著者
梅澤 実 土井 進 浦野 弘 濁川 明男 中山 玄三 姫野 完治 谷塚 光典
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

教育実習における実践的能力を評価する評価基準を明らかにすることをねらいとし、教育実習での実習生の学びから、評価基準を探った。その結果以下のことが明らかになった。(1)授業設計段階での意思決定:初期は、興味・関心」が意思決定に大きく関わるが,授業の回数を重ねるに従い,その観点は次第に薄れ,理解度の項へと関心が高まる。(2)授業実践過程における意思決定:「子僕の反応」による意思決定要因は,「予想外の応答」と「子供の行動」に分けられる。「意思決定の実際」では、授業展開における「リスキー」か否かの判断は,授業が予定通り成立するかどうかである。しかし,実習が進むにつれ,子供達が「理解」するために,どのような意思決定をすればよいかという意識が芽生える。(3)授業を見る観点の変容:初期段階は、「子ども主体」の実現を探ろうとする意識で、大学における講義等で得た知識を授業者の具体的教授行為に同定する。授業を1〜2回経験した段階で、「説明」「発問」という教授行動を児童の側から捉える。授業を3〜4回経験した段階から、「特定児童」に目が向けられる。最後の段階では、「教材」についての見方、「子どもの学習にとって、どんな意味があったか」といった、「子どもの学習」と「教材」との関係を視野に入れた批判的視点が獲得される。
著者
野村 智幸
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

匂いを感じ取る嗅神経細胞は、定期的に死と再生を繰り返す珍しい細胞であることが知られている。しかし、その元となる再生母細胞やその細胞が再生後に成長していく様子は、不明な点が多い。本研究では、マウスの嗅球(嗅神経細胞の線維が入力される脳組織)を除去したり、アルカリで標本を処理するなどの工夫を凝らすことによって、嗅神経細胞の変性・消失(死んでいく過程)と成長の様子を光学顕微鏡や走査電子顕微鏡を用いて詳細に観察することができた。
著者
大内田 研宙
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、膵癌における癌幹細胞及びその周囲に存在して癌幹細胞を支持している細胞群であるニッチを同定し、その生物学的特徴を明らかにした。さらに、同定した癌幹細胞や癌幹細胞とニッチの相互作用を標的として、膵癌根治を目指した治療法を開発すすめた。その過程においてCD10陽性間質細胞が重要な役割を果たしていることを見いだし,その分子生物学的性質を明らかとするために、膵癌間質細胞である膵星細胞株を樹立し、ソーティングによりCD10陽性膵星細胞を分取し、膵癌細胞株2種と分取した陽性膵星細胞あるいは陰性膵星細胞を間接共培養した。その結果、CD10陽性膵星細胞株が陰性膵星細胞株より膵癌細胞株の浸潤能をより増強させ、癌間質相互作用に深くかかわっていることが明らかになった。
著者
宮川 正弘 巽 久行 村井 保之
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

視覚障がい者の机上作業を支援するために,対象物のクロックポジション位置と手の速度を音で知らせる腕の誘導システムを提案した。手および机上の物体位置の認識は光景分析を避け,手や物に貼付されたマーカーと光学的位置追跡装置を用いて実時間で認識した。視覚障がい者の手の誘導は作業空間の認知地図創生を支援するためのもので,距離場空間モデルに基づいて得られた空間状況を積極的に提示した。手の誘導速度をファジィ制御で決定すること,ニューラルネット等による混雑度を提示することは有効であった。
著者
長崎 勤 宮本 信也 小野里 美帆
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

第I部では会話・ナラティブ発達研究の意義と課題について検討した。第II部・会話の発達では、健常幼児の2、3歳児は、母親の明確化要求に応答することで会話を継続し、かつ子どもが自発的に明確化要求を使用することで会話に参加する様相が認められ、広汎性発達障害児では、自ら明確化要求を使用することで会話を継続していくことはみられなかった。ナラティブの発達では、直前の「ケーキ作り」経験についての母子会話場面を分析した結果、3歳では複数の出来事に言及したり,それらを関連付けることが少なく、4歳になると複数の節を「時間」関係で関連付け、5、6歳になると「因果」「比較」「逆」等の多様な関係において節を関連付けるという発達過程が示された。フィクショナル・ストーリーの語りにおける視覚的手がかりの有効性を検討した結果、6歳児において周辺要素手がかりが物語理解と物語産出を促進し、物語理解においては5・6歳の年齢段階で中心要素がすでに獲得されていた。第III部では、自閉症児を対象に工作とおやつ場面の共同行為ルーティンを用いて、話者の不明確な発話に対する明確化要求の使用を目的とした指導を行った結果、指導者の曖昧な指示に対して、事物を差し出して「これですか?」と自発的に聞き返すことが可能になっていった。広汎性発達障害児を対象とし、物語文法の各要素を示す連続絵を提示し、「吹き出し」への書き込みを指導手続きに導入した結果、絵に描かれていない情報を含むCUが産出され、「欲求」「感覚」などが「吹き出し」に書き込まれるようになった。第IV部においては、以上の研究を基盤にした第I段階(通常2〜3歳代)から第III段階(通常5〜6歳代)までの「会話を通したナラティブ発達支援・基礎プログラム試案(NAP)」を提案した。
著者
光末 紀子 宗像 惠 曽根 ひろみ 須藤 健一 山崎 康仕 三浦 伸夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度には、各研究領域に内在するジェンダー問題の摘出と分析が行われ、平成13年度には、研究会の開催と討議によってジェンダーに関する本格的な共同研究が進められた。平成14年度はこれをさらに推し進め、「現代社会における文化的性差を支える価値観と諸規範を根底から問い直す」という共通テーマに対する各人の研究成果を持ち寄って数回の研究会で意見交換を行い、共同討議を通じて研究の成果を統合することがめざされた。この研究計画にもとづき、3年間に合計9回の研究集会が開かれた。それぞれの報告者とテーマは以下のとおりである。第1回 曽根ひろみ「公娼制と梅毒」、桜井徹「『女としての自然』の収奪」。第2回 ブライディ・アンドリュース(ハーバード大学科学史・科学哲学科助教授)「アメリカにおけるジェンダー研究」。第3回 藤目ゆき(大阪外国語大学助教授)「公娼制度と日本軍慰安婦制度」。第4回 ロバート・フローデマン(コロラド鉱業大学教授)"Corrosive Effects : Environmental Ethics, Eco-feminism, and the Metaphysics of Acid-mine Drainage"。第5回 カリーム・ベナマル"Theory of Abundance and Scarcity"、土佐桂子「ミャンマーにおけるトランスヴェスタイト-男装者(ヤウチャシャー)のジェンダー論」。第6回 金野美奈子「性別職務分離研究再考-ジェンダー分析の方法論的リスク」。第7回 三浦伸夫「『レディーズ・ダイアリー』にみる18世紀英国の女性と数学」。第8回 光末紀子「B.パッペンハイムの思想と行動-ドイツにおける第一波フェミニズムの一動向」。第9回 曽根ひろみ「日本近世の法制とジェンダー」。いずれの研究集会においても、濃密な内容の報告をめぐって活発な討論が交わされ、本科研の共通テーマに関する研究分担者間の共通認識はいっそう深められた。その結果、新たな性差規範に基づく個々人のジェンダー・アイデンティティの確立と、あるべき「両性の共同性」への展望とを獲得するための基礎が築かれたと言えよう。さらに、各々の研究分担者における研究の進展の一部を紹介すれば、以下のごとくである。(1)光末は、19世紀末から20世紀初頭にわたるフェミニズム第一波の時代に、多くのフェミニストたちがジェンダーをめぐる様々な論争に参加したが、それらの論争を「母性」というキーワードのもとに検証した。(2)曽根は売買春についての歴史学、民俗学、社会学の研究史を批判的に検討し、それを一冊の単著にまとめた。(3)阪野は、ブレア政権の家族政策が、就労促進型給付の拡大や選別主義の強化といった点で保守党政権との連続性が強いことを明らかにした。(4)宗像は、フロイトのセクシュアリティ論を再検討し、男根中心主義とされるフロイト理論に伏在する、女性的セクシュアリティの始原性の契機を探求した。(5)土佐は、90年代のミャンマーの主要な雑誌に見られるジェンダー関係の記事を収集調査した。(6)上野はフランクフルト学派にみられる家父長制批判の論理とその逼塞を検討し、塚原はハーディングとハラウェイの観点観測論および強い客観性の概念を吟味した。
著者
勝原 裕美子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.研究目的:看護管理者が直面する倫理課題を明らかにし、それらの倫理課題にどの程度対処しているのかを明らかにすること。2.研究方法:全国のランダムに選択した500病院を対象とし、同意の得られた140(28%)病院の看護師長総勢1039人を対象に全国調査を実施。472名(46%)から回答が得られた。質問紙は6分野(患者の療養環壌、職員の労働環境、サービスの質、人間関係、臨床教育、専門職としてのモラル)、39項目からなり、それぞれA「自分の管理する病棟で生じる頻度」、B「自分の管理する部署で生じた時の師長としての対応の程度」、C「対応しても不満足が残る程度」、D「自分の勤める病院内で見聞きする程度」の4側面を4段階のライカートスケールにてきくという構成である。3.研究結果:1)対象者の内訳は、女性450名、男性22名。平均年齢48.5才。師長の平均経験年数は8.8年であった。2)セクションAで平均点の高かったのは、1位から順に「人的資源が不足している」「仕事がどのように評価されているのかが不透明である」「サービス残業が行われている」であり、いずれも職員の労働環境に関するものが上位であった。逆に平均点の低い順は、「職員の間で暴力行為がある」「患者から内緒にして欲しいと頼まれた内容を、患者への配慮なしに他言する」「患者・家族から暴力行為がある」であった。3)セクションA, B, C, Dごとに平均点の高い順に並び替え、順位相関を検定したところ、AとC, AとDには非常に高い相関がみられた。また、AとB、BとCには逆相関がみられた。このことより、師長が自分の管理する部署でよく起きていると認知している倫理課題は病院でもよく起きていると認知しており、そのことにできるだけ対処しようとしているが、対処しても不満が残っているということが明らかになった。
著者
石川 浩 物集 照夫 永瀬 成範 河島 整 杉本 喜正 池田 直樹 秋本 良一 牛頭 信一郎 挾間 壽文 鍬塚 治彦 秋田 一路 GUAN Lim Cheng 小笠原 剛
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

InGaAs/AlAsSb 系の超薄膜量子井戸のサブバンド間遷移を用いた超高速光ゲートスイッチの低エネルギー動作化を目指して、デバイス設計に必要な基礎物性パラメータの評価、高品質結晶の作成技術の研究開発を行い、160Gb/s領域で、2pJの低エネルギーで動作する全光変調位相変調効果を用いたサブバンド間遷移素子の基盤技術を確立した。また、周期構造を集積化することで位相変調効率を上げる構造を提案設計して、その製作技術を確立した。
著者
楯岡 求美
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

19世紀末から第二次大戦までの時期のヨーロッパ文化はモダイズムとよばれ、20世紀パラダイムの確立期として近年文化研究での再評価が進んでいる。ロシア・アヴァンギャルドもそのような社会変革の機運を背景に「新しい社会の創造」と「新しい芸術表現の構築」を一体化させる運動であったことはすでに多くの研究によって明らかにされている。しかし、あまりにもその革新性・前衛性ばかりが強調されてきた。また、アヴァンギャルド運動を担った当時の芸術家のおかれた状況を美化しすぎたり、芸術家の発言を検証することなく、そのまま肯定してきてしまった面がある。近年、このような短所に注意を払い、ロシア帝政およびソ連時代の政治社会システムを包括的に分析し、その社会状況の中にアヴァンギャルド(もしくはロシア文化の変容といてもよい)を位置づけようとする動きが定着しつつある。それでもなおかつ、ロシア/ソ連を特異領域として強調してしまうエリアスタディーの領域にとどまっているのは演劇・文学研究の今後の課題を逆に明確にしていると思う。ソ連の政治・社会システムがロシア独特の歴史的要素を持っているとはいえ、あくまで19世紀に顕在化したヨーロッパ近代社会のグローヴァル化が、周縁であるがゆえに先鋭化したものであることは考慮されるべきである。本研究の過程でロシア・アヴァンギャルドを他のドイツ、イタリア、フランスなどの芸術活動とは別個に語ってきた従来の方法は、やはりロシアに対するヨーロッパ的なエキゾチズム=オリエンタリズムの視点だったことが明らかになってきた。1917年のロシア革命を、絶対的な断絶点とする考え方は見なくなってきたものの、あくまで国境によって区切られた空間を芸術表現の文化圏と一体化させる考え方が主流である。しかし、本研究の関心の中心的存在であるメイエルホリドも、ドイツ語を自由に解し当時の先端の演劇情報や戯曲をフランス・ドイツから取得し、ダイレクトに実践していたことは、レパートリーにメーテルリンクやクロムランク、ハウプトマンらが名を連ね、演劇論はニーチェ等に依拠していることからもわかる。また、人的交流としては、1910年にすでにディアギレフがロシア・バレエの斬新さでパリに衝撃を与え、シャガールはパリへと絵の修行に出かける。そのパリにはピカソなどがスペインから来ていたことを考えれば、ヨーロッパ大陸はひとつの大きな芸術領域であったことがわかる。アヴァンギャルド運動を考察する際、この時期が現在の演劇概念の基礎となる近代劇が確立した重要な時期であることも考慮すべきである。ヨーロッパ社会が近代化されるに連れ、思想も表現も大きな変化を遂げた。演劇でも、劇作家ではイプセン(ノルウェー)やチェーホフ(ロシア)等が、演出家ではスタニスラフスキー(ロシア)が日常生活を演劇のテーマとして取り上げ、市民社会への移行期にあって新しい観客を獲得した。このような規範の確立が、同時に近代への反発として新しい芸術手法の探求という欲求を生み、実験的なアヴァンギャルド演劇が展開される。これらも、従来はアンチ・リアリズムという固定的なカテゴリーの中にとどめられていたが、今後はリアリズムもまた「新しい社会の表現」であることに留意し、逆にアヴァンギャルドもまた近代批判でありながら、結局は進歩主義的、科学主義的パラダイムという近代の枠組みの中にとどまらざるを得なかったことを両方の手法の展開を統合するような総合的な分析によって明らかにすべきだと思う。
著者
片岡 佐知子
出版者
奈良教育大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)のBelle実験グループは、社会に向けた情報発信活動の一環として、高校生を対象としたサイエンスキャンプに取り組んでいる。キャンプではBelleの資源を公開・活用して、「研究者と同一の環境」を主軸とした体験型学習プログラムを実施している。本研究では、ネットワークを通じて教育現場や科学館などっくば市遠方の地域において、これらの学習プログラムを実施し、より多くの中学生・高校生が科学コミュニケーションに参加できる基盤を築き上げることを目的としている。学習者にとって興味の持てる研究環境を具体的に把握する基礎研究として、高エネルギー加速器研究機構において平成21年9月20日~23日の日程でサイエンスキャンプを開催し、参加高校生23名に対してアンケート調査を実施した。さらに、これまでに得られた成果を基に、中学生を対象とした学習プログラムを開発し、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、奈良女子大学附属中等教育学校、熊本県南小国町立南小国中学校の3地点をインターネット回線で結んだ遠隔授業、及び実習授業を平成22年1月~2月にかけて全3回にわたり実施した。遠隔授業は大阪大学と共同で遂行し、大阪大学が開発した「超鏡(ハイパーミラー)」システムを利用した。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力を得て、超高速インターネット衛星「きずな」の衛星回線を利用した。
著者
清水 周次 田中 雅夫 中島 直樹 岡村 耕二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

従来の遠隔医療システムにおける「画質の劣化」と「高価な機器の必要性」という問題点を解決した新しいシステムを開発し、研究教育用インターネットを活用して、アジアを中心とした医療施設へ高解像度の動画像を用いた遠隔医療教育の活動を展開した。各施設の技術的・医療的背景を調査後、外科手術や内視鏡を初め多くの分野においてライブデモンストレーションや遠隔会議を行った。またハイビジョンなどさらに新しい技術への取り組みも行っている。
著者
片浦 弘道 岡田 晋 真庭 豊 真庭 豊
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

SWCNT内部に、塩化鉄や色素分子、レチナール-C60複合体、βカロテン分子、水分子等を挿入し、その構造や電子状態の変化を調べた。色素分子の場合、フォトルミネッセンスの測定から、内部の色素が吸収した光のエネルギーがSWCNTに移動し、そのエネルギーでSWCNTが発光するという興味深い現象を見いだした。また、レチナール分子のシスートランス変位の電子顕微鏡による直接観察、内包された水分子によるナノバルブの効果等、これまで実現できなかった観測、新たな物理現象の発見に成功した。
著者
照井 哲 原野 悟 武田 文 三宅 健夫 横山 英世
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

研究目的 現在わが国では、急激な高齢化社会を迎え疾病構造からみても生活習慣に係わる病気が死因の大部分を占めている。厚生省の打ち出した生活習慣病の予防対策の一環として、簡易医療機器による自己検診を普及させることで、健康に対する意識を向上させ、さらに行動変容に結びつくよう本研究を行った。研究対象 企業や保健所の健康教室受診対象者に対し血圧計、血糖計、歩数計、体温計など簡易医療機器を貸与し自己測定を行わせ結果を解析した。また老人保健法並びに学校保健法の健康診断の結果を費用便益法で解析して、自己健康診断との比較を行った。結果及び考察 平成7年度に行った自己検診(血圧・検尿・体温・歩数)や平成8年度に行った自己血糖測定の結果を集計し、性別・年齢階級別に解析を行った。この結果健康に意識を持つ集団においては頻回に自己測定を行っており、特に不安の多い60歳以上の対象者が関心が強い。さらに質問票の集計から成人病健康診断結果並びにその後の事後措置結果を踏まえて、自己健康診断による健康に関する意識の変容が行動変容に結び付きいていることが示された。さらに糖尿病患者における自己血糖測定においては、血糖の改善のみならず脂質や肝機能、尿酸などの最終的に生体情報値の改善に結び付いていることが示され、個々人の生活全般に自己検診が良い結果を呈したことが明らかになった。また、学校保健法及び老人保健法の健康診断の費用と自己健康診断の費用との比較検討を行い、自己健康診断の費用便益が示された。結語 わが国の疾病構造において中心をなす成人病は、日々の生活習慣に由来するところが大きい。自分の健康は自分で作るという習慣の形成がこれら疾病の一次予防上最も重要であり、この自己検診による行動変容は成人病対策上極めて有用と考えられ今後の普及が望まれる。
著者
西谷 望 小川 忠彦 菊池 崇 塩川 和夫 大塚 雄一 小川 忠彦 菊池 崇 塩川 和夫 大塚 雄一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、2006年11月に稼働を開始した北海道-陸別HFレーダーを主に活用し、北海道北方からオホーツク海、極東シベリア領域にわたる電場擾乱等の電離圏プラズマ関連現象と伝搬性電離圏擾乱等の超高層大気関連現象の間の相互作用の解明に焦点を置いて研究を進め、サブオーロラ帯電場擾乱の発生条件や伝搬性電離圏擾乱による電離圏プラズマ構造運動のメカニズム、および巨大地震後に超高層大気変動により引き起こされる電離圏プラズマ変動の特性等を明らかにした。
著者
諸麥 俊司 二宮 誠 石松 隆和
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

麻痺した5指の自由な運動が可能となるパワーグローブの開発を行った。本グローブは腱に相当する駆動糸を内蔵した皮製の手袋と駆動糸を操る駆動装置とから成る。利用者の意図に基づいて駆動装置が駆動糸に張力を与えることで、利用者の指は操り人形のように自由に動く仕組みとなっている。試作したグローブを用いてテニスボールの投球・捕球動作、缶飲料の把持、シャンケンなどの動作の実現が確認できた。
著者
加藤 宏之 橋本 律夫 樋渡 正夫
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

脳卒中後の運動機能回復の機序を解明するために、fMRIと拡散テンソル・トラクトグラフィーによる錐体路の描出の同時計測を行った。脳卒中後の脳機能の再構築は動的であり、片麻痺の回復は運動ネットワークの損傷の程度に応じて、可逆性障害からの回復と、ネットワークの代償、動員、再構築を駆使して最良の運動機能の回復を得るための機構が存在する。この変化は脳卒中発症後の1、2か月以内に見られ、機能回復の臨界期の存在を示唆する。
著者
尾形 雅君 伊藤 恒敏 松谷 隆治
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

抗CD3抗体を生体マウス腹腔に投与するin vivo実験系を用いて、小腸絨毛上皮細胞にDNA断片化が誘導され、さらにその後核内の損傷部位にDNA修復関連分子が集積・動員されること我々は免疫組織化学的に観察した。DNA断片化を検出するTUNEL 法では、一旦断片化したDNAが抗体投与後60分以内に迅速に修復されることを確認した。DNA断片化それ自体だけでは細胞死を意味せず、DNA 断片化後にも絨毛上皮細胞は生きてDNAを修復することが判明した。DNA断片化はそれのみでは細胞死の徴候ではないことが明らかとなった。
著者
福良 薫
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

身体障害を抱えた脳卒中患者の生活の再構築を支援するために、すでに自宅退院している患者にどのように生活を立て直していったのか聞き取った結果、他者に自分の心情を説明しながら一度見失った自分の将来を立て直していた。そこで患者が自分の身体状況と折り合いをつけて生活できるよう、その時々の思いを語る機会を提供する介入手続きを作成し介入した。この看護介入は脳卒中患者の新たな生活の見通しを促進していた。
著者
豊岡 利正
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

指定薬物の構造は、フェネチルアミン系、トリプタミン系、ピペラジン系に大別される。初めに比較的安価な装置を用いた指定薬物の一斉分析法の開発を目的として、酸化還元反応を利用した電気化学検出法を開発した。次に、蛍光標識試薬で誘導体化後、HPLCで分離し、質量分析計で検出した。本法は、蛍光標識しているため選択性が向上し、また、質量分析計で検出しているため、高感度で定量できるうえ、微量の未知化合物の定性分析を行うことができ優れた分析法となった。これらの分析法を用いて、市場に出回っていた各種形態の試料を分析し、薬物を特定しその含有量を測定することができた。さらに、フェネチルアミン系乱用薬物を中心とする違法ドラッグ成分のキラル誘導体化法を利用した光学異性体分離法および迅速かつ簡便な一斉分析法の開発を実施した。12種類のフェネチルアミン系違法ドラッグ成分の光学異性体が良好に分離された。本法により、過去に流通していた製品中の分析に適用したところ、フェネチルアミン系乱用薬物成分の各エナンチオマー成分を完全に分離定量できた。
著者
鹿毛 哲郎 大塚 友彦 小池 清之 柚賀 正光 青木 宏之
出版者
東京工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

東京工業高等専門学校では、プログラマブル・ロジック・デバイスであるFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いたHDL論理回路設計の教育に取り組んでいる。FPGAを用いると、HDL設計した論理回路を実装して、その場で論理動作を検証・確認することができる。本報告では、東京高専電子工学科4年生の電子工学実験で行ったHDL設計の導入の実習実験、専攻科1年生に対する電気電子工学特別演習、卒業研究において組み込みプロセッサを使ったシステムLSIの試作開発の取り組みについて報告する。