著者
橋本 修 渡邊 慎也 松本 好太 KUMAR Pokharel Ramesh
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

無線通信環境の問題点を解決する設置環境側の対策手法の一つとして電波吸収体の適用が注目され、これまでにレイトレーシング法による解析や実験用ブースなどを使った実験的研究が広く行われ、種々の吸収体が提案されてきた。しかし、このような吸収体の提案に対して、1.無線LANを想定した環境で実際に無線LAN対応の電波吸収体を設置し、その通信環境の改善効果を実験で検討した例は極めて少ない。2.オフィス内の中央などで使用されるパーティションにおいても、電波が乱反射して影響を及ぼすといった恐れがあるが、パーティションなど室内に設置されたものに電波吸収機能を付加し、無線LANに対応した電波吸収体を検討した例は少ない。そこで、無線LAN環境改善をメインとし、下記の検討をそれぞれ行った。1.一般的な建物への適用を想定し、取り扱いが容易な一般内装建材を組み合わせた無線LAN対応の三層型電波吸収体を、小規模オフィスを模擬した空間に設置し、無線LAN実機を用いた伝搬実験を行った。この結果、まず壁1面への一般建材を用いた三層型吸収体の設置により、通信速度は設置前後で全ての測定点で向上し(平均40%)、吸収体設置による無線LAN通信速度の改善を確認した。2.パーティションに電波吸収機能を付加することで、無線LANで使用される周波数帯域に対応したパーティションタイプ電波吸収体について検討した。この結果、無線LANの使用周波数帯域である2.45GHzおよび5.2GHzにおいて、垂直入射で20dB以上、TE・TM両偏波および円偏波において、入射角度が5度から20度まで、15dB以上の吸収量が得られることを確認した。以上のことから、無線LAN用のパーティションタイプ電波吸収体の実現性を理論的かつ実験的に確認することができた。
著者
中川 敦子 鋤柄 増根 水野 里恵 古賀 一男
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

自分の順番が来るまで待つというような自己を制御する力は、3歳以降おもに認められるが、本研究では、それ以前の子どもの注意力や、内気・臆病・引っ込み思案といった傾向、環境(育児文化)などが影響を及ぼすと考え、月齢12ヶ月から36ヶ月にかけて縦断研究を行った。その結果、月齢36ヶ月時の自己制御行動には月齢18ヶ月時の内気・臆病といった傾向が関連すること、発達初期の注意機能は負の情動と関わることが示唆された。
著者
中西 啓子
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、宗密の現存する全著述にわたって彼の三教論に関する記述を調査し、『円覚経大疏』『円覚経大疏釈義鈔』から「原人論」へと集約されるその議論を報告書にとりまとめた。目次は次のようである。序-「原人論」における三教論。1、「一心」と「一気」。2、儒道二教批判(其の一)-『円覚経』普眼章法空門疏鈔。3、儒道二教批判(其の二)-『円覚経』弥勒章業報門疏鈔。4、一気(元気)批判とその周辺。結びにかえて-「原人論・会通本末篇」の検討。これによって、おおよそ以下のようなことを指摘した。宗密は仏教主体の三教一致論を提示し、仏教の宗本たる「一心」に対して、儒道二教の本源を「一気」にまとめ、一心のうちに一気を包摂しようとする。その場合まず、儒道二教の万物生成論(虚無大道・天地・自然・元気)をとりあげ、仏教の因縁にもとづいて、法空や業報を理解せず矛盾を生じていると批判する。ついで、気についてはこれを物質的な元素として意味を限定したうえで、一気から形身と天地世界が生成される過程を、一心における三細六麁の展開過程に組みいれている。これは、澄観によって示唆されていた論点をふまえながら、宗密自身の教学にもとづいてまとめたものである。いうまでもなく、このような議論においては理論的な不整合はまぬがれがたい。しかし、宗密は、六朝以来の神不滅論を継承しながら、それを一心の立場から再構築し、心識(神)と形身の関係、迷いの心識(神)から絶対的な霊性(一心)への展開過程などを明らかにしているのである。神不滅論における「神」と「形」を、「一心」と「一気」に変換し、後世の三教論にたいして新たな枠組みを提供していると言えよう。
著者
成行 泰裕 梅田 隆行 齊藤 慎司 鈴木 建 羽田 亨 成田 康人
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、太陽風中の非平衡な速度分布が磁気流体波によって生成される過程について、数値計算・理論解析を用いた議論を行った。その結果、(1)磁気流体波が存在する場合に現れる「見かけの」非平衡速度分布が磁気流体系の平衡状態に対応していること、(2)太陽コロナから伝搬する磁気流体波が伝搬過程で生じる急峻化の過程で非平衡な速度分布が生成されること、(3)非平衡な速度分布によって励起される短波長の波動によって低周波の磁気流体波の減衰が促進されること、などが明らかになった
著者
山田 望
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ペラギウス派の思想史的起源は、アクイレイアのルフィーヌスによるオリゲネス、バシレイオス、エヴァグリオスらのラテン語訳、さらにペラギウス派のキーワードである「キリストの模範と模倣」の概念においては、ルフィーヌスの前任者であったアクイレイアのクロマティウスによる著作からの影響のあることが判明した。これらアクイレイア司教たちの手による翻訳や著作に、オリゲネス主義者として知られるエヴァグリオスやオリゲネスの影響を決定的に受けていたバシレイオスの著作も含まれることから、オリゲネス主義が思想史的起源ではないかとの当初の仮説が証明されたと結論づけることができる。
著者
本郷 敏雄 日景 盛 安増 茂樹 喜多 和子 春宮 覚
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

「唾液に浸漬した歯科用有機材料硬化体由来の化学物質を同定・定量する簡便な一斉分析法を開発」では唾液浸漬による歯科用有機材料からの溶出物の同定、代謝物の同定をHPLCで高感度に定量できる簡便な一斉分析法を開発した。その結果から、ポリカーボネート製矯正用ブラケットからは口腔内では微量ながらビスフェノールA(BPA)が常に唾液に移行している可能性並びにレジン系仮封材からはフタル酸エステルであるジプチルフタル酸が唾液に移行している可能性が推定され、その摂取量は子供では無視できない量であることが明らかとなった。「ヒト培養細胞を用いたエストロゲン様物質の高感度で簡便な検出法」ではHeLa細胞にメダカのエストロゲンレスポンシブエレメント領域を含むフラグメントを挿入し、1ng/mL 17β-estradiolでも細胞が反応する検出系を確立したが、より低濃度の検出系を開発するにはGFPの代わりに化学発光するluciferase用いる必要性が考えられた。「高感度突然変異検出システムの開発」ではBPAの変異誘導性は、少なくともRSa細胞においてはhERαを介さない作用であるという可能性が示唆され、GRP78発現抑制細胞では、非常に低濃度のBPで変異誘導性が認められたことからGRP78発現抑制細胞を化学物質の変異原性を高感度に検出する細胞として使用できる可能性が示された。「エストロゲン感受性遺伝子導入メダカによる評価系の開発」ではChoriogenin遺伝子5'上流域とGFP遣伝子の融合遺伝子をメダカ受精卵に注射し、遺伝子導入系統を作製したところ、エストロゲンにより肝臓でGFP発現を示し、試験系は簡便なエストロゲン様物質の検出及び評価系として有用であることが明らかとなった。「歯科用有機材料による代謝活性化酵素誘導検出系の開発」では多環芳香族炭化水素(PAH)とBPAへの複合曝露がAHRシグナル伝達経路およびCYP1A1遺伝子の発現へ及ぼす影響を調べた。その結果、BPAはそれ単独ではCYP1A1遺伝子の発現をほとんど誘導しなかったが3-メチルコランスレンとの併用処理により発現を相乗的に誘導したことやBPAは芳香族炭化水素受容体(AHR)/ARNT複合体を介して転写レベルでCYP1A1遺伝子の発現を誘導していることを明らかにし、BPAとPAHとの複合曝露でAHRシグナル伝達経路を介した毒性発現する経路のあることが示唆された。以上の結果から、本研究で開発した各評価系は歯科用有機材料の生物学的基礎試験に応用可能な新規高感受性生物学的評価法であると考えられる。
著者
片岡 俊一 佐藤 俊明 宮腰 淳一 早川 崇 佐藤 俊明 宮腰 淳一 早川 崇
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1923年関東地震の余震のうち連携研究者が所属する機関で保有している13個の余震記録を整理し、地動を推定した。ついで、大規模な余震の一つである1924年1月15日に発生した丹沢を震源する地震の震源モデルを復元地動を参考に求めた。さらに、この震源モデルから首都圏各地の広帯域の地震動を予測した。その大きさは現行設計レベルよりも概ね小さいものであることが分かった。また、数値実験により今村式2倍強震計の飽和記録の復元の精度を確認した。
著者
柴田 拓二 後藤 康明 城 攻 城 収
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

耐震壁脚部の応力条件やコンクリ-トの打継ぎ条件を実験変数とする単層鉄筋コンクリ-ト造耐震壁模型7体の水平加力試験結果を用いて、壁脚部におけるスライディングの発生条件及びスライディング耐力について検討し、以下の諸点を明らかにした。なお、試験体形状は両側に柱形を有する単層1スパンモデルで、シアスパン比M/QD、コンクリ-トの脚部打継ぎの有無、躯体素材(コンクリ-トとモルタル)、脚部界面処理法、基礎スラブ厚さの5つを影響要因とする計7種各1体である。(1)試験体はすべて曲げ降伏型に設計されているが、繰り返し水平加力によってシアスパン比が大きいと曲げ破壊し、小さいと曲げ降伏後に脚部の滑り破壊に至りやすい。初期剛性に占める滑り変位の割合は、打ち継ぎがある場合と基礎梁のせいが大きい場合にやや大きい。また最大耐力時に占める滑り変位の割合は、シアスパンが小さいほど大きい。いずれも柱脚部のダボ・素材の相違の影響は殆ど無い。(2)耐震壁の層間変形角を滑り・脚部回転・剪断・曲げの4成分に分解して、繰り返し加力における剪断力と各変形成分とから求められるエネルギ-吸収量の全量に対する割合の推移は、変形成分そのものの推移と大きな相違は認められない。(3)既往の滑り破壊耐力式は、均等な圧縮応力と剪断応力が分布している応力条件から導かれたものであるが、これを曲げモ-メントを受けている壁脚部へ適用する方法として、中立軸の測定結果を考慮して壁脚部の圧縮断面積を圧縮柱断面と仮定し、均等軸力に純剪断力を受ける場合の滑り剪断応力度式3種を適用して比較した。この結果、Brirkeland式の適合が最もよく、Mattock式は曲げ亀裂後の壁脚には適合しにくい。今後は更に、シアスパン比・コンクリ-ト強度・柱軸力・柱壁軸筋量等の影響についても明確にすることが望まれる。
著者
太田 健一郎
出版者
横浜国立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

溶融炭酸塩燃料電池は第二世代燃料電池として注目され、我国においては通産省におけるムーンライト計画等で精力的な開発が進められている。ここでは高温,溶融塩という厳しい条件下での各種材料の劣化が問題であるが、特にカソードとして用いられている酸化ニッケルの溶解,アノード近傍での析出が電池の長期運転の大きな障害となっている。本研究ではまず現在用いられている酸化ニッケルの溶融炭酸塩中への溶解度を測定した。リチウム一カリウム二元系炭酸塩中への酸化ニッケルの溶解度は650℃、二酸化炭素1気圧下で40×【10^(-6)】(モル分率)であり、高温ほど溶解度は小さくなった。また、二酸化炭素分圧が大きくなると、溶解度は比例して増大した。これらは酸化ニッケルが溶融炭酸塩中へ酸性溶解しているとして説明できた。酸化ニッケルの安定性を向上させるために、他の元素を添加することを試みた。添加元素としては酸化鉄を選び、これと酸化ニッケルの固溶体であるニッケルフェライト(Ncx【Fe^(3-x)】【O^4】)に注目した。このニッケルフェライト中の鉄、ならびにニッケルの溶解度は純酸化ニッケルに比べてかなり小さく、リチウム一カリウム二元系炭酸塩中、650℃、二酸化炭素分圧一気圧下で、いずれも2〜2.5×【10^(-6)】(モル分率)と15分の1ないしは20分の1の値を得た。二酸化炭素分圧が大きくなると溶解度は増大するが、圧力に対する依存性は酸化ニッケルより小さく、溶融炭酸塩燃料電池の作動条件下ではカソード材としてのかなりの安定性の向上が期待できる。以上より、酸化ニッケルを単独で用いるよりは、これに他の元素を添加することにより、炭酸塩中での溶解度は減少し、溶融炭酸塩燃料電池のカソード材料としての安定性が向上する例のあることが判った。
著者
福土 審 金澤 素
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

脳腸相関の詳細と過敏性腸症候群の病態を解明することは、心身医学的に重要であるだけでなく、社会的利益が大きい。本研究では、炎症回復後の過敏性腸症候群の動物モデルに対する副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)拮抗薬の投与が、動物の内臓知覚過敏と消化管伸展刺激による粘膜炎症の再燃の病態をともに改善させた。また、ヒトへのペプチド性CRH拮抗薬の投与が脳腸相関を介した過敏性腸症候群の中枢機能を改善させた。
著者
正村 和彦 目黒 玲子
出版者
弘前大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

ウイスターラットに拘束水浸(23℃)ストレスを2.5時間与えた後、われわれが開発した三価の非ヘム鉄および二価の非ヘム鉄を組織化学的に証明する高感度灌流パールス法と灌流タンブル法(Meguro et al.,2003)で可視化し、胃粘膜の非ヘム鉄の動態と胃粘膜傷害との関連を光学および電子顕微鏡で調べた。水浸ストレスによって胃の小弯側に生じた粘膜褶曲の凸部に胃粘膜傷害が生じた。胃粘膜傷害では胃の壁細胞が他の粘膜細胞よりも早期に傷害されることが観察された。壁細胞は細胞および核の膨化と核クロマチンの凝集による核質の淡明化を示した。正常の壁細胞はおもにミトコンドリアに非ヘム鉄を蓄積しているが、胃粘膜傷害部位では、壁細胞における非ヘム2価および3価鉄の増加が見られた。これに関連して、傷害された壁細胞にヘムオキシゲナーゼ 1およびフェリチンの発現が増加した。これらの所見から、ストレスによる胃粘膜の局所的虚血によりミトコンドリアの膜傷害、ミトコンドリアの非ヘム鉄およびヘム鉄の細胞質への遊離、ヘムはヘムオキシゲナーゼ 1によって酸化/分解されて非ヘム鉄が遊離、これに対応して非ヘム鉄を隔離するためにフェリチンの発現が起きたと考えられた。また、再灌流によって生じたスーパーオキサイドと遊離の鉄イオンが反応してヒドロキシラジカルを生成し、これが壁細胞および周囲の他の細胞の膜脂質、蛋白質、DNAなどを酸化して傷害を起こし、広範な胃粘膜傷害を結果すると考えられた。水浸ストレスによる胃粘膜傷害は胃粘膜の褶曲部に生じることから、胃の筋層の局所的収縮が粘膜血管を圧迫して虚血を生じることが考えられた。
著者
大川 清 大野 始
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

樋口ら(1993)は開花の主要因により光周期性、温周期性、栄養・生殖生長周期(VR)型の3タイプに分けて、花卉の類型化を行った。この類型は多様な花卉を発育相と開花誘導要因により類別化した画期的なものであるが、世界各国で実施された生育習性および花卉の開花調節の研究の大部分は生育相の視点から研究されておらず、莫大な論文が発表されている割には類別するための肝心なデータが不十分なものが多い。研究代表らが現在までに実施した花卉の生育習性と開花調節のデータから、該当するものはつけ加えた。しかし研究代表らが実施した花卉の中ではアネモネ(発芽と花芽分化・開花に質的要求無し。10℃、4〜5週間処理で切り花本数と品質が高まる)、ステファノティス(花芽分化は中温で促進、高温で抑制。花芽分化後は高温が開花を促進、分化後低温では長日が開花を抑制、短日は著しく抑制、花芽分化に日長は関係しない)、スクテラリア・バイカレンシス(花芽分化・開花に日長と温度に対する質的要求無し)、ヒメヒマワリ(花芽分化と開花に温度に対する要求無し、日長に対しては質的要求性のある長日植物)、カンパニュラ・ラクティフローラ(花芽分化・開花に低温の質的要求無し、日長にたいして質的要求性のある長日植物)などは樋口らの類型に入らないことが明らかになった。竹田(1999)は環境条件によって変化する発育相よりも、環境に対する反応の違いに着目して類型化したほうが応用場面において利便性が高いと考えて、主な栄養生長期間、開花時期、開花に対する温度と日長の影響によって区分している。いずれにしても、花卉の生育習性の類型化に際しては春化や休眠をはじめ用語の明解な定義が必要である。
著者
村松 郁延
出版者
福井医科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

ペインティング法により100〜150μmの小孔に脂質平面膜を形成し,膜電位固定下で種々の海洋毒の作用を調べた。その結果,イワスナギンチャク毒パリトキシン,サザナミハギ毒マイトトキシン,サンゴ毒のゴニオポーラトキシンやアネモネトキシンは脂質膜に対してチャネルを形成し得なかった。しかし、海綿から得られたポリペプチドトキシンであるポリテオナミドA,B,Cの3種がチャネルを形成することを見つけた。有効濃度は1pMと低く,1MCsCl液中でのシングルチャネルの電流の大きさは+200mV負荷で約0.7pA,-200mV負荷で約2pAであった。この電位依存性はポリテオナミドA,B,Cいずれにおいても認められたが,シングルチャネル開口の持続時間はB>A>Cの順であった。3種のポリテオナミドはD体とL体のアミノ酸約40ヶが交互に結合した同一のβヘリックス構造を中央にもつことより、チャネル形成と電位依存性にこのβヘリックス構造が関係していること,しかし,チャネル開閉のゲーティングにはC末およびN末の構造の違いが微妙に影響していることが示唆された。現在,C末およびN末を化学的に修飾して,ゲーティングに対する影響を検討中である。
著者
前田 忠直 水上 優 千代 章一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

近代住宅の構成システムを,その変容過程の分析をとおして場所論的にあきらかにしようとする本研究は,平成12年度には,アルヴァ・アアルトの住宅作品(マイレア邸を中心として)他の研究として遂行され,平成13年度には,ル・コルビュジエの住宅作品(クルチェット邸)の研究他として,平成14年度には,ルイス・バラガン(バラガン自邸)の研究,ル・コルビュジエの住宅作品(ラ・ロッシュ=ジャヌレ邸)の研究,さらにはルイス・カーンの住宅作品(ホーニックマン邸)他として遂行され,別リストの諸論文が公表された。上記の住宅作品の研究は,草案群の吟味を基礎とし,3種のダイアグラムの作成による平面分析,作品の模型作成による検証,さらに建築家自身の言葉による解釈をとおして遂行されている。主題解明は,2つのアスペクトをとおしてなされる。(1)住宅の内部を構成する諸要素のシステムの解明。(2)住宅(内部)と土地(外部)との関わり合いの解明。前者については,主室の諸要素の配置構成の変容分析をとおして,アアルト,ル・コルビュジエ,バラガン,カーンの構成方法の特性があきらかにされた。後者については,内部と外部を媒介する要素,つまり中庭(マイレア邸),テラス(クルチェット邸,バラガン邸),サテライト(ホーニックマン邸)の意味がそれぞれダイアグラムC(住宅と土地とのゲシュタルト図)の作成とともに主題化され,その場所論的解釈が目論まれる。さらに,ル・コルビュジエの住宅作品では,移行の場所,「斜路」が主題化され,空間構成の深まりの仕方が景観の問題として分析された。カーンの住宅作品では,内部成立を担う特異なエレメントが「サテライト」として,その存在論的意味が分析された。
著者
萩行 正憲
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

テラヘルツ帯においても、可視域同様表面プラズモンポラリトンやそれに伴う電場の局在は様々な現象を引き起こす。本研究では、2次元の金属カットワイヤー配列に着目し、精度の高い試料を作製し、テラヘルツ時間領域分光測定による評価を行い、透過スペクトルと電場集中の詳細を明らかにするとともに、電場増強に伴う2次高調波の発生実験を行うことが研究内容である。まず、2次元のワイヤー配列、並びに、ワイヤーに切れ目を導入した試料(カットワイヤー配列)を市販のプリンタとメタルカラーインクを用いて作製し、テラヘルツ透過特性を測定した。得られた振幅透過率と位相スペクトルから有効複素誘電率と有効複素電気伝導度を導出した結果、ワイヤー配列はドルーデモデルに従う金属的な振る舞いを示すのに対し、カットワイヤー配列は低周波数で絶縁体的な振る舞いを示すことがわかった。FDTD法を用いて電場強度のシミュレーションを行った結果、低周波数ではテラヘルツ波は切れ目の部分を主として透過し、その結果として局所的な電場増強が起こっていることが判明した。次に、より高精度の試料を作製するためスーパーインクジェットプリンタを用いて、半導体(Si、GaAs)基板上にシングルミクロンオーダーの金属ワイヤー配列の作製を試みた。その結果、印加電圧、描画速度、ベーキング温度を最適化することにより、数ミクロンの精度で試料が作製可能であることがわかり、この手法で2次高調波発生実験用の試料作製を得ることができた。
著者
石井 敦
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

朝日新聞を対象にした新聞報道のフレーミング分析を行った。記事の70%はポジティブにCCSを捉えているものであった。CCSのリーケージ・リスクに関する記事はほぼ皆無であった。支配的なフレーミングとしては「技術移転」、「革新的技術」、「大規模CO2削減技術」、「技術先進国としての日本」が挙げられる。引用されていたアクターは、官僚や政府、産業アクターや研究者が中心であり、環境NGOに関する引用はなかった。外国アクターとしては、アメリカやヨーロッパ、中国、インド、IEAとIPCCの国際機関に関する引用が多かった。
著者
矢倉 研二郎
出版者
阪南大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

カンボジアの都市出稼ぎ労働者と農村世帯を対象とした調査で得たデータを分析した結果,農村の若者の都市への出稼ぎは、出会いの機会の提供を通じて他州出身者間の結婚を増やしており、その結果、そのまま出稼ぎ先や結婚相手の故郷に住むという形で、とくに零細農家の子どもの離村を促していることが明らかになった。親たちは,離村した子どもには農地を分与しないことが多いが,原則としては均分相続を志向しており,カンボジアでの農地細分化は今後も続くと予想される。
著者
胥 鵬 森田 果 田中 亘 蟻川 靖浩 松井 建二 内田 交謹 湯前 祥二 宮崎 憲治 竹口 圭輔 武智 一貴
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ヘッジ・ファンド・アクティビズム、経営判断の原則、防衛策、株式持合、普通社債市場の発展、銀行株式保有制限法による銀行持株比率の低下、子会社役員等への親会社ストック・オプション付与などの様々な側面から日本における企業統治の新展開及びその効果について、理論・実証分析を行った。その研究成果は、多数の図書・雑誌論文・学会発表として公表された。
著者
西坂 崇之 政池 知子 矢島 潤一郎 矢島潤 一郎 足立 健吾 須河 光弘 堀部 恵子 龍口 文子
出版者
学習院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

新しい光学顕微鏡技術を用い、膜超分子モーター(主にFoF1-ATPase)の作動原理について、分子のレベルにおける解明を試みた。タンパク質の部分的な領域が機能する瞬間のダイナミクスが可視化され、化学反応と対応づけることもできた。さらにキネシン-微小管系におけるコークスクリュー運動の直接可視化にも成功した。これらの技術や成果は「1分子構造生物学」という新しい学問領域に発展する可能性がある。
著者
木村 昭夫 生天目 博文 井野 明洋 仲武 昌史 坂本 一之
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,空間反転対称性の破れに起因するナノ構造体のスピン分裂バンド構造について,スピン・角度分解光電子分光,高分解能角度分解光電子分光,および低温走査型トンネル顕微鏡を用いて明らかにすることを目的として行った。その結果,ビスマス単結晶のバルク状態のスピン状態の観測,タリウムや鉛吸着半導体表面における巨大なスピン分裂バンドの観測,さらには新しいトポロジカル絶縁体の発見など数々の顕著な成果が得られた。