著者
伊藤 拓 竹中 晃二 上里 一郎
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.162-171, 2005-06
被引用文献数
1

多くの抑うつの心理的要因が提唱される中, 抑うつの心理的要因の共通点や抑うつを引き起こす共通要素についての検討はほとんどなされていない。本研究では, この点に着目し, 従来の代表的な抑うつの心理的要因である完全主義, 執着性格, 非機能的態度とネガティブな反すうの関連を明らかにするとともに, 完全主義, 執着性格, 非機能的態度からうつ状態が引き起こされる上で, ネガティブな反すうが重要な共通要素として機能しているかを検討した。大学生(N=191)を対象とした8ヶ月間の予測的研究を行った。その結果, (1)完全主義, 執着性格, 非機能的態度という異なる抑うつの心理的要因は, 共通してネガティブな反すう傾向と正の相関があること, (2)これらの心理的要因が高くても, うつ状態が直接的に引き起こされるわけではなく, ネガティブな反すう傾向が高い場合にうつ状態が引き起こされることなどが示された。以上のことから, 完全主義, 執着性格, 非機能的態度という異なる抑うつの心理的要因からうつ状態が引き起こされるメカニズムには, ネガティブな反すう傾向が共通要素として介在していることが示唆された。
著者
村田 晶子 池田 幸弘 長谷川 由香
出版者
法政大学
雑誌
多文化社会と言語教育 (ISSN:24362239)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-13, 2021 (Released:2021-05-10)

日本語を学ぶ人々のライフストーリーの調査をすることは、彼らの生き方、日本語を学ぶ動機、そして、日本語を用いてどのように社会と関わっているのかを理解する上で役立つ。本稿では母国で社会経験を積んでから来日し、日本語を学んだ人々にライフストーリーインタビューを行い、日本留学が彼らの人生にとってどのような意味があったのかを明らかにした。分析では、Knowles の成人学習像、Mezirow の変容的学習論を援用し、社会経験のある人々が職業経験を踏まえた自律的な学習の方向付けを行っていく過程を明らかにするとともに、留学における葛藤や悩み、留学を通じた変容を明らかにし、それぞれが相互作用していることを分析した。加えて、本稿の最後にインタビュー協力者のライフストーリーに対する感想、そして、調査者らによるライフストーリーインタビューの実施及びライフストーリー作成に対する省察を示し、ライフストーリーが教員とプログラム修了者の双方にとって継続的な対話の機会になり、教育の改善につながりうるものであることを示した。
著者
久下 裕利
出版者
昭和女子大学近代文化研究所
雑誌
学苑 (ISSN:04331052)
巻号頁・発行日
no.640, pp.p48-60, 1993-03
著者
中西 知子 平石 賢二
出版者
三重大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466542)
巻号頁・発行日
no.20, pp.67-76, 2000

授業エスケープ、校則違反などの問題行動を示した中学生の女子事例に対する教育実践の経過を報告し、思春期危機における自立のプロセスについて、①前駆症状期、②危機期、③転換期、④模索・再構築期の4段階から成る仮説的モデルを提示した。また、教師がその自立のプロセスを支援する際の役割と機能についても検討を行なった。
著者
長井 紀乃 島 正吾 森田 邦彦 栗田 秀樹 吉田 勉 鵜飼 弥英子 森 紀樹 荒川 友代 谷脇 弘茂
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.1014-1020, 1989-12-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

The effects of cobalt (Co) and nickel (Ni) on the humoral immune response were studied by two indexes of specific IgM antibody production against sheep red blood cells (SRBC) and polyclonal IgG antibody production in the spleens of mice intraperitoneally injected with cobalt chloride or nickel chloride.An experiment for the effect of both metals on specific IgM production was carried out by measuring IgM plaque-forming cells in the spleens of mice intraperitoneally injected with both metal salts using 1/10, 1/100 or 1/200 of LD50 for i. p. injection three times every other day and were immunized with SRBC on the day of the last injection of each metal salt. The other experiment for the effect of both metals on polyclonal IgG production was done by measuring, on days +3 or +6 in relation to the last injection of metal salts, polyclonal IgG-forming cells in the spleens of mice injected with both metal salts using 1/10 or 1/100 of LD50 for i. p. injection three times every other day by the reverse plaque-forming method.The following results may be drawn from this study:1. Co may cause changes in the homeostasis of humoral immune response even more than affecting the immune system with immunotoxicity as antigenicity.2. On the other hand, Ni may have antigenicity even more than an acting as immunomodulator influencing the immune system.
著者
吉益 順 三好 恭子 見本 真一 菊池 美也子
出版者
Japan Society of Ningen Dock
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.555-561, 2013

<b>目的:</b>健診における接遇改善のため,施設全体での取り組みのほかに放射線技術部が独自の方法で対策を試み,接遇向上に寄与することを目的とした.<br><b>方法:</b>部内で選ばれた風紀委員が接遇の月テーマ,週テーマを設定し,部内スタッフ26名全員がひと月ごとに当番制で接遇の評価担当者となった.評価担当者はテーマに沿って日常業務のなかでスタッフや健診現場を観察しながら,優秀な手本となる対応などを評価した.お互いの接遇を観察し合うなかで全体の意識と行動のレベルアップを図り,お客様の声や職員健診時のアンケートから効果を確認した. <br><b>結果:</b>優秀者として15名が取り上げられた.内訳としては20歳代8名中2名,30歳代4名中3名,40歳代10名中6名,50歳代4名中4名で経験年数の長いスタッフが多くを占めた.職員健診時の接遇に関するアンケート結果では,ほとんどが「良い」と「まあまあ」であった.「お客様の声」ではお褒めの言葉の割合が年々増加し,取り組みを継続した結果,平成24年はお褒めの言葉が苦情・要望を上回った.<br><b>結論:</b>部署独自の状況を考慮した方法で接遇改善に取り組むことにより,効果的に接遇向上がなされた.さらにレベルの高いサービスを提供するために今後も活動を継続していく必要がある.<br>
著者
南 龍弥 小池 崇文 米谷 柚香
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.99-100, 2019-02-28

本研究では, 高解像度CGの描画時間短縮方法の一つである, 中心窩レンダリングを適用することで, ユーザが知覚する品質を維持したまま, テンソルディスプレイ用画像の描画時間を短縮する方法を検討する. 人間の知覚する画像は, 中心窩の領域で最も鮮明になり, 周辺視野に行くに従ってぼやけて行くという性質がある. その性質を利用し, ユーザの視点先周辺以外の情報量を落とすことでユーザが知覚する品質を維持したまま, 描画処理の負担を下げる. 落とす情報量は, 表示する画像の解像度と, 表示する視差数とする. 複数の組み合わせで情報量を落とし, 実験を行う.
著者
岡部 遊志
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.101-120, 2015

フランスにおいては地方分権が進むとともに,地域政策の担い手として「地域圏」の役割が重要になってきている.その重点政策の1つがフランス版のクラスター政策である「競争力の極」政策である.クラスター政策に関しては,その空間的なスケールとガバナンスのありようが問われているが,これらの点を踏まえて本稿では,フランスのミディ・ピレネー地域圏を対象地域にして,「競争力の極」政策が地域の産業集積と政府間関係に果たした役割を明らかにする.フランス南西部のミディ・ピレネー地域圏は,航空宇宙産業が集積するトゥールーズを中心都市としつつも,全体としては農村的で,周辺的な低成長地域として位置づけられてきた.2005年からの「競争力の極」政策により,当地域圏では,西隣のアキテーヌ地域圏と連携しつつ,「アエロスパース・ヴァレー」の名の下で,航空宇宙産業の国際競争力強化が目指されてきた。こうした政策の結果,既存の航空宇宙産業集積とIT産業との融合が図られるなど,研究開発機能の強化が促進された.資金面での中央政府の役割は低下しているものの,産業特性やガバナンスの観点からは,依然として影響力は強い.また,R&Dを促進するために「戦略分野」が設定されているが,これを空間的な観点から分析すると,広域的な連携がなされている一方で,中心都市トゥールーズの中心性が強化される傾向がみられた.
著者
橋本 洋美 後藤 栄 坪内 美紀 泉 陽子 吉村 由香理 笠原 優子 塩谷 雅英
出版者
日本哺乳動物卵子学会
雑誌
Journal of mammalian ova research = 日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.209-213, 2004-10-01
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

IVFとICSIを回収された卵子の半数ずつに行うSplit ICSIを考慮すべき精液所見を検討することを目的とした.当院で初回ARTを施行した682症例の精液所見を目視法で調べ,精液濃度および運動率別の受精率,妊娠率の検討を行った.受精率30%が以下の症例では受精率50%以上の症例と比較し妊娠率は有意に低かった.精子濃度が2,000万/ml未満の症例では受精率は50.0~53.8%であり,2,000万/ml以上の症例における受精率の65.0~79.5%と比較して有意に低率であった.精子運動率が20%未満の症例では受精率は0~29.6%であり,運動率20%以上の症例の受精率66.8~76.8%と比較して有意に低率であった.精子濃度2,000万/ml未満または精子運動率が20%未満の症例に対してはsplit ICSIを考慮すべきと考えられた.<br>
著者
古田嶋 智子
出版者
東京藝術大学
巻号頁・発行日
2017-03-27

平成28年度
著者
鹽谷 勉
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.393-403, 1940-07-10 (Released:2008-12-19)
参考文献数
35
著者
西原 茂樹
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.69-84, 2013

本稿の目的は、明治末期から昭和初期にかけての甲子園野球関連言説を読み解き、当時において「甲子園野球」という独特の対象が構築されていく有様を明らかにすることである。<br> 「純真」は1920~30年代の甲子園野球関連言説において頻繁に使用された用語である。これは当初は主催者である新聞社により、選手や関係者が努めて遵守すべき「標語」として位置づけられており、必ずしも甲子園野球のあり方そのものを表現するものではなかった。しかし1920年代半ば以降、様々な論者が最高峰たる東京六大学野球と対比しつつ甲子園野球を言説化していく中で、「純真」は六大学野球とは一味違うこのイベントの魅力を表現し得る用語として捉え直され、その結果、それを核として定型化された一連の「物語」が構築されることとなった。<br> そこから窺えるのは、存続の危機に晒された明治末期の野球界が生き残りをかけて確立させた「規範」としての「青年らしさ」が、草創期の甲子園大会の運営においても重要な前提となっていたこと、そして昭和初期に商業化の一途を辿る六大学野球への批判が拡大する中で、「青年らしさ」を正しく体現し得る「他者」として甲子園野球を捉える見方が定着し始めたことである。
著者
浅井 玲子
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = Bulletin of Sports Research Center, Hosei University (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
no.36, pp.51-54, 2018-03

本研究では,競技連盟主催の東京六大学野球ゼミナールの取り組みにおいて,大学スポーツの資源を活用し,学生がスポーツを支え,活性化する体験が,文部科学省が示す職業的発達や経済産業省が求める社会人基礎力の育成に寄与する可能性を検証することを目的とした。対象者は当該ゼミナールの1期生11 名であり,尺度として「改訂版社会人基礎力尺度」を使用し,2 年間の取り組みによって当該ゼミナールに参加しない大学生活と比較した場合に参加者がどのような力をつけることが期待されるか,「社会人基礎力」という視点から検証した。当該ゼミナールでの活動と,その他の大学生活での社会人基礎力獲得に対する期待を比較するために,回答結果を対応のあるt 検定を用いて分析した結果,ゼミナールの活動に参加した学生たちは,当該ゼミナールでの活動が社会人基礎力の獲得にポジティブな影響を与えると考えていることが示された。当該ゼミナールでの活動において,大学スポーツの現状,スポーツ界の現状を調査,分析し,企画の実現性を考慮するプロセスを経て提案を行うこと,また,自身の所属とは異なる大学の学生や多くの社会人との活動を通じて,社会人基礎力の獲得や向上への手応えを参加者が得ていることが示された結果であった。