著者
加藤 まり 門間 晶子 山口 知香枝
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20191125077, (Released:2020-05-01)
参考文献数
34

本研究は,知的障害を伴わないASDがある母親が経験している子育てを,母親の視点から明らかにすることを目的とし,研究協力者6名に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果,母親の子育ては,ASDとの診断を受けておらず子どもが乳幼児の頃は【“世間並み”との隔たりにもがき,我が子より自分のことで精一杯】であった。しかし,【自らの診断を揺れながら受け入れ,折り合うことを獲得する】ことで,〈我が子と自分のありのままを尊ぶ〉子育てへと転換した。そして,我が子やASDの人々が世の中に受け入れられるよう【ASDと付き合いながら親子で自分らしく生き,社会に発信しようとする】に至っていた。ASDの母親への子育て支援は,母親のペースや子育ての具体的な見通しを大切にし,自らのユニークさや自分らしい子どもとの関係の結び方に気づけるような関わり方が求められている。
著者
稲葉 肇
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.792-794, 2019-11-05 (Released:2020-05-15)
参考文献数
22

歴史の小径量子力学の観測問題に取り組んだ神父――柳瀬睦男の経歴と業績
著者
伊藤 一成 辻 麻衣子 三宅 剛史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.670-677, 2015 (Released:2018-05-21)
参考文献数
14

現在普及している速醸?や生もと系酒母の原型とされる菩提もとは,速醸もとの技術が全国に普及したのと同時に姿を消したとされている。近年,奈良県において菩提もとの製造メカニズムが解析され,菩提もとを用いた清酒が再現復活している。これと同時期に岡山県内の蔵元において,独自の方法で製造したそやし水を使用するもと造りが確立されていた。本稿では,このそやし水の解析から明らかになったことを解説していただいた。
著者
洪 佶杓 氷 基昌 崔 昶溶 南 賢榮 元 壹載 金 盛珍 朴 鍾吉 蔡 熙永
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.200-203, 2010-03-25 (Released:2012-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

大韓民国全羅南道紅島において,渡り途中のオウチュウ Dicrurus macrocercus がノビタキ Saxicola maura とヤブサメ Urosphena squameiceps を続けて捕食する行動が観察された。これまで報告されている明らかに例外的なオウチュウの鳥類捕食の事例とは異なり,今回の観察は本種が鳥類を選択的に捕食する可能性があることを示唆するものである。利用可能な昆虫類は乏しいが,スズメ目鳥類は豊富な環境に遭遇した場合,このような行動は,渡り途中のオウチュウの高いエネルギー要求を満たす有効な手段となり得るであろう。
著者
Mariko Kawamura Rina Ishihara Kohei Oshiro Masaki Ishida
出版者
The Plankton Society of Japan, The Japanese Association of Benthology
雑誌
Plankton and Benthos Research (ISSN:18808247)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.60-62, 2023-02-28 (Released:2023-03-02)
参考文献数
15

We collected 43 medusae of Aurelia coerulea from Tanabe Bay, Wakayama, Japan, and measured the tubule lengths of 1,613 nematocysts at different growth stages: ephyra, juvenile, subadult, and adult. The median tubule lengths for ephyrae, juveniles, subadults, and adults were 72, 51, 79, and 58 µm, respectively. No nematocysts in ephyrae, juveniles, or subadults exceeded 200 µm in tubule length. In the tentacles of 15 adults, we detected nematocysts with tubule lengths exceeding 200 µm. The average proportion of nematocysts with long tubules was 9.1% in medusae with bell diameters of 110 mm or more, in contrast to only 1.0% in medusae with bell diameters of less than 110 mm. Among the 1,613 nematocysts examined, there were two different tubule groups with modes at 54 µm and 230 µm in length. Nematocysts in the short-tubule group were composed of microbasic euryteles and small isorhizas, whereas the long-tubule group was composed of only microbasic euryteles. These long tubules of microbasic euryteles can potentially penetrate not only large planktonic crustaceans but also human skin. The growth-related and intra-species variation in tubule length could also modify the degree of envenomation in humans.
著者
菊地 デイル万次郎
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.55, 2022 (Released:2022-04-11)
参考文献数
37

バイオメカニクスは生物の形態や運動を力学的に分析する学問である。生物の行動は小さな動きの積み重ねであり、力学的な制約のもとで形成される生物の形態と運動はエネルギー収支を介して適応度にまで影響する。これまでバイオメカニクスは生物の機構を力学的に探求することで、生物の運動における普遍的な原理や機能の発見を遂げてきた。一方で、バイオメカニクスは境界領域であるためか、“孤立した学問”になりやすいことが指摘されている。このような状況を打破するには、生態学の研究テーマにも取り組むことで、より広範な問いに答えていくことが必要であろう。近年は、形態や運動の機能と制約のトレードオフ関係を分析することで、進化についても理解を深めようとするアプローチが提唱されている。こうした新しいアプローチに加え、隣接した分野の研究者とも連携していくことでバイオメカニクスは生態学の一分野として発展していくだろう。本論では代表的な研究を紹介しながら、バイオメカニクスが生態学分野にどのように貢献してきたのかを考察する。
著者
大庭 伸也
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大型ゲンゴロウ類の仲間の多くは絶滅の危機に瀕している。ゲンゴロウとクロゲンゴロウの個体数は減少しているが、それらの近縁種のコガタノゲンゴロウ(コガタノ)は増加傾向にある。諸形質について種間で比較したところ、コガタノは他の2種に比べ、①高温下で幼虫の生存率及び成長速度が高まること、②成虫は活発に飛翔すること、③地域間(本州から南西諸島)で遺伝的変異がほとんどないことが判明した。以上の結果から、近年の地球温暖化の影響でコガタノが増加し、成虫は高い移動分散能力を持つことから、過去に減少または絶滅した地域へと再定着していると考えられた。
著者
太田 貴之 梅村 章
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.49, no.574, pp.382-387, 2001 (Released:2002-04-26)
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

Parametric study is conducted to find the optimum condition of water rocket for long flight, provided that the tank volume is prescribed. The parameters considered in the present study are the initial air pressure, water volume fraction, empty rocket mass, launching angle and bottle diameter which significantly affect the flight performance of water rocket. First, we calculate the temporal changes in tank pressure, water and air issue speeds and thrust, on the basis of a simple physical model which has been experimentally validated. Then, this model is incorporated into the equation of motion to calculate the ballistic flight of water rocket with various parameter values. As a result, it is found that PET bottles in the market are one of the most suitable for use as the pressure tank of water rocket.
著者
栗田 慎也 髙橋 忠志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.41-45, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
22
被引用文献数
3

〔目的〕急性期病院で脳卒中片麻痺患者に長下肢装具(KAFO)を作製することが回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)退院時の歩行能力と下肢装具の使用継続の有無を調査した.〔対象と方法〕重度運動麻痺を呈した脳卒中片麻痺患者18名を対象とし,KAFOの作製群と非作製群に振り分け,機能的自立度評価法(FIM)の歩行と階段の経過と下肢装具の利用状況を調査した.〔結果〕両群ともにFIM歩行・階段が時間経過で有意な差を認めたが,作製群で回復期リハ病棟退院時のFIM歩行・階段と下肢装具の脱却割合に有意な差を認めた.〔結語〕急性期病院における KAFO の作製は,回復期リハ病棟退院時の歩行・階段能力改善と下肢装具脱却の効果があることが示唆された.
著者
厳島 行雄 和田 万紀 末永 俊郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.70-79, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
24

自己生成効果とは, 被験者によって生成された項目が実験者から与えられた項目よりも再生において優れているという現象をいう (Greenwald & Banaji, 1989)。この現象を説明するために厳島・和田・末永 (1992) は記憶のネットワーク理論0による説明を試みた。この理論によれば, 自己生成条件では生成した概念ノードを形成することが可能で, それを既存のノードと強く結合できると仮定される。さらにこのネットワークの活性化は十分に拡散されるような水準にまで高められていると仮定される。しかしながら実験者から項目を与えられる条件ではこの情報ノードを産出できない可能性があり, また活性化の水準も低いとされる。以上の仮説を検討するために, 実験1では生成および非生成条件で文章作成課題における目的語に修飾語を付与させ, さらに実験2では主語および目的語にも修飾語を付与させて, それらの文章に使用された単語の自由再生・手がかり再生を行なった。結果は, 両実験における生成条件で, 新しく付与された修飾語の再生が非生成条件よりも多く再生されるというものであった。この結果は, 生成条件における文章作成が当該ノードの形成を促進し, その後の検索における活性化の水準を高めたためと解釈された。考察では, 自己と記憶の関係についても討論が行われた。
著者
堅田 諒
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.84-102, 2022-02-25 (Released:2022-03-31)
参考文献数
23

本稿では、ジョン・カサヴェテスのデビュー作『アメリカの影』(Shadows, 1959)の制作過程とテクストの俳優演技の分析を行う。『アメリカの影』の制作プロセスにおいて実践されたカサヴェテス独自の即興とはどのようなものか、またそれは作品の俳優演技にどのような効果をもたらしたかを詳らかにすることが本稿の目的である。まず、1950年代のハリウッドにおいて支配的な演技モデルであったメソッド演技について概観する。『アメリカの影』制作以前の俳優であったカサヴェテスに焦点を当て、俳優カサヴェテスの出演作や演技を検討することで、カサヴェテスとメソッド演技の関係性を明らかにする。次に、監督や俳優の発言から『アメリカの影』の制作過程を辿ってゆく。とくにカサヴェテスたちが行った独特の即興に着目し、どのような形で俳優たちとカサヴェテスが協働作業を進めていったかを考察する。そして、制作段階でのカサヴェテス的即興が、テクストにいかなる形で痕跡を残しているかを精査する。とりわけ、どのような形で俳優のアンサンブル演技が展開されているかを検討してゆく。最終的に『アメリカの影』は、俳優カサヴェテスに代わり、監督カサヴェテスが生まれることとなった歴史的な地点であるとともに、カサヴェテスの俳優を中心にした映画作りの出発点ともなったという結論を提示する。
著者
Yisa Han Tongtong Lan Xuezhen Ma Ning Yang Chuhui Wang Zhen Xu Zhao Chen Meng Tao Hui Li Haitao Wang Yang Song
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1145-1151, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)
参考文献数
48

Inositol hexaphosphate (IP6), a widely found natural bioactive substance in grains, effectively inhibits the progression of colorectal cancer (CRC) when used in combination with inositol (INS). We previously showed that supplementation of IP6 and INS upregulated the claudin 7 gene in orthotropic CRC xenografts in mice. The aim of this study was to elucidate the role of claudin 7 in the inhibition of CRC metastasis by IP6 and INS, and explore the underlying mechanisms. We found that IP6, INS and their combination inhibited the epithelial–mesenchymal transition (EMT) of colon cancer cell lines (SW480 and SW620), as indicated by upregulation of claudin 7 and E-cadherin, and downregulation of N-cadherin. The effect of IP6 and INS was stronger compared to either agent alone (combination index < 1). Furthermore, the silencing of the claudin 7 gene diminished the anti-metastatic effects of IP6 and INS on SW480 and SW620 cells. Consistent with in vitro findings, the combination of IP6 and INS suppressed CRC xenograft growth in a mouse model, which was neutralized by claudin 7. Taken together, the combination of IP6 and INS can inhibit CRC metastasis by blocking EMT of tumor cells through upregulation of claudin 7.