著者
吉田 省造 岡田 英志 土井 智章 中島 靖浩 鈴木 浩大 田中 卓 福田 哲也 北川 雄一郎 安田 立 水野 洋佑 宮﨑 渚 森下 健太郎 牛越 博昭 竹村 元三 白井 邦博 豊田 泉 小倉 真治
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-135, 2015 (Released:2015-02-28)
参考文献数
24

症例は50歳代の男性, キノコ狩りに行きキノコを焼いて食べた翌日に下痢・嘔吐などの消化器症状を自覚し近医を受診. 血液検査にて肝逸脱酵素上昇を認め入院となった. 翌日の採血で肝逸脱酵素の著明な上昇 (AST 5,000台, ALT 5,000台) を認め, 当院に搬送となった. 問診によりドクツルタケ摂取による肝障害を疑った. 入院当日より肝性脳症を認め, 昏睡型急性肝不全と診断. 挿管・人工呼吸管理として, 肝不全治療と同時に毒素除去, 高分子除去を目的として急性血液浄化療法を行った. 入院5日後に肝性脳症は改善し呼吸状態は良好で抜管, 経過良好にて入院9日後に転院となった. ドクツルタケ中毒における血液浄化療法は否定的な意見が多いが, 今回は肝不全を呈したドクツルタケ中毒に対し, 血液浄化療法を行い救命し得た. ドクツルタケの中毒を疑った場合には, 早急な血液浄化療法が有効である可能性が高いと考えられた.
著者
太子堂 正称 井上 義朗 間宮 陽介 桑田 学 原谷 直樹 野原 慎司 高橋 泰城 板井 広明 江頭 進 小沢 佳史 佐藤 方宣 笠井 高人 高橋 聡 村井 明彦
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、現代の経済理論が前提としている人間像について、その思想的系譜を解明することを目指して行われた。スコットランド啓蒙における「経済学の成立」から現代の行動経済学・神経経済学へと至るまでの野党な経済学者、理論の分析を通じて、効用や利潤の最大化を図る利己的人間観が登場してきた過程だけではなく、それぞれの経済思想家の主張の背後には、利他性や社会性を含む多様な人間像が含まれていたことが明らかとなった。
著者
外山 昌樹
出版者
一般社団法人 日本観光研究学会
雑誌
観光研究 (ISSN:13420208)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.49-57, 2022 (Released:2023-06-23)
参考文献数
16

本研究は、1960 年代の海外旅行市場における消費者の意識を定量的に明らかにすることを目的に実施した。1967年に内閣官房広報室が実施した「国民の海外旅行に関する世論調査」の個票データを分析した結果、海外旅行意向を持つ確率が最も高かった属性は 20 代であることが明らかになった。また、海外旅行で見て来たいものや、行ってみたい国についても分析したところ、性別や年代別で異なる傾向が見られた。
著者
杉浦 佳奈 十代田 朗
出版者
一般社団法人 日本観光研究学会
雑誌
観光研究 (ISSN:13420208)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.59-68, 2022 (Released:2023-06-23)
参考文献数
21

近年、我が国ではアウトドアブームが再来し、キャンプ場とホテルの両方の利点を持つグランピングは特に開発が盛んである。一方で、本来のグランピングのあるべき姿からずれが生じている施設も見受けられる。本研究では、グランピングとはどのような特徴を持つのか知るために、英・米・日におけるグランピングの歴史や現在の施設の特徴を明らかにした。そして、豪華さ・地域振興・環境配慮のバランスのとれた施設を理想のグランピング施設と考え、計 578 施設を6つのタイプに分類した。各タイプにどのような特徴があるのかを明らかにしたところ、日本では〔豪華さ重視型〕と〔大型キャンプ場型〕といった贅沢志向の傾向が強いと言える。
著者
西貝 正彦 田中 知己 加茂前 秀夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.712-714, 2011-09-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

GnRH投与が凍結胚移植の受胎率に及ぼす効果を明らかにする目的で黒毛和種受胚牛80頭を無作為にA,B群に区分し,発情後6日にGnRH群40頭にはGnRH類似体(酢酸フェルチレリン)100μg,対照群40頭には生理食塩液2ml を筋肉内に注射し,発情後7日に胚移植を行った.発情後14日に両群の各10頭について卵巣の状態と血液中プロジェステロン(P4)濃度を調べた.胚移植後40~50日に妊娠診断を行った.その結果,誘起黄体の形成がGnRH群の90%(9/10頭)にみられたが,対照群ではまったくみられなかった.血中P4濃度の平均±標準偏差はGnRH群が4.57 ±1.55,対照群が3.72±2.39ng/ml,受胎率はGnRH群が50.0%,対照群が40.0%であり,有意差は認められなかった.これらのことから,凍結胚移植前日にGnRH類似体を投与することにより新たに黄体が形成されることが認められたが,血中P4 濃度上昇効果及び受胎率向上効果はみられなかった.
著者
上村 清
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.181-185, 1998-09-15 (Released:2016-08-18)
参考文献数
15
被引用文献数
13 9

The incidence of Japanese encephalitis (JE) in Japan has decreased in recent years as a secondary consequence of modernization of the agricultural system in this country. The population of the vector mosquito, Culex tritaeniorhynchus has decreased in ricefields where new methods for rice cultivation have been applied. Nowadays, ricefields have small amounts of water due to technology which controls the management of intermittent water supply, new varieties of rice have been developed to shorten the period of cultivation, and pesticides are extensively used. These facts have transformed the ricefields into inadequate places for mosquito breeding. The following reasons also contribute to the drastic reduction of the vector mosquito with consequent decrease in incidence of JE : very few teams of animals are raised in the farms, the large-scale pigsties are located far from human habitation, and modern construction methods of houses and pigsties hamper the entrance and feeding of mosquitoes. Recently, projects for development of ricefields and pig breeding are promoted in Southeast Asia with the purpose of increasing food production. Such promotion is giving rise to spread of JE in Southeast Asia and this is, therefore, imported to Japan. Moreover, the global warming, the changes in environment and emergence of insecticide-resistant mosquitoes increase the risk of epidemic in Japan and other Asian countries at any time. Therefore, the development of additional methods for vector control and strengthening of the alert attitude by health professionals and scientists are needed.
著者
大川 尚臣 古田 斗志也 金川 泰一朗 小畑 卓司 野上 浩實
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.1041-1049, 2017 (Released:2017-11-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

症例1は63歳,男性.虚血性腸炎で入院加療中に排便困難のため,グリセリン浣腸(glycerin enema:以下GE)を施行した.直後から肛門痛と下血および血尿を認めた.肛門鏡にて歯状線近傍に裂傷と,腹部CTにて直腸周囲の脂肪織濃度上昇と遊離ガス像を認め,直腸穿孔と診断した.絶食と輸液・抗生剤投与を行い,血尿に対し強制利尿とハプトグロビンを投与した.腎不全には至らず,保存的に軽快した.症例2は78歳,男性.頸椎損傷で施設療養中,便秘に対しGEを施行した.粘血便が出現し,下部消化管内視鏡で直腸壁損傷を,腹部CTにて直腸壁肥厚,壁内気腫と直腸周囲遊離ガスを認め,直腸穿孔と診断した.血尿や溶血はなく,絶食と輸液・抗生剤投与のみで軽快した.GEの誤注入による直腸壁の損傷は急性腎不全や腹膜炎等の重篤な合併症をきたすことがある.今回,われわれはGEによる直腸穿孔の2例を経験したので考察を加え報告する.
著者
貴志 学
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.193-201, 2020-11-25 (Released:2020-12-10)
参考文献数
27

The sap beetle Phenolia(Lasiodites)picta(MacLeay)(Coleoptera: Nitidulidae)is widely distributed in Asia, Australia, and Africa, but its basic biology has not been studied. In the present study, the seasonal prevalence of P.(L.)picta was investigated using banana bait traps in two regions, Minabe and Arida, Wakayama Prefecture, Japan, from April to October 2015 and 2016. Adults of P.(L.)picta occurred from late April–late October in Minabe, and late April–early September in Arida, respectively. The presence of larvae was observed twice in May–July and August–October in Minabe, but only once in May–July in Arida. These results imply that P.(L.)picta is a bivoltine in Minabe. The beetles oviposit in leaf mold, and a successful artificial rearing method was established using banana fruit and leaf mold. The effects of long and short photoperiods(long photoperiod, 14.5L:9.5D; short photoperiod, 10L:14D)on the ovarian development of females during ‘larval and pupal’ and ‘adult’ stages, respectively, were also studied in the laboratory. Females reared with a long photoperiod across all stages had significantly higher percentages of ovarian development(77.3%)than those reared with a short photoperiod during either ‘larval and pupal’ stages(20.0%)or ‘adult’ stages(35.0%).
著者
Ning Luo Gui-bing Chen Teng Zhang Jie Zhao Jing-nan Fu Ning Lu Tao Ma
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.187-193, 2023-02-01 (Released:2023-02-01)
参考文献数
47
被引用文献数
1 3

Endoplasmic reticulum (ER) dysfunction is characterized by ER stress, which can be triggered by sepsis. Recent studies have reported that lessening ER stress is a promising therapeutic approach to improving the outcome of sepsis. Genipin is derived from gardenia fruit, which is a traditional Chinese medicinal herb for anti-inflammation. Here, mice were treated with genipin (2.5 mg/kg) intravenously to assess its biological effects and underlying mechanism against polymicrobial sepsis. Furthermore, the present study focused on detecting the levels of ER stress-related proteins, including protein kinase R-like ER kinase (PERK), glucose-regulated protein of 78 kDa (GRP78), phosphorylated-eukaryotic initiation factor 2α (p-eIF2α), and CCAAT/enhancer binding protein (C/EBP) homologous protein (CHOP). The results demonstrated that genipin significantly decreased the serum concentrations of tumor necrosis factor-α and interleukin-6, alleviated histopathological damage to the lungs, livers and spleens, and even improved the survival rates of septic mice. Moreover, sepsis significantly upregulated the protein expression levels of splenic GRP78, PERK, p-eIF2α and CHOP, but their levels were significantly suppressed by genipin. Furthermore, genipin also significantly downregulated cleaved caspase-3 expression levels and reduced sepsis-induced splenocyte apoptosis. In conclusion, genipin potentially improved the survival rate of sepsis and attenuated sepsis-induced organ injury and an excessive inflammatory response in mice. The effects of genipin against sepsis were potentially associated with decreased splenocyte apoptosis via the attenuation of sepsis-induced ER stress to further inhibit ER stress-induced apoptosis.

1 0 0 0 OA 物理量の対数

著者
勝木 渥
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.289-290, 1989-11-30 (Released:2017-02-10)

物理量を対数の引数として取ることは,必ずしも論理的におかしくはない。そのとき形式的に,log[物理量]=log[数値]+log[単位]と書ける。log[物理量]が物理量Aの逆数の積分として∫dA/A=log Aのような形で出てくるとき,定積分の上限値・下限値としては物理量Aそのものが取られるべきである。物理量Aの対数log Aは無次元の量と考えられるべきであるが,その指数を取ったとき(無次元量ではなく)次元を持った物理量Aになるという点で,単純な無次元量とは異なる。この点に留意しておきさえすれば,物理量の対数を取ることは何ら論理的破綻を生じない。物理学に現れる物理量の関数はすべて,その引数として物理量そのものを取るべきである。
著者
前根 美穂 清水 陽子 中山 徹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.27-30, 2010-06-10 (Released:2022-08-01)
参考文献数
5

アメリカの総人口は増加し続けているが、中には人口が減少しつつある都市もある。そして、中には独自の政策により空き家の増加などの問題に対処している都市がある。本研究ではそのような独自の政策を行っている都市の調査を行った。我々はアメリカのミシガン州フリント市とオハイオ州ヤングスタウン市の2都市を訪れた。フリント市では「ランドバンク」と呼ばれる政策が行われており、ランドバンクでは固定資産税を払えなくなった人の物件が不動産投機家の手に渡る前に、ランドバンクの所有になるようにしている。ランドバンクが管理することにより、放棄地のコントロールが可能となった。ヤングスタウン市には「ヤングスタウン2010」と呼ばれるマスタープランがある。それは縮小型都市政策であり、現在、実行されているところである。
著者
鈴木 高史 Alexander Egyir-Yawson
出版者
神戸常盤大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

アフリカトリパノソーマ症を媒介するツェツェバエの新たなコントロール法の構築を行うことを目的として、以下の解析を行った。ツェツェバエのコロニーを確立し麻酔システムの検討を行った。さらにGlossina palpalis defensin(GpDef)分子の抗アフリカトリパノソーマ原虫活性プロファイルを明らかにした。当初予定していた、貯精嚢へのインジェクションは困難であったため、アフリカトリパノソーマ原虫の動き、エキソソーム関連分子解析、ツェツェバエゲノム上のポリドナウイルス類似配列解析を行い、遺伝子組換えシステム構築の可能性検討を行った。
著者
森 俊子 岡崎 哲也 蜂須賀 研二
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.281-286, 2013-07-25 (Released:2013-07-25)
参考文献数
8

要旨:前脳基底部健忘は,重度の前向性および逆向性健忘・人格変化を伴う作話・見当識障害・病識の欠如を特徴とする.今回経験した3症例では,前脳基底部に損傷が比較的限局した症例では,作話や記憶障害を認めたが遂行機能障害はなく,人格変化は比較的軽度で薬物により症状は改善した.一方前脳基底部を含めて前頭葉にまで病変が広がっている場合,遂行機能障害の合併,多動や多幸感などの人格変化,作話の持続が長い傾向があった.健忘の重症度やリハビリの効果においては両者で大きな違いはなく,エピソード記憶の改善は少なかったが,スケジュールノートを利用した反復訓練により日課的な日常生活は支障なく可能となった.
著者
佐々木 哲也 本田 尚 山口 篤志
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ワイヤロープの疲労破壊はこれまで表面素線が先行すると考えられていたが、IWRCロープでは、内部の素線が先行する場合のあることが明らかになっている。そこで、本研究では各種IWRCロープについてS字曲げ疲労試験を行うとともに、ワイヤロープ素線のフレッティング疲労試験を行った。その結果、フィラー形とウォリントンシール型ではどちらも内部の損傷が先行するが、その損傷形態には大きな違いがあることが明らかになった。またフレッティング疲労には、素線に作用する繰返し引張荷重の大きさよりも素線同士の圧縮力の方が大きな影響を及ぼすことが明らかになった。