著者
中里 良彦
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.37-44, 2019 (Released:2019-04-19)
参考文献数
26
被引用文献数
1

特発性分節性無汗症は,全身の末梢自律神経と後根神経節の障害によって分節性の無汗部位を示し,Adie症候群,Ross症候群などと同一スペクトラムを形成する病態である.一方,harlequin症候群は,発作性に生じる片側顔面の紅潮・発汗過多である.腫瘤などが原因の頸部交感神経障害による症候性harlequin症候群と,明らかな原因が同定されない特発性harlequin症候群に分けられる.Harlequin症候群には反対側顔面の分節性無汗を伴う症例が多く,分節性無汗症の一部分症状と捉える考え方もある.症候性harlequin症候群の原因は神経鞘腫,肺癌・乳癌,甲状腺腫瘍が多く,頭頸胸部画像検査を用いて積極的に器質的病変を検索する必要がある.
著者
荒川 健佑
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、乳酸菌の抗真菌性に着目し、真菌をターゲットとした「バイオプリザバティブ(食品保蔵因子)」と「プロバイオティクス(保健機能因子)」の両面で食品利用可能な乳酸菌株の単離・選抜・同定(1年目)、選抜菌株が産生する抗真菌物質の単離・精製・同定(2-3年目)、選抜菌株の効果についてのin vitroおよびin vivo評価(2-4年目)を行う。
著者
菅波 美穂 小林 一夫 今村 健太郎 小松 三佐子
出版者
認知リハビリテーション研究会
雑誌
認知リハビリテーション (ISSN:24364223)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.31-42, 2019 (Released:2022-03-30)
参考文献数
14

脳梗塞により前頭葉機能障害がみられた70歳代男性に高次脳機能訓練を行った。本症例は柔軟に新しい状況に対応していくことが難しく,セット転換の制御が低下していた。これらに起因する行動障害は自宅復帰への阻害要因となっていた。そこで,セット転換に必要とされる柔軟性と心的構えの切り替えの機能改善を目的として,前頭葉機能検査に一般的に用いられるStroop 課題とWisconsin Card Sorting Test を応用したColour Stroop訓練およびSet Shift 訓練を導入した。その結果,Set Shift 訓練が前頭葉機能障害の改善に短期的にも長期的にも効果があるということが示唆された。また,包括的なリハビリテーションに加え,本訓練の結果,前頭葉機能テストの成績に向上がみられ,自宅復帰が可能となった。
著者
金 允姫 橋爪 真弘 本田 靖
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

気温は自殺との関連が高い気象因子として考えられ、気温の上昇と自殺リスクの増加に関する多くのエビデンスが報告されてきた。しかし、正確な気温-自殺の非線形関係を推定する研究は不足していた。本研究は、12カ国341都市・地域の自殺死亡者数と気象データを収集し、同一の統計解析法を用いて気温-自殺の非線形関係について包括的な研究を試みた。結果、気温-自殺の非線形関係は全体的に気温上昇に応じて自殺リスクの増加が観察されたが、非常に高い気温では、自殺リスクがもはや増加せず、水平状態に達したり、わずかに減少することが明らかになった。また、非線形推定曲線を介して自殺リスクが最大となる臨界温度範囲を確認した。
著者
吉國 秀人 山内 敏男 前田 浩伸
出版者
日本教授学習心理学会
雑誌
教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.103-119, 2017 (Released:2021-02-28)

本研究の目的は,江戸時代の政治の仕組みのひとつとして参勤交代という制度を捉え直し,1.参勤交代に関する児童の認識の実態を明らかにすること,2.江戸時代の大名行列を描いた巻物教材の提示と予想活動を取り入れた授業が児童の認識に及ぼす影響について示唆を得ることである。 2つの小学校で6年生を対象に行われた授業実践が検討された。巻物教材を提示したいずれの実践においても,「大名行列内には,行列のリーダーとしての大名が,ひとり存在していること」の認識は,児童にとって必ずしも自明のことではないことが示された。さらに,大名がひとりだけであるという事実を教示すだけでは不十分であり,大名行列全体を俯瞰的視点から捉え,大名行列を立派に見せようと工夫したのはどうしてかを問える手がかりを得ることの重要性が論じられた。 最後に,教育心理学研究という位置づけから言語陰蔽効果との関わりが考察され,また実践研究という位置づけからは,幕藩体制についての知識が教師(第一著者)に不足しているという課題が指摘された。
著者
吉村 豊雄 Toyoo Yoshimura
出版者
熊本大学
雑誌
(ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
vol.29(史学篇), pp.28-49, 1989-03-20

小稿の課題は、端的にいえば、大名の参勤交代を規定した寛永武家諸法度第二条が、実は肥後熊本藩主細川忠利が提示した意見(献策)を相当に組み込む形で審議・制定されたのではないか、この知られざる事実とその政治的意義を明らかにすることにある。
著者
瞿 琦
出版者
日本実験言語学会
雑誌
実験音声学・言語学研究 (ISSN:18836763)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-18, 2021-03-24 (Released:2023-06-15)
参考文献数
32

本研究は、日本語の語頭有声音の無声音化が、台湾人初級日本語学習者の知覚弁別にどのような影響を及ぼすかという点について、母語の影響 (日本語・台湾華語・台湾閩南語) を考慮しながら調査したものである。母語話者と学習者を対象に即時的正誤判断課題を実施した結果、無声音化した語頭有声音において、日本語・台湾閩南語話者が無声音に誤聴する傾向は見られなかったが、台湾華語話者には見られた。この結果から、母語の有声音の有無が、無声音化した語頭有声音の知覚に影響を与えている可能性があることが明らかとなった。このことは、これまであまり表立って議論されてこなかった日本語の語頭有声音の無声音化の現象の重要性を示している。
著者
松本 昇
出版者
信州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本プロジェクトは,自伝的記憶の概括化(OGM)が生じるメカニズムおよび記憶の特定性トレーニング(MeST)がOGMおよび抑うつに効果を発揮するメカニズムを明らかにすることを目的とした。いくつかの実験研究を通じて,ネガティブな手がかりに対するOGMの直接検索が抑うつに特に関連するメカニズムとして特定された。このことから,OGMに対するアクセシビリティを変容させる介入が重要であることが示唆された。MeSTによる治療データの二次分析では,OGMの直接検索が抑うつを予測する効果をMeSTが緩和させることが示された。OGMのアクセシビリティに焦点を当てた介入では,抑うつに対する大きな治療効果が示された。
著者
杉山 崇 雨宮 有里 五味 美奈子 伊藤 美佳
出版者
神奈川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

シアター&スポットライト仮説は心理療法を統合するための理論モデルである。このモデルは認知科学、認知神経科学に基づいて構成されている。研究代表者は、この仮説を理論モデルとして確立するために、包括的な理論研究と次の研究で活用するツールの作成を含めた実証研究を企画した。残念なことに、企画の一部は研究資源の関係で実施できなかった。しかし、企画の一部を見直して新たに立て直すことで、概ね予定していた成果は達成できた。本研究の成果を元に、シアター&スポットライト仮説に基づいたアセスメントツールの原案も策定でき、次の科研費応募にもつながっている。
著者
引地 孝文 小坂 直敏
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.68(1999-MUS-031), pp.19-26, 1999-08-07

我々の目的は、楽音や自然音、及びそれらの内挿/外挿を含む様々な音色を合成、操作できる技術を開発することである。この目的のため、本研究では物理モデルを用いた音色モーフィングを検討する。ここでは、異なる楽器音とその中間音色を合成できるモーフィング合成の考え方を述べる。この考え方を用いて物理モデルを利用しピアノ音とギター音を模擬し、これらの滑らかな音色変化、すなわち音色補間を検討する。その結果、モーフィングシステムにおける物理モデルの利用可能性が示された。
著者
山口 和子 高橋 史人
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.104-113, 1982-06-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
6
被引用文献数
1

In the previous study, by the application of multivariate analysis, seven preference factors for foodsregardless of attributive factorswhich gave influence on preference for foods were extracted and these factors were confirmed to play important roles for this preference.In this study, we have analyzed food preferences through crosstotaling attributiv e factors (such as age differences, living areas and occupations).The results were as follows:1. Even though the difference in food prefernces between men and women is scanty, this difference between the ages of 30 years old and 40 years old is conspicuous in both sexes. Therefore, it become possible to conclude that a turning point for food preferences lies in their 30's in both sexes.2. As to Japanese style cooked foods, there is also the difference of preference and men prefer proteinous foods and women prefer rather cereals.3. Though younger people prefer western-style foods, various kinds of snacks and desserts, older people (over 50's) prefer tradional Japanese foods.4. As to the regional difference of food preferences, people in Tokai district are moderate and resemble to the average of all over Japan; those in Kanto district select various foods indiscriminately; those in the Hokkaido, Chugoku, Shikoku and Kyushu districts are conservative in their food likes and also dislikes; Those in Kinki district show extreme tendencies for both their likes and dislikes; and those in Tohoku and Hokkaido show no definite preferences.5. When the trend of food preferences is compared with groups of same age, there are some differences for this preference between occupational groups, and the professional technical workers do the selection of foods more positively than the laborer do.6. In conclusion, the food preferences are greatly affected by age groups and little by groups of sex, living areas or occupations.
著者
若松 克則 島宗 理
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.21-29, 2020-08-20 (Released:2021-08-20)
参考文献数
35

研究の目的 会計事務所の顧客が領収書を整理して提出する行動を、少ない手間、短い時間で作業できる領収書綴りを提供することで増やすことができるかどうかを検討した。研究計画 対象顧客を5群に分け、顧客群間の多層ベースライン法を用いた。場面と参加者 口頭で依頼しても領収書を整理して提出してくれなかった顧客24社を対象とした。介入 ひと月1冊とし、日付ごとに見開き1頁を用意して日付をあらかじめ印刷し、発行日の頁に領収書を貼り付けるだけで済むようにした日記型領収書綴りを開発し、顧客に提供した。行動の指標 実験協力者として参加した仕訳スタッフが担当する対象顧客それぞれについて、領収書を整理して提出していたかどうかを毎月記録した。結果 17社が領収書綴りを使い、14社が継続して領収書を整理して提出するようになった。損益分析により、顧客・月あたり3,238円の利益を得たこと、仕訳担当スタッフもその結果に満足していたこと、実験終了後6年後も顧客による標的行動が維持されていたことがわかった。結論 領収書整理に関わる反応エフォートを低減することで顧客の協力的な行動を喚起し、維持できる可能性が示唆された。