著者
広木 正紀 藤田 哲雄
出版者
京都教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

「基本的科学概念の獲得」を重視する現行理科のあり方に、生活単元学習時代の特徴である「子ども自身の生活から出発する」という観点をとり入れたシラバスと教材の開発を目指し、小学校レベルに重点を置いた研究を行った。1.指導要領に現れた単元構造についての考え方を、生活単元時代と現行の両時代で比較的に分析した。その結果に基づき、シラバス開発における単元構成の問題点を整理した。2.生活単元時代と現行の小学校理科について、指導要領や教科書の内容を調査し、「今後の小学校理科における基本概念候補」を整理した。3.基本概念候補の各々について、「概念獲得を手助けし得ると判断される活動教材」を扱った文献を集め、整理した。一部については実際に試行し、改善を加えた。4.教材テーマの例として「水」「光」「音」をとりあげ、これらのテーマに関する学習のためにどのような活動(観察・実験など)がとり挙げられているか」という観点から、生活単元時代と現行の場合について指導要領と教科書の内容を分析・比較した。その結果に基づき、「これらのテーマに関するシラバスづくり」における問題点を整理した。5.4の結果に基づき、「水に関する学習教材およびシラバスを構成する学習活動候補」を整理した。6.基本的科学概念のうち「力」「作用の伝達」「物の種類」「物の時間的変化」「裸地の時間的変化」「生物と非生物」「日用品の由来」「物の動きと見え方」「水の循環」などについて、生活体験から概念獲得までのプロセスを構成する活動体験や思考の順序を整理し、活動・思考教材としてモジュール化した。
著者
栗原 堅三 庄司 隆行 柏柳 誠 松岡 一郎 桂木 能久
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

大豆由来のホスファチジン酸と牛乳由来のβラクトグロブリンからなるリポ蛋白質は、味細胞の微絨毛膜に結合し、苦味物質が受容サイトに結合することを妨害することにより、苦味を選択的に抑制することがわっかた。この苦味抑制剤を実用化するためには、安定性やコストの面で、蛋白質を使うことに問題があった。そこで、蛋白質を含まない苦味抑制剤の開発を試みた。ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホファチジルイノシトールなどに苦味抑制作用があったが、ホセファチジン酸の作用は、他のリン脂質よりはるかに強力であった。ホォスファチジン酸を苦味抑制剤として使用する場合、これを純品にする必要があるかどうかを検討した。ホスファチジン酸に他のリン脂質が共存した場合でも、その苦味抑制作用は妨害を受けなっかた。そこで、大豆レスチンから、ホスファチジン酸を高含量含む分画を作成し、苦味抑制効果を調べた。この結果、このレシチン分画は、各種の物質の苦味を十分抑制することがわかった。このレシチン分画を各種の薬物と混合し、苦味抑制効果を調べたところ、苦味を十分抑制することがわかった。また、このレシチン分画で、錠剤や顆粒剤をコートすると、苦味が効率的に抑制された。また、食品の苦味成分に対する苦味抑制効果を調べた。蛋白質加水分解物のあるものは、機能性食品として注目されているが、一般に強い苦味がある。レスチン分画は、蛋白質加水分解物の苦味を抑制した。ポリフェノールは、活性酸素の作用を抑制する物質として注目を集めているが、非常に強い渋味と苦味を有する。レシチン分画は、ポリフェノールの渋味と苦味を抑制することがわかった。チョコレートには、ポリフェノールが多量に含まれているが、その渋味と苦味のため、従来はこの含量を減少させていた。レシチン分画をチョコレートに入れると、ポリフェノールを高含量含んでいても、良好な味になる。
著者
澤井 一彰
出版者
財団法人東洋文庫
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

最終年度である平成23年度は、これまでの研究成果の公表と、今後の新たな研究のための史料調査が活動の中心となった。共著としては、2012年3月に山川出版社から出版予定の『オスマン帝国史の諸相』に、博士論文の一部である「穀物問題に見る16世紀後半のオスマン朝と地中海世界」が採録された。同論文は、16世紀後半の地中海世界における物資流通と国際関係のかかわりを、穀物問題に焦点をしぼることによって解明することを目指したものである。国内における研究発表としては、拡大地中海史研究会において、「16世紀後半の東地中海世界における「穀物争奪戦」-エマール=ブローデル・テーゼの再検討-」と題する報告を行った。博士論文の一部でもある同報告は、モーリス・エマールとフェルナン・ブローデルによって主張されてきたテーゼを再検討したものである。また、羽田正東京大学教授を代表とする基盤研究(S)「ユーラシアの近代と新しい世界史叙述」において、「16世紀後半のオスマン朝における飲酒行為をめぐる諸問題-多元的社会における「価値」を考える-」と「イスタンブルへの穀物供給に見る「伝統」と「近代」」と題した報告を行った。さらに、山川出版社から刊行されている『歴史と地理世界史の研究』には、イスタンブルの歴史を様々な著作を挙げつつ紹介する「イスタンブル歴史案内」が掲載された。今後の研究に向けての史料調査では、2011年8月14日から9月2日までトルコ(イスタンブル)とアイルランド(ダブリン)を、2012年1月15日から2月3日まではトルコ(イスタンブル)とイギリス(ロンドン)をそれぞれ訪れ、現地の文書館や図書館において関連史料の調査収集を行った。以上が、平成23年度の研究実績の概要である.
著者
脇田 滋 木下 秀雄
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究は、介護労働者の雇用をめぐる現状を把握し、それを歴史的な発展のなかで位置づけるとともに、ヨーロッパを中心とする先進諸国での立法政策との比較を通じて、日本における問題の解決に向けて、法理論的な課題を明らかにしようとするものである。この目的のもと、平成7年度から平成8年度にかけて2年間にわたって在宅福祉を支えるホームヘルパーを中心に、(1)在宅福祉サービスをめぐる動向、(2)派遣型介護労働者の雇用をめぐる労働条件の実情把握、(3)比較法の視点から派遣型介護労働者をめぐる立法政策の課題を中心に研究を進めた。実態調査としては、京阪神地区以外に、金沢、岡山、福岡、横浜、東京都等の地域福祉における介護従事者についての実態調査に重点をおき、家政婦紹介所関係者、職業安定業務従事者、ホームヘルプ労働者などから「聞き取り調査」を行った。その結果、ホームヘルパーの地位は、(a)常勤の公務員、(b)非常勤の公務員、(c)社会福祉協議会等民間団体による常勤職員、(d)同登録・非常勤職員、(e)有料職業紹介による家政婦に、複雑に分化していることが確認できた。全体として「ホームヘルパは在宅介護のかなめ」と指摘されてきているが、実態は必ずしもそうした指摘にふさわしいものとなっていない。在宅福祉の要であるホームヘルパーの雇用条件を抜本的に改善するためには、日本に特有な非正規雇用による現状を改める必要がある。とくに、雇用管理をめぐる責任とサービス提供の責任との交錯をめぐる検討は皆無に近いので、この点についての本格的な比較研究は今後の大きな課題として位置づけられる。
著者
平井 英明 関本 均 斎藤 高弘 一前 宣正 伊谷 樹一 平井 英明
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

植物根圏はある土壌環境に生育する植物の個有の領域であり、いわばいろいろな表情を見せる植物と土壌の顔である。根圏のpHは植物の栄養条件の嗜好性や選択性によって独特のパターンを示す。また、根圏pHの変化はある栄養環境にさらされた時の植物の一つの応答でもある。したがって、根圏pHは、因果関係の特定はできないが、植物の栄養状態を把握するためのマクロな指標、いわば根圏の「顔色」と位置づけられる。そこで根圏pHに着目し、その変化のパターンを画像として観察し、土壌一植物系の栄養状態を評価する方法を考案した。作物、雑草、緑肥用植物などの硝酸態窒素とアンモニア態窒素の嗜好性を調べた。また、アミノ酸やタンパク質を窒素源とした場合の植物根圏pHの変化、鉄欠乏植物の植物根圏pHの変化、リン酸欠乏および難溶性リン酸塩に対する植物pHの変化について観察した。コムギは硝酸態窒素が多い培地にあってもアンモニア態窒素などのカチオンの吸収能力が高いため、コムギの根圏pHは水耕液供給後、一旦低下した後に再び上昇する。一方、ハクサイは窒素源として硝酸態窒素が多い培地におけるアンモニア態窒素などのカチオンの吸収能力はコムギほど高くないため、根圏pHは常に上昇すると解析した。検定した植物の多くはコムギと同じタイプであること、マメ科植物の根圏pHは低いこと、鉄欠乏やリン酸欠乏によって根圏は酸性化されること、難溶性のリン酸塩に遭遇すると根圏pHは低下することを明らかにした。従来、根色などを「定性的」に評価して、根の健全性を判断してきたが、画像処理を用いることによって[定性的」な判断を「定量化」することができる。画像には多くの情報が含まれるので、画像処理法は現場での土壌・作物の栄養診断技術への活用が期待される。
著者
平田 好則 西山 宏昭 宮坂 史和
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,これまで我々が取り組んできた,電界放出およびそれに続くマイクロプラズマ生成による材料加工プロセス(マイクロ熱加工)の更なる高度化を目指して,高い構造形成自由度を有するフェムト秒レーザ光造形法を駆使することで,マイクロ熱加工用素子の開発を行った.以下に得られた知見を示す.1. フェムト秒レーザによるレジストパターニングフェムト秒レーザ誘起非線形光吸収とエッチングプロセスを複合化することで,従来の半導体プロセスでは困難であった,立体基板上への構造形成を実現した.2. カーボンナノチューブを先端部に位置選択合成した針状微細電極電界放出特性に優れたカーボンナノチューブを前面に合成した針状微細電極を用い,電極先端部の曲率,被加工試料とのギャップ長,印加電圧をパラメータとして変化させ,金薄膜に電界放出による直接加工を行った.曲率と印加電圧が大きいほど,また,ギャップ長が小さいほど,加工は容易であり,直径2μm程度の円形パターンを形成した.電極先端部1μm程度の領域のみナノチューブを合成した電極では電界放出によってサブミクロンオーダでの直接加工を実現した.3. アレイ型マイクロプラズマ源半導体プロセスによってSiウェハー中に作製したホローカソード型微細電極(直径30μm)をアレイ化し,大気圧アルゴン雰囲気下では安定なグロー放電を得た.微量の酸素を混ぜることで,マイクロプラズマによるレジスト材料のマスクレス加工を実現した.
著者
武田 三男 谷 正彦
出版者
信州大学
雑誌
特定領域研究(B)
巻号頁・発行日
1998

バンドギャップ中に現れる不純物モードはそのQ値が極めて高く、これを利用すればレーザー光に匹敵する単色性が得られることが期待される。本研究では、共通ギャップが存在しかつ不純物の制御が比較的容易な積層型エアーロッド単純立方格子および積層型エアーロッド三角格子に着目した。このフォトニック格子中に光混合型発振器もしくは非線形光学結晶を組み込み、その発振周波数を不純物モードに一致させることにより、高効率の単色性の高い発振が可能である。具体的には、フォトニック結晶を共振器として用い、その中に電磁波発振源を埋め込んだテラヘルツ領域における高効率の単色光発振器を設計試作するものである。本研究は、フォトニック結晶中において電磁波の群速度異常により非線形光学効果や光伝導スイッチ素子における光-電磁波エネルギー変換効率が増強することに着目し、テラヘルツ帯の高効率発振機器を開発するものである。本研究は主に、(1)テラヘルツ時間領域分光法によるフォトニック結晶中の電磁波分散関係の決定、(2)フェムト秒レーザーパルス光によるテラヘルツパルス電磁波の発生、および、(3)CWレーザー光による差周波光混合テラヘルツCW電磁波の発生実験の研究で構成されている。得られた主な研究成果は、(1)テラヘルツ時間領域分光による電磁波分散関係の決定及び局在モードの確認、(2)非線形光学効果によるテラヘルツパルス電磁波発生による不純物モードの励起、(3)連続波差周波光混合によるフォトニック結晶共振器中の不純物モードの励起と増強効果の確認、(4)テラヘルツ領域ダイヤモンド格子フォトニック結晶の作製と評価、(5)二次元エアーロッド格子中の線欠陥モードの波数ベクトル依存性とその磁場強度空間の解析、(6)マイクロ波帯フォトニック結晶(周期性マイクロストリップライン)の作製と評価、(7)単純立方格子における不純物モードの理論解析(FDTD法)である。
著者
木戸 博 LE Quang Trong LE QUANG Trong
出版者
徳島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

インフルエンザ脳症は我が国の小児で発症頻度が高く、急速な脳浮腫を伴って高い致死性と重症な後遺症を残す事から、大きな社会的問題になっている。しかしなぜ日本人に多いのか、なぜ小児に多いのか、など基本的疑問に対する解答はいまだ明らかにされておらず、発症感受性因子、発症機序、治療法の解明が望まれている。さらにインフルエンザ脳症の前駆症状として痙攣、異常行動の問題も解決しなければならない。このような背景の基に、モデル動物を使ったインフルエンザ感染による脳浮腫の発症機序の解析を進めてきた。具体的には、ミトコンドリアの脂肪酸代謝酵素の障害を誘発したり、カルニチンや脂肪酸トランスポーターを欠失したモデル動物では、インフルエンザ感染を契機にミトコンドリアでのATP産生が低下すると、脳の血管内皮細胞と神経細胞のトリプシンが異常に増加して、血液-脳関門を形成するタイトジャンクションの崩壊と、激しい脳浮腫を導くことを明らかにした。これらの事実から、さらにインフルエンザ感染で誘導されるトリプシンの誘導の抑制剤を検討した。その結果、脳のトリプシンには3種報告されているが、これらの転写調節部位にはAP-1,NF-κB結合部位がある事から、これらの転写阻害剤を検討したところ、いずれの転写阻害剤もインフルエンザ感染で誘導されるトリプシンの転写を抑制している事、トリプシンの誘導抑制により生存率の著しい改善が明確になった。
著者
高岡 昌輝 大下 和徹 朱 芬芬
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

セメント産業の焼却残渣受入れ容量および受入れ基準に注目し、焼却残渣をセメント原料として用いることを想定した省エネルギー・省コストな廃棄物処理の技術的システムの開発を試みた。排ガス処理における薬剤をナトリウム系に変更することで飛灰の洗浄およびその後の焼成において塩素が容易に除去でき、飛灰量および最終残渣中の塩素量を削減できることおよびナトリウム系薬剤の使用時のダイオキシン類生成抑制メカニズムを明らかにした。
著者
小泉 修一 藤下 加代子 柴田 圭輔 大久 保聡子
出版者
山梨大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

ミクログリアは傷害神経細胞から漏出するATPをATPセンサー(P2Y12)で感知し、傷害部位へ遊走する。このとき、傷害部位からeat-me signal "UDP"が放出されると、ミクログリアはこれを貪食センサー(P2Y6)で感知し、傷害細胞や断片を貪食により脳内から除去する。ミクログリアは、遊走性から貪食性へミクログリアのATP センサーの変化を伴ったモーダルシフトすることにより、脳内環境の維持を行っていた。
著者
伊東 健
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

これまでの培養細胞での研究より,Nrf2は血管内皮細胞では抗炎症作用を示す一方でマクロファージではスカベンジャーレセプターであるCD36を発現誘導し酸化LDLの貪食を促進すると考えられており,Nrf2の動脈硬化症での役割は不明であった.そこでNrf2の個体レベルにおける動脈硬化症への関与を調べるために,動脈硬化症モデルマウスであるApoE遺伝子欠損マウス(ApoEKO)とNrf2遺伝子欠損マウスをかけ合わせることによりApoE::Nrf2遺伝子二重欠損マウス(DKO)を作成した.このDKOマウスに高脂肪食を12週間投与し,大動脈における動脈硬化巣の形成を脂肪染色法により解析した.ApoEマウスでは動脈硬化巣が形成されるのに対して,DKOマウスでは動脈硬化巣が出来にくいことが明らかになった.このことは動脈硬化症おいては血管内皮細胞のNrf2よりもマクロファージのNrf2が動脈硬化巣の形成に大きく関与していると考えられる.また,マウスマクロファージ培養細胞にNrf2誘導剤であるDEMを処理したところ,酸化LDLを取り込んだマクロファージのアポトーシスを抑制するAIM(apoptosis inhibitor expressed by macrophage)が誘導されることが明らかになった.Nrf2はマクロファージにおいて酸化LDLに対するCD36を介した貪食能だけでなく細胞のアポトーシスを制御することにより動脈硬化巣形成へ関与していることが示唆された.個体レベルでマクロファージにおけるNrf2の役割を明かにするために,DKOマウスにApoEKOマウスの骨髄を移植し,動脈硬化巣形成への影響を現在解析中である.今回の個体レベルでの研究により動脈硬化巣形成に対してはマクロファージにおけるNrf2の役割が重要であることが示された.
著者
横内 陽子 橋本 伸哉 伊藤 伸哉 大木 淳之
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

海洋から大気中に放出されるハロカーボンについてグローバルな大気観測および北西太平洋と南北インド洋における海水中ハロカーボン連続観測によってそれらの分布と変動を明らかにした。また、植物プランクトンの培養実験により、ハロカーボンがクリプト藻やラン藻の培養後期(減少期)に生成されることを示し、さらに、海産性微細藻類の生物学的なヨウ化メチルの生成機構がハライドイオン・チオールメチルトランスフェラーゼ(HTMT)反応に起因することを明らかにすると共に遺伝子の単離にも成功した。
著者
影山 和郎 村山 英晶 大澤 勇 鵜沢 潔 村山 英晶 大澤 勇 鵜沢 潔
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は潮流発電用複合材料製タービンブレードの実現を目標に、高せん断強度を持つ複合材料・構造の研究、複合材料ブレードのスマートストラクチャー化の研究、複合材料ブレードの成形技術の研究をすすめ、スケールモデルの評価試験を実施し、その結果から、日本近海への設置が検討されている潮流発電設備に適用可能な大型・実大タービンブレードを複合材料にて製造するための設計技術、製造技術について検討・評価し、その成立性と技術課題を明らかにした。
著者
山本 晴彦 大槻 恭一 森永 邦久 宮本 久美
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、高糖系温州のマルチ栽培において、連年安定・高品質果実生産を実現するため、樹体・土壌水分環境と樹体光環境を迅速に計測するシステムを開発し、両環境の制御により水分ストレスを抑制して、好適な光環境下で高品質果実生産を実現できる技術を構築することを目的としている。土壌水分および樹体水分の計測法の開発においては、市販されているセンサを用いて炉乾燥法と併用して安価で迅速に計測できるセンサを選定した。半楕円モデルより算出した樹体体積を乗して得られた樹体総葉面積と実測による樹体総葉面積には非常に高い相関(r=0.897)が得られ、PCA(プラント・キャノピー・アナライザー)のほぼ10分の1の十数万円の魚眼レンズ付きデジタルカメラを用いて、樹体総葉面積を高精度かつ非接触・非破壊で推定可能な技術を開発した。また、最新の樹木蒸散流の計測手法であるグラニエ法を用いて、白色マルチ栽培下における土壌水分およびカンキツ樹体の蒸散流計測を試みた結果、蒸散流速度は日射量に追随して推移する傾向を示し、白色シートマルチの降雨遮断による土壌乾燥が、樹体に乾燥ストレスを与えて蒸散流速度を低下させることを明らかにした。さらに、近赤外分光解析装置を用いて、カンキツ個葉の水分状態を非破壊で推定する手法と推定精度について検討した。土壌の水分状態、日射・気温・湿度などの気象条件により変動する葉内水分ポテンシャルの範囲内において、全測定波長1,061個(1300〜2400nm)を使用した場合の8主成分のPLS回帰式は、重相関係数R=0.817、予想標準偏差SEP=0.300MPa、残差の平均値Bias=0.004MPaの高い予測精度が得られた。このことから、近赤外分光法を用いてカンキツ葉の葉内水分ポテンシャルを非破壊的かつ迅速で推定が可能であることが明らかになった。
著者
大槻 純也
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

局在性の強い4f電子が主な物性を担う希土類化合物を近藤格子模型に基づき調べた。動的平均場理論と連続時間量子モンテカルロ法を用いた数値計算により、重い電子の形成に重要な局所相関を正しく取り込んだ計算を行った。それにより、以下の結果を得た。(1)coherent potential approximation (CPA)と呼ばれる近似を動的平均場理論に適用することにより、Ce化合物の重い電子状態におけるフェルミ面に対するLa置換効果を調べた。その結果、フェルミ面に対する置換効果が、外部磁場の大きさによって、定性的に異なることを明らかにした。通常、フェルミ面の測定は磁場下で行われるが、この結果は、置換実験によって重い電子状態を調べる際の指針となる結果である。(2)サイトあたり局在スピンが2つあるf2近藤格子模型を調べた。この模型では、局在スピンの局所的な一重項状態はf2電子配置の結晶場一重項状態を表していると考える。数値計算の結果、特定の伝導電子数において、結晶場一重項と近藤一重項が空間的に交互に配置した基底状態が実現することを見出した。この秩序状態の起源は近藤一重項と結晶場一重項を形成することによるエネルギー利得であり、多くの希土類化合物のようなRKKY相互作用が起源ではない点が新しい。この秩序状態がPrFe4P12で観測されている秩序状態を定性的に説明することを明らかにした。
著者
山口 元樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、1914年に設立されたインドネシアのアラブ人協会「イルシャード」の活動を分析するものである。本研究の目的は、これまで十分に検討されてこなかった協会の指導者・設立者、アフマド・スールカティーの役割に着目することによって、中東のイスラーム改革主義運動の影響を受けた組織という観点からイルシャードを分析することである。平成22年度に実施した研究内容は次のとおりである。まず、史料・文献収集のために、シンガポール(2010年4月10日から13日)とインドネシア(2010年10月2日から年10月21日まで及び2011年2月5日から23日まで)において調査を実施した。シンガポールでは、文献を集めるとともに、4月10日と11日に開催された国際会議、"Rihlah:Arabs in Southeast Asia"にも参加した。インドネシアでは、ジャカルタとボゴールに滞在し、主なものとして、20世紀前半に発行されたアラビア語とインドネシア語(ムラユ語)の新聞・雑誌、イルシャードが発行した冊子類を集めた。次に、研究成果の発表としては、2010年7月30日に東京外国語大学で開催されたlnternational Workshop on the Emergence and Dynamic of Various Islamic Variants in Indonesia (Bilateral Program : Joint Research Project, JSPS-LIPI)における"Transformation of the Identity of Al-Irsyad : From a Hadhrami Organization to an Indonesian Muslim Organization"と、2011年2月28日と3月1日に南山大学で開催されたセミナー「東南アジアのマイノリティ・ムスリム」における「オランダ領東インドにおけるアラブ人協会『イルシャード』の教育活動-アフマド・スールカティーの改革主義思想とその影響-」がある。これらの発表では、オランダ統治期からインドネシア独立後までのイルシャードの変化を、イスラーム改革主義と関連付けて明らかにした。後者の発表内容に基づいた論文を『東洋学報』に提出し、現在審査中である。
著者
若林 緑 MCKENZIE COLIN ROSS 菅 万理 坂田 圭 玉田 桂子 吉田 恵子 梶谷 真也 暮石 渉 関田 静香
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、われわれは家計行動や家計の労働供給行動に関して家計全体ではなく家計のそれぞれの行動を考慮に入れて分析を行った(たとえば親子同居や家族の金銭的、被金銭的援助について分析を行った。われわれは理論モデルを構築しそれに関して日本のマイクロデータを用いて議論した。われわれは家計のメンバーそれぞれの行動について分析することがunitary modelよりも重要であることを発見した。
著者
片山 裕之 赤坂 正秀 仲野 義文
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

鉱石に関する地学的なデータと、古文書等に記載された当時の選鉱や製錬の技術、経済性、社会的な背景などを結び付けて、17~19世紀を対象に、石見銀山での銀生産が環境に及ぼした悪影響が小さかったことの原因の解明を行った。用いられた鉱石が、18世紀はじめまで(福石鉱床)と、18世紀中盤以降(永久鉱床)で異なるが、結果として環境への悪影響が少なかった理由として共通的に言えることは、資源を大事に扱う手の込んだ作業と、江戸幕府統括下での鉱山間の技術交流であり、同時代の他の国と異なる日本のよさが発揮されたことにある。
著者
田代 真人 小田切 孝人 田中 利典 田代 真人
出版者
自治医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

1.ラット気管支上皮のクララ細胞が分泌する新しいセリン型酵素トリプターゼ・クララを分離同定し、これが肺における野生株ウイルスの活性化プロテアーゼの本体であることを証明した。更に、トリプターゼ・クララが気道上皮にのみ分布することが、センダイウイルスの感染増殖が肺に限局することの直接の原因であることを証明した。2.初感染巣である気管支上皮細胞において、ウイルスの出芽極性が尖頂領域に限局していることが気道における局所感染を規定し、一方、側基底領域から出芽することが全身臓器へのウイルスの播種に必要であることを証明した。3.センダイウイルスに感染した上皮性細胞が膜融合を起こして融合巨細胞を形成するためには、F蛋白の開裂活性化に加えて、ウイルス糖蛋白が側基底領域に発現していることが必要条件である。4.側基底領域からも出芽するF1-R株の感染細胞では、微小管などの細胞骨格系の構造と機能が破壊されており、上皮性細胞の持つ細胞極性が破綻していた。更に遺伝子塩基配列の比較から、F1-R株の変異M蛋白がこれに関与していることが強く示唆された。
著者
湯本 浩通 松尾 敬志 尾崎 和美 中西 正 中江 英明
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

高周波・電磁波照射(500-1, 000 kHz, 5-10回, 1秒/回)は、口腔病原菌に対して照射回数依存的な殺菌効果を示した。また高周波・電磁波照射(500 kHz, 5回, 1秒/回)は、骨芽細胞の増殖を促進させ、さらに様々な成長因子の遺伝子発現や蛋白産生も増強させた。以上より、高周波・電磁波照射は、難治性根尖性歯周炎に対する非外科的歯内療法あるいは歯槽骨再生療法に応用できる可能性が示唆された。