著者
杉尾 哲 神田 猛 西脇 亜也 森田 哲夫 村上 啓介 伊藤 哲
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

温暖多雨の亜熱帯性気候下にある宮崎県の南半分に位置する宮崎県内の5河川と沖縄県内の5河川を調査対象河川として、工改変による河川環境への影響を定量的に評価し、さらに河川環境の復元を予測する手法について検討した。このうち、宮崎県県最南端に位置する千野川においては治水と環境保全を調和させる川づくりが実施された。そこで本研究では、生態系の生息環境が整った区間における生態系の相互作用の検討と、河川改修が進んだ区間での河川改修による河川環境へのインパクトに対する生態系のレスポンスについての継続的なモニタリングを実施して物理環境と生態環境の両面から定量的に計測し、これらの結果から河川環境システムを総合的に評価することとした。その結果、千野川の旧河道の土壌環境は、高位・低位法面と河床堆積面の中間的な性質を保持していたこと、新河道においては、植生は旧河道の種組成を復元していたが次第に外来種が繁茂する傾向にあること、鳥類は9目23科52種が観察されて千野川が水鳥・水辺の鳥にとって良好な採餌場になりつつあること、小型哺乳類はイタチが捕食の場として利用しうる段階まで復元したこと、ホタルの飛翔はこれまでとほぼ同じ数を保持できていて、ホタルは新河道で生活サイクルを完結させていること、などが確認された。しかし、他の河川を加えて千野川の河川環境を総合的に評価した結果、千野川の新河道は、化学的環境に特徴を持ち、日常的な人間活動によって十分に影響を受けた箇所に分類された。また物理的環境は、深掘れが発生したことによって比較的に良くない状態であることなどが判明した。このことから、河川改修による河川環境へのインパクトを受けた河川での環境の形成には、モニタリングを継続して物理的環境を改善するなどのフォローアップが必要であることが分かった。
著者
千葉 忠成
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

MALT1はリンパ球系において重要な役割をしているだけでなく、スキャフォールディング機能でNF-kBシグナル系に関与していることがわかっている。我々は口腔扁平上皮癌におけるMALT1の役割について研究してきた。最初の研究では、MALT1発現細胞株においてケラチン8/18とケラチン5/14の発現変動がプロテオミクス解析により、認められた。ケラチン5/14は腫瘍形成のプロセスにおいて重要なマーカーであり、ケラチン5/14の発現の減少は腫瘍形成と相関があると考えられる。
著者
和田 守 小倉 い ずみ 加藤 普章 千葉 眞 大西 直樹 佐々木 弘通 五味 俊樹
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

5年間にわたる共同研究の取りまとめとして『日米における政教分離と「良心の自由」』を公刊した(ミネルヴァ書房、全328頁、2014年3月)。第I部「宗教と政治のあいだ」、第II部「政教分離の展開」、第III部「宗教と政治の現在」の三部構成で、10本の論考を収録している。同書では、政教分離と信教の自由という観点から、日本とアメリカにおける宗教と政治をめぐる諸問題の錯綜した広がりと深みについて、多面的かつ歴史的・構造的に論究しており、現代民主主義の活性化に関する提言としての意義を有している。個々人の尊厳と人格および多様な価値の共生を目指す市民的公共性と國際連帯の方向性を示しえたと思われる。
著者
村田 雄二郎 久保 亨 水羽 信男 川尻 文彦 中村 元哉 小野寺 史郎 竹元 規人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

20世紀の中国史は、ナショナリズムや社会主義に加えて自由主義を受容した歴史でもあった。本研究は、自由主義の視点から、新たな中国近現代史像を提示した。その具体的な成果は『リベラリズムの中国』(有志舎、2011年)である。
著者
西原 博史 戸波 江二 後藤 光男 今関 源成 斎藤 一久
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、学校関係法の体系を構築するにあたって、学校・教師・親などといった教育主体間の権限配分ルールを確立することを急務と考え、その際、子どもの権利を基底に据えた体系化の可能性を模索することを目的としてきた。2年間にわたる研究代表者・研究分担者の共同研究(研究開始前における準備作業と、研究終了後における成果の刊行に向けた共同作業を含む)の結果、当該研究目的はかなりの程度で達成できた。理論的には、学校制度と子どもの権利の関係に関する体系的理解が得られた点が重要な成果と言える。すなわち、公教育の正当化に関し、二つの道筋が区別される。子どもの権利実現の文脈で正当化される場面と、社会の側からの子どもに対する期待を実現するためのものとして一定の社会的・民主的価値との関係で正当化される場合との二つである。この両者の正当化方法は、子どもの権利との関係で異なった位置づけが必要になる。子どもの権利実現のために公教育が正当化される場面では、本人利益に合致しているか否かが正当化根拠の妥当性を判断する基準となる。それに対して、社会的・民主的な価値の実現を目的とする場合には、公教育における強制は子どもの権利に対する制約と捉えられ、目的実現のために必要な制約と判断できるか否かが正当化根拠の妥当性判断の基準となる。それぞれの正当化根拠に関して、国家観・人間観・社会観によって正当化可能範囲に広狭あることが確認されるとともに、日本国憲法が想定する個人主義の社会モデルに基いた場合に、基本的に倫理的働きかけが公教育の射程外と位置づけられることが明らかになった。以上の点は、研究代表者が発表した複数の論文や書籍において展開されている。その上で、民主教育がどの程度で子どもの権利を制約できるのかについては、研究分分担者間でなおも論争が続いている。この間の成果は、戸波・西原編著の書籍に示される。
著者
吉田 道利 泉浦 秀行 清水 康広 沖田 喜一 竹田 洋一 佐藤 文衛 清水 康広 沖田 喜一 竹田 洋一 佐藤 文衛
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡に装着された可視光高分散エシェル分光器用に、望遠鏡カセグレン焦点から光を導く光ファイバー天体導入システムの開発を行った。また、ファイバー集光システムに付随する問題点とその解決策を明らかにした。さらに、巨星周りの惑星探査計画を進め、散開星団に世界ではじめて系外惑星を発見するなど、巨星周りに惑星を新たに8個発見することに成功し、恒星質量・年齢と惑星質量・軌道半径の間に相関関係が存在する兆候を見出した。
著者
土橋 一仁
出版者
大阪府立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.本研究の目的星は高密度ガスが重力収縮することによって造られる。一方、形成されつつある星では、分子流と呼ばれる質量放出現象がしばしば観測される。本研究の目的は、分子流の年齢と、高密度ガスの質量・乱流運動の大きさとの間の関係を観測的に見い出し、両者(分子流と高密度ガス)の間の相互作用についての知見を深めることである。2.観測と結果本研究の対象となる分子流のサンプルは、望遠鏡の角分解能の制約により、太陽系近傍(<1kpc)のものである必要がある。また、均一なデータを取得するために、等しい距離にあるサンプルを見つけなくてはならない。そこで本研究は、散開星団IC5146に付随する暗黒星雲(0.9kpc)において、分子流を伴う若い星(分子流天体)を捜索することから始まった。この捜索により、同分子雲中で新発見4個を含む5個の分子流天体を検出した。さらに、これらの分子流天体に付随していると考えられる高密度ガスを検出するために、一酸化炭素の同位体(C^<18>O)の輝線スペクトル(回転遷移J=1_-0)を用いた観測を行なった。その結果、これらの分子流天体全てに10^3cm^<-3>以上の高密度分子ガスが付随していることが明らかになった。以上一連の観測は、本研究を推進するのに不可欠な分子流天体のサンプルを得るという予備的かつ基礎的な性格を帯びており、その成果は平成5年度、米国の専門誌に発表済みである(Dobashi et al.1993)。これらの基礎観測に基づいて、本研究の目的を達成するための本観測を、野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡を用いて行なった。同望遠鏡の高角分解能を活かして、5つの分子流と、それらに付随する高密度ガスの空間分布を〜0.1pcスケールで描き出した。現在、分子流の年齢と高密度ガスの質量・乱流運動の大きさを算出するためのデータ解析をしており、その結果は平成6年度に公表する予定である。
著者
田村 元秀 林 正彦 周藤 浩士 西川 淳
出版者
国立天文台
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

すばる望遠鏡と高コントラスト観測装置などを用いた観測により、原始惑星系円盤と残骸円盤の観測を行い、その形態の多様性、氷の分布、偏光に基づく塵の性質を初めて空間的に分解し、直接的に明らかにした。若い星の比較的遠方に惑星質量(約10木星質量)に匹敵する伴星天体を発見した。マウナケア山頂群のファイバー干渉計実験(OHANA)にも成功した。また、次世代高コントラスト装置HiCIAOを開発した。
著者
松岡 勝 大野 洋介 戎崎 俊一 清水 裕彦 吉田 篤正 河合 誠之
出版者
理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目指すものは、超広視野光学望遠鏡システムの基礎開発を行うことである。この装置を使った科学的な意義は、短時間で変動する天体・天体現象を連続的にモニター観測をして予測のできない天体現象を捉えることである。この研究で鍵となるのは「広視野望遠鏡」と「画像データの連続短時間読出し」の2点である。このため、本研究では(1)「広視野望遠鏡」ユニットを設計・製作し、(2)市販のCCDを焦点面にセットした試験観測を実行した。5度の視野をもつ望遠鏡は、通常の天文学用としては考えられない大きな視野である。このような広視野の天文観測用望遠鏡が実際実現され得るかどうかが、広視野トランジェント天体監視用望遠鏡システム実現の最初の試験項目であった。この試験観測のため、八ケ岳南麓天文台で試験観測を行った。散開星団M45(すばる)の観測を行い、測光制度0.1の限界等級が12等級であった。アナログ回路のノイズが60e相当であったが、現在は30e相当まで抑える見通しがつき、引き続き試験観測を行っている。CCD読み出し回路は、汎用CCD駆動・読み出しシステムを開発した。これを使って「連続短時間読み出し」に関して鍵となる技術であるTDI(ドリフトスキャン)方式による試験観測を野外で実施し、10秒間、望遠鏡固定の状態で鮮明な星像を捉えることができ、初期の目的が達成された。本研究の最大の目的であった望遠鏡システムの基礎開発は、ほぼ初期の目的を達成した。今後は、引き続いてこの望遠鏡の詳細な特性を試験観測で行う予定である。また、大量にこのような広視野望遠鏡を安価で製作する方法についての検討が必要である。さらに、大量の画像データを速やかに処理するソフトウヱアも将来の問題として残されている。
著者
小倉 勝男 杉谷 光司
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、マウナケア天文台の世界一のシーイングの良さと新たに開発されたグリズム分光器WFGS2の広い写野の強みを活かして、至近距離の分子雲において若い星の候補としてのHα輝線星の探査をほぼ極限の暗さ・弱さまで行うことである。その観測対象としては、申請調書の段階ではL1457をあげたが、その直後にこれは従来考えられてきたほど近距離にはないとする結果が相次いで出されたので、交付申請書の段階で探査対象をL1642に変更した。この分子雲は星形成が確実に起こっているものとしてはL1457に次いで2番目の近さとされてきたものである。観測はハワイ大学2.2m望遠鏡を使用して2005年1月になって行われた。WFGS2の完成の遅れのためである。天候と観測時間の制限により予定していたL1642の天域の約50%しか探査観測ができなかった。残った天域は急きょアルメニアのMagakian博士に依頼して同国の2.6m望遠鏡と同様なグリズム分光器により観測してもらった。どちらの観測においても既知もの以外にはHα輝線星は検出されなかった。したがって残念ながらこの研究課題の主要な目的は達成できなかった。この他に共同研究として、大質量星形成領域とされる2つの領域(W3 MainとNGC 7538)において深い限界等級の近赤外の測光的研究を行ったが、このような領域でもTタウリ型星と思われる低質量星が非常に多数形成されつつある、という興味深い結果が得られ、2編の論文として発表された。この結果をふまえて大質量星形成領域においてTタウリ型等のHα輝線星を検出する探査観測をインドの2m望遠鏡とグリズム分光器を使用して開始し、成果が得られ始めた。別な共同研究として、星形成時の情報を残しているような若い散開星団(NGC654とNGC663)の光学域の測光学的研究にも参加した。
著者
松尾 美惠子 深井 雅海 藤田 英昭 小宮山 敏和
出版者
学習院女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、紀州藩付家老の水野忠央が収集した当史料群の成立過程や伝来経緯を解明しつつ、水野忠央がなぜ幕府史料を収集したのか、その背景を検討したものである。他機関に伝来する幕府史料と比較し、当史料群の固有性を明確にするとともに、水野忠央の政治動向と関連づけて収集目的に迫った。また、研究会を通じ当史料群の中の個別史料を分析・検討し、幕府文書論の構築をめざした。今後、研究成果をまとめ、刊行する予定である。
著者
小田 亮
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

旭川市旭山動物園のシロテテナガザルを対象に、ソングのテンポに対する認知を調べる野外実験を行った。テナガザルのソングはノートと呼ばれる個々の発声が組み合わされて構成されている。昨年度に引き続き、3種類の異なるノート間隔をもったソングを作成し、これらをテナガザルに対して再生した。再生中と再生後の行動をビデオに記録し比較することで、テンポの認知がどのようになされているのか調べた。まず刺激音であるが、伊豆シャボテン公園において飼育されているシロテテナガザルのオスが自然に鳴いたソングを録音し、デジタルファイルに変換した。ノート間の時間間隔をすべて倍にしたものと、半分にしたものを作成した。このようにして作成した通常のソング(S)、ノートは同じだが間隔が倍のもの(D)、そして間隔が半分のもの(H)のそれぞれを、旭山動物園の野外ケージにおいて飼育されているシロテテナガザル4頭(オトナメスとその子供3頭)に対して再生した。再生は馴化を避けるために午前中に1回、午後に1回の1日2回のみとした。反応はデジタルビデオカメラ2台に記録し、動画ファイルに変換した後に動画分析ソフトウエアを用いて分析した。前年度は最年長のオス(長男:5歳)を分析対象としたが、今年度は第二子のオス(次男:3歳)の反応を分析した。ソングを再生中と、再生後同じ時間のあいだの移動時間割合を分析したところ、長男ではHの場合のみ、再生後に移動時間が有意に多くなっていたが、次男ではそのような差がみられなかった。長男と次男でソングへの反応に差が見られた原因としては、年齢が関係している可能性が高い。テナガザルが出自群を出て独立するのは8〜10歳といわれており、歌への反応もこれに伴って高くなると考えられる。5歳の長男は他個体の歌にある程度敏感であると考えられるが、次男はまだ性成熟にも達しておらず、歌への関心が低いと考えられる。
著者
吉田 篤司
出版者
浜松医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

IL-12はTh1細胞やNK細胞にIFN-γ産生を誘導することが知られている。我々はIFN-γがマクロファージにIL-12mRNAの発現を誘導する事を見出し、IFN-γ⇒マクロファージ⇒IL-12⇒Th1細胞⇒IFN-γというPositive regulatory circuit(PRC)が存在するのではないかと考えた。本研究ではこのPRCがどの程度生体防御に関与しているかを明らかにするために、実験動物にはIFN-γレセプターを持たずPRCを形成できないIFN-γレセプターノックアウト(IFN-γ-KOマウス)を用い、そのBCGに対する生体防御能を調べた。しかし、このマウスではIFN-γレセプターを持たないため一酸化窒素(NO)等のIFN-γにより誘導されるもの全てが産生されないのでBCGの増殖抑制を指標にしたのではPRCの重要性を見ることはできない。そこでIFN-γmRNA産生を指標にしてPRCのBCG排除における重要性を調べた。IFN-γ-KOマウス及びコントロールマウスにBCGを経静脈的に感染させ、脾臓に発現するIFN-γ,IL-12及び誘導型NO合成酵素(iNOS)mRNAの量を定量的RT-PCR法で比較したところ、iNOS mRNAの発現は有意に低下していたが、IFN-γmRNA及びIL-12mRNA発現は僅かに低下が認められたのみであった。また、これらマウスより得た脾細胞を試験管内でBCG刺激し、脾細胞に発現するIFN-γ,IL-12及びiNOSmRNAの量を同様に調べたが、結果は同じであった。さらに、これらマウスより得た骨髄マクロファージを試験管内でBCG刺激し、発現するIL-12mRNAの量を定量的RT-PCR法べたがこれにはまったく差がなかった。以上の結果より、コントロールマウスに比べPRCを形成できないIFN-γ-KOマウスではBCG感染によるIFN-γ mRNA及びIL-12mRNA発現は僅かに低下していることが分かったが、これはそれほど有意なものではなく、PRCはBCGに対する生体防御において中心的な働きをするものではないことが明らかになった。
著者
植木 俊哉
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、グローバル化とボーダーレス化が進む現代の国際社会において、国際組織のアカウンタビリティーの確保と向上のために国際法め理論と実務がいかなる貢献をなしうるかについて、国際法協会(ILA:International Law Association)が組織した「国際組織のアカウンタビリティーに関する国際委員会」による国際組織のアカウンタビリティーに関する「勧告的規則・慣行草案」(RRPs:Recommended Rules and Practices)の起草・作成過程への実践的関与や検討を通じて、さまざまな分析と提言を行った。同委員会による勧告的規則・慣行草案は、2004年8月にドイツのベルリンで開催された国際法協会第71回総会において正式にILAの国際文書として採択され、国際組織のアカウンタビリティー確保のための国際的な基準として、世界に向けた提言として具体的に結実した。本研究代表者は、同委員会の日本代表の委員として、RRPs作成過程での議論に積極的に関与を行うと同時に、その成果の分析を行い、論文等の形でこれを公表した。また、その研究成果等を踏まえ、国連本部事務局内での「国連フォーラム」研究会等の場で、国連諸機関に勤務する日本人職員等と意見交換を行い、国際組織の現場におけるアカウンタビリティー向上のための取組み等について実践的な提言を行った。さらに、国際テロリズムとの関係での国連安全保障理事会におけるさまざまな決議採択等の取組みや、21世紀の国際組織の新たな活動の基軸の1つとなる「人間の安全保障」といった概念の展開等の具体的事例との関連で、国際組織の活動のアカウンタビリティーの向上に関する具体的な検討を行い、その研究成果等を公表した。
著者
王 鳳
出版者
島根県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

改革開放以降の中国の社会意識の変化に関わる各種の言説を考察することによって80年代と90年代以降という二つの大きな区切りがあり、人々の意識やその表象に決定的な影響を及ぼすものがそれぞれ「正しさ」の論理と「できる」論理であると結論した。また、社会現実を語る際に用いられる時代的ディスコースの変化は、90年代の「奮闘」(頑張っていること)から2008年前後の「棟梁」(成功そのもの)に移っていくという重心の転移があったのである。
著者
湖中 真哉 伊藤 一頼
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、総合的地域研究の立場から、東アフリカのマー系社会を中心とする牧畜社会をおもな対象として、フィールドワークを実施することにより、これまでほとんど報告例のなかった難民(国内避難民)が国家・国際的な外部からの支援に頼らずに自発的に形成する「地域セーフティ・ネット」の実態を記述・分析した。紛争の結果形成された「群集集落」が相互扶助と安全の拠点となり、地域セーフティ・ネットの役割を果たしていることを解明した。
著者
半田 久志
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,部分問題に分割し,部分問題毎に並行して協調的にルール生成を行う新たな進化計算を提案し,提案手法を知識導出に適用する.部分問題に分割することにより多様性を維持しつつ効率的にルールを探索する.この知識導出に確率モデルを用いた進化計算である分布推定アルゴリズムを適用・拡張した.
著者
澤野 義一 魏 栢良 糟谷 英之
出版者
大阪経済法科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「日本のジュネーブ条約追加議定書の批准と国内法的課題」というテーマで3名の共同研究者が2年にわたり研究調査を行ったが、次の点が課題であることが判明した。まず、ジュネーブ条約追加議定書等の国際人道法(理念)の自治体における実施の不十分さは早急に改善される必要がある。第二に、原子力発電所に関する武力攻撃等からの住民防護対策は、外国においても国防作戦の中で図られ、具体的な対策は明らかにされていないため、国際人道法の責務が厳格に果たされているか疑わしい。第三に、アジア諸国における国際刑事裁判所規程の批准状況の低迷の一因がアメリカの当該裁判所への敵対的対応にあることから、アメリカの今後の対応変化によってアジア諸国の批准状況の低迷に前向きの変化が生ずる可能性がある。
著者
山田 礼子 木村 拓也 井ノ上 憲司 森 利枝 舘 昭 吉田 文 西郡 大 園月 勝博 相原 総一郎 沖 清豪 杉谷 祐美子 田中 正弘 安野 舞子 渡辺 達雄
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究の成果は、(1)KCSS(韓国版大学生調査)を24年に実施し、日韓のデータ結合により分析、(2)日本では、平成25年まで、延べ866大学・短大から約14万人がJFS、JCSSとJJCSSに参加するなど標準的調査が根付いた。(3)24年には中国版CSSが試行され、25年には、上海市で中国版CSSの実施へと進展し日本発の標準的調査のアジアでの展開への基盤が形成されつつある。(4)2014年末までに、14万人のデータを格納し、参加大学が利用できるデータベースを開発、(5)日本のカレッジ・インパクト研究を下記で示す理論モデルにまとめたという5点が挙げられる。