著者
中沢 次夫 稲沢 正士 小林 節雄
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.491-494, 1979-06-30 (Released:2017-02-10)

カエルの体成分に起因するアレルギー症状(気管支喘息, 皮膚炎)を呈した稀有な1症例を経験したので報告する.症例は31才, 女性, 実験助手, 昭和42年, 食用ガエル(bull frog;Rana catesbeiana)の脳波壊実験を開始し1年後からカエルにさわると皮膚〓痒感出現, 昭和52年9月, 実験中に脳の付着した注射針を右中指に誤刺したところその部が腫脹, 20分後, 喘鳴呼吸困難が出現した.脳破壊実験に使用したbull frog 3匹から脳をとり出し作製した抗原液を用いて行つた各種アレルギー検査では, PK反応が陽性で, RAST値はscore 3であり, 特異的IgE抗体を証明しえた.一方, モルモットのheterologous PCA反応やゲル内沈降反応を用いて検索した特異的IgG抗体は検出できなかつた.これらのことから, 本例のアレルギー症状はbull frogの体成分に起因するものであり, それに対する特異的IgE抗体との反応, すなわちI型アレルギー反応の結果生じた症状であることが考えられた.
著者
近藤 泰人 玉川 達 園田 大 松井 啓夫 塩見 和 佐藤 之俊
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.12-20, 2019-01-15 (Released:2019-01-15)
参考文献数
26

抗リン脂質抗体症候群(APS)は,動静脈血栓症を伴う自己免疫疾患である.APS合併肺癌は稀で,その意義は明らかでない.【症例1】75歳女性.検診で血小板低値を認め,精査でAPSと診断された.胸部CTで右下葉に103 mm大の腫瘤影と#7リンパ節腫大を認めた.精査で扁平上皮癌(SCC)と診断され,右下葉切除術を行った.入院時に血小板低値を認めた.術前,術中に血小板輸血を行い,合併症なく退院した.【症例2】66歳男性.副甲状腺腺腫精査のMIBGシンチグラフィーで左S6に31 mm大の腫瘤影を認めた.精査でSCCと診断され,左下葉切除術を行った.入院時に血小板低値と凝固時間延長を認めた.既往歴にAPSと心房細動があり,バイアスピリンとワルファリンを内服していた.術前に同薬剤を休薬し,未分画ヘパリンを投与し,合併症なく退院した.APS合併肺癌の外科的治療には慎重な周術期管理を要すると考える.

1 0 0 0 OA 音と流れ

著者
渡辺 実
出版者
一般社団法人 ターボ機械協会
雑誌
ターボ機械 (ISSN:03858839)
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.701-706, 1987-11-10 (Released:2011-07-11)
参考文献数
16
著者
松宮 潤 宮崎 慎二郎 飴野 淳 山本 晃義
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.243-246, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
17

Platypnea orthodeoxia syndrome(POS)は,直立位によって強調され,臥位によって緩和する低酸素血症および呼吸困難を特徴とする.そのため,離床の妨げとなる可能性があるが,POSに対する理学療法の報告はされていない.今回,間質性肺炎(interstitial pneumonia: IP)に伴うPOSの理学療法を経験した.症例は,84歳の女性.抗ARS抗体症候群に伴うIPにより,座位での低酸素血症や呼吸困難が持続したため,POSが疑われた.心内および肺内シャントを認めず,IPの改善に伴い直立位での呼吸状態が改善したため,IPに伴うPOSと診断した.POSは直立位で症状を呈するため,臥位での運動療法にて身体機能の維持・改善を図り,病状に応じて離床を開始することで,ADLの再獲得に繋げられる可能性がある.
著者
曽根 淳
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.653-662, 2020 (Released:2020-10-24)
参考文献数
47
被引用文献数
7 7

神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease; NIID)は,進行性の神経変性疾患であり,近年まで剖検により診断されていたが,2011年に皮膚生検が診断に有効と報告された後,症例数が増加している.2019年にはNOTCH2NLC遺伝子上のGGCリピート配列の延長が原因であると同定され,遺伝子診断も可能となった.NIIDでは,認知機能障害で発症し,頭部MRIでの白質脳症およびDWIでの皮髄境界の高信号が認められる群と,四肢筋力低下から発症する群の2群が認められる.今後,白質脳症およびニューロパチーの鑑別診断にNIIDを含める必要があり,皮膚生検と遺伝子検査を組み合わせ,NIIDを的確に診断し,病態解明を推進する必要がある.
著者
マルラ 俊江
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.34-44, 2005-03-31 (Released:2017-11-17)

北米日本研究資料調整協議会(North American Coordinating Council on Japanese Library Resources (NCC))の設立・組織,および現在進行中の活動について紹介する。その活動は,日本語資料蔵書共同構築,アクセス改善,日本研究司書教育に大きく分けられ,主なプロジェクトに,多巻セット(Multi-Volume Sets Project),日本美術カタログ収集,ジャパン・プロジェクト,AskEASL,T-3プロジェクトがある。他に,電子資料委員会及び国際交流基金図書館支援プログラム諮問委員会の活動に言及する。
著者
吉原 由樹 藤田 雅章 大坪 義昌 泉 賢太郎 本岡 勉 伊藤 茂 草場 英介
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.1221-1224, 1993-09-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
5

A 55-year-old man fell down while inebriated and sustained a right clavicular fracture. He complained of paresthesia, paleness, coldness and parlalysis of his right arm. An expanding subcutaneous hematoma in the supraclavicular region was noted as well as radial artery pulsation at the right wrist.A rupture of the Subclavian artery was diagnosed without an angiogram and the middle part of the clavicle arteriogrhaphy was performed. Pulse deficit distal to the injury is one sign of Subclavian artery injury. However this is not altogether reliable because of good collateral circulation about the shoulder. There is no clear consensus as to which approach to the subclavian artery would give the best exposure and in particular control the proximal segment. For succesful management, proper surgical exposure and revascularization techniques are essential.
著者
齋藤 滋 山田 拓司
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

早産ならびに子宮内膜炎は炎症性疾患である。最近の研究により炎症性疾患では腸内細菌叢が変化し炎症を惹起させることが判ってきた。そこで両疾患の腸内細菌叢をメタゲノム解析した。群間比較では有意な変化を示すgenus/speciesは検出できなかったが、早産例でEscherichia/Shigellaが多い症例が一部認められ、子宮内膜症ではMegamonasの増加やParabacteroidesの減少が認められる例もあった。今後、病態との関連性を明らかにしていく必要がある。
著者
芹澤 愛
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.230-233, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
24

アルミニウム合金は,カーボンニュートラル実現の観点から輸送機器をはじめとした各種部材への展開が期待される軽量金属材料であるが,用途拡大のためにはさらなる高強度化ならびに高耐食化が不可欠である.本稿では,筆者がごく最近開発した,水蒸気のみを利用した環境負荷の低い新しい表面処理技術である水蒸気プロセスについて解説する.水蒸気プロセスでは,アルミニウム合金表面に水酸化物結晶を緻密に形成することでバリヤ性が発現し,耐食性が向上する.これと同時に,水蒸気の熱エネルギーを活用し,アルミニウム合金を組織制御することで析出強化により高強度化が実現する.水蒸気プロセスによって実現する,このような興味深いアルミニウム合金の多機能化手法について紹介する.
著者
藤本 憲次郎 相見 晃久
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.225-229, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
29

近年「データ駆動型研究」や「インフォマティクス」をタイトルに含む研究が増え,ハイスループット・自律化実験を交えたDX化に向けた取り組みが活発になってきた.対象となる素材や形態が多くある中,本稿では多元系酸化物粉末に焦点を当てたインフォマティクス研究につながる研究として取り組んできたコンビナトリアル技術,具体的には液相プロセスに基づいた粉体試料群の自動作製,高速粉末X線回折,物性評価治具そして放射光粉末X線回折のための治具開発について紹介する.
著者
山内 美穂
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.208-213, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
18

持続可能なものづくりを実現するには,高効率触媒の開拓が必要となる.本稿では,水を水素源とする電気化学的物質変換反応を活性化するために求められる触媒の組成,配列,構造を議論するとともに,筆者らが開発した無機ナノ触媒の機能を紹介する.初めに,炭素循環の要となるCO2還元反応(CO2RR)を促進する無機触媒の制御要因について議論する.また,高効率蓄電の新しい方法となる有機酸あるいはケトンからのアルコール化合物を合成するために作製されたTiO2をベースとする電極材料を紹介する.さらに,有機酸とケトンの電気化学的還元の応用例として熱電子変換とアミノ酸合成についての研究例を紹介する.
著者
竹内 一郎
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.199-207, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
44

With its ability to enable rapid screening of a large number of different materials, the combinatorial high-throughput approach has become an integral part of the experimental toolbox for materials exploration and discovery efforts across virtually all areas of materials science. With the advent of the Materials Genome Initiative in the U.S., high-throughput materials synthesis and characterization has come to play the complementing role to the surge of activities in computational materials science. In this article, I provide my perspective on how the combinatorial approach has evolved over the years and how informatics and machine learning have come to play a central role in the field.