮腫発症予測指標」を用いて検証した結果、有用であることが示唆された。