著者
山本 太郎 飯島 渉 小堀 栄子 橋爪 真弘 蔡 国喜 夏 品蒼
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

中国における効果的エイズ対策を行うことを目的として研究を行ってきた。研究の過程で、多くのHIV感染者に治療の遅れが見られることが明らかになった。その主たる原因は、受診の遅れであり、早期の受診が、治療効果の向上につながることを報告した。早期の受診には、感染者のHIV感染に対する正確な知識が欠かせないこともわかった。早期治療は、感染予防にもつながるものであり、さらなる啓発が求められる。一方健康教育においてピア教育が健康に対する行動変容に重要な役割を演じることもわかった。したがって、ピアの役割を組み込んだ対策が求められる。
著者
土橋 慶章
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

大学の社会的責任に関する取り組み状況を調査のうえ、先進事例として以下2大学の詳細調査を行った。同志社大学(学校法人同志社)は社会的責任の視点を重視した法人全体の事業報告書を作成・発行している。理事会直轄で4課長が実務担当として作成・取り毒とめに当たる。当初はアニュアルレポートに社会的責任の視点を取り入れた形で、2006年度版からは社会的責任報告を明示し、各種取り組みや財務の概要を掲載しており、近年企業において見受けられるようになってきた、財務情報・非財務情報を総合的に報告する統合レポートのような形である。重要視するステイクホルダーとして、学生・保護者、政府・行政(納税者である国民)、寄付者を挙げ、実績だけでなく将来の事業計画やネガティブ情報の掲載、詳細なデータ集の別冊添付、迅速な発行・ウェブサイトへの掲載など、ステイクホルダーの望むものを強く意識した作りがなされている。麗澤大学(学校法人廣池学園)は2010年に発効されたISO26000(社会的責任規格)の活用をいち早く決定し、対外的に宣言した。CSR研究の第一人者で現在学部長を務める教員の提案を機に、賛同する職員が参画し、理事長・学長のコミットメントのもと、推進委員会も発足し、法人全体にわたる取り組みになっている。7中核主題(組織統治、人権、労働慣行、環境、事業慣行、消費者課題、コミュニティ参画・開発)と5活動分野のマトリクス表で課題を整理のうえ、13に区分したステイクホルダーとの対話を踏まえつつ、重要事項を特定している。事項ごとに担当を決め、進捗管理を行うためのフォーマットも完成しつつあり、今後の経過が大いに期待される。大学の社会的責任に関する取り組みは初期段階にあり、上記について「大学の社会的責任に関するグッドプラクティス」としてまとめたことは、今後、大学の社会的責任に関して取り組もうとする者にとって参考となろう。
著者
和田 明 杉本 隆成 落合 実 遠藤 茂勝 立田 穣 渡部 輝久
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

(1)北極海を対象として3次元流動解析結果(開発済)を用い、事故時の放射性物質の濃度解析を行った。核種拡散モデルには海水の流動、拡散の他に物質間の吸着・脱着(スキャベンジング効果)、海水と海底堆積層(3層モデル)との相互作用を考慮したモデルの構築に努め、線量評価のための精度向上を図った。濃度解析は核種(Pu-239とCs-137)の放出シナリオに基づいて、局所域(カラ海、バレンツ海)と北極海全城を対象として実施した。濃度解析ではパラメータ(分配係数値、粒子の沈降速度、SS濃度)が海水及び海底土内の濃度におよぼす影響を検討した。Pu-239の場合、3つのパラメータが大きいほど、海水中濃度が低く、Cs-137の場合はパラメータによる濃度への影響はPu-239よりも小さいこと、どちらの核種においても海水に接する粒子層が最大値を示した。核種が放出されてから、10年後(局所域)及び1000年後(全域)の濃度は核種により異なり、Pu-234では海底土内に90%、残りは海水中に残存すること、Cs-137では海水中に60〜80%、残りは海底土に残存する事を確認した。(2)放射性核種の底質移行に係わる浮遊懸濁物の役割に着目し、懸濁物の放射性核種吸着量を支配する要因の一つである懸濁物の物理化学的特性を調べるためにPIXE法を用いた元素分析を実施した。試料は那珂湊の海水を用いた。1年間に亘る調査の結果、主要元素の濃度はほぼ一定であり、海洋中での生物活性の季節的変動にも拘わらず安定であることを見出した。更に、室戸沖の表・深層水、青森県を囲む3海域での懸濁物元素組成を比較した結果、元素濃度はほぼ一様であった。従って、浮遊懸濁物の元素組成は海域間及び季節間で大きな変動は無く懸濁物による核種の吸着効果は各海域で同様でスキャベンジング効果は濃度に依存することを確認できた。(3)生物への移行に関するデータを収集してプランクトン生態系による放射線核種の鉛直方向の輸送モデル化を検討した。14年度に構築した生物中のCs-137の濃度予測モデルについて検証データの取得を行った。検証データとしてIAEA・モナコの海洋研究所がモナコ沖合で観測したチェルノブイリ事故時のCs-137のデータを適用して、海産生物中Cs-137の動的濃度予測3次元モデルを検証した。
著者
山本 政儀 白石 久二雄 星 正治 ZHMADILOV Z.
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

旧ソ連の核実験場セミパラチンスク周辺の住民被曝の特徴は、外部被曝(30-250cSv:1949-1992年間の民住民の総被爆線量)に加えてかなりの内部被曝(40-300cSv)を受けていることである。この内部被曝線量は、数学的モデルで推定されたもので検証が必須である。現在唯一、検証が可能と思われるのは、人体組織の骨中^<90>Sr測定以外ないのではないかと考えている。2001年から、内部被曝線量評価の一環として、核実験場周辺で亡くなられた方々の骨試料を提供していただき骨中のU, Pu,^<90>Srの測定を開始してきた。核実験場近傍の集落で被曝し亡くなられた方の人体試料について出来るだけ多くの試料を収集しデーターの蓄積を計ることが最重要である。本研究において、クルチャトフ研究所及びセミパラチンスク市内の大学病院との連携で、人骨試料(主に脊椎)約100試料を収集し分析した。Nこれまでに採取した試料を用いてPu, Uの逐次分析法を開発し、これまでに約50試料の分析を実施した。Pu-239,240及びU-238濃度は、灰化試料1g当たり0.005-0.23Bq/g,0.09-0.49mBq/gの範囲であった。分析した試料の大部分は、セミパラチンスク市内が多く、これらの値はこれまでに報告されているデーターとくらべて同レベルであった。しかし、核実験場近傍の試料で高い値を持つケースもいくつか見いだされた。Sr-90については0.05-0.13mBq/g-ashの値が検出された。↑標準人(70kg)、平均Pu-239,240濃度0.03mBq/g-ashを用いて50年間に受ける実効線量当量を試算すると、全て吸入摂取の場合には、12.3(難溶性Pu)〜42.7(可溶性Pu)μSv,全て経口摂取の場合に13.5-28.6μSvとなる。→現在、核実験場近傍の集落、モスチーク、ドロン、ズナーメンカ、サルジャールで長年住んでいて亡くなられた方の人体組織を分析しており、さらにデータの蓄積を積み重ねている。↓最終的に、実際のSr-90データとモデルから予想されるデータとの比較を行い、モデルの妥当性を検討する。モデルとの合致が得られない時には、その原因を解析し、新たなモデルを提示する。
著者
木村 昭郎 兵頭 英出夫
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

セミパラチンスクの被曝者様式は、慢性の外部及び内部被曝であり、広島の被爆様式とはまったく異なっていることから、MDS、白血病など血液腫瘍の発生様式も異なっている可能性がある。我々は、原爆被爆者ではMDS発症のリスクが高いことを明らかにしている。さらに遺伝子レベルでは、造血幹細胞の増殖分化に重要な役割を果たしている転写因子AML1遺伝子の点突然変異をハイリスクMDSに高率に見出し、かつ変異は放射線誘発及び化学療法による二次性MDSでは、本遺伝子内のラントドメインに集中していた。またAML1変異に協調的に作用すると考えられる受容体チロシンキナーゼ-RASシグナル伝達経路の遺伝子変異を約40%の症例で同定した。そこで、MDSと白血病の遺伝子レベルにおける原爆被爆者との比較を行い、被爆様式の違いによる異同を明らかにしようと試みた。最近5年間に収集したMDS・白血病36症例のうち、大気圏核実験が実施された1949〜1963年に被曝を受けたと考えられる例は8例であった。次にAML1遺伝子変異を検索した36例のうち、2例に変異を見出した。1例目は被曝時年令14〜28才、診断時年令68才、Semipalatinsk在住のロシア人女性のMDS/AMLで、変異をラントドメイン(R177Q)に認めた。2例目は被曝時年令0才、診断時年令36才、Abay在住のカザフ人男性の好酸球増多を伴うMDS/AMLで、変異をラントドメイン(P176R)に認めた。これらの例では、造血幹細胞にAML1変異による血球分化の異常と、RAS経路などの変異による増殖シグナルの異常(亢進)が付与されることにより、MDS/AMLが発症したものと考えられる。2例と少数例ではあるが、AML1ラントドメインに変異を見出したことから、セミパラチンスクの被曝においても原爆被爆と同様な遺伝子変異を誘発し、MDS/AMLの発症をもたらすことが推測された。
著者
美川 圭
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

後白河院政は、平氏との提携によって確立した。そのために、平氏が中心的な役割をはたした日宋貿易との関係がうまれる。後白河院は王家の傍流であったので、その権威確立のために、蓮華王院宝蔵を重要視した。日宋貿易は、その収蔵品収集にも、大きな役割をはたした。また、七条町という京都最大の商工業地域との関係も重視して、京都の南部に拠点をもうけた。しかし、平家との提携が破綻すると、後白河院政は停止され、本格的な平氏政権がうまれた。平氏政権は福原京へ遷都し、日宋貿易との直結をめざした。だが、源平内乱のなかで平氏は没落し、後白河院政は平氏によって焼亡した東大寺再建を通じて、その権威回復をはかることに成功する。
著者
吉武 久美子
出版者
長崎純心大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

子どもにおける、皆と同じでという自己の同調性の大きさや、自己と違う相手を認めるという異質性の受容力の少なさなど、現在の少子の問題について、本年度は主に、家庭という場面を取り上げて検討を行った。対象は保育所、幼稚園に通っている3才から5才の子どもとその親であった。方法は質問紙調査と対面調査を用いた。まず、「自分と違う」相手の気持ちを推し量るという共感性の発達について、少子時代の現代、兄弟の有無や親の関わり方によって違いがあるかを検討した。一人っ子、年下の兄弟のいない末っ子、年下の兄弟のいる子などで共感性の高さに違いはなかった。しかし、親が子供に絵本の読み聞かせや会話を通してコミュニケーションをしている場合には、自分の感情とは異なる他人の感情の類推という共感性能力が高かった。次に、他者と同じでありたいという同調行動について調べたところ、すでに、3才から5才の子どもたちにすでにその同調行動が生じていることがわかった。特に、実際に他者(保育所では他の幼児)が存在して行動する場合に同じ行動をとろうとするだけでなく、実際に他者がいなくても、「お友達は……していたよ」という口頭での情報を与えられるのみで、子どもは自分の行動を他者と同じ方向へ変えることが大変多く見られることから、低年齢の幼児における同調性の強さがわかった。さらに、親の影響の中でも、現代の少子家庭は、祖父母等、親に代わる人間の存在も少ないため、父親の育児参加の影響力は大きく、父親が育児に参加してないと認知する母親は、育児に対する認知もネガティブであり、それが、さらに少子の社会心理的発達に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
大谷 晋也 スミス 朋子 埋橋 淑子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

病院で使用される各種文書をよりわかりやすくするにはどうすればよいか検討して作成し、実際に使用するとともに改善に努めた。作成にあたっては、文書のデザインや体裁・情報の取捨選択に始まり、伝達内容を明確化して文書の論理構造に反映すること、患者の背景知識や文化・プライバシーなどに配慮した上で、使用される文章や文・語彙などに意を用いた日本語を使用することなどに留意した。作成した文書は、ある公立病院の利用に供し、特に問診票に関しては、実際に使用した上で医療従事者にアンケート調査を行い、さらなる改善に努めた。
著者
藤 義博 岡田 二郎
出版者
九州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究は自由行動中のオオスズメバチの脳の活動を埋め込み電極で記録することと、これをFM無線で転送し、その行動の神経生理学的基礎を直接解析することの2点を目的とした。本研究では予備実験として、オオスズメバチの視覚行動、学習過程、脳の構造を調べた。オオスズメバチの脳のサイズは現在まで報告されている昆虫の中では最大で、慢性埋め込み電極を用いいる研究に最適であることが明らかになった。まず第一の目的である特に埋め込み電極の有用性を検討した。スズメバチの脳に直径20μmの被覆銅線を埋め込み、飛翔時の脳の活動が可能であるかを調べた。飛翔中のスズメバチは前方で動く物体に顕著な攻撃行動をする。本研究では、この攻撃行動に関わるとみられる脳の活動変化が記録された。さらに、視覚中枢である視葉でも、動きの検出に関与するニューロンの応答が記録された。以上の結果は、慢性埋め込み電極でも、従来のガラス微小電極がに匹敵する記録が長時間可能であることを示した。第二の目的である、無線による活動電位の記録は困難な課題であるとの結論に達した。行動中の昆虫の筋電図(筋肉の活動電位)を無線で送る実験は報告されている。オオスズメバチはトランスミッターを背負っても飛翔することは出来る。このような実験はオオスズメバチ以外では不可能である。他の大型昆虫にもトランスミッターを負荷し、歩行可能な種はいるが、飛翔することは出来ない。従って、オオスズメバチから飛翔中の筋電図を記録することは可能であった。これは、飛翔の視覚コントロールの研究の有効な手段となりうる。しかしながら、脳の活動の記録は困難であった。筋電位がミリボルト単位の電位変化であるのに対し、脳の活動電位はマイクロボルトと非常に微弱でノイズレベルでから区別出来なかった。現在、これらの困難を克服するため、電極を工夫しノイズの低い記録方法を追求し、シグナルとノイズの分離法を検討している。
著者
大野 旭
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、社会主義中国の中国人たちが 1949 年以降に国内に住む少数民族を対象におこなってきた大量虐殺の歴史を、文化人類学的手法に基づいて究明しようとするものである。中国政府と中国共産党は「民族の消滅」との理念を物理的にも実現するために 1959 年にチベットに侵攻し、チベット族虐殺事件が起こった。1966 年から 1976 年にかけてはまた、モンゴル族大量粛清運動(内モンゴル人民革命党員粛清運動)が発動された。そして、1975 年 8 月には雲南省ムスリム(回族)が大量虐殺される事件が発生した。この三つの大量虐殺事件は相互に連動し、そのまま中華人民共和国の建国後の歴史的歩みとも重なっている。本研究は現地において生存者たちから当時の状況について聞き書きをし、関連する第一次資料を収集し、公開できた。
著者
垣内 幸夫
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究によって得られた知見として特筆すべき点は、大阪音楽大学所蔵の明治期三味線三巨頭の朱(三味線の楽譜)を人間国宝・七世鶴澤寛治師に繰って頂きその違いを明らかにしたことと、歴史的音源によって現在舞台では聞くことのできない三味線の手を発見したことである。(1)本研究では『菅原伝授手習鑑〜寺子屋の段』及び『絵本太功記〜尼ケ崎の段』を中心に、基礎資料を収集して分析を行った。さらに東京文化財研究所蔵の「安原コレクション」SPレコードから歴史的録音の音源資料を収集して、近代の演奏・演出様式の変遷について分析した。(2)文楽三味線の人間国宝・七世鶴澤寛治師による「寺入の段」「寺子屋の段」「尼ケ崎の段」の演奏と芸談をビデオに録画した。さらに八世豊竹嶋大夫師から十世豊竹若大夫に関わる芸談を聞いた。二世豊竹呂勢大夫師には「尼ケ崎の段」の浄瑠璃の実演と芸談をDATに録音した。(3)文楽研究家の高木浩志氏からは、近代における「文楽の芸の変化」に関わる話を聞いた。後藤静夫氏からは、「文楽協会〜国立文楽劇場」を通しての文楽の質的変化と、「古典」と「新作」に関する話しを聞いた。そして坂本清恵氏には「尼が崎の段」の語りの音声分析を依頼して、近現代における義太夫節の語りの変化について共同研究した。なお、研究成果の一部は拙稿「義太夫節の声」(教育芸術社)「文楽を聴く 義太夫節の音楽的特徴を考える(1)〜(4)」(日本芸術文化振興会)等で公表した。
著者
佐々 浩司 林 泰一 村田 文絵 益子 渉 橋口 浩之
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

竜巻発生環境を再現する実験装置を確立し、メソサイクロン高度に依存して竜巻発生状況が異なることや竜巻の詳細構造を示した。この知見は竜巻予測精度向上に寄与すると期待される。また、レーダー観測により竜巻発生件数の多い高知県において積乱雲中の渦の8割が土佐湾海上で発生することと、福岡竜巻の事例についてメソサイクロンと竜巻渦との関係を示した。モデル解析においては非スーパーセル竜巻事例の発達過程を示した。
著者
ツェレンプル バトユン
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

馬乳酒はモンゴルの伝統的で代表的な乳製品であり、モンゴル国内外で健康的な食品へ関心と馬乳酒の需要が増加しているため、高品質の馬乳酒を生産する伝統的知識の記録と、要因の解明が重要である。国全体で聞き取り調査をおこなった結果、馬乳酒生産は中央部および南部、西部で盛んであった。高品質の馬乳酒生産に重要だと多くの牧民に認識されている項目は、牧民の技術、酵母の選択、植物の種類であった。馬乳酒生産用のウマの行動圏は、搾乳時間帯(日中)より非搾乳時間帯(夜間)で大きかった。これは水場や塩類露出地域、食物の利用可能量の空間分布が影響したと考えられ、放牧地の選択とウマの管理手法の重要性が示唆された。
著者
山本 政儀
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

陸地と海域の接合部である沿岸帯は物質の収支と循環が最も活発に演じられる場所であり,そこでの特に将来長きに亘り環境放射能影響をもたらす長寿命放射性核種,とりわけ超ウラン元素(ネプツニウム(Np),プルトニウム(Pu),アメリシウム(Am))の挙動を系統的・総合的により明確にすることは,環境保全の面からのみならず被曝低減化の面からも重要である。本研究は,イギリスのセラフィールド核燃料再処理工場からの放射性廃液で高濃度に汚染されているアイリッシュ海沿岸をフィールドにIV価のPuやIII価のAmと比べて堆積物に移行しにくいと言われているNpが,どのような堆積挙動をするかを解明することを主目的として実施したものである。主な成果を以下に述べる。(1)アイリッシュ海東部沿岸の堆積物について,^<237>Npを初めとして^<238>Pu,^<239,240>Pu,^<241>Pu,^<241>Am,更に^<99>Tcを測定し,汚染レベル・分布・蓄積量を明らかにした。(2)再処理工場からの1989年までの全^<237>Np放出量を初めて6-8TBqと推定した。(3)放出口からの距離と上記核種の蓄積量との比較から,^<239,240>Pu=^<241>Am<^<237>Np<^<137>Cs<^<99>Tcの順に堆積物に移行しにくいことを明らかにした。これらの挙動の違いはそれぞの元素の酸化状態の違いによって説明される。(4)アイリッシュ海に放出された上記核種の沿岸帯への移行には主として2つのメカニズム,すなわち,溶存状態として海流・潮汐にのって拡散(solution transport)する場合と放出口近傍で高濃度に汚染された堆積物粒子が拡散(particle transport)する場合がある。どちらかと言うと,^<99>Tc,^<137>Csは前者,^<237>Np,^<239,240>Pu,^<241>Amは後者のメカニズムで移動し空間的・時間的分布を規定していることを明らかにした。
著者
岡田 温司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

まずイタリアのルネサンスからマニエリスムの時代にイタリア語で著された女性論において、女性の顔や身体を表象するコードがいかにして練り上げられていくかを追跡した。具体的にはアーニョロ・フィレンツオーラの『女性の美しさについての対話』(1548年)とフェデリコ・ルイジーニの『美しき女性の書』(1554年)である。また、そこにいかなるジェンダーの力学が作用しているかを分析するとともに、当時の女性肖像画や神話画との関連を問うた。次にルネサンス以降数多く描かれるようになった画家たちの自画像をとりあげた。鏡を見ながら自分の顔を表象するという行為がはらんでいた種々な問題点を、精神分析の考え方をも参考にしながら、具体的な作品を分析することによって浮かびあがらせようと試みた。
著者
出村 和彦 上村 直樹
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、古代末期北アフリカ、ヒッポのキリスト教司教アウグスティヌスの「貧困」理解を取り扱い、時代の転換期における「貧困」に関して、彼がいかなる洞察を有し、実践的に関与したかを、彼の初期作品、民衆に語った『説教』、『神の国』、および『詩篇講解』等の原典読解を通じて解明した。これによって、「貧困」についての「霊性化」という彼の思想の一貫した傾向を見出している。本研究は、オーストラリアや韓国の研究者との有益な交流を通して推進された。
著者
梶原 羊一郎
出版者
静岡大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

勝負手探索の理論的考察を深め,従来の相手モデル探索[Iida 1993]で必要とされる相手プレイヤに関する詳細なモデルが得られない状況でも勝負手探索が可能となるアルゴリズムを考案した。ここでいう相手の詳細なモデルとは,相手の棋風に相当するが,対戦者が計算機である場合には,評価関数や先読みの深さなどを意味する。主たるアイデアは,最善応手手順周辺の探索ノード数が最大化するようにすることで局面の複雑化をはかることである。AND/OR木探索の視点では,証明数が大きな値となるような変化に誘導することに相当する。こうすることで劣勢において,相手は最善を選択するのが最も困難な状況になることが期待できる。複雑なゲームでは,提案するアイデアを適用することで,特別な相手のモデルを得ていなくても,自然な意味での勝負手を行うことができる。これまで劣勢の大小に関係なく,通常のミニマックスのセンスで着手を選択すると,全体的レベルにそぐわない奇妙な指し手を選ぶのが計算機の大きな特徴の一つであった。しかし,今回の研究成果により最後まで勝負手を放ち,計算機が人間エキスパートのような振る舞いを示すことが可能となったと言える。通常の意味での探索アルゴリズムや評価関数の調整を実施して将棋プログラムを作成し,世界選手権などに参加し,その成果を評価した。世界大会で二次予選を2位で予選通過し決勝へと進むことができた。たくさんの試合を行う大会では,優勢な試合を確実に勝ち,劣勢において逆転の可能性を最大化することが欠かせない。そのような意味で,大会の成果は本提案アイデアの有効性を示している。
著者
片桐 俊彦
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

気象庁から提供されている緊急地震速報は遠方地域を緒言とする地震情報を他の地域に早期に知らせる事で各所到達するまでの時間を有効利用することで防災行動時間が稼げる。一方、直下型地震では被害が甚大になり、緊急地震速報を有効活用できないケースが多々ある。そこで、人的被害の回避を少しでも考える観点に立つと、特に生活空間レベルにおいて早期の緊急予報を出せる状況が望ましく、仮に緊急地震速報が得られなくともパソコンから情報を得られる事で対処すべき危険回避行動が可能となる。以上の事項を踏まえ、近年普及率の高い一般的なパソコンを用い、MEMS型加速度計を利用して、初期微動を感知した時点でパソコンからトリガー信号を発信、制御回路を経由して危険回避モデルへの信号伝達を行い、主要動到達までは地震予報装置としての活用(パソコン内での音声による警戒宣言・非常灯の点灯・モーターなどの振動)、また直下型地震が発生した場合は電気系統制御(電磁石などで机の上の物が飛ぶ等防御)を即を行うことを軸に、1台のパソコンで無人地震観測(地震観測データの蓄積と解析)と並行して、地震時に警報や危険回避動作を行うシステム開発(制御ソフト・危険回避モデル等の製作)を行った。実際にはパソコンとAD変換器を通じた加速度計からの地震波(初期微動)情報を得て、パソコン内での開発ソフトによる地震発生の警告音声出力を行うと同時に危険回避モデルに無線信号伝達し、制御回路を介して危険回避モデルを起動する。以上の事柄についてシステムを組み上げ、実際に動作確認を行い、目的通りの一連の動作が確認できた。今後目的を絞り、危険回避モデルを如何に有効的に利用するかの検討・研究を継続したい。この研究では汎用性があり社会にも貢献できる有用なシステム構築が達成でき、これを土台に更なる研究を重ね利便性を高めたい考えである。
著者
佐藤 孝和 黒川 信重 川内 毅 田口 雄一郎 黒川 信重 川内 毅 田口 雄一郎
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ペアリングに基づく楕円暗号に特有の解読法としてペアリング反転を解く方法が知られている。本研究ではヴェイユペアリングの反転写像の明示公式を与えた。この式は密な有理式であり、このペアリング反転公式をそのまま計算してしまう方法に対してはペアリングに基づく楕円暗号は安全であることが示された。また、ペアリングに基づく暗号に適する超楕円暗号をペアリングに基づく暗号に適さないある種の楕円暗号から構成する方法を開発した。
著者
伊東 乾 大場 善次郎 藤原 毅夫 吉田 真 美馬 秀樹 松本 洋一郎 関村 直人 杉野 昇
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

3D可視化技術の技術教育応用を、以下の2点に整理して行った。1 立体視モニタなどの特殊な装置系を必要とするもの2 通常のネットワーク・コンピュータシステムでの教育情報の多次元表示1 については1-1 同一の情報を平面モニタと立体モニタで提示した際の、学習記憶、ならびに疲労については、どちらにも有為な差は見いだせなかった。1-2 「3D内視鏡」操作のように、現実に立体視を利用するシステムの学習については、装置系は決定的に重要 1-3 一般の技術/工学教育の実施に当たっては、幅広い普及などの観点からも情報の多次元表示(すなわち2)が有効 との結論にいたった。2については2-1 インテラクティブで可動性のある、平面モニタ上での情報構造の立体可視化システム(美馬エンジン)が、東京大学教養学部での情報教育で大きな効果を生み出した。2-2 次元の概念を、物理学における解析力学の「一般化座標」にならって拡大し、内部自由度の拡大と考えることで、平面(2D)モニタ上に教育情報の多次元表現を実現した。2-3 一般化された次元とは「色彩」「濃度」「網掛け」といった汎用性あるグラフィックの要素であり、これらをxml等のマークアップ言語で指定することで、工学教育における情報の効果的なオンデマンド多次元表現の一般的可能性があることを、「学習知識構造化」として試験実装することに成功した。