著者
井廻 道夫 金子 隆志 森山 貴志 安藤 量基
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

HLA B44を有する慢性C型肝炎患者の検討で,HCVコア抗原アミノ酸残基88-96を抗原エピトープとするHLA B44拘束性CTL応答が認められる症例では末梢血HCV RNA量が低値であり,CTLがHCVの増殖に対して抑制的に作用していることを示唆する結果が得られた.また,同一患者において異なった抗原エピトープを認識する2種類以上のCTLが存在することも明らかになった.CTL応答が認められるにも関わらずHCVが存在することは,HCV感染においてはCTL応答が不十分であることが考えられる.抗原エピトープの変異が認められたのは27例中3例と多くはなかったが,その3例のHCVコア抗原アミノ酸残基88-96のアミノ酸配列のペプチドを作製し,HCV特異的CTLに認識されるか,あるいはCTLを効率良く誘導できるかを検討したところ2例では変異エピトープは野生型エピトープと同様に認識されるものの,CTL誘導能は低いことが判明した.他の1例ではむしろ変異エピトープの方が抗原性が強いという結果が得られた.このなかのエピトープの一つを用いて,変異ウイルスが野生型ウイルスと混在した場合にどのような影響がCTL応答に生じるかを検討したところ変異ウイルスは野生型ウイルスと混在した場合には,CTLのウイルス感染細胞障害が抑制されるとともに,変異ウイルスを認識するCTLの増殖も抑制されることが明らかになった.HCVコア抗原アミノ酸残基88-96をHLAB44拘束性に認識するCTLクローンを用いた検討より,C型肝炎においてはCTLはHCV感染細胞を認識しパーフォリン,Fasリガンド,TNFにより認識した細胞を障害すると共に,抗原を認識し活性化したCTLは炎症などにより感受性を獲得した肝細胞をFasリガンド,TNFにより障害し,肝炎の拡大に関与していることが明らかになった.
著者
盛 英三
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

認知症と糖尿病も加齢とともに増加し、糖尿病による脳微小循環障害は認知症を増悪させる可能性が高い。一方、血糖値が下がりすぎると脳神経細胞死を誘発する可能性もある。ラット脳循環障害モデルとして昨年度に作成したストレプトゾトシン投与等によりI型糖尿病モデルに引き続き、本年度はより臨床的な頻度の高いII型糖尿病モデル(OLETFラット)を導入し、LETOラットを対照群として脳微小循環造影所見を比較した。放射光微小血管造影検査は兵庫県佐用町の放射光実験施設Spring 8の共用実験として脳、腎臓、下肢等の微小血管造影を行った。空間解像度5-10μmの血管撮影装置により、細動脈レベル(50-200μm)の血流制御機能の定量的評価を行った。安静時の撮影後、アセチルコリン(30μg/kg, IA)の投与下で撮影を繰り返した。LETOラット(対照群)では安静時の造影で中大脳動脈から分岐する3-4本の脳穿通枝(血管径50-200μm)を観察することができた。一方、糖尿病ラット(OLETFラット)では観察可能な脳穿通枝数が減少する、同血管径が狭小化する、中大脳動脈自体の血流が途絶するなどの所見が得られた。対照群、糖尿病群のいずれでもアセチルコリンに対する血管反応性は他の臓器の微小血管(心筋、指尖、腎臓)と比べて乏しかった。以上から脳微小循環の糖尿病性血管障害の評価に放射光微小血管造影法が有用であることが確認できた。本方法をアルツハイマー病動物モデルに応用することで認知症と糖尿病の合併の病態生理の検討と最適な治療法の開発が可能となる。
著者
酒井 英樹
出版者
大阪市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

照明光源に含まれるわずかな紫外線で励起され,停電後にりん光を発する蓄光材を使った蓄光式誘導標識の発光輝度を向上させる方法を検討した。その結果,視認性確保のために設置されている夜間照明からの漏れ光などによって,弱いながらも常に(停電直前まで)励起状態を保つことが,夜間停電時の発光輝度を高める方法として有効であり,また,照明に用いる光源としては,色温度の高い蛍光灯が適していることを明らかにした。
著者
塘 茂樹
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

平成22年度は、研究プロジェクトの三年目にあたり、前年度に引き続き、ネヴィル・ケインズの日記のマイクロフィルムのトランスクリプションを継続した。現段階で、すべてのトランスクリプションが完了していないものの、これまでに、ネヴィル・ケインズの主著『形式論理学』初版(1884)出版に至る経緯が明らかとなった。750部印刷された同著は、彼がケンブリッジ大学での講義録をまとめたものであったが、その受講生の少なさから、マクミランは当初、印刷費用の負担を要求した。ところが出版してみると、売れ行きはきわめて良好で、印刷費の負担は事実上消滅すると同時に、第二版出版が1887年に実現する。この改訂に際しては、教え子のWilliam Ernest Johnsonの助力を得た。彼は、ネヴィルの息子、John Maynard Keynes が、キングズ・コレッジに入寮した1902年から、同コレッジのフェローとなり、モラルサイエンスのシジウィック講師として、メイナードに大いに影響を与えることになる。今後、19世紀から20世紀への転換期におけるケインズ経済学形成前史を理解する上で不可欠の知見が蓄積されることとなった。
著者
宮田 等 川崎 健夫 小野 裕明 田村 正明 鈴木 崇民 山口 容史 渡辺 みのり 勝亦 正明 VEQUIZO Reynaldo M. JACOSALEM Editha P.
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

原子炉ではウラン燃料が消費されると共にプルトニウムが生成される。危険なプルトニウムの量をモニターできる原子炉ニュートリノ検出器の開発をGd含有新型プラスチックシンチレータを用いて行った。 Am241/Be線源からのガンマ線,中性子をニュートリノ疑似信号として用い,82kgのプロトタイプ検出器の性能を評価した。得られた実験データを基に,Geant4シミュレーションによって1トンの原子炉モニターの性能について評価した。熱出力3GWの原子炉の燃料交換前後でのプルトニウム量に関して、11日間の測定で6% の燃料(プルトニウム90kg相当)の取り出しを2σの有意度で確認できるという結果を得た。
著者
廣瀬 茂男 古田 勝久 原 辰次 美多 勉 小林 彬 三平 満司 小野 京右 廣瀬 茂男 長松 昭男
出版者
東京工業大学
雑誌
COE形成基礎研究費
巻号頁・発行日
1997

本年度は本研究の最終年度であるため,これまでの研究成果を集大成してロボットの実機を開発・製作し,11月に行われたロボフェスタの会場で広く一般に公開した.この公開は単なる展示ではなく,それぞれのロボットの実演を行いながら解説をした.実演したロボットは以下の通りである.また同時に国際シンポジウムを開催し,国内外の招待講演者を交えてスーパーメカノシステムについての活発な討論を行った.発表件数は基調講演5件,口頭発表27件,ポスター発表80件であった.完全自立型索状能動体ACM-R1 省自由度壁面4足歩行ロボットHyperion空気圧駆動型ヘビ型ロボットSlim SIime Robot 脚車輪型移動ロボットRoller Walker空圧駆動ヘビ型推進巻付ロボットPneumnake 作業型2足歩行ロボット自励ヘビロボット Twin-Frame型作業移動ロボットPara Walker-II完全自立3次元型索状能動体ACM-R3 全身型作業を行う4脚ロボット立体運動ヘビ型ロボットスーパーメカノアナコンダ 地雷撤去用4足歩行ロボットTITAN-IX3次元ヘビ型ロボット サンプルリターンロボット連結型多車輪移動ロボット玄武2号機 群型ロボット衛星連結型多車輪移動ロボット玄武3号機 親子型惑星探査ロボットSMC-Rover(Uni-Rover)瓦礫内探査ヘビロボット蒼龍1号機 3輪ローバーTri-Star II水中ヘビロボットHELIX スーパーメカノコロニー(SMC)実験システムイルカロボット トランポリンロボット超多関節自重補償型アームFloat Arm COEアクロバット・ロボットスーパーメカノボーイ受動2足歩行ロボット 鉄棒ロボットAcrobot自励歩行ロボット 二足歩行型階段昇降ロボットZero Walkerワイヤ駆動型走行ロボットRunbot 脚車輪型階段昇降車両Zero Carrier多自由度跳躍ロボット ワイヤー連結作業ロボットHyper-Tether1脚走行ロボットKENKEN 作業型クローラロボットHELIOS-IV恐竜型二足歩行ロボットTITRUS-III 自己変形ロボットハイハイロボット 全方向車両The Vutonヘビ型ロボットでは自励振動を利用して小さなエネルギーで推進力を得る制御方法を確立した.また,3次元動作を行う実験機を開発し,頭部を持ち上げる動作,鉛直面内の波を伝搬させる推進方法,捻転による転がり動作を実現した.さらに防水型の実験機により,水中で螺旋型体型をとり捻転することで推進する動作を実現した.また,イルカロボットでは宙返り方向転換を実現した.歩行ロボット関係では,自励運動を使った省エネルギー歩行制御,ホッピング,前転と起きあがり運動,恐竜型の2足高速歩行,ハイハイ型歩行などを実現した.また,自在変形を行うロボットでは,4角形や5角形の体型を作って移動する制御法を確立した.群ロボット関係では,親子型のローバーを開発し,多数の子機による親機の移動,探索動作,2台の子機による物資搬送などを実現し,スーパーメカノコロニーの基本的制御方法を確立した.ダイナミクスを応用したロボットでは,トランポリン運動,前方へのジャンプ,前転と起きあがり,鉄棒への飛び付き,大車輪,宙返り降りなどを実現した.
著者
小林 健二 齋藤 真麻理 山下 則子 鈴木 淳 武井 協三 寺島 恒世 大友 一雄 江戸 英雄 恋田 知子 小峯 和明 石川 透 徳田 和夫 福原 敏男 藤原 重雄 高岸 輝 恋田 知子 浅野 秀剛 キャンベル ロバート
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究はニューヨーク公共図書館スペンサーコレクションに所蔵される絵入り本の全容をつかむために、絵入り本解題目録の作成を目指して絵巻・絵本など絵入り写本類の調査研究を実施した。所蔵者の都合により悉皆調査は叶わなかったが、貴重な資料の調査と研究を進めることができ、その成果を『絵が物語る日本―ニューヨーク スペンサー・コレクションを訪ねて』と『アメリカに渡った物語絵―絵巻・屏風・絵本』、その英語版の報告書『Japanese Visual Culture― Performance,Media,and Text』の三冊の論文集にまとめて刊行した。
著者
海道 清信 間野 博
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、人口減少、高齢化に直面している我が国の都市地域における持続可能な都市形態について、都市形態論、都市空間論の視点から明らかにすることを目的としている。(1)我が国および西欧の都市形態論にかかわる理論、研究、論争をコンパクトシティ論も軸に整理・検討した。日本とヨーロッパにおいて、文献、現地調査によって都市再生と都市形態・都市圏計画との関連性を、都市圏計画と政策、複合機能・環境共生型の再生事業、居住地再生などを対象に調査した。(2)国土レベルにおける、知識基盤サービス産業の立地特性と地域空間構造との関連性を、統計解析により明らかにし、いくつかの類似したグループを抽出できた。(3)統計データを用いて、名古屋都市圏の都市空間構造を解析し、中心性、成長性、成熟性などの特徴によって、都市類型化を行った。また、名古屋市の都市空間構造の特性を、人口・家族・住宅などの国勢調査データとパーソントリップ調査データを用いて、小学校区レベルで多変量解析によって類型化を行った。(4)人口減少、高齢化が進む名古屋都市圏の郊外団地の実態を、空き地空き家に着目して調査した。可児市、多治見市の住宅団地(入居開始後20年以上経過した約40地区)を対象に、空き地空き家の所在、利用状況、団地の開発時期、規模、立地条件、住環境水準、人口動向、地価動向を把握・解析した。主要な住宅団地の将来人口予測を行った。さらに、典型的な住宅団地の住民アンケート調査を実施した。広島都市圏においても、典型的な住宅団地の実態調査を行った。(5)以上のような調査研究を元に、人ロ減少と急速な高齢化を迎える我が国における持続可能な都市形態のあり方を総合的に考察・検討した。研究成果は、2007年12月に単著『コンパクトシティの計画とデザイン』として学芸出版社から出版した。
著者
山田 弘文 南出 章幸 竹俣 一也 中村 純生
出版者
金沢工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

グローバル化の進む21世紀において国際的に活躍できる技術者を育成するには、専門知識に加えて、外国人とのプロジェクトを円滑に推進するためのコミュニケーション能力が必要である。そこで、本研究では、学生がWeb上の共同実験施設を外国人とチームを組んで利用し、プロジェクト活動を推進する国際交流型の工学教育を実践できる教育ネットワークを構築することを目的とし、Webブラウザでコントロールできる遠隔操作ロボットシステムの開発を試みた。開発したシステムの有効性を検証するためシステムー式を協力機関に設置した結果、本システムが使えそうであることを明らかにできた。
著者
杉田 米行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

国際関係と福祉国家論の融合を目指す研究を行い、世界情勢の構造的変化が日本の健康保険制度・国民健康保険制度の設立、展開に大きな影響を与えたことがわかった。Yoneyuki Sugita ed., Japan Viewed from Interdisciplinary Perspectives (Lexington Books, forthcoming).Yoneyuki Sugita, "'Fairness' and Japanese Government Subsidies for Sickness Insurances," Japan Studies Review (forthcoming)
著者
野口 和美 穂坂 正彦 木下 裕三
出版者
横浜市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

幼若ラットのセルトリ細胞培養液(SCCM)中に、成熟マウスのライディッヒ細胞を刺激してテストステロン(T)分泌を促進する因子があることを確認し、その生化学的性質の一部を明らかにした。セルトリ細胞は3週齢の幼若ラット精巣よりトリプシンとコラゲナーゼ処理により得、無血清培地で培養した。分子量1万をカットオフ値とする限外濾過にてSCCMを15倍に濃縮した。ライディッヒ細胞は10週齢の成熟マウス精巣より酵素によらず分離した。濃縮したSCCMをライディッヒ細胞浮遊液(最終密度10^6cells/ml)に加えたところ、37℃3時間のインクベーションにてSCCMの濃度依存性にTの基礎分泌は促進された。上清中のcAMPをRIAにて測定した。その結果、cAMPもTと同様に、添加したSCCMの濃度依存性に上昇した。5×10^7個のライディッヒ細胞をSCCMあるいはLHと34℃3時間インクベーションし、ライディッヒ細胞を分離した。これをホモジナイズして酵素液とした。14C-pregnenolone,14C-progesterone,14C-17α-hydroxyprogesterone,14C-androstenedioneを基質としてそれぞれ3β-HSD,17α-hydroxylase,C17-20 lyase,17β-HSDの酵素活性を測定した。コントロールと比較し、SCCM処理にてはLH処理と同様にこれら酵素活性に変化を認めなかった。すなわちSCCMの作用点はLHと同様にテストステロン生合成の初期段階、すなわちcholesterol→pregnenoloneの過程(ミトコンドリアでのT合成経路)に作用している可能性が考えられた。LHの過剰刺激下ではT分泌がそれ以上に亢進しないこともこれを裏付けるデータと思われる。各種濃度のFSHを4、72、96時間、培養セルトリ細胞に作用させた後新鮮な培養液に交換し、これに分泌された同因子の生理活性を測定して比較検討した。その結果、FSH100mIU/mlを4時間作用させたセルトリ細胞培養液中に有意にライディッヒ細胞刺激因子の生理活性が高かった。その他の条件下ではコントロールと比較していずれも生理活性は高かったが、有意差は認められなかった。
著者
伊達 勲 三好 康之 杉生 憲志 徳永 浩司 小野 成紀 市川 智継 亀田 雅博
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

I型コラーゲンによる足場を形成して、神経幹細胞をカプセル化したところ、カプセル内での幹細胞の生存を確認できた。また、腫瘍形成は認めなかった。カプセル化した神経幹細胞を中大脳動脈閉塞モデルへ移植したところ、行動学的改善を認め、組織学的には、脳梗塞体積の縮小を認めた。また、移植操作に伴う、ドナー細胞への虚血負荷を減らすには、Glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)による前処置が有効であることを確認した。
著者
平瀬 肇 篠原 良章 眞鍋 理一郎
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

脳機能の左右差はヒトではよく知られているが、その分子的基盤は、ほとんど分かっていない。また、マウスを用いた左右差の分子基盤を探る実験でも、神経伝達物質受容体の定量等のボトム・アップ的アプローチによるものが殆どである。さらに、体軸を形成する遺伝子のスクリーニングは数多いが、それらはすべて動物の初期発生期に誘導される分子に限られており、成熟した個体に対する徹底した遺伝子の網羅的スクリーニング皆無であった。哺乳類左右脳の遺伝子発現の違いを解明するために、平成21年度に収集した成獣ラット海馬CA3領域サンプルを次世代DNAシークエンサーを利用して遺伝子解析を行った。まず、収集された左右の海馬CA3サンプルより、short RNAライブラリを調製した。ライブラリ調整には理化学研究所オミックス基盤領域(鶴見)で開発されたLNAを用いてアダプターダイマーを除去する最新式のプロトコルを採用した。その結果、1サンプルあたり、約1000万タグ、左右合計6サンプルのshort RNAのシークエンシングに成功した。シークエンスされたshort RNAの中、約9割がmiRBase15に登録されているmicro RNAであった。micmoRNAの発現で際立った左右差が認められるものは殆ど無かった。また残る1割においては、バイオインフォマティック的手法により新規microRNA解析を行ったところ十数種類の新規microRNA候補遺伝子が見付かった。新規microRNA候補遺伝子の中から発現(タグ数)が高い2つの遺伝子の発現をin situ hybridization法を用いて確認した。新規microRNA候補遺伝子でも左右発現差が顕著な物は皆無であった。
著者
菊池 良和
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

これまでの研究(Kikuchi et al., NeuroImage, 2011)では、吃音者において、左聴覚野の聴覚ゲーティング機能の障害、右聴覚野の周波数配列の拡大、そして右聴覚野の灰白質量の増大を発見した。2011年度は、先行研究のデータから、別の解析方法を試みた。周波数配列に使った純音250Hz,1000Hz,4000Hzを聴覚閾値上30dBの音圧で片耳刺激した左右の聴覚野の反応を、位相同期という指標で再検討した。位相同期は0から1の範囲の値で示される。位相同期は、1つのチャンネルが刺激とどの程度同期したかが分かるPLF(phase locldng factor)と、2つの離れたチャンネル同士がどの程度位相同期したかが分かるPKV(phase locking value)という2つの方法で検討した。まず解析には、MEGデータをwindowsパソコンのmatlabで動かすようにデータ変換をする必要がある。それにはFIF accessというソフトを使用した。その後、時間-周波数解析には、ウェーブレット解析を用いて、PLFとPLVを計算するプログラミングをmatlab上で行った。結果としては、吃音者の右聴覚野のPLFが高まり、吃音者の左右聴覚野のPLVも高まっていることを発見した。この発見をSociety for Neuroscienceで発表し、受賞した。PLFの結果は、これまで機能的MRIの研究で、発話時に右聴覚野が過活動という報告が見られたが、基礎的な聴覚刺激においても、吃音者は右聴覚野が過活動となっていることが確かめられた。また、左右聴覚野のPLVも高まっているということは、左半球の活動が、右半球で代償されていることを裏付ける結果となり、今後の吃音研究において、基礎となる研究結果を得られた。
著者
中村 亮一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

本年度は昨年に引き続き、医療用メカトロニクスシステムを中心とする外科手術支援システムに必要不可欠なシステム構成要素である術中情報獲得(モニタリング)システム及び術中戦略支援(ナビゲーション)システムといったソフトウエアの研究開発を行った。今年度は対象とする術式を腹部領域(主として肝・腎)でのMR誘導下冷凍治療(Cryotherapy)に絞り、この術式を支援するモニタリングおよび及び治療戦略支援システムの構築を行った。今年度のシステム開発においては、システムを構成する大きな要素として次の3つの要素技術を開発した。1.術中に逐次撮像されるMRI画像から術中の氷球形状を三次元的かつ定量的に自動抽出するオートセグメンテーション法2.1.により得られた定量的な氷球形状の経時的変化からオプティカルフロー法を用いて氷球成長速度を推定し、この速度情報を利用して近未来の氷球形状を予測する治療効果予測法3.1.、2.により得られたリアルタイム/将来の氷球情報を基に、治療の進捗・安全性等の評価指標を医師に提示する治療モニタリング法さらにこれらの要素技術を組み合わせ、3次元画像表示ソフトウエアとユーザインタフェースをあわせたMR誘導下冷凍治療支援システムの構築を行った。5例の動物実験と数例の臨床データを用いたオフラインでの実験の結果、本システムで提示されるリアルタイム/近未来の表球データは医師の作成した氷球データとの比較の結果高い精度を持ち、またMR画像取得/計算/描画に要する時間も2秒程度と、精度・リアルタイム性共に高い能力を有し、将来的な臨床への応用が可能であると考えられる。本年度開発したモニタリング・ナビゲーションシステムと、初年度に開発した能動鉗子システムを組み合わせることにより、低侵襲手術を実現する総合的外科支援メカトロニクスシステムの臨床応用が可能となると考えられる。
著者
安藤 岳洋
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、主にレーザ蒸散システムの細経化を行った。これまでの研究では、ガルバノスキャナを用いたレーザ走査型のレーザ蒸散システムを開発してきたが、デバイスの形状が箱型だったため、摘出後にできる脳の空間に挿入して使用することは不可能であった。これを解決するために、内視鏡状のデバイスの開発を目指した。本研究では、焼灼用レーザと励起用レーザおよび蛍光取得の光路を同軸にし、細経形状の先端部から側方に光を照射するシステムを開発した。開発した装置は、蛍光計測部、焼灼用レーザ装置、走査機構部、レーザ切り替え部、細径部および制御用PCで構成されている。励起用のレーザ、焼灼用のレーザ、分光器には、前年度で使用したものと同じものを使用している。本研究では405nm~2.97μmという広い範囲の光を使用するため、既存のレンズを用いることが出来ない。そこで、蛍光計測スポットおよび焼灼スポット径を可能な限り小さくするためのレンズ設計を行った。具体的には、2つのレーザ(波長405nmと2.94μm)はコリメートレンズにより並行光として対物レンズに入射するとし、2枚のレンズの曲率半径・厚み・材質の合計8つをパラメータとして、それぞれの光の間の収差を小さくする最適化を行った。その結果、サファイヤおよびフッ化カルシウムの2枚のレンズの構成となった。焼灼点の走査は、回転および直動機構によって行う。中空シャフトのステッピングモータにより、鏡筒周りの回転を行うことで、焼灼点を円周状に走査が可能となる。また、直動ステージにより、鏡筒軸方向の走査が可能となる。これらを組み合わせることにより、円筒状の空間の内面を走査することが可能である。いくつかの評価実験を行い、脳腫瘍にPpIXが集積した状態を模したファントムを用いた実験により、局所的なPpIX蛍光スペクトル計測が可能であることを、ブタ摘出脳を用いた実験により、脳組織の焼灼が可能であることを確認した。レーザ合焦時の蛍光スペクトル計測スポット径は、直径1.6mm程度であることが示された。
著者
藤嶋 昭 中田 一弥
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

主な成果は下記のとおりである。・まず、エレクトロスピニング法を行うための出発原料の選択を行った。チタン源と高分子の組み合わせと、それらの濃度比の最適化を行った。さらにチューブの中に充填される流動パラフィンの粘度の最適化も図った。・作製した最高の光触媒活性をもつナノチューブをネットワーク化するために、出発原料にPDMSを添加し、ファイバーを作製した。・抗菌・殺菌試験を実施した。ナノチューブ不織布上に大腸菌を付着させて、菌の増加量をモニターした。最終的に既存のTiO2材料と上記の環境浄化能を比較し、優れた環境浄化性能を有していることを明らかにした。
著者
後藤 純雄 高木 敬彦 阪口 雅弘 峯木 茂
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

環境空気浮遊粒子中の真菌類の存在実態を把握するため、粒径別分級採取法、分子マーカーのGC/MS分析法、リアルタイム濃度測定法などについて検討した結果、大学室内及び牛舎内空気で平均粒径1.1μmのステージに多く採取されたこと、室内空気中エルゴステロール濃度が0.067~4.2(平均1.1)ng/m^3となり屋外空気中のそれらとほぼ同等であったこと、レーザー照射蛍光測定装置を用いるとリアルタイム測定が可能であることなどを認めた。
著者
山崎 俊彦 相澤 清晴
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

実写3次元映像の圧縮と処理に関する研究を行った。実写3次元映像は各フレーム独立に生成されることが多く、時間的に連続するフレームにおいても頂点数や結線関係が保存されていない場合が多いため、圧縮が困難であった。そこで、研究代表者が考案したパッチマッチング法に基づき、実写3次元映像の頂点情報、結線情報、色情報を同時に圧縮可能な技術を研究した。具体的な手法について述べる。まず、測地線距離を用いて各フレームの3次元メッシュモデルをほぼ等面積になるようにパッチに分割し、それを圧縮処理の基本単位とした。各パッチの幾何情報、色情報に対してキルヒホッフ行列によるメッシュ周波数解析やベクトル量子化を施すことによりフレーム内圧縮を実現した。さらに、隣接フレーム間でもっとも類似するパッチを探索し、対応パッチからの残渣情報のみを符号化することでフレーム間圧縮を実現した。これにより、フレーム内圧縮で1/8程度、フレーム間圧縮で1/12程度の圧縮率を実現した。
著者
植村 寿子 下茂 徹朗
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

南九州一帯に広く賦存するシラスは反応性に富む火山ガラスが8〜9割含まれ、量的にも豊富で、工業材料として極めて魅力のある研究対象である。しかしこれまで主に建築資材としてだけ利用され、高度な利用がなされていなかった。最近シラスが見直され、SPG(シラスポーラスガラス)等その特性を活かした利用開発がなされつつある。我々はシラス中のSiO_2(75%)、Al_2O_3(13%)に注目して、これを原料に安価なゼオライトの合成法の研究を行った。しかしシラスには約3%のFe_2O_3が含まれており、これが製品に混入、着色の原因になる事が分かった。シラスの脱鉄法が種々試みられているが、我々は次の系統的に各種のゼオライトを合成する方法でこの問題を解決した。まずシラス(100g)にNaOHとH_2Oの添加だけでNa-P型ゼオライト(60g、Fe_2O_3=1〜2.7%)を合成した。これは黄色を呈するが、高いイオン交換能を有するので廃液処理等着色が不利にならない分野での用途を考える。次に脱鉄されたケイ酸分に富むこの濾液(P型濾液1lが得られる)から各種の高純度ゼオライトを系統的に合成し、それぞれ適した分野での用途に供するものである。例えばP型濾液1lに120gのNaAlO_2を添加して6時間反応させる(100℃)と190gの高純度A型が得られる。同じくP型は5gのNaAlO_2を添加して5g得られる。X型は生成領域が狭く単一相としては合成し難くかった^<1)>。またP型濾液1lに各種の酸を添加して塩を含むゲル状沈澱物(Aゲル80g)を得た。これは水洗すると35g(Bゲル)に減る。Aゲルからは13〜50g、Bゲルからは25gのモルデナイトが得られる^<2)>。この2段階合成法では多種の製品が得られるので、単品コストが緩和され、また広範囲な用途開発が望めるので有利な合成法と思われる。1.植村、四元、染川、隈元、日本化学会誌、3月号掲載決定(1989)2.植村、村田、染川、日本化学会58春季年会発表予定1989年4月