著者
平山 直紀 大嶋 俊一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

負電荷を持つ窒素原子をLewis電子対ドナーとして用いるスルホンアミド型キレート試薬の抽出試薬としての機能解析を目的として、以下のような基礎的研究を行った。1 β-ケトエノール型キレート抽出試薬のエノール型-OH基をスルホンアミド基(-NHSO_2R)に置換した場合の効果を評価するため、2-ヒドロキシベンゾフェノンの-OH基を-NHSO_2R基に置換したところ、2価銅イオン(Cu^<2+>)の抽出能が顕著に低下した。これに対し、ケト基(=O)を=NR'基に置換した類縁体の場合には、スルホンアミド化による抽出能の増大が見られた。さらに、R'の末端に-OH基を導入すると抽出能はさらに向上した。この結果より、スルホンアミド型キレート試薬の特性は、当該部位以外のLewis電子対ドナーの選択によって大きく変化しうることが示された。2 イオン液体(IL)を抽出相として用いるILキレート抽出系における抽出試薬としてのスルホンアミド型キレート試薬の利用可能性を探索するため、8-スルホンアミドキノリン誘導体を用いた場合の2価金属イオンの抽出挙動を検討した。既存の有機溶媒を用いた場合と比較して、IL系では抽出能が増大し、この型の試薬がILキレート抽出系に有用であることが示された。また、-NHSO_2R基においてR=CF_3とした場合、サイズの小さい金属イオンでは錯形成時の立体障害に起因する抽出能の低下が見られたのに対し、かさ高い金属イオンの場合はCF_3-基とILとの親和性の効果により1:3陰イオン性錯体がイオン交換により優先的に抽出され、結果として抽出選択性に変化が現れた。すなわち、スルホンアミド型キレート試薬を用いるILキレート抽出系では、隣接置換基による選択性制御が可能であると示唆された。
著者
石井 淳蔵 嶋口 充輝 栗木 契 西川 英彦 松井 剛 村下 訓 水越 康介 岸谷 和広 清水 信年 宮内 美穂 金 雲鎬 棚橋 豪 小田部 正明 山本 奈央 吉田 満梨
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、マーケティング競争下におけるデザイン戦略の重要性について、近年注目されつつある「ロバストデザイン」を核概念として、理論的・歴史的・実証的な研究が実施された。その主要な研究成果として、デザイン概念についての再構築が行われるとともに、競争優位性をもつデザイン戦略の現実と意義、そしてその背景としてのマーケティング競争のメカニズムが明らかにされた。
著者
長谷川 憲 山元 一 大津 浩 小澤 隆一 小泉 洋一 村田 尚紀
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、冷戦終了後の国際関係が、急速な国際化現象と地域化現象の中で進展している状況の中で、国家および国際機関の役割が変化する開題について検討してきた。具体的には、国際化現象の下での憲法および公法理論の変容(政府権限の国際機関または地方機関への委譲、国際機関の民主主義的コントロールなどの問題)、国家機関と国際機関との関係の変容(国際機関、とりわけ押収人権裁判所・国際司法裁判所・国際刑事裁判所など超国家的裁判機関による政府権限のコントロールの問題、欧州委員会・欧州議会などの権限の正当性の問題)、市民生活の変容(欧州市民権・亡命権・庇護権・経済的諸権利・発展の権利・人格権など基本的人権諸領域の担手・保障手段の変化の問題)、などに関して研究を進めた。本年度の成果としては、2004年8月30日より9月4日の日程で、「公共空間における裁判権(Le pouvoir juridictionnel dans l' espace public)」をテーマとする国際シンポジウムを、工学院大学・関東学院大学・東北大学・東北学院大学で開催した。本研究グループからは、長谷川憲が「Contentieux educatifs en milieu scolaire et droits des etudiants」、大藤紀子が「Professionali-sation et《non professionnalisation》des organes juridictionnels au Japon」などの報告を行った。また、上記のシンポジウムに関して、「公共空間における裁判権」との表題で、2006年度刊行を有信堂からめざしている。また、関東学院大学でのシンポジウムは、ジュリスコンサルタス15号に掲載された。
著者
高木 達也 安永 照雄
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

非線形要因解析を行うため、従来の誤差逆伝播型ニューラルネットワークとは異なり、Ojaらが提案したHebbian学習型ニューラルネットワークを改良して、効果的な独立成分解析法のアルゴリズムを開発、プログラム化した。アルゴリズムはおおよそ以下のようである.まず、学習は、基本的にはOjaらの方法に従ったが、ただ1個の動作関数を用いたOjaらの方法とは異なり、複数(p個)の動作関数を用いたため、下式、 W_p(t+1)=W_p(t)+εxf_p(x(t)^tW_p(t))diag(sign(c_<pi>(t))) に従って、行った。ここで、εは学習率、tは学習回数であり、分散が最大となるとき(t=t^*)のωを採用することにより、分散が最大になる方向への学習が効率的に行われる。アルゴリズムをまとめると以下のようになる。(1)元のデータに対してPCAを行って得られた主成分得点行列、あるいは、成分行列を入力データとする。(2)データの標準化を行う。(3)更新式に従い、wの値を計算し、ノルムを1にするために、w(t)=W(t)/||w(t)||とおきかえる。(4)式に従って、cの値を計算する。(5)動作関数pを用いてt回学習を行ったときのc_iとc_jの符号が異なっていた割合の、全ての動作関数の割合に対する比率をr_pとし、主成分得点を計算する。(6)z_iの分散を計算し、分散最大となるt^*を求める。(7)収束するまで(3)〜(6)を繰り返す。作成されたプログラムにより、押収覚せい剤の不純物のGC-MSデータによるProfiling Analysisを行った。PCA, CATPCA, MDS, SOM、5層砂時計型ニューラルネットワークの結果と比較したところ、今回のHEPネットの結果が、国内で4つの手法で合成された既知データとの比較の結果、最も適切な結果を与えることが見出された。他の方法では、既知データが4つに分類されなかったのに対し、HEPでは座標上に適切な位置を与えることが示された。これらのことより、HEPネットが、要因解析法として適切な結果を与えることが示された。
著者
岩田 祐子
出版者
科学警察研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

安定同位体組成を用いた大麻の異同識別(押収試料同士の関連性を明らかにすることを目的として、試料同士が異なるか同一かを判断する)について検討を行った。乾燥大麻中の大麻主成分について、ガスクロマトグラフ-安定同位体比質量分析装置を用いた分析方法を確立した。異なった被疑者から得られた資料同士の異同識別を行い、成分ごとの安定同位体組成を用いることにより識別することが可能となることを確認した。
著者
田甫 桂三
出版者
帝京平成大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

米国議会図書館に、国民学校期に使用された教科書が所蔵されている。それらの教科書には書き込みのある付箋等が貼られ、またMilitary Affairs、〇×等の書き込みがある。これらの書き込みから太平洋戦争後、学校で使用された墨塗り教科書原本であった可能性がある。太平洋戦争後、敗戦国日本は国民学校期の教科書を軍国主義的、国粋主義的等の理由で使用できなくなった。学校では新しい教科書が出来るまで、これまで使用した教科書に墨を塗り使用したが、それらの教科書は回収されたため日本には殆ど現存しない。墨を塗る個所を決め、指示したのはだれか、それはどのような理由によるかを解明するために、議会図書館所蔵の教科書の修正部分とその理由を複写し、議会図書館所蔵の教科書リストを作成し分析した。
著者
横手 一彦
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

この5年間、在米資料や国内資料の確認作業から、新資料の発掘に努めた。また、GHQ/SCAP検閲制度の枠組みを解明する作業などによって、戦後文学成立期の全体性の再構築を試みた。そのため、本課題を10領域に細分化し、これらの研究作業や論究によって、全体的な成果を獲得する研究計画とした。また日本は、一九四五年八月から五二年四月まで、他国に軍事占領されていた。敗戦期文学や被占領下の文学との視座から、実証的な手法による論考を積み重ねることに努めた。その過程で、研究計画を策定する段階において、想定していなかった意想外の進展を得た。これを、研究成果項目に列記した。
著者
笹田 栄司 村上 裕章 鈴木 秀美 亘理 格 赤坂 正浩 林知 更
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

「裁判の公開」原則の定める非公開要件は極めて厳しい。そうしたなか立法化されたプライシー及び営業秘密の保護を理由とした公開停止を検討し、その合憲性を支える理論について、公序概念拡張説とともに、例示説の立場から憲法82条と32条を組み合わせた解釈を検討すべきとの知見を得た。さらに、目下の立法課題である情報公開訴訟におけるインカメラ審理について、上記知見を用いた憲法上の基礎づけを行い、その適用範囲及び実体的要件について立法化に向けた提言を行った。
著者
三木 一郎 松瀬 貢規 久保田 寿夫
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

電気自動車(EV)用40kW、12-8極のスイッチトリラクタンスモータ(SRM)の設計開発を行い、始動および定常駆動の位置センサレス制御アルゴリズムの開発・実用化を目指し、新しい駆動系電気自動車の完成を最終目的として研究を行った。市販の車をベースに電気自動車を開発するために、従来のエンジンを取り外し、代わりにSRMがそのまま設置できるようにモータ外形寸法をまず決定し、次にバッテリーで供給可能な電圧から必要なトルクが得られる電流を求め、基本的なモータ仕様を割り出した。これらの基本設計を基にモータの製作をメーカーに依頼し、同時にSRM用の特殊なインバータの製作を別メーカーに依頼した。これと並行して、位置センサレス制御アルゴリズムの開発を進め、次の事を明らかにした。1.始動、および低速から高速まで安定して運転が可能な位置センサレス制御手法を開発できた。ただし、始動法に関しては既に類似の手怯が発表されていることが明らかになった。2.負荷が印加され、電流が流れると磁気飽和の影響によりセンサレス制御の精度が悪化するが、これに対処する方法を開発した。3.速度推定は、低速になるとその精度が悪化していたが、これを改善する手法を見出すことが出来た。以上が、センサレス手法に関する研究成果である。EVを構成する基本的な要素、すなわちSRM、駆動用インバータおよひバッテリーによる模擬実験用システムを構成し、実験を行った。負荷にはPMモータを使用した。各指令速度に対する電流、電圧波形の測定、負荷試験などを実施した。これらの結果より、効率については、モータ単体て80-90%、駆動回路まで含めると65-75%程度であることがわかった。さらに、SRMの大きな欠点である振動・騒音についても追加て研究を進め、これらを軽減できる一方法を明らかに出来た。今後はこれをさらに進め、より実用性の高いSRM搭載電気自動車の開発を進める予定である。
著者
濱野 真二郎 久枝 一 野崎 智義
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

バングラデシュにおいて赤痢アメーバ症のゲノム疫学および免疫学的コホート研究を展開した。研究期間中、生後30ヶ月までの新生児385人より1426 検体の下痢便検体が得られた。病原性 E. histolyticaに加えて、非病原性E. dispar、病原性が未確定のE. moshkovskiiの検出・同定を試みたところ、4.6% の検体において病原性E. histolytica が検出され、およそ3%の検体においては E. moshkovskii が検出され、同原虫と下痢症との相関関係が認められた。一方、非病原性 E. disparは僅か 0.4% の検体で検出されるにとどまった。さらに、少なくとも6検体が E. moshkovskii単独感染による下痢と考えられた。以上の研究結果よりE. moshkovskiiが小児下痢症の原因となる病原性アメーバである可能性が示唆された。
著者
長畑 明利
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、T・S・エリオットの詩と詩論を、同時代の詩人や芸術家たちが展開した「抽象」についての言説に照らし合わせて再検討し、また、彼の詩に現れる死者の声の再現の意味をその「抽象」観との関連から明らかにしようとすることであった。このため、エリオットの詩作品、評論および書簡等における「抽象」および「死」への言及を分析し、また、ニューヨーク市立図書館にて、エリオットの詩草稿に加えられたパウンド、エリオット両者の欄外書き込みを調査した。調査・分析の結果、エリオットと抽象の関係について、概略次のことが明らかになった。(1)パウンド同様、エリオットも「抽象」を批判的に見る傾向がその博士論文などに見られること。しかし、(2)エリオットの初期の詩・詩論においては、パウンドの「漢字的抽象」と通底する構成主義的な抽象観も見られること。しかし、(3)エリオットには宗教意識に根ざすと考えられる形而上世界及び死後世界への強い関心があり、これが彼の普遍主義的、もしくは有機体的・全体論的(holistic)な「統合」への関心に連結されていること。(4)その形而上世界への関心は、構成主義的抽象に対するエリオットの関心が低減した後にも維持され、彼の後期の詩と詩論の一つの核をなすこと。以上の研究結果をもとに、研究成果報告書を作成した。またエリオットとパウンドの関係について、共編著書『記憶の宿る場所--エズラ・パウンドと20世紀の詩』(思潮社)所収の論考にその一部を記述した。なお、研究成果はさらに研究論文として別途公表の予定である。今後は本研究、そして、すでに一部考察を終えているスティーヴンズ、スタイン、パウンド、クレインと抽象に関する研究に加え、他のモダニズム詩人の抽象理解についての研究にも取り組み、アメリカのモダニズム詩と抽象をテーマにした包括的研究を進展させる計画である。
著者
三品 昌美 高橋 幸利 三品 昌美
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.グルタミン酸受容体ε2に対する自己抗体陽性症例の臨床特徴グルタミン酸受容体(GluR)の内のε2に対する自己抗体の高感度検出システムを確立し、小児慢性進行性持続性部分てんかん症例でスクリーニングを進めたところ8例中7例で陽性所見を得た。ウエスト症候群15例、レノックス症候群9例、局在関連性てんかん9例と対照6例においてはGluR ε2自己抗体は認めなかった。自己抗体はIgG/IgM型の自己抗体で、IgA型は見られなかった。一部の症例ではIgM型自己抗体からIgG型自己抗体へのスイッチが見られた。2.グルタミン酸受容体ε2に対する自己抗体陽性症例のエピトープ解析グルタミン酸受容体ε2に対する自己抗体陽性となった小児慢性進行性持続性部分てんかん症例で、ε2分子のどの部位が抗原となっているのかを明らかにするため、大腸菌蛋白発現系(PEXシステムなど)を用いて、自己抗体の抗原認識部位を検討した。その結果、全例で、C末側の細胞内ドメインに対する自己抗体の形成が見られ、1例では病期が進むとN末に対する自己抗体も一過性に出現した。C末は、細胞内情報伝達に重要な部位であり、その部位に対する自己抗体がEPC発現に関与している可能性がある。3.ε2以外のグルタミン酸受容体自己抗体検出システムの確立δ2グルタミン酸受容体を発現するテトラサイクリンシステムレポーター遺伝子を、トランスアクチベーター遺伝子を導入した細胞株にステイブルトランスフェクションし、発現したGluR δ2を抗原として患者血清中の自己抗体の有無を検索中である。4.自己抗体陽性例での免疫学的早期治療の検討グルタミン酸受容体ε2自己抗体陽性の小児慢性進行性持続性部分てんかん症例のうち、四肢麻痺となっている進行例にてγ-グロブリン大量療法・ステロイド療法を試みた。現在のところ著しい効果は認めていない。
著者
川本 佳代
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的である「一地域(研究代表者が属する広島市とその近郊)の大学や研究機関に所属する各領域の専門家,文化施設の学芸員,中・高等学校の教員が学習支援者として連携して,中・高校生の知的好奇心に基づく継続的な探究を可能にする学習コミュニティを構築する」ために,本年度は以下を行なった。(1)教員等によるコミュニティの維持・継続的なシステム利用NetCommonsの改良版(新機能の一部は昨年度本研究により実現)を導入し、広島県物理教育研究推進会などの大学教員・中・高等学校教員等がコミュニティを維持した。また、新たに大学の教員による中・高校生を対象とした講義のために、大学教員と高校教員とのコミュニティを構築した。(2)学習コミュニティの構築理科・科学を継続的に探究するための学習コミュニティ用サイトを充実させた(ルーム構成:各科目のルームの他、[みんなの広場][科学なんでもルーム][イベント情報][質問の部屋][職員室]他)。また、広島地域の大学の教員、中・高等学校の教員、文化施設の学芸員らに呼びかけ、平成18年度からこのサイトを利用した地域の中・高校生と大学教員等から成るコミュニティを構築し、大学教員による中・高校生を対象とした講義と連携させることになった。これにより、生徒は講義の内容や講義時間に限定されず、あらゆる科学事象について継続的な探究を行うことができる。(3)地域密着型科学コミュニティサイトの活性化要因に関する研究地域密着型科学コミュニティサイトを活性化する要因を明らかにするために既存のサイトの分析を行った。「科学サイト」「コミュニティサイト」「子ども向けサイト」各100サイトとそれらに含まれる地域密着型サイトを対象として、データマイニング手法と統計手法を用いて活性化した(=アクセス数の多い)サイトの特性や、各領域の専門家の作成するサイトの特性を明らかにした。その結果、(1)地域に密着したイベント情報の提供、(2)画像や動画・音声を交えた科学に関する情報の提供、(3)子どもの興味をひきつける手法として「キャラクターの登場」や「FLASHの使用」など、(4)コミュニケーションの促進の手法として,掲示板の設置と管理者の積極的な介入など、(5)利用者の興味を持続させる手法として「メールマガジンの配信」「月1回以上の更新」「無料会員登録制」などが有効であることがわかった。
著者
松久保 隆 佐藤 亨 小野塚 実 藤田 雅文 石川 達也
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、研究-1:偏位性咀嚼習癖を持つ患者の聴力変化の機構を明らかにするため、コットンロール噛みしめ時の聴性誘発脳磁場(AFEs)を定量的に比較検討すること。研究-2:歯科診療所に来院した患者の偏咀嚼と聴力値との関連性を疫学的に検討すること、である。本年度に得られた新しい知見は、研究-1:申請者らの開発した最大咬合圧の40%以下までのコットンロール噛みしめの条件でAFEs測定を行う方法を用いて研究1を行い、以下の結果を得た。噛みしめ時のAEFs応答は、左右側音刺激に対するAEFs応答はすべての被験者で低下しており、特に噛みしめ側と同じ聴覚野の応答に有意な差が認められた。噛みしめが聴覚野応答を低下させる理由として1)顎関節の偏位による形態的変化、2)中耳および内耳の神経支配への影響、あるいは3)gate controlによる中枢での抑制が考察された。本研究は、コットンロール噛みしめが、聴覚誘発磁場に影響を与えていることを客観的に示すものである。また、本研究に用いた方法は、噛みしめの聴覚応答をはじめとする体性感覚に影響を与えていることを実験的に検討する方法として有用であることを示している。研究2:オージオグラムの咬合咀嚼機能の動的評価への応用について20症例による検討を行った。すなわち、プレスケールおよびシロナソアナライジングシステムによる咬合咀嚼機能の評価にオージオグラムを加えることの有効性を評価しました。その結果、質問紙調査、口腔内診査、プレスケール、咀嚼運動ならびに作業用模型による分析にオージオグラムの周波数別の聴力低下パターン評価を組み合わせることにより、咬合咀嚼運動のより正確な動的評価が可能であることが示された。
著者
石垣 和子 杉下 知子
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

朝日新聞記事を中心に、第2回の社会福祉制度審議会勧告の出された1960年前後から現在に至る掲載記事が、高齢者介護に関して発してきた情報の質量を検討した。検討素材として2種類のデータベースを作った。一つは「としよりの日」あるいは「敬老の日」である9月15日の紙面で何がどう語られていたかに関するデータベース、もう一つは9月15日に限定せずに社説のみについて関連する記事を集めたデータベースである。社説データベースでは、法律や制度の新設・変化や関連委員会の提言・勧告、大きな調査などの結果発表を受け、社としての公式の見解が表明されていると受け止められるものが多かった。社説における高齢者介護問題の扱いは、1962年までは全く扱っておらず、その後は1982年を除いて毎年扱っていた。高齢者の在宅ケアを推奨する方向性の認められる社説は1970年に初めて出現し、1975年以降は頻繁に出現していた。敬老の日の記事では、社説、天声人語、読者の声、家庭面、社会面、1面、総合面など、あらゆる紙面にて関連記事が扱われていた。紙面に占める関連記事の量(記事面積で算定)は、1960年に入ると急激に増加し、そのうちでも敬老の日制定(1966年)、老人医療費無料化(1973年)、在宅支援サービスの始まり(1979年)、老人保健法の制定(1983年)に対応してピークが見られ、国策に敏感に対応していることが判明した。1987年には在宅サービスの拡充と老人保健施設の導入に対応して大きなピークを示した後、記事量は減少し現在に至っている。人々の関心と意識を反映すると思われる声欄では、1964年以降高齢者に関する話題の投書が取り上げられるようになっており、1974年、1980年から1983年においてはすべての声が高齢者の話題であった。1960年代に多く見られた、施設拡充や入所促進への肯定的な声が、1980年代になると住宅ケア推進へと傾く傾向が見られた。
著者
中村 義男 加美山 隆 河村 純一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

われわれがこの研究で得た成果は、以下のようにまとめられる。1.金属・非金属系:セシウム・メチルアミン・アンモニア系のCs-133のNMRスペクトルと電気伝導率の測定を行い系の示す金属・非金属転移と濃度ゆらぎなどの溶液構造との関連を明らかにした。またナトリウム・アンモニア系で200MHzのESR測定を行い、バルクの金属化に先立つ電子の非局在化を示唆する結果を得た。また酸化物ガラス中にビスマス、銀のナノサイズ超微粒子を析出させ、その光学吸収、融解温度などの物性の微粒子のサイズ依存性を明らかにした。タリウム・カルコゲン化物系の濃度ゆらぎと系の電気的性質の関係を明らかにした。2.有機・無機超イオン伝導ガラス系:ヨウ化銀と・ヨウ化テトラアルキルアンモニウム系のアルキル基のサイズを変えることにより、さまざまなヨウ化銀の容積分率のガラス試料を作製し、その交流伝導率を測定した。その結果、容積分率0.35付近で、顕著なパコレーション的なイオン導体・絶縁体転移を示すことがわかった。銀イオンと有機塩のプロトンのNMR、中性子錯乱、X線小角散乱などにより、このガラス中のイオンと分子の微視的運動状態についてさらに詳細に調べた。3.無機塩・分子性液体系:硝酸リチウム・グリセロール系では、塩の濃度の増加とともに粘性が増大し、電気伝導率は低下することがわかった。この系のグリセロールの分子運動を中性子の準弾性散乱の測定から調べた。また塩化リチウム濃厚水溶液とそのガラス中の水分子の運動をNMRにより測定し、中性子散乱の結果と比較検討した。これらの系ではイオンを介した低分子物質のネットワーク構造形成が系の物性を支配していることが分かった。これらの結果より、異種結合混在系の液体あるいはガラスでは、異相分離的(同種安定)、もしくは秩序形成的(異種安定)な「局所的ゆらぎ」が、系の電気物性を支配していると結論される。
著者
関口 秀紀
出版者
独立行政法人情報通信研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

情報機器の1つであるPC(Personal Computer)が動作時に非意図的に放出する電磁雑音を受信することによって、モニタ表示画像が再現される情報漏洩問題が顕著化し、PCおよびATM端末のような街角端末で表示する情報の漏洩が懸念されている。そこで、電磁雑音に起因するモニタ表示画像の情報漏洩を定量的に評価する方法を確立し、国際標準化機関に提案すると共に、本情報漏洩を防止するソフトウェア的な対策技術の研究・開発を行った。
著者
川端 正久 勝俣 誠 原口 武彦 大林 稔 落合 雄彦 望月 克哉
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

平成9年度は日本側研究者とナイジェリア側研究者との共同研究を主たる内容とした。研究項目は「変貌する西アフリカとナイジェリア」および「世界の中の西アフリカとナイジェリア」であった。日本側研究者とナイジェリア側研究者は共同研究シンポジウム(1997年12月、ナイジェリア国際問題研究所)を開催した。現地調査を実施し、大学の研究者と交流を実施した。西アフリカにおけるポスト構造調整への移行、ナイジェリアにおける民政移管の進行、ナイジェリアの状況(ビジョン2010、民政移管のプロセス、ナイジェリア経済の現状、日本・ナイジェリア経済関係、ナイジェリアの政治経済社会、市民社会の形成など)について分析した。平成10年度は日本側研究者とコートジボワール側研究者との共同研究を主たる内容とした。研究項目は「変貌する西アフリカとコートジボワール」および「世界の中の西アフリカとコートジボワール」であった。日本側研究者とコートジボワール側研究者は共同研究シンポジウム(1998年9月、社会経済研究センター)を開催した。現地調査を実施し、大学の研究者と交流を実施し、日本の援助案件のサイトを視察した。西アフリカの政治経済情勢、西アフリカにおける政治的民主化と民族・部族問題、CFA と非CFA、農業産品の生産と輸出、農業経済の状況、人民経済の可能性、アフリカ・アジア経済関係、日本のアフリカ外交などについて分析した。平成11年度は日本側研究者とアフリカ側研究者2人および研究協力者の共同研究を主たる内容とした。研究項目は研究課題全体の総括的研究であった。2回の共同研究シンポジウム(1999年9月と11月、アジア経済研究所)を開催した。西アフリカの持続的開発と金融制度、民族問題と民主化、人民経済の展望、宗教と社会、市民社会と新たなアクター、西アフリカの民主化、アフリカの民主化の成果と限界などについて分析した。研究分担者および研究協力者の論文12本で研究成果報告書を作成した。内容は西アフリカにおける政治的民主化、持続的経済開発、社会的変動などについて分析した論文から構成されている。