著者
村橋 毅
出版者
日本薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題では、開発した包括的二次元HPLCがディーゼル排出粒子中の成分の分析以外にも幅広く使用できることを確かめるため、近年に話題となっている化合物の分析に適用した。(1)平成19年度は大気中の発がん性/変異原性多環芳香族化合物の分析法を開発した。(2)平成20年度は内分泌かく乱物質の代謝生成物の分析法を開発した。(3)平成21年度は生薬中の残留農薬分析法を開発した。(4)平成22年度は魚介類中の内分泌かく乱物質の分析法を開発した。
著者
藤腹 明子 得丸 定子 清水 茂雄 田宮 仁
出版者
飯田女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的としては、まず日本的「いのち」教育の必要性と意義、さらにはその教育の在り方について、仏教を基調として論拠をもって明確にすることであった。そのために、日本における「いのち」教育の歴史的な系譜の整理と確認、あるいは欧米のみならずアジア各国の義務教育レベルでの実情を把握し、その上で、幼児、義務、専門、生涯等の各教育段階に即したカリキュラム、テキスト、教材等を、指導時期・場所(媒体)・方法論と併せて作成することを当初の目的とした。研究分担者の田宮や得丸らが粗織した「新潟大・上越教育大 いのちの教育を考える会」で、13年度に「いのち教育実践のための研修講座」を上越教育大で開催し、学校教育現場における「いのち教育」の実態や問題点、教員の抱えているニーズを把握することができた。また、医学や看護学教育に携わる教員、仏教者、ビハーラ僧、患者や一般の方から「いのち教育」に対する期待やニーズ等を知り得たことは、今後の研究に向けての課題や示唆となった。3年間の研究を振り返ってみると、当初の目的をすべて果たすまでには至らなかった。しかし、当初の目的であった、本研究の成果を形にするということでは、上記の公開講座の企画・実施、さらには学校教育における小学生高学年向けの「いのち教育」の教材作成等について、それなりの成果を得たのではないかと考えている。今後は、本研究を通して知り得た「いのち教育」に関する知識・情報・技術・教育方法等を、研究分担者それぞれが、看護教育、学校教育の場において活用していくとともに、今後は、家庭や社会における「いのち教育」のあり方や必要性の検討についても取り組んでいきたいと考えている。
著者
小原 豊志
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

今年度は、南北戦争以降の黒人選挙権問題の展開を検討した。特に報告者が注目したのは、南北戦争直後に成立した合衆国憲法修正第15条である。なぜなら本条項は「黒人選挙権保障条項」として知られるように選挙権における人種差別を禁止したにもかかわらず、結局のところ19世紀末の南部に展開した黒人選挙権剥奪運動を阻止しえなかったからである。そこで報告者は、本条項の成立過程を追跡することにより、同条項の意義を再検討できると考えた。考察から明らかになったのは、合衆国の国制的特質および当時の黒人選挙権観が本条項の成立に大きな制約を与えたということである。すなわち前者についていえば、そもそも建国期から選挙権授権権限は州に帰属していたのであり、連邦政府が選挙権問題に干渉する余地はなかったのである。こうした「選挙権におけるフェデラリズム体制」が既に確立していたために、連邦が直接黒人に選挙権を付与することは国制上不可能であったわけである。さらに後者についていえば、世論の反黒人選挙権感情は戦前から一貫して強固であり、奴隷制の存在しない北部においても大半の州が黒人選挙権を拒絶していた。しかしながら、憲法修正条項が成立するためには四分の三以上の州で承認を得る必要があったため、黒人に対象を限定した選挙権保障条項案は各州から否決されるおそれがあった。以上の国制的制約および世論的背景のために、合衆国憲法修正第15条は選挙権授権にあたって各州に人種資格の設定のみを禁止するという内容にならざるをえなかったといえる。以上のことから、合衆国憲法修正第15条は消極的かつ間接的な「黒人選挙権保障条項」であったといえ、本条項においても「選挙権のフェデラリズム体制」を根本的に変革し得なかったことが後の南部黒人選挙権剥奪運動を招来する一因であったといえる。
著者
幸田 正典 中島 康裕 宗原 弘幸 苅野 賢司
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

最終年度である今年度は、現地調査は協同的一妻多夫魚カリノクロミス(以下カリノ)とハレム型社会を持つサボリの繁殖について主に調査した。カリノについては、特に雌の果たす役割に焦点をあて、現地での水槽実験も合わせて行った。また、国内では過去の資料を含め、マイクロサテライトを用いた血縁判定、並びに過去の資料の解析及び整理を行い、複数の投稿原稿として準備あるいは公表を行った。カリノは岩の割れ目を繁殖巣として利用する。これまでの野外観察からカリノの雌は、くさび形の形をした巣を利用すること、大型の雌ほどそのような巣を占めていることから、雌は多様な形の巣のうちから、くさび形の巣を好むと考えられた。水槽実験として、くさび形巣と'幅広巣'を雌に選択させたところ,多くの例で雌はくさび形巣を選んだ。このことは亜野外観察の結果と一致する。また野外調査では、産卵の観察事例を増やせた。本調査により、11産卵のうち10例では、雌はくさび形巣の中で大型のα雄が最も奥に入り込めるところに産卵することが確認できた。この産卵場所選択も雌が行っているとみなされる。これにより、雌はα、β雄の父性の操作を行っているとの仮説を立てた。共同繁殖する動物で雌による父性の操作の可能性および重要性が示唆されているが、この仮説が検証されれば、体外受精動物での初めての父性の操作となる。野外調査からサボリに、ヘルパーが存在することが確認された。おそらくこれは血縁ヘルパーと思われ、このタイプの共同繁殖がハレム型の社会を持つ種では初めての事例である。サンプルは国内に持ち帰っており、これらにより親子判定を現在実施している。また、サボリの生魚40個体をいかして国内に持ち帰っており、今後これらを用いて大阪市立大学にて水槽実験を行っていく予定である。
著者
平沢 政広
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

本研究は,Li-NH_3,アミン溶液の薄層から溶媒を蒸発させて迅速に除去し,Liを析出させることにより金属Li膜を生成させるプロセスについての基礎研究である.本年度は,当初の計画に従い,Li膜を生成させるための多孔質材料の選定に重点を置いて,種々の有機,無機系素材とLi-NH_3溶液の反応性について検討するための実験をおこなった.実験では,213.15〜243.15Kにおいて,真空雰囲気のパイレツクスガラスおよび石英ガラス製のセル内に種々の組成のLi-NH_3溶液を調整し,溶液に試験素材を漬浸して撹拌(円柱状試料の回転などの方法による)を行い,試験素材と溶液の反応に伴う溶液の電気伝導度の変化を測定する方法などによって,溶液内のLi濃度の経時変化を調べた.使用した試験素材は,フッ化樹脂(Teflon),ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック系素材と,グラファイト,リチウムナイトライドの無機系素材である.実験の結果,グラファイト,リチウムナイトライドでは,固体表面の触媒作用によりLiとNH_3間のアミド生成反応が速やかに進行することがわかった.フッ化樹脂の場合,溶液内のLiと樹脂の化合物生成反応が認められ,この反応は液側Liの物質移動と固体内のLiの拡散により律速されることが推定された.ポリエチレンテレフタレートの場合も同様な反応が進行するものと考えられる.これらの結果は,FやOなどがLiに対して官能基として作用することを意味すると考えられる.一方,ポリエチレン,ポリプロピレンでは,溶液と素材の反応は十分遅く,実際に,これらの素材表面にLi膜を生成させることができた.現在,生成したLi膜と素材界面のキャラクタリゼーションと,スプレー法による膜生成について検討を進めている.
著者
幸田 正典 宗原 弘幸 渡辺 勝敏
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

協同的一妻多夫魚(J.transcriptus)を用い,(1)体サイズが婚姻形態形成にもたらす影響2)トリオ内でのαとβ雄での精子競争の実態,(3)協同繁殖トリオでの雌の父性の操作,(4)さらに雄による自分の子供の父性の認知様式の,主に4点について飼育実験を行った。特に本研究(3),(4)について集中的に検証研究を実施した。(3)については,ペアとトリオでの比較から,効果的に実験成果として示す事ができた。まず巣場所選択をみると,ペアの場合は幅広巣とくさび巣ともに選好性はないが,トリオの場合雌は明らかに楔巣を好む。これにより,卵の受精は大型のα雄と小型のβ雄の両雄がクラッチを受精させている。この際,巣の奥の狭い場所に産む事でβ雄が,手前の幅広い場所に産むことで,大型のα雄がより多く受精に成功している。すなわち,雌は巣の奥あるいは手前にと産卵場所を変更する事により,二雄の受精率を操作する事ができる。その際,β雄に受精させる事により,雌は自分自身の保護量を減らしていると考えられる。このような,雌による受精の操作ははじめて検証されたものであり,また魚類での雌の父性操作としてもはじめての例である。(4)のために,我々は,摺ガラスで作った半透明巣を用意した。この巣を使うことにより巣の内部での雌雄の関係をビデオに納めることができる。結果はまだ流動的ではあるが,今の所以下の点が示唆されている。β雄は飛び込み放精をするが,その飛び込み頻度と父性に優位な相関があり,β雄は飛び込み回数で父性を評価している可能性がある。逆にα雄は飛び込みを阻止する頻度と父性が相関しているようであり,これにより雄は父性を判定している可能性がある。また今後雌はこれらの雄の父性の指標を操作し,より多くの保護を雄からひき出している可能性も有る。このような視点での研究はまったくなく,これら一連の経緯は今後さらなる実験による検証が必要である。
著者
幸田 正典 中嶋 康裕 宗原 弘幸 狩野 賢司 渡辺 勝敏
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

最終年度には,安房田,大田,守田の三名を調査地に3ヶ月間派遣し,それぞれ,共同繁殖種オルナータス,雄の繁殖多型種ビッタータス,ランプロロギニ族全体の精子競争の問題の解明にあたった。まず,今回の調査でオルナータスは,おそらく脊椎動物の中でも最も多様な婚姻形態をとる種であることがほぼ明らかになってきた。一夫一妻,一夫多妻,共同的一妻多夫,古典的一妻多夫,多夫多妻とこれまで知られるありとあらゆる婚姻形態が確認された。大きな個体が雄だけでなく,雌にも存在する事がカワスズメ科魚類のなかでも最も婚姻形態が多様であることの要因であると言える。雌が雄より優位に振舞える点そして社会の複雑性の点で,鳥類の繁殖では,ドングリキツツキの共同繁殖に類似している。精子競争や婚姻形態の成立過程だけではなく,共同繁殖での操作,雌雄の対立,相互利他主義という極めて興味深い問題の実験材料として優れた対象動物であることが明らかとなった。今後様々な実験系を組むことで,実証研究材料として研究の発展が期待される。また,カリノクロミスについては,大型雌が存在しないため,鳥類の共同繁殖としてはヨーロッパカヤクグリ型と言う事ができる。ここでは最優位個体は雄である。このように種によるちがいの輪郭が明らかになってきた。ビッタータスでは,雄の代替繁殖戦術は条件次第で大きく変わりうる事,大きな可変性を持つ事が明らかになった。また,パイレーツ雄やスニーカー雄の存在は,共同繁殖のα雄戦術,β雄戦術の基本型とも見なしうる。本族の分子系統解析から,Telmatochromis属とJulidochromis,Chalinochromis属は類縁関係が近い事がわかってきた。雄の代替繁殖寄生戦術と共同繁殖におけるα,β雄の起源は相同的である可能性が高いことも示唆された。
著者
桑原 正明 飯沼 一浩 大川 俊之 伊勢 秀雄 景山 鎮一 高山 和喜 OHKAWA Toshiyuki HOSOYA Fumio 細谷 文夫
出版者
東北大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1986

微小爆発を水中衝撃波のエネルギー源とした体外衝撃波結石破砕システム(mESWL)を開発し, 222名の上部尿路結石症患者(229治療症例)に試験治療を行い, 96%の症例に治療効果を認めた. 合併症としては発熱と結石排出に伴うせん痛が20%の内外の患者に見られた. この他には菌血症1例, 消化管出血1例, 腎被膜下血腫2例が見られた. 後者の4症例は, 1例の腎被膜下血腫の1例に経皮的なドレナージを施行した他は保存的に治療した. これらの合併症の発生頻度はこれまで実用化されている体外衝撃波結石破砕機におけるものとほぼ同様であった. 従って, mESWLはこれまでのESWL機と同様に臨床的な治療機として応用できることが示された.mESWLは現時点では一応, 完成されたシステムであると考えているが, 欠点がないわけではない. 例えば私たちはmESWLの治療方式として衝撃波のエネルギー効率を重視し, 患者を水槽内に入れて治療をおこなう方式(water-tub)を採用した. また, 私たちは爆薬の単純性とその強力さに注目して, 衝撃波発生のエネルギー源に専ら爆薬を用いてきた. しかし, 爆薬を使用する限り, 爆発に伴う騒音の発生や爆薬を取り扱うことの煩わしさが避けられない. 騒音についてはDornier機(HM-1)と同じレベルであることが確かめられ, この点についての問題は少ないが, 経済的な見地からみると爆薬そのもののコストも無視することはできない. こしたことから, 将来的にはtub-less方式の検討やピエゾ素子など他のエネルギーを用いることについても検討を進めたいと考えている.mESWLの総合評価は治療効果, 操作性, 経済性などを含めた他の体外衝撃波結石破砕機との比較を待たなければならないが, 国産の体外衝撃波結石破砕機を独自の方式で開発することができた意義は大きいとかんがえられる.
著者
松原 豊
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、太陽表面で加速された陽子により生成された高エネルギー(>100MeV)中性子を地上で観測することにより、太陽表面における高エネルギー粒子加速機構を解明することを目的とする。中性子は磁場の影響を受けず、加速時の情報を保持しているので粒子加速の研究には最適である。しかし、大気中では減衰してしまうので、名古屋大学太陽地球環境研究所を中心とするグループは、世界7箇所の赤道付近の高山に太陽中性子検出器を設置し、太陽中性子の24時間観測網を実現している。本科研費の申請は、その中で最も太陽中性子観測に最適な場所に設置されながら、最も旧式のデータ収集を行っていたボリビア・チャカルタヤ(高度5,250m,南緯16度)の太陽中性子観測システムを最新のものにおきかえ、2007年から始まる第24太陽活動期での太陽中性子観測に備えることを目的としていた。2年間の科研費使用の結果、チャカルタヤのデータ収集系は最新のものに置き換わり、無人の状態で停電してもその復帰時には自動的にデータ収集が再開できるシステムとなった。その間、観測網で2番目に好条件に位置するメキシコ・シェラネグラ(高度4,600m,北緯19度)側の研究者から同様システムを渇望され、本科研費の余力でシェラネグラのシステムも最新のものになった。従って、次期太陽活動期に備えて非常に強力な観測体制ができあがったと言えよう。科研費によるこの整備が進行中の2005年9月7日に大規模太陽フレアが発生した際、これまで我々が観測した中で最もきれいな太陽中性子イベントがチャカルタヤとシェラネグラの両検出器で検出された。これは、まさに本科研費で狙った通りのことである。このイベントは、チャカルタヤとメキシコ市にある我々の検出器ではない、中性子モニターでも検出されており、現在詳細な解析を行っている。
著者
小野里 美帆
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

平成12から13年度までの基礎研究、実験的支援研究をもとに、自閉症幼児に対する包括的なコミュニケーション指導プログラムの作成及び実験的支援を行った。これまでの研究から、自閉症児は、発達初期から相互伝達系(他者と関わること自体が目的化される伝達)や「会話」に顕著な困難性を示し、それが他者意図理解の困難性と密接に関連していることが明らかにされた。そのため、「会話」と構造的類似性をもつ原初的行動であり、かつ自閉症児にとって獲得が困難である「相互性の獲得」、すなわち相互遊び(ボールのやりとり、イナイナイバー等)の習得を目標として、「フォーマットの理解」、「自他同型性の理解」、「伝達効果の理解」という相互伝達系の下位構成要素を設定し、先行研究による発達過程をもとに、プログラムを構成した。自閉症児1名R児に対する支援を行った結果、第1期:「働きかけへの応答:共同行為への参入」(道具的他者としての認識)、第2期:「自発的な働きかけ:共同行為の成立」(行為主体としての他者認識)、第3期:相互性の獲得:というプロセスを経てターンを伴う相互遊びやルール遊び、言語や視線による要求を習得した。支援直後には、直接的に支援を行っておらず、自閉症児にとって非常に獲得が困難である提示行為と言語による叙述(3ヶ月後)が生起したことから、作成したプログラムの一定の妥当性が示唆された。
著者
大原 繁男
出版者
名古屋工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

Yb化合物研究では、純良単結晶を得にくい問題がある。我々は新物質YbNi_3Al_9及びYbNi_3Ga_9の純良単結晶育成に成功し、強相関Yb化合物の研究において極めて有用であることを明らかとした。X線回折、比熱、抵抗率、帯磁率、de Haas-van Alphen(dHvA)効果、光電子分光、X線吸収、圧力効果の測定から以下のことがわかった。①三方晶ErNi_3Al_9型構造(空間群R32)を持ち、カイラル体である。②YbNi_3Al_9はYb価数がほぼ+3価の重い電子系ヘリカル磁性体(T_N=3.4K)であり、YbNi_3Ga_9はYb価数が+2.5価の価数揺動体である。③YbNi_3Ga_9は低温で近藤ピークを示し、伝導電子(c)とf電子が強く混成している。④YbNi_3Al_9、LuNi_3Al_9、LuNi_3Ga_9は類似したフェルミ面を持つが、YbNi_3Ga_9はcf混成のためフェルミ面が異なる。YbNi_3Al_9及びYbNi_3Ga_9ではサイクロトロン有効質量が増大している。反転対称を持たないため、いずれもフェルミ面が分裂している。⑥YbNi_3Ga_9では価数揺動から磁気秩序状態まで圧力により連続的に電子状態を調節でき、磁気臨界圧力で超伝導を示すかどうか興味がもたれる。YbNi_3Al_9は4GPa、YbNi_3Ga_9は9GPaで強磁性に転じる。⑦Yb(Ni_1-xCu_x)_3Al_9及びYb(Ni_1-xCo_x)_3Ga_9(x0.33)が合成でき、置換により基底状態が調節できる。発展として、R(希土類)Ni_3Al_9の合成を行い、4f電子系カイラル磁性の研究を進めている。そのほか、Gaを組成比に多く含むCe_2TGa_12(T=Ni, Pd, Pt)及びCe_2Pt_6Ga_15についても単結晶を育成し、電子物性測定を行った。
著者
勝呂 尚 浅野 正岳 浅野 正岳
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

歯髄細胞は数種類の異なる細胞から構成されていることが知られている。 しかしながら, その活性は低く, 長期にわたる継代培養は困難である。そこで本研究では, 歯髄細胞の性質をより詳細に検索するためにヒト歯髄由来細胞の樹立と解析を行った。 本申請期間では, 9種類のクローン細胞を樹立し, 樹立したクローン細胞間の遺伝子発現の違いをDifferential Displayにより検索し, 8種類の遺伝子を検出した
著者
城戸崎 和佐 仲 隆介 松本 裕司
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

外部と内部の明快な境界を持たず環境として連続する概念としてのに着目して、オフィスデザインに外部環境を直接的・概念的に取り入れるための基礎的な調査と実践を行い、オフィスデザイン上の要点とその効果を明らかにした。
著者
乾 賢一 矢野 育子 増田 智先
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

研究代表者等はこれまでに、生体肝移植患者において、シクロスポリンやタクロリムスの標的分子であるカルシニューリンの酵素活性が、これら薬物の免疫抑制効果の指標となり得ることを明らかにしてきた。本研究では、臨床応用可能な迅速かつ高感度な新規カルシニューリン活性測定法の開発を目指して、ELISA法を用いた測定系について検討した。現在までに、カルシニューリンの特異的基質であるリン酸化RIIペプチドに対する抗リン酸化ペプチド抗体の作成に成功し、さらに抗体の特異性が確認された。続いて、抗リン酸化RIIペプチド抗体をプレートに固相化し、FLAG付リン酸化RIIペプチドを標準物質として、サンドイッチELISA測定系を確立した。FLAG付リン酸化RIIペプチドの定量性は、0.125-4ng/mLの範囲であった。本法は、カルシニューリンによるリン酸化RIIペプチドの脱リン酸化反応(ステップ1)と、FLAG付リン酸化RIIペプチドによる反応終了液中に含まれるリン酸化RIIペプチドの定量(ステップ2)を行うことを特徴とし、反応前後のリン酸化RIIペプチドの物質収支からカルシニューリンの脱リン酸化活性が算出できる。本年度は、リン酸化RIIペプチド定量のための条件検討を実施した。まず、ステップ1の停止液のステップ2に対する影響を調べた結果、常用の5%トリクロロ酢酸/0.lMリン酸二水素カリウム溶液を用いた場合、FLAG付リン酸化RIIペプチド(4ng/mL)の検出が不可能であった。そこで次に、5mM EGTA(カルシニューリンの阻害剤)をステップ1の停止液として用いた場合、ステップ2には影響せず、FLAG付リン酸化RIIペプチドの検出が可能であることが示された。今後、開発したnon-RI ELISA測定系の臨床応用に向けて、カルシニューリン活性測定の最適化及び全自動化を目指す予定である。
著者
田島 裕 フェンティマン R.G. ミラー C.J. ダイヤモンド A.L. ライダー B.A.K. バークス ペータ 長谷部 由起子 長谷部 恭男 平出 慶道 FENTIMAN R.G MILLER C.J DIAMOND A.L RIDER B.A.K BIRKS Peter ミラー J.C. アダムソン ハーミッシュ デンティス T.C. ゴフ ロード スクリブナ アンソニー
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

平成6年4月から3年間にわたる日英間の共同比較法研究の全体を総括し、今後の継続的な研究協力の在り方を検討した。研究者ネットワーク作りに重点を置いて研究活動を行ったが、その目的のために、本年度も田島(研究代表者)がバ-ミンガム大学で研究会(24回)を開催した。バ-ミンガム大学では、英国大学における日本法研究の在り方を問題とし、憲法、民商法、企業法、独占禁止法、訴訟手続法、刑法など12の主要テーマについて、具体的な検討をした。これは昨年度に続く二度目の経験であり、非常に大きな反響を呼んだ。研究会の基礎となるプレゼンテーションをレクチャー.レジュメの形でまとめ、最終報告書に添付した。この研究成果は、田島(研究代表者)の責任で、Western and Asian Legal Traditionsと題する著書(添付書類参照)として近く公刊される。予定どおり平成8年9月にケンブリッジ大学において学会を開催し、本格的な比較法研究を行った。その結果は、Anglo-Japanese Journal of Comparative Lawと題する著書として近く刊行されることになっている。また、予定どおり、平成8年4月に、高等法院裁判官フィリップス卿およびウッド教授(ロンドン大学)を招聘し、企業法学シンポジウム(法的紛争の処理)を開催した。約200名の法律家(学者、裁判官、実務家)が参加し、とくに国際企業取引をめぐる法的紛争の処理に当たりイギリス法を準拠法とすることの問題点を論じた。フィリップス裁判官は、筑波大学などでも陪審制と黙秘権の問題について特別講義を行った。また、マスティル卿(貴族院裁判官)も予定どおり8月に来日され、安田記念講義およびブリティッシュ・カウンシル特別講義を開いた。民事司法改革をテーマとしたが、この講義には約300名の法律家が参加した。平成8年8月に公表されたばかりのウルフ報告書に基づくもので、別途開いた専門家セミナー(国際商事仲裁協会)において、三ケ月章東京大学名誉教授を中心として日本の民事訴訟改正とパラレルに検討する機会をもった。この講義は安田火災記念財団から単行本『英国における紛争処理の動向』(平成8年8月)として既に公刊された。平成8年11月、長谷部(東京大学)、長谷部(成蹊大学)はロンドン大学およびバ-ミンガム大学を訪問し、憲法および訴訟法の領域における共同研究を行った。そして、9月のケンブリッジ大学の学会には、平出(中央大学)と田島(筑波大学)が出席した。その学会で特に焦点を当てたのは会社法および金融法・銀行法の領域である。正式の学会とは別に、この共同研究が今後も継続されるようにするため、研究参加者の間で具体的な検討を数日に渡って熱心に行った。その結果、平成9年10月に東京で学会を開催し、その折りに新たな共同研究の基礎づくりをすることになった。その主要研究テーマは、会社法と金融法・銀行法の他、司法制度と国際法・国内法の融合の問題とする。来日が既に確定しているのは、ライダー教授(ケンブリッジ大学)、ア-デン裁判官(高等法院;現在は、法律委員会の委員長と兼任)夫妻、およびヘイトン教授(ロンドン大学)である。なお、オックスフォード大学のバ-クス教授(オールソールズ・カレッジ)は、まだ来日していないが、平成10年に来日を約束している。その機会に日英学会の創設を本格的に検討することになると思われる。なお、研究協力者以外にも数多くの学者、実務家の協力を得たことも付記しておきたい。上記の三ケ月教授のセミナーはその一例である。平成9年4月にはジョン・ボールドウイン教授(バ-ミンガム大学)が来日されるが、これもわれわれの研究活動につながるものである。3年に渡る共同研究を通じて、日本法に関心のある非常に若いイギリス人研究者を数多く(約100名)育てることができたことも協調しておきたい。現在、そのうち2人のイギリス人大学生が日本を訪問し、研究を続けている。最後に、当該研究は、将来も継続されるべきものであり、今回の3年の研究を通じて問題を別に添付した『研究報告書』の中で説明した。それも読んでいただきたい。
著者
三村 寛一 三村 寛一 奥田 豊子 朝井 均 鉄口 宗広 安部 惠子 三村 達也 塩野祐也 檀上弘晃 上田真也 辻本健彦 織田恵輔 北野雄大
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

ライフコーダを用いて児童の1 週間の行動記録と運動量を測定し、児童の適正運動量は運動強度6 以上の出現率が10%以上あることが望ましいことを明らかにした。また、体力の低い非活発な児童を対象にライフコーダおよびインターネットを活用して、1 ヶ月間の半監視型運動療法を実施し、その効果は低学年ほど大きく、高学年になるにつれて小さくなることが明らかになり、特に休日における運動実践や学校生活における体育の重要性が示唆された。
著者
佐々木 伸一 渡邊 欣雄 池上 良正 黄 強 志賀 市子 河合 洋尚 曹 建南
出版者
京都外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、1990年代以降中国各地において顕著に見られる宗教復興の諸状況について人類学的なフィールド調査を行い、そこで得られた民族誌的資料をもとに、宗教を「象徴資本」として活用する国家や地方エリートの政策的側面と、それに対する宗教、とりわけ民俗宗教の職能者や信者たちとの複雑多岐にわたる相互作用によって構築される側面に焦点をあてつつ分析を行った。その結果、中国における宗教実践構築の諸相、及び宗教の象徴資本化の歴史性や政治性を明らかにした。
著者
松原 好次 塩谷 亨
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

<研究成果の具体的内容>1 ハワイ語再活性化運動の核とも言うべきクラ・カイアプニ(ハワイ語を教育言語とする小・中・高校)におけるイマージョン教育の進展状況(カリキュラム及び教材の開発、学校数の増加など)を明らかにした。同時に、ハワイ語イマージョン教育の抱える課題(高学年の理数系科目担当者及びハワイ語教材の不足など)も明らかにした。2 ハーラウ・フラ(ハワイ伝統舞踊「フラ」の道場)が伝統文化及びハワイ語の保持・継承に果たす役割を明らかにした。特に、alohaの精神など伝統文化に対する尊敬の念を育成することによってハワイ人としての誇りを涵養できるという意味で、ハワイ語再活性化にとって不可欠な存在である点が明らかにされた。3 テレビ・ラジオ・新聞だけでなく、インターネット上で人気の高いコミュニティサイトにおけるハワイ語使用状況を調査することによって、ハワイ語再活性化に果たす新旧メディアの役割を明らかにした。<研究成果の意義・重要性>少数言語としてのハワイ語を再活性化するためには、学校教育以外にもさまざまな場が保障されなくてはしけないことを探ることによって、わが国において近年浮上してきたアイヌ語や琉球語の再活性化、あるいは外国籍児童生徒のための母語保障に関する新たな視点を提供することができた。特に、公教育における少数言語再活性化支援の具体例を提示しただけでなく、イマージョン教育を受けて卒業した若者が、獲得したハワイ語を家庭や職場等で活用していくための施策について明らかにした点は本研究の特筆すべき意義であろう。
著者
神田 千里 白川部 達夫 渡辺 尚志 黒田 基樹
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の成果の第一としては、井戸村氏関係史料として知られる現存の原文書六〇点の殆ど、及び『歴代古書年譜』と題される家譜に収録された三三三点の総てが翻刻され、活字によって解読可能になった点である。残り約一〇点の解読により、井戸村氏関係史料全体の刊行が実現可能な段階に至っている。また関連する『嶋記録』『妙意物語』などの記録類の翻刻にも着手しており、井戸村氏関係史料に関する基礎研究はさらに進展することが期待できる。
著者
田中 繁史
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

研究の目的シバ草地は生産性が高く,一度定着すれば無施肥でも良質な草資源として長期にわたり利用可能で低投入・環境保全的であると同時に,生物多様性の維持,土壌流〓防止,景観維持など,多面的機能も非常に高い。荒廃人工草地をシバ草地へ更新する場合,シバは被陰に弱く,周囲の雑草との光競合に負けてしまうことが多いため.定着までには繊細な管理が必要である。特に放牧管理下では嗜好性の悪いエゾノギシギシやヒメスイバなどの雑草が残り,繁茂してしまう。そこで,荒廃革地の早期シバ草地化を目的として,(1)放牧管理下(20ha,うち草地3.1ha/日本短角種,計8頭,246-546kg,定置放牧)にある移植2年目のノシバ苗を対象に掃除刈りの効果を検証することとした。また,近年開発されたシバ新品種"たねぞう"は,匍匐茎の数が多くかつ長く,生育が早いことから,良好なシバ放牧地の造成が可能であると期待されている。そこでたねぞうの有用性を確認することを目的に,(2)たねぞう苗とノシバ苗の糞上移植後の初期定着の比較(定着評価,草高)を行った。結果および考察(1)ハンマーナイフモアによる掃除刈り約2ヵ月後のノシバ出現メッシュ数(1メッシュ5cm×5cm)は,掃除刈り無区21±26.8メッシュに対して,有区27±16.2メッシュであり,有意な差はなかった(t検定)。掃除刈りの頻度が年1回であることおよび放牧圧が高い環境下だったことが影響していると考えられた。(2)糞上移植したノシバ苗とたねぞう苗の初期定着を明らかにするために移植約3ヵ月後に,旺盛(A)から枯死(D)までの4段階(A~D)で評価した結果,定着と評価した苗(A評価+B評価)の割合はノシバ46.2%に対してたねぞう72.2%であり,たねぞうの高い活着力が明らかになった(P<0.01, Mann-Whitney検定)。一方,定着と評価した苗の草高(平均±標準偏差)は,ノシバとたねぞうでそれぞれ10.34±3.26cm(n=6)および13.07±2.75cm(n=13)であり,両間で有意な差はなかった(t検定)。