著者
西野 寿章
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、戦前のわが国の主に山村に立地した電気利用組合の設立過程や背景を明らかにして、民営主導で展開した戦前の電気事業における、その歴史的意義を検証するものである。本研究では、とくに多くの電気利用組合が開業した府県を中心として調査研究を行った。しかしながら、手懸かりとなる市町村史や府県史等、地域史の中に電気利用組合の記録が残されているケースは少なく、その全容を解明するのは困難であった。とはいえ、いくつかの研究成果を見出すことができた。第一には、電気利用組合設立の動機の多くは、民営電灯会社が配電地域としつつも、家屋が散在しているために配電の対象から除外したことにあった。養蚕が盛んであった大正時代の山村では、石油ランプによる火災がたびたび発生しており、安全で、点灯に手間の掛からない電灯へのニーズが高まっていた。第二には、電気利用組合は1923(大正12)年以降に急増するが、その背景には、それまで電灯会社の育成のためにいわば保護政策をとっていた逓信省が、1922(大正11)年に電気利用組合を認可する方針へと転換したことにあった。第三には、住民出資によって設立された電気利用組合は、地域の内発性に基づいて設立されたことである。戦前の電力供給ネットワークの末端が民主的に形成され、運営されていたことは、今日のエネルギー問題、環境問題の地域の対応を考えるのに示唆的である。しかしながら、戦前の地主小作制度下において、電気利用組合設立に際して、住民にどのような対応があったかについては、資料の制約から明確にすることはできなかった。この点については、引き続き、資料収集と分析を進めることによって明らかにする努力をしたい。
著者
筒井 晴香
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、R・G・ミリカンの哲学を手掛かりとして人間の自然的側面と文化的側面の関係を解明する統一的理論を構築することである。とりわけ、ミリカンの議論のうちでも未だ注目されることの少ない慣習(convention)についての分析に注目してきた。本年度は以下に挙げる二点の課題に取り組んだ。それぞれを基礎的・応用的課題として位置づけることができる。まず、基礎的課題として、慣習論における重要な基礎概念である共通知識(common knowledge)概念の精査を行った。共通知識は慣習論において基礎概念としての役割を果たしているが、この概念自体、必ずしも自明なものではなく、慣習論の文脈とは独立に議論の対象となっている。慣習概念の分析、ないし、共通知識概念を必要としない慣習概念であるミリカンの「自然的慣習(natural convention)」概念の評価に当たっては、共通知識に関する考察を深めることが不可欠である。この考察の成果は海外学会において発表した。また、現在執筆中の博士論文の一部を構成するものとなっている。次に応用的課題として、昨年度より取り組み始めたセックス/ジェンダーの脳神経倫理学に引き続き取り組んだ。セックス/ジェンダーに関連する脳の差異や特徴をめぐる科学研究と社会との関係において生じうる諸問題には、人間の自然的側面と文化的側面の双方が複雑な仕方で関わっている。本年度は性同一性障害という具体的な事例に焦点を当てた考察を行うとともに、脳科学リテラシーに関する話題の一環として国内学会でのワークショップにおける問題提起を行った。また、脳神経倫理学を専門とする国際学会においても発表・議論の場を得た。
著者
兪 文偉 横井 浩史 汪 金芳 村田 淳 横井 浩史 汪 金芳 村田 淳
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は運動機能及び感覚機能代行における機能補助機器とその使用者間の動的協調の実現を目指すものである。研究期間中,機能補助機器を筋電義手に限定し,(a)様々な動的タスクにおける肩・アーム・手複合体の協調特性の計測や動的補助動作を実現するための使用者運動意図の識別方法の開発,(b)使用者への感覚提示方法の提案,(c)(a)と(b)の統合で,動的協調を実現するためのインタフェースの構築を行い,その有効性を検証した.
著者
吉田 茂孝
出版者
高松大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、発達障害などの「特別な教育的ニーズ」のある子どもを含む学習集団を指導するための枠組みを理論と実践から明らかにした。「特別な教育的ニーズ」のある子どもへの指導は、個別支援が重視され、集団への指導が注目されていない。そのため、わが国とドイツの教育学の理論研究とともに小学校の実践分析から、(1)集団・グループへの指導の意義と指導方法、(2)学級指導と授業指導の両方の視点の重要性、(3)「学習形態の交互転換のある授業」モデルの構造を検討した。
著者
阿部 吉雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究計画では1938年~1951年に上海に存在したユダヤ人難民社会の構成およびその特徴を各種資料の収集分析により解明した。従来はドイツおよびオーストリア出身の難民のメモワールが最大の情報源だったが、本研究計画ではのべ2万人以上の個人に関するデータを調査し、上海のユダヤ人難民社会のより具体的な姿を描き出した。特にリトアニアおよびチェコスロバキアで杉原千畝が発給したビザと上海のユダヤ人難民社会の関連の詳細な調査は過去の例のないものである。
著者
中山 和弘 有森 直子 小松 浩子 藤井 徹也 高山 智子 石川 ひろの 佐居 由美 的場 智子 宇城 令 戸ヶ里 泰典
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

Webの情報に翻弄されず、むしろその情報をより活用できるために、患者・家族・国民のヘルスリテラシーの向上を支援するWebサイト(『健康を決める力』(http://www.healthliteracy.jp/)を作成・公開・評価した。コンテンツは次の6つの内容でできている。1.健康のためには情報に基づく意思決定を、2.「信頼できる情報」とは何か、3.知りたい情報はインターネットで、4.コミュニケーションと意思決定、5.健康を決めるのは専門家から市民へ、6.健康を決めるために市民が出来ること、である。
著者
内山 映子 秋山 美紀 花井 荘太郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ITを活用したコミュニケーション支援ツールの利用が、介護サービス提供者と認知症患者の家族との間のコミュニケーションを増加させ、ひいては家族のストレス軽減に寄与するか、また介護サービス提供者のコミュニケーションに要する手間を従来方式以上に増加させないかを実証により検討した。その結果、コミュニケーションが増加した事例からは、ストレスの軽減に有効な可能性が示された。また日々の業務の中でITツールを利用する際にサービス提供者が要する所要時間は、読み書き含めて1件あたり平均7. 5分で、紙媒体と比べても業務上の過大な負担とはならないことが示された。
著者
梶田 正巳
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

「動きイメージ」の認知的機能を研究することが基本的目的であった。「動きイメージ」は単語の認知処理である記憶実験によって検討した。そのためにカタカナ語をその筆順を示すことで、「動きイメージ」の効果を検討することになった。すなわち、「動きイメージ」をディスプレイに示すソフトウエアを利用して「動きイメージ」を生成することになった。しかしながら、初年度から、参照モデルがないために、以前には予想もしなかったいろいろな問題、テーマに遭遇した。単語刺激であるカタカナ語の筆順は、ストローク間を一定のtime-intervalでコントロールして、「動きイメージ」を生成した。しかし、単語刺激のカタカナを見た被験者は、筆順の「動きイメージ」がやや不自然に見えるという問題が発生したのである。この不自然さが、かえってカタカナ語の認知に大きな影響を及ぼすために、いかに不自然さを縮減することが出発点となった。すなわち、文字の「ストローク」を自然な動きにするために、カタカナ語の各ストロークを異なったタイム・インタバルによって制御することが不可欠になり、基礎的な実証的研究をしなければならなくなった。そこで、カタナカ語を大人に書いてもらい、ストロークごとの「動きの速さ」を反映した「動きイメージ」を作成しなかればならなくなった。厳密には、不可能であるが、新しい基礎研究を実施することになった。すなわち、カタカナ語を書かせて、文字のストローク毎に動きの速さを測定した。多くの被験者のカタカナ語の筆順の動きを集めて、ストロークの速さの概要を把握することにした。ここで明らかになったことは、「自然な筆順の動きイメージ」は、学校の教育過程で習得され、具体的には、文字学習の過程と一体になった実践的研究をすることは不可欠になった。こうした問題意識にかわって、当初と違って大きく深まった。しかしながら、単語の「動きイメージ」は、その認知処理過程に「生成処理」と同じ効果を持つであろうという理論は、関連研究をレヴューすると間違っていないので、理論編を学会誌に発表することにしている。
著者
佐々木 健一
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

研究報告書には、「モダン・ポストモダン」「ポピュラー(民衆的)」「日常性」「美術館」の4概念についての研究を収録する。それぞれについて、概念的定義を与え、歴史的な展開(事実と概念/理論)をたどり、今日的問題点を指摘している。また、「直感的・美的」「感情・情緒・感動」「感性・感受性」についての研究を継続中で、このうち、感情/感性に関する英文の論文を脱稿した。
著者
奥川 光治
出版者
富山県立大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

多環芳香族炭化水素(PAHs)の環境中における動態を評価した.そのため,降水と乾性降下物,土壌,底質・上層水・生物に関する調査を実施した.降水と乾性降下物に関する詳細調査は1年半にわたり富山県中央部の都市近郊地域で実施した.降水は各月1〜4回採取し,PAHsの濃度,組成,懸濁態と溶存態への分配,降下負荷量について,また,降水の変異原性について解析した.乾性降下物は1〜2ヶ月に1回の頻度で採取し,乾性降下物によるPAHsの降下負荷量と組成について解析した.土壌に関する調査は3つの地域,すなわち,富山県新湊市,富山県上新川郡大沢野町,さらに,富山県と石川県の県境に位置する医王山系において実施した.土壌中のPAHs含量と組成が,市街地や幹線道路からの距離,有機物量などの要因に対応して,どのような分布特性を示すか解析した.底質,上層水,生物に関する調査は富山県中央部を流下する下条川とその源流域である射水丘陵に分布する貯水池,溜池で実施した底質および上層水,生物に含まれるPAHsの分布特性を解析した.水環境におけるPAHsの分布についてまとめると,降水の懸濁態ではPAHs含量は10^4ng/g,溶存態では10^<-2〜-1>ng/g,乾性降下物では10^<4〜5>ng/gの範囲を示した.土壌と底質では10^<2〜3>ng/gオーダーであった.貯水池・溜池上層水の懸濁態のPAHs含量は10^<3〜4>ng/g,植物プランクトンでは10^<3〜4>ng/gのオーダー,溶存態PAHsは10^<-3〜-2>ng/gであった.
著者
永原 陽子 鈴木 茂 舩田クラーセン さやか 清水 正義 平野 千果子 中野 聡 浜 忠雄
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、「植民地責任」という従来の歴史学になかった概念を試論的に提示し、脱植民地化研究におけるその可能性を探った。「植民地責任」論は、かつて植民地支配を受けた地域の人々から近年になって出されている、植民地支配にかかわって生じた大規模暴力に対する謝罪や補償への要求等の動きを、歴史学の問題として受け止めたものである。そこでは、植民地体制下、あるいは植民地解放戦争などの中でおこった大量虐殺等の大規模暴力が、「戦争責任」論において深化・発展させられてきた「人道に対する罪」として扱われている。そのような趣旨の訴訟等を比較検討した結果、植民地支配の歴史をめぐって、主体に解消されない、「個人」や「民族」主体、その他様々なアクターが形勢してきた新たな歴史認識を見て取ることができた。植民地主義の歴史にかんするこうした新たな歴史認識は、植民地支配の直接の前史としての奴隷貿易・奴隷制にも及ぶものである。こうした歴史認識・歴史意識の変化は、政治的独立とは別の意味での「脱植民地化」現象ととらえることができる。このことから、本研究では、「植民地責任」論を「脱植民地化」研究を主体論的にとらえるための方法と位置づけた。植民地体制下の大規模暴力の少なくない部分は、「人道に対する罪」に代表される、「戦争責任」論の論理によってとらえることが可能である。しかし、そのような法的議論が対象とすることのできない歴史的現象、また「罪」の指標には該当しない、日常化した植民地体制の問題も、植民地支配を経験した人々の生にとってはきわめて重要なことであり、本研究は、「平時」と「戦時」の連続性の中において大規模暴力を理解し、それを通じて、脱植民地化を16世紀以降の長い世界史の中でとらえ直すための方法として「植民地責任」論を提示し、その有効性を確認した。
著者
村中 隆弘
出版者
電気通信大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、空間反転対称性の欠如した物質をキーワードとして、p電子系、f電子系化合物を対象とした新規超伝導物質開発を行った。今年度はこれらの中でp電子系化合物を中心として研究を行ってきた。・結晶構造中にCダイマー、Cトリマーという特徴的な共有結合性ネットワークを有するS3C4に対し、CサイトへのGe置換を行うことによって、Tc=7-8Kの超伝導が発現することを見出した。・擬AlB2型構造を有する新規三元素系化合物Ba(TM,Si)2 (TM=Cu, Ag, Au, Ni, Pd, Pt)の合成に成功し、これらがTc~3Kの新規超伝導体であることを発見した。また、TMの濃度の上昇に伴ってTcが減少する振る舞いを見出した。・Siによる八面体構造を有するZrFe4Si2型構造に着目したところ、YRe4Si2 (Tc=3.2K), LuRe4Si2 (Tc=3K)の発見に至った。この系では、希土類元素のイオン半径の大きさにTcが比例する振る舞いが示唆され、YサイトをLaに置換した系においてTcが上昇する振る舞いを観測した。・Sbによる四面体配位構造を有するCaBe2Ge2型構造に着目したところ、SrPt2Sb2(Tc=2.1K)の発見に至った。SrPt2Sb2は、正イオンのPtが中心に位置する(正構造の)PtSb層と、負イオンのSbが中心に位置する(逆構造の)PtSb層が交互に積層している。逆構造のPtSb層がドナー層、正構造のPtSb層がアクセプタ層となり、ドナー層からアクセプタ層への電荷移動が生じる可能背を示唆する結果を得た。また、電気抵抗の温度変化や構造解析の結果から、構造相転移の存在を明らかにした。
著者
林 壮一
出版者
立教新座中学校・高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は次の2点である。(1)安価な可搬型ノートパソコンであるNetBookとサーバー用ノートパソコンを無線LANで接続してネットワーク(モバイルラーニングシステムMobileLearningSystem)を構築し,(2)中学校・高等学校の理科の実験・授業の中でパソコンを活用した授業(実験群)とそうでない場合(統制群)とで学習効果を比較し,デジタル教材の有効性を検証することである。(1)については,サーバーパソコンの設定,アンテナの設定など,ネットワーク構築のために必要とされる基礎知識は少なくなく,サーバーの構築は容易ではなかった。しかし,外部に接続されていないネットワークは,授業管理/教場管理をする上では非常に有効であった。ただし,OSに標準搭載されるゲーム類などの削除も必要であり,その一方でパソコンに詳しい生徒(中学生)の悪戯防止についてはさらに一考が必要であった。今後,更にコンピュータを学校の授業に導入する場合には,OS標準のゲーム,画面の設定など生徒が容易に変更できないシステムが必要であると思われる。(2)については,中学生でも高校生でもデジタル教材を利用することによって,教科書に記述されていないより発展的な内容に気づかせたり,学習の質を向上させたりするのに有効であることが確認できた。しかしその一方で,デジタル教材を導入した授業が普及しにくい理由の一端も垣間見ることができた。特に,通常の教材を用いた授業展開とデジタル教材を用いた授業展開とが異なる場合には,授業で想定している展開の順番とデジタル教材の中での順番とが異なっていると,授業者はデジタル教材を利用することによって生徒が何をどのように理解したかを把握できなくなり,結果的にデジタルコンテンツが授業者の「授業に対する意図」を妨げてしまうからである,と考えられた。実際に行った授業では,統制群で授業の展開に沿って理解が進むのに対し,実験群では授業の展開に沿わない形で理解が進んでいくことが確認された。しかし,知識の定着を両群間で比較(大地のつくり,運動の法則,音の性質,静電気,等の4つの単元)したが,どの単元でも有意な差は見られなかった。以上のことから,教材が比較的小さな単元ごとにまとまっているデジタル教材が使いやすいことや,サーバーやパソコン内にコンテンツがあれば,インターネットとの接続は必須ではないことなどが確認できた。今後は,選択授業や探求学習などの発展的な学習で,どのようにデジタル教材を利活用することが学習者の意欲を高めることになるのか,また,どのようなICT機器を学習のどの場面でどのように活用することが学習者の意欲や知識の定着に有効なのか等,調べていく予定である。
著者
白土 博樹 本間 さと 玉木 長良 久下 裕司 伊達 広行 鬼柳 善明 畠山 昌則 金子 純一 水田 正弘 犬伏 正幸 但野 茂 田村 守 早川 和重 松永 尚文 石川 正純 青山 英史 作原 祐介 鬼丸 力也 阿保 大介 笈田 将皇 神島 保 寺江 聡 工藤 與亮 小野寺 祐也 尾松 徳彦 清水 伸一 西村 孝司 鈴木 隆介 ジェラード ベングア
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

いままでの先端放射線医療に欠けていた医療機器と患者のinteractionを取り入れた放射線治療を可能にする。臓器の動き・腫瘍の照射による縮小・免疫反応などは、線量と時間に関して非線形であり、システムとしての癌・臓器の反応という概念を加えることが必要であることが示唆された。生体の相互作用を追求していく過程で、動体追跡技術は先端医療のみならず、基礎生命科学でも重要な役割を果たすことがわかった。
著者
伊藤 詔子
出版者
松山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アメリカ環境文学のグローバルな影響力を自然表象の変遷のなかで検討し、風景構築と人種的無意識の関係を、主としてソロー、ポーなど19世紀男性作家に探った。また20世紀後半と21世紀、環境文学のもっとも重要なテーマのひとつとなってきた汚染というテーマが、地域の歴史とどのような関係にあり、またどのような身体表象を伴っているかを、ソロー、ポーの影響を受けた現代女性環境文学作家数名を中心に考察した。研究成果は、現代英語環境文学103作(映画や音楽も含む)を、汚染、自然表象、アクティヴィズムと環境正義など10のテーマに分類し、作家概説、作品紹介と文献解題による辞書兼教科書を、監修共編著として出版し、その他共著3冊と、国際学会での発表2回を含む7回の口頭発表、および論文数編に結実した。
著者
宇佐美 幸彦 佐藤 裕子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ベルリンの大衆と芸術について、その具体的な例として、ハインリッヒ・ツィレおよびビルダーボーゲンという大衆的芸術活動の特徴をまとめた。ツィレが生涯一貫して風刺画のテーマとして描き続けたのは、彼が「第5階級」と呼ぶ社会の底辺で生きる人々の姿である。ビルダーボーゲンに関しては、グスタフ・キューン社の出版物を中心にその特徴の推移を検討した。この絵物語が20世紀に発展する漫画の先史となっていることは、大衆的芸術研究にとっては重要である。
著者
大野 誠寛 村田 匡輝
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、講演や解説などに対して読みやすい字幕をリアルタイムに生成するため、その要素技術として、次の3つの話し言葉処理手法、(1)節の始境界検出に基づいて高精度化した、話し言葉の漸進的係り受け解析手法、(2)話し言葉を読みやすいテキストにするための構文構造に基づく話し言葉の整形手法(主に、読点挿入手法)、(3)字幕テキストを読みやすく表示するための構文構造に基づく改行挿入手法、をそれぞれ開発した。
著者
本江 昭夫 平田 昌弘 稲村 哲也
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

中国の半乾燥草原では、砂漠化が進行しており、特にヤギによる過放牧が砂漠化の主要な原因である。ヤギがおもに飼育されているところは、開発の歴史が古く、人口も多いので丘陵地帯の斜面の大半は畑になっていた。ヤギが放牧できる草原は、ほぼ垂直に切り立っている斜面だけであった。逆に、開発の歴史が浅く、人口も少ないところでは、丘陵地帯の緩やかな斜面の多くは草原となっており、そこでは主にヒツジが放牧されていた。
著者
波平 昌一
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

哺乳類の脳の神経細胞(ニューロン)におけるDNA メチル化、及び、DNMT1 の役割を解明することを目的とし、研究を行った。その結果、DNMT1 が発達期において神経突起の伸長に関与すること明らかにした。また、ニューロン特異的なDNMT1 の欠損が、マウスの不安様行動を誘発させることがわかった。これらの結果は、非分裂生のニューロンにおいてもDNMT1 がその機能を発揮し、ニューロンの発達と活動を制御していることを示している。
著者
梨田 智子 今井 あかね 吉江 紀夫 下村 浩巳 羽下 麻衣子 佐藤 律子
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

1.マウス耳下腺において,エズリンがアクアポリン5と共存することを明らかにした。糖尿病NODマウス耳下腺では,これらは共に局在性が変化した。2. 耳下腺ホモジネートから等電点の異なる3つのアクアポリン5を検出した。コントロールマウスではpI 6.0付近のものが主であったが,疾患マウスではpI 8.8付近のものが主であった。すなわち,糖尿病NODマウスではアクアポリン5のリン酸化レベルが低いことがわかった。