著者
大村 益夫 波多野 節子 白川 豊 芹川 哲世 藤石 貴代 熊木 勉 布袋 敏博
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

3年間にわたる調査と研究を以下のような形でまとめた。1.成果報告論文集各分担者がこれまで行なってきた研究・調査活動をまとめて論文を執筆し、成果報告論文集を作成した。報告炉論文集の目次は、以下の通りである。(1)洪命憙が東京で通った二つの学校-東洋商業学校と大成中学-:波田野節子(2)1920年代廉想渉小説と日本-再渡日前の4篇を中心に:白川豊(3)田栄澤論-解放後作品と基督教-:芹川哲世(4)京城帝国大学と朝鮮人文学者-資料の整理を中心に-:布袋敏博(5)李箱の小説における「わたし」-日本語遺稿と関連して-:藤石貴代(6)兪鎮午の「金講師とT教授」について:白川春子(7)尹東柱の文学に対する評価をめぐって-1940年代における抒情詩からの視角-:熊木勉(8)金昌傑研究試論:大村益夫2.『毎日新報文学関係記事索引(1939.1〜1945.12)』『毎日新報』は、姉妹紙の日本語新聞『京城日報』とともに、植民地末期文学の研究において不可欠の一次資料である。同紙のマイクロフイルムをもとにして『毎日新報文学関係記事索引(1939.1〜1945.12)』を作成した。これにより、植民地末期の朝鮮文壇の動き、朝鮮人文学者たちの行動が相当に明らかになった。朝鮮人作家および作品の個別研究を集積することによって朝鮮近代文学の日本との関連様相を明らかにしていくという当初の目的は、ある程度まで達成しえたといえる。しかしながら、扱うべき作家はこの他にも数多く残っている。本研究では、朝鮮人文学者たちの日本における足跡調査と資料収集を行なってきたが、当時の資料は日ごと失われつつあり、また当時を知る生証人たちも年を追っていなくなっていっている。研究の継続が必要かっ急務である。
著者
長山 勝 山之内 浩司 藤澤 健司 林 英司 鎌田 伸之 布袋屋 智朗 中野 孝三郎
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

完全合成無蛋白培地PF86-1は組成中に血清および細胞成長因子等の蛋白成分を一切含有しない特徴を有し、多くの口腔扁平上皮癌細胞株が継代培養されてきたが、一方で継代培養が不可能な細胞株も存在する。これは増殖に必須な因子の欠乏が原因の一つと考えられる。そこで癌の問質や周囲組織の細胞が産生するサイトカインに着目し、無蛋白培養下における口腔扁平上皮癌細胞株の増殖に及ぼすこれらのサイトカインの影響を検討した。その結果、無蛋白培養下の口腔扁平上皮癌細胞株の増殖にIL-1αがオートクラインまたはパラクライン機構を介して関与している可能性が示唆された。さらに我々は新規完全合成無蛋白培地PFM-7を開発し、口腔粘膜上皮細胞の増殖に対する影響を検討したところ、この培地は従来の増殖因子を添加した培地と比較して、形態、増殖因子に対する反応、各種増殖因子およびその受容体の発現を変化させることなく口腔粘膜上皮細胞の増殖を支持した。これを用いて、同一患者由来の癌細胞と口腔粘膜上皮細胞を同一条件で培養することにより、両細胞の生物学的性状の詳細な比較検討が可能となった。そこで完全合成無蛋白培地中で継代培養している同一患者から分離培養した口腔扁平上皮癌細胞と口腔粘膜上皮細胞のmRNAからcDNAを調整し、癌細胞で発現の上昇あるいは抑制の見られる遺伝子をサブトラクションライブラリー法を用いてクローニングした。これらのうち、正常細胞に特異的に発現している遺伝子は全長430bpのcDNAで、S100蛋白との相同性を持っていた。さらに同遺伝子の発現をノーザンブロッティングにより検討したところ、多くの扁平上皮癌細胞でその発現の低下が認められた。同遺伝子の機能についても解析した。
著者
因 京子 松村 瑞子 西山 猛 チョ ミギョン
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

映画を用いる教材と教師用リソース、日本人学生にも用いることのできる観察と分析の技能養成のための教材および教師用リソース、ドラマを用いた教室活動案を作成した。ストーリーマンガに基づく教材と教材開発の方法論の議論を含む大学院生向け集中講義を海外と日本で行い、受講者、外国人を含む教師および教師志望者を対象に、使用可能性についての判断を調査した。開発した教材や教材開発の方法論等についての招待講演を海外において2回、国内で1回行なった。
著者
高山 知明
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

近世初期における発音への関心の高まりに関する問題を中心に考察した。注目すべき点としては、五十音図の果たした役割である。五十音図はこの時期、謡曲の指南書にも多く引用されている。このことは,五十音図の普及,浸透という点から見て興味深い。すなわち,これが社会的により広く知られるようになったことを示している。しかし,謡曲においては,この当時に特有の五十音図の役割についてより具体的に明らかにする必要がある。その役割について考える上で問題となるのは,中世期から江戸期にかけて生じた諸々の音変化である。長母音の形成、四つ仮名の合流,あるいはさらにハ行子音の脱唇音化といった変化は,いずれも五十音図本来の枠組みから外れる方向を持つ。そのため,当時の知識人たちは,現実の発音と五十音図とのズレに正面から向き合わざるを得なかった。しかし,現実の発音と仮名との関係を知る上で,五十音図を座標に据えると便利である。それとのズレによって体系的な把握が可能になるからである。とくに,謡曲のようにその発音法に独特の伝承を持つ場合には,その発音法を理解する上で五十音図は必要なものであった。五十音図をあらかじめ頭の中に入れておくことによって,どこに注目すればよいかを組織立てて理解することができる。「いろは」しか持ち合わせていないとそのような理解に到達するのは容易ではない。また,当時,五十音図はさほど特殊な存在ではなく,知識層一般にとって受容可能なものになっていたからこそこのように利用できたのであろう。蜆縮涼鼓集をはじめとして,言語音そのものに対する関心が高まった社会的背景に,上述のように五十音図が重要な役割を持って使われていたことが挙げられる。また,別の問題として,近世期の状況を理解するためには、漢語の問題も重要であり、漢語の音韻的特徴についての考察は本課題の研究を今後深めるためにさらに必要になる。
著者
三浦 軍三 岡本 敏雄 堀口 秀嗣 篠原 文陽児 児島 邦宏 井上 光洋
出版者
東京学芸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

授業録画ビデオテープは、全国の教育系大学・学部で制作・管理され、現在精力的に収集され、いくつかの大学・学部ではライブラリーとして体系的に保存・管理されつつある。これらのビデオテープは、教育に関する臨床的・実践的・実証的研究に不可欠な資料である。とりわけ授業分析・設計に関する研究、教科教育および教育実習の改善研究にとって貴重な素材として位置づけられ、その価値がますます高まりつつある。本研究はつぎの課題で研究を遂行した。1)分類カテゴリーの設定:授業録画ビデオテープには原則として"授業の指導案"を添付することとし、(a)そこに、授業に関する基本事項、(b)授業を特徴づける枠組、(c)さらにビデオテープの種別を設定する。したがって、データファイル構成としては、3次元構造をもつ分類力テゴリーを開発し、その試案の段階で、テープライブラリーをもつ3つの大学・学部の研究者と情報交換を行うとともに、専門家に対し意見をもとめ、分類カテゴリーの再構成をはかった。2)検索システムは、(ア)分類カテゴリー・システムにもとづく基本データ管理(イ)検索の2つのモジュールから構成され、マイクロコンピュータによるシステム開発を行った。3)検索システムの開発試行をふまえて、検索の適切性の視点から分類カテゴリー、とくに授業を特徴づける枠組について再検討する。あわせて、他の教育系大学・学部の研究者の協力を得て実験試行した。4)上記、1)、2)の分担課題にふまえ、検索システムのアセスメントと改善点(システムの柔軟性,拡張性,利用,流通等の視点)を明らかにし、総合的評価とシステムの再構築をはかった。
著者
山下 幹雄 森田 隆二 勝呂 彰
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

10^<-15>秒域の光電場波束の発生・計測・制御を中心に研究を行った。その結果、自己位相変調(SPM)法により、可視域で世界最短のフーリエ変換限界単一パルス2.8fs・1.5サイクル光の発生に成功した。さらに、独自な誘起位相変調 (IPM) 法により、2.6 fs・1.3サイクル・1.4 GW光の発生に成功した。また、搬送波・包絡波位相 (CEP) を安定化したl kHz繰り返しの、3.3 fs・1.7サイクル光電場波束発生に成功した。加えて、フォトニッククリスタルファイバー (PCF) 法を用いた光パルス圧縮法としては、最短のサブ5 fsの光パルス発生が可能であることを実証した。これらは、一オクターブを越える帯域を有しかつ準実時間動作する、独自な自律型フィードバックチャープ補償システム(スペクトル位相を操作する空間位相変調器(SLM)+4f光学配置、スペクトル位相信号を高感度測定をするM-SPIDER、作成したプログラムによるスペクトル位相解析とSLM駆動のための計算機から成っている)の構築により可能となった。また、スペクトル位相解析にウェーブレット変換法を用いることにより、フィードバック補償の自動化と高精度スペクトル位相解析が可能であることを示した。さらにこのシステムの帯域を、紫外にまで拡げるため、新しい液晶を用いた空間光変調(SLM)素子を試作し、その位相変調特性の詳細な解明と有用性を確認した。一方、10^<-15>秒光電場波束の石英ファイバー非線形伝播について包絡波近似などのない厳密な非線形波動方程式を数値解析した。その結果、入射光CEPに著しく依存する第3高調波発生が見いだされた。これは、簡便なCEP計測法として利用できる現象である。
著者
宮崎 章 渡部 琢也 平野 勉 七里 眞義
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

高脂肪食を負荷したアポE欠損マウスに、強力な血管収縮作用をもつ血管作動性物質であるウロテンシンIIを持続皮下注すると、動脈硬化病変は8倍に増加した。ウロテンシンII投与マウスから得た腹腔マクロファージの酸化LDLによるコレステロールエステル蓄積(泡沫化)は、対照群の7倍に増加していた。同一の前駆体から派生する新規血管作動性物質として同定されたサリューシンα、βをアポE欠損マウスに持続皮下注すると、動脈硬化病変形成はサリューシンαにより54%抑制され、サリューシンβにより2.6倍促進した。腹腔マクロファージの泡沫化は、サリューシンα投与マウス由来の細胞で68%抑制され、サリューシンβ投与マウス由来の細胞で2.6倍に増加した。ウロテンシンIIやサリューシンは動脈硬化治療のあらたな標的分子として注目される。
著者
園田 俊郎 VERONESI Ric GOMEZ Luis H HARRINGTON W ZANINOVIC Vl HANCHARD Bar 屋敷 伸治 藤吉 利信 嶽崎 俊郎 三浦 智行 速水 正憲
出版者
鹿児島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

ジャマイカ、コロンビアおよび近隣諸国にはHTLV-IとHTLV-IIのフォーカスが局在し、ATLとHAM/TSPを多発させている。平成6年度調査研究では、キングストン(ジャマイカ)、カリ、ブエナベンツラ(コロンビア)、ラパス(ボリビア)をたずね、HTLV-I/II関連疾患の患者およびウイルスキャリアの有無の調査した。総計8名の患者があらたに発掘され、ATL患者2名、HAM/TSP患者5名、感染性皮膚炎(In fective dermatitis,ID)患者1名が今回の分析対象となった。これらの検体からリンパ球と血清を分離し、リンパ球は生細胞のまま凍結保存され用時解凍してHLA検査に供せられた。血清はHTLV-I/II抗体の保有状況検査に供せられた。HLAの民族特性を比較する対照として、既知HLAの日本人ATL患者、HAM/TSP患者ならびにアンデス高地先住民のHTLV-IキャリアのHLAハプロタイプが用いられた。ジャマイカでは黒人の感染性皮膚炎(ID)患者の検体が収集された。コロンビアでは黒人のATL、HAM/TSP患者の検体が収集された。ボリビアではアンデス先住民と白人の混血メスチソのHAM/TSP患者の検体が収集された。平成2年度に収集保存中のアンデス高地先住民インガ族のHTLV-Iキャリアの検体も対象とした。HLAハプロタイプは患者とその家族のHLAタイプから割り出された。ここでは、常法による血清型と近年開発のDNA型で分析した。このHLAハプロタイプによって、黒人、アンデスインデイオ、メスチソの患者と日本人患者の民族背景の異同を比較した。ここでは、HLAクラスIIのDNA型が有用であった。ジャマイカとコロンビアの黒人患者(ID、ATL、HAM/TSP)のHLAハプロタイプには、日本人のATL、HAM/TSPと共通なDRB1*DQB1*1302-0604,1101-0301,1502-0601,0403-0302,0802-0402と黒人患者に特異なDRB1*DQB1*07-0201,0407-0302が検出された。ボリビアの混血患者のHLAハプロタイプには日本人ATL/HTLV-IキャリアにみられるDRB1*DQB1*0901-0303と白人由来とおもわれるDRB1*DQB1*0301-0201が検出された。以上の結果からHTLV-I関連疾患の遺伝背景にpan-ethnicなものと黒人/モンゴロイドに特異な遺伝背景があり、それぞれの疾患単位をつくっていると思われる。一方、HTLV-IIキャリアの検体はコロンビア・オリノコ川流域の先住民グアヒボ族から採取された。そのHLAハプロタイプはDRB1*DQB1*1402-0302,1602-0301,0404-0302であり、上記のHTLV-Iキャリアと患者のHLAとは全くことなる遺伝背景をしめした。すなわち、HTLV-IとHTLV-IIお感染には民族の相互排他性がみとめられ、ウスルスと宿主の自然選択がおこっているが明らかになった。他方、ATLとHAM/TSPは同一種のHTLV-Iでおこるとされてきたが、両者の遺伝背景は異なりる。今回の研究でも、黒人ATLとHAM/TSPとモンゴロイドのそれらとはHLAハブロタイプに差異が認められた。すなわち、黒人の遺伝系統とモンゴロイド(日本人をふくむ)の遺伝系統があり、それぞれの疾病要因となっていることが明らかにされた。したがって、民族に特異的なHLAと共通なHLAの遺伝的多型を追求すれば、ATLとHAM/TSPの発症にかかわる宿主遺伝子の実体が明らかなるとおもわれる。
著者
鳥谷部 茂
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

バブル経済崩壊後に導入された新たな資金調達方法について、民法の制度設計から、従来の担保制度と整合的な基準を明確にすることにより、堅実で、かつ、効果的な効力(当事者間の効力、第三債務者に対する効力、第三者に対する効力)を導くための検討を行った。その結果、公序良俗による制限、包括根担保による制限、担保構造(被担保債権額、目的債権の特定、第三債務者の特定等)による制限、第三債務者保護による制限、当事者の変更(交替)等による制限などを前提とした再構築が必要であることを明らかにした
著者
森 芳樹 吉本 啓 稲葉 治朗 小林 昌博 田中 慎 吉田 光演 沼田 善子 稲葉 治朗 小林 昌博 高橋 亮介 田中 愼 沼田 善子 吉田 光演 中村 裕昭
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

文法理論の拡張にあたって実用論を援用しようとする試みは少なくない。本プロジェクトでは意味論を諸インターフェイスの中心に据えて、コンテクストと文法の相互関係についての研究を進めた。記述上の対象領域としては情報構造とアスペクト, 時制, モダリティー(ATM)を選択し、一方では, パージングを基盤に置いた構文解析を言語運用の分析と見なすDynamic Syntax(DS)の統語理論的な可能性を検討した。他方では、形式意味論・実用論と認知意味論・実用論の双方の成果を取り入れながらテクスト・ディスコースとコンテクストの分析を進めた。 なお本プロジェクト期間中に、当研究グループから4本の博士論文が提出された。
著者
堤 定美 南部 敏之 玄 丞烋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

スポーツによる脳震盪などの障害を予防する防具としてのマウスガードやヘッドギアなどについて、その安全性について生体力学的に評価し、新しい衝撃吸収用生体材料の開発研究を行った。衝撃解析には有限要素法とMADYMOを併用した。マウスガードの効果についてまとめると、下顎への打撃に対して緩衝する能力は十分に認められ、特に開口時における打撃に対して有効であった。この緩衝効果は5人のボランティアにおけるオトガイへの振子による打撃試験において、頬骨への加速度の伝播状態からも確認できた。PVAゲルは生体にとって安全であり、高含水率、高弾性率を有するが、水が飛散し易いので、保水性に優れた化合物を複合化すれば、耐久性に優れた高衝撃吸収性ゲルとなり、生態親和性に優れた防具として使用できる。有機溶媒を用いたPVAゲル化合成法を考案した。重合度8800、30wt%のPVAを水:DMSO=2:8に調整した有機溶媒を用いて冷凍してゲル化すると、均一でヤング率の高い材料を作ることができた。重合度の低い(1700)PVA試料は、エタノールによって有機溶媒を置換し、冷凍してゲル化を促進させた。重合度の高い(8800)試料は、140℃、数百気圧にて押し出し成型を行い、冷凍してゲル化を行った。この方法により、20〜40%の高濃度PVAゲルが得られた。別に、PVAを140℃にてDMSOに溶解させ、メタノール中に再沈殿させてDMSOを除いた。再沈して得た試料を真空乾燥後、140℃で5分間ホットプレスで成形した有機溶媒沈殿法試料のtanδの温度依存性は、0〜50℃にピークを持ち、前記の試料とブレンドすれば、tanδが低い温度領域を相互補完できる。このPVAゲルは大きなヤング率を持つにも関わらず100%以上の伸び率を示し、80%まで伸ばした後、除荷した履歴曲線は、強い衝撃に対する吸収特性を示した。
著者
西成 活裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

車や人の渋滞について、理論解析および実験をおこない、その解消方法を提案した。まず、車の渋滞について、織り込み合流部の理論解析を行い、流量低下を避けるために、車線変更禁止線を引くことで合流ポイントを遅らせるアイディアを提案した。さらに高速道路でのサグ部の渋滞緩和について、渋滞吸収走行の社会実験をした。人の渋滞についても、成田国際空港などの大規模施設における渋滞緩和を想定し、入国審査場での待ち行列の最適化の研究をした。
著者
小林 宜子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

12世紀半ば以降、イングランドを含む西ヨーロッパ各地の世俗君主の宮廷において、アリストテレスやキケロに代表される古典古代の政治倫理思想の影響を受けながら、世俗社会の政治構造やその倫理的基盤を俗語で論じ、俗語に備わる表現能力を政治理論や社会思想の領域でも最大限に高めようとする努力が盛んに行なわれるようになった。本研究は、14世紀末から15世紀半ばまでのイングランドにおける俗語文学の発達を、こうした汎ヨーロッパ的な思想的潮流の一環として再検証した試みである。
著者
上原 聡 SANDERS ROBERT 上原 聡
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、北京・台湾の標準中国語間の差異について、特に話者が同一の声調を持つ母音を発音する際に、・この2言語地域の間にどのような音韻学的・音響言語学的相違が規則的に現れるか・それぞれの言語地域内においてどのような社会言語学上のバリエーションが見られるかの2点に関して調査するため、両地域の被験者計83名(北京:54名、台北:29名)を対象にフィールド調査を実施し、現代標準中国語において可能な音節1,275種の発音を、各被験者につき約1時間分の音波ファイルという形で収集した。その後、本研究期間終了時の平成17年3月に至るまでに、計18名分(北京:5名、台北:13名)の音声ファイルに関して、各ファイルの一連の音波を個々の音節に分割し、音節毎の音響学的分析を進めた。従って、現在はデータ全ての分析に基づいた研究成果について結論づけて述べられる段階ではないが、これまでの対照分析の結果、台湾の標準中国語話者の声調について以下のような特に注目すべき点が存在することが判明した。すなわち、(1)台湾話者の第3声は不安定な場合があり、約3%の音節が第二声または第四声として発音されていた。(2)第三声として発音された音節の大半が、通説となっている第三声のピッチパターン、いわゆる半声調と呼ばれる短時間の落ち込み(2-1-1)を示さず、長時間の3-1型下降パターンになっていた。同時に、通常5-1の下降パターンを持つ第四声は、5-3というパターンをとっているケースが多数見られた。従来から標準中国語には地域的差異が存在しないという論理的前提があり、声調各声のピッチパターンについてもそれは同様であるが、この現象は明らかにそれへの反証であり、台湾の標準中国語の声調が独自の内部相関的体系を有していることを窺わせる。以上の考察を、さらにデータ処理・分析を進め、サンプル数を増やすことによって検証して行くことが今後の課題となる。
著者
吉良 芳恵 井川 克彦 村井 早苗 久保田 文次 斎藤 聖二 櫻井 良樹 久保田 博子
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1、宇都宮恭三氏から拝借した宇都宮太郎(陸軍大将)の資料(日記15冊と書類約1700点、書簡約4600通、写真約300点等)をもとに、宇都宮太郎関係資料研究会を立ち上げ、平成15年度から1点毎の資料整理を行って、書類と書簡の目録・データベースを作成した。2、全日記の解読・翻刻(入力作業)を行い、書類や書簡と照合しながらその内容の分析を行った。その過程で、中国での情報収集活動をもとに、宇都宮が陸軍のアジア政策を立案し、中国革命への種々の関与・工作を行ったこと、諜報活動資金を陸軍機密費だけでなく岩崎久弥からも得ていたこと、二個師団増設問題で妥協工作を行ったことなど、新しい歴史事実が明らかとなった。中でも、朝鮮軍司令官時代の3・1独立運動時の対応(堤岩里事件等)や、「武断政治」的統治策を批判して「文化政治」的懐柔工作を行ったことなどは、従来知られていなかった事実でもあり、日本の植民地研究に大きく寄与することになるだろう。また陸軍中央の人事についても具体的背景が判明したことは収穫であった。3、書簡の一部(特に上原勇作書簡)の解読・翻刻を行い、「長州閥」と「反長州閥」との闘いの実態を明らかにすることができた。4、日露戦争期における英国公使館付武官としての役目や行動を、英国調査や書類の解読で明らかにすることができた。特に、英国の新聞に英国陸軍軍制改革案を投稿したことや、明石工作などの対露情報工作資金の実態が判明したことは、今後の日露戦争研究に寄与することになるだろう。5、佐賀県での調査により、宇都宮太郎の父の切腹事件が幕末維新期の佐賀藩の藩政改革に関係していることを確認できた。6、書類中の任命関係資料により、人物辞典等の誤りを訂正することができた。7、平成17年2月26日に日本女子大学で国際シンポジウム「宇都宮太郎関係資料から見た近代日本と東アジア」を開催し、招聘した英国や中国の研究者等と共に、宇都宮太郎関係資料の歴史的価値を、そのアジア認識を含めて、広く学会に紹介した。8、岩波書店から2007年4、7、11月に3巻本として宇都宮太郎日記を刊行することになった。
著者
佐治 健太郎
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

この研究により得られた結果は以下の通り。1,平面間の写像に関して余次元1の特異点の認識問題を研究し、有用な判定法を得た。この判定法を応用して、微分方程式の特性曲面の特異性を調べ、特異点の分類や微分方程式の形作用素と呼ぶべき物を発見した。三次元空間内の曲面の平面への射影についても研究し、射影する方向と射影に現れる特異点との関係を明らかにした。2,三次元空間内の波面のA型特異点の有用な判定法を作り、超幾何微分方程式のシュワルツ写像の特異点を佐々木武氏、吉田正章氏と共同で研究した。シュワルツ写像から作られる曲面には三個のスワローテイルが一つになる現象が起こるが、これがA5特異点であることを示した。3,梅原雅顕氏と山田光太郎氏と共同で高次元空間内の波面のA型特異点の有用な判定法を作り、波面の大域的な不変量であるジグザグ数と曲率写像との関係を明らかにした。4,双曲空間内の曲面に関して、泉屋周一氏と共同で擬球面内の曲面の双対曲面を様々な場合に研究した。特異点相互の関係や微分幾何学的特徴と特異点の性質を明らかにした。5,光錐内の曲面に関して、泉屋氏、カルメン・ロメロフスター氏と共同で研究し、ジェネリックに現れる特異点の分類を得た。締活線を定義し、柱面的な光錐内の曲面を定義する方法が解った。
著者
前田 雄介 杉内 肇
出版者
横浜国立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

人間はきわめて柔軟で器用なマニピュレーション能力を持っており,環境とのインタラクションを伴う物体操作(グラスプレス・マニピュレーション)においても,環境からの反力を巧みに利用して物体を操ることができる.このような人間の能力は移動知の発現と考えることができる.本研究では,人間の行うグラスプレス・マニピュレーションに着目し,その技能のモデルを求めることを目的としている.今年度は,グラスプレス・マニピュレーションの中でも二指のピボット操作に着目して研究を行った.具体的には,人間の操作の計測結果を参考にして,CPG(Central Pattern Generator)に基づくピボット操作の制御モデルを構築した.この制御モデルは,松岡のニューロンモデルを用いて,手首の運動に関わる3つのニューロンと指の運動に関わる2つのニューロンから構成されている.これを用いてハンドを制御することによって,リズムの引き込みによって物体のピボット操作が実現可能であること,床面の摩擦係数の変化にも適応可能であることを動力学シミュレーションによって確認した.また,人間の手の機能とマニピュレーション技能の理解のために,詳細な筋骨格系モデルに基づく人間の手のモデルを開発した.このモデルは24リンク・31自由度の骨格系モデルと35筋切片・73腱切片から成る筋腱モデルから構成されており,筋力に基づいて指の運動の動力学シミュレーションを行うことが可能であることを確認した.
著者
井関 俊夫
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究課題では、非定常な船体動揺データに対して、時変係数自己回帰モデルによる瞬間スペクトル解析の有効性を明らかにするとともに、近年問題となっているパラメトリック横揺れの解析に本手法を適用し、スペクトル構造の時間的変化の解明を理論的ならびに実験的に試みた。当該研究期間内に実施した研究の成果は以下の通り。1.理論的検証:追い波中縦揺れ時系列データに現れる歪度の変動を理論的に検証した。波と船体の幾何学的位置関係による非線形復原力変動が原因と考えられることから、一自由度振動系の理論的検証を行うとともに、瞬間バイスペクトル解析法を提案し、歪度の変動がほぼ説明できることを示した。また、パラメトリック横揺れの理論的考察結果と規則波中実験結果を比較し、横揺れパワースペクトルのピークが一致して存在することを示した。また、時変係数自己回帰モデルを用いた瞬間スペクトル解析結果から、パラメトリック横揺れ発生までの過渡的特徴を明らかにした。最後に、トライスペクトル解析を適用し、パラメトリック横揺れの特徴を確認することができた。2.実験的検証:本学練習船汐路丸の実験航海に参加して非線形船体動揺データの計測を行うとともに、詳細な海象データを得るために、海上保安庁に協力を要請し、野島埼灯台のレーダ波高観測データを入手した。また、1/40汐路丸模型船にワンチップマイコンとラジコン用サーボモータを用いた制御装置と、動揺センサと無線式RS232C通信ユニットを組み合わせた計測装置を搭載し、大振幅実験用自航模型船に改造して大振幅動揺実験を行い解析した。
著者
中西 徹 青山 和佳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,階層間流動化が慢性的貧困を緩和するという作業仮説について,貧困層が有する社会ネットワークの動態に着目し,マニラ首都圏とダバオ市の事例を検討した。その結果,マニラ首都圏の貧困層にあっては,主体的な活動を通して,階層間流動化を促進し得る余地が存在するのに対して,ダバオ市においては,現在までのところ,上位層からのアプローチのみが階層間流動化に貢献できる状況にあることがあきらかになった。
著者
石塚 譲 因野 要一 西岡 輝美 出雲 章久 川井 裕史 山田 英嗣 大谷 新太郎 入江 正和 上脇 昭範 庄 澄子 高倉 将士 西田 祐子 大石 武士 安田 亮 おおちやまくじら生産組合 猟友会能勢支部
出版者
大阪府立食とみどりの総合技術センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

野生獣肉(ホンシュウジカ、イノシシ)成分は野生植生の影響を受けていたが、一般成分に捕獲時期の影響は少なかった。成分中では粗脂肪含量が家畜に比して少ないこと、イノシシ肉のα-Toc含量はブタ肉と同等であること、牛肉よりは酸化しやすいことが判った。利用先である西洋料理店は、年間を通じて野生獣肉を利用しており、肉利用にあたり品質や安全性を重視していること、購入価格が高いと考える店が多いことが判った。