著者
山田 節夫
出版者
専修大学経済学会
雑誌
専修経済学論集 = Economic bulletin of the Senshu University (ISSN:03864383)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.41-50, 2018-07

特許出願数は,研究開発の成果を意味する指標としてイノベーション研究に頻繁に用いられている。それは,研究開発費と特許出願数の間に安定的な正の関係が見いだされるからに他ならない。しかし,近年の日本において,研究開発費の増勢傾向に変化がないにも関わらず,特許出願数の持続的減少が観察されている。研究開発費と特許出願数の間には,様々な要因が作用していると考えられるが,もしその主要な要因が研究開発生産性の低下であるなら,こうした現象は深刻な事態を意味していることになる。ただし,1988年に導入された「改善多項制」の影響が大きいとも考えられる。そこで本稿では「改善多項制」の影響を十分に考慮した「特許出願関数」を設定し,1985年~2007年における日本の主要産業に属する東証一部上場企業312社のプーリング・データを作成し推計した。推計の結果,特許出願数の減少傾向は主として「改善多項制」の利用の普及にあることが明らかとなった。
著者
福島 和郎 岩崎 庸男 渋谷 昌三 Kazuro Fukushima Tsuneo Iwasaki Shouzo Shibuya 目白大学大学院心理学研究科 目白大学人間社会学部 目白大学人間社会学部 Mejiro University Graduate School of Psychology Mejiro University Faculity of Human and Social Sciences Mejiro University Faculity of Human and Social Sciences
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro journal of psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.(2), pp.65-74, 2006

終助詞「よ」と「ね」に関する研究の特徴を研究分野ごとに大別すると、初期の国文法分野を中心とする構文論的アプローチや、最近の発達研究と自閉症研究の分野を中心とする事例に基づくアプローチは、主に「よ」と「ね」の対人関係機能を指摘し、日本語文法、日本語教育、言語心理学の分野を中心とする語用論的アプローチは、主に「よ」と「ね」の内在的意味を指摘し、認知科学分野を中心とする談話管理理論に基づくアプローチは、主に「よ」と「ね」が果たす情報伝達時の手続き的な指示機能を指摘しており、研究分野によって解釈が様々に分かれている。また、研究方法については、大半の研究で研究者の経験や理論に基づいた用例解釈が採用されている。発達研究と自閉症研究および一部の言語心理学分野では統計データを重視した研究方法も採用されているが、こうした研究では分析対象とされる発話文の種類が限定的な用法に留まっている。「よ」と「ね」に関する研究の更なる進展には、学問分野を越えた幅広い視点からの実証的研究が求められよう。
著者
Tadahiko MURATA Takuya HARADA Daiki MASUI
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration (ISSN:18824889)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.513-519, 2017 (Released:2017-12-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1 9

In this paper, we modify a synthetic reconstruction (SR) method without samples. The synthetic reconstruction method is a method to generate attributes of population such as age, sex and kinship within a family according to available statistics. Although the original SR method employs some individual samples that are collected to make a statistics, it is criticized that generated attributes are only within the samples used in the reconstruction process. In this paper, we employ a simulated annealing-based SR method without samples. We compare two types of generation methods of a candidate solution in a search of simulated annealing: changing age of an agent (age-change) or swapping ages of two agents (age-swap). Results of synthetic reconstruction show that age-change is better when we limit the number of search. On the other hand, age-swap is better when we have enough number of search for reconstructing a population.
著者
上総 史朗
出版者
財界展望社
雑誌
財界展望
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.150-151, 1998-03
著者
山本 聡 河合 豊彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.37-44, 1994-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4

昨今の公共土木工事においては、新技術・新工法の導入、規模の拡大など積算情報・業務が質的・量的に大幅に増大している。また、現在の積算体系については精緻な積み上げ方式となっているため積算業務に多くの時間と労力が費やされ、積算体系、積算システムの抜本的な改善が必要となってきている。建設省が制定している積算基準については各自治体がこれを基本とし、積算しているのがほとんどであるため、全国べースでの対応が必要となってきている。そこで、本稿の新土木工事積算システム (以下「新システム」という。) の開発では、土木積算業務をより効率的・合理的に行うために工事工種の体系化 (設計書構成の統一等) と合わせ、最新のコンピュータ技術を導入した積算システムを全国的な観点から構築することを目的に検討を行い、そのシステム内容等について報告するものである。
著者
江戸 優裕 柿崎 藤泰 山本 澄子 角本 貴彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2115, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 体幹は身体質量の50%以上を占め(松井1956)大きな慣性を有することから、その運動が動作に与える影響は小さくない。それを裏付けるように、体幹の特異的な運動が腰痛や下肢の整形外科的疾患に結び付くことや、動作の効率性を損ねる要因になり得るという主張は散見される。 体幹運動の中でも特に回旋に関する報告は多く、古くから様々な知見が得られている。しかし、それらのほとんどは三次元的に生じる体幹運動から回旋角度のみを抽出して分析したものであり、回旋に伴う副次的な運動を含めて分析した研究は少ない。臨床的には体幹の回旋動作に側屈等が伴ってくることで、あたかも骨盤に対して胸郭が前後左右に並進してくるような動きを呈することが多い。また、物理学的にも剛体の運動は回転と並進で表わされるため、体幹運動についても回旋のみでなく、並進を加えて分析することによって、より本質的な動態を把握できるものと考える。 そこで、本研究では体幹の回旋に伴って生じる骨盤に対する胸郭の並進運動を計測し、若干の知見を得たので報告する。【方法】 対象は健常成人12名(男性8名・女性4名、平均年齢25.8±4.1歳)とした。 計測課題は静止立位と、立位での身体回旋動作とした。回旋については左右交互に4回ずつ、一定速度で無理のない範囲で行った。計測には三次元動作解析装置VICON-MX(VICON PEAK社製)を使用し、両側のASIS・PSIS・烏口突起、そして第1胸椎棘突起の計7点に貼付した赤外線反射標点の三次元位置座標を計測した。得られた標点の位置データから、骨盤に対する胸郭の相対的な回旋角度と、左右・前後への並進量を算出した。尚、並進については骨盤の局所座標系(両ASISの中点と両PSISの中点を結ぶ線の中点を原点とする)に胸郭中心(両烏口突起の中点とT1を結ぶ線の中点)を投影させて算出した。 そして、回旋方向別にXを回旋角度[°]・Yを並進量[mm]とする散布図を求め、更に最小二乗法により一次方程式に近似した。得られた直線の傾きを、回旋に伴う並進の割合を示す並進率(並進量/回旋角度)として分析に使用した。 統計学的分析における検定方法については結果に記した。尚、有意水準は全て5%とした。【説明と同意】 対象者には研究の主旨を口頭で説明し、参加に同意を得た。【結果】・体幹の回旋に伴って、回旋とは反対方向への胸郭の並進が生じた(側方並進率-0.58±0.44)。また、回旋に伴い前方への胸郭の並進が生じた(前方偏位率0.42±0.31)。これらの並進率は、例えば10度の体幹右回旋に約6mmの胸郭左方並進と4mmの前方並進が伴うことを意味する値である。・回旋動作における側方並進率と前方並進率の関係において、ピアソンの相関係数を求めた結果、有意な正の相関が認められた(p<0.05・r=0.46)。・静止立位での体幹肢位(回旋側及び側方偏位側)により分類した右回旋動作と左回旋動作における並進率の比較について、対応のあるt検定を用いたところ、前方・側方共に有意な差は認められなかった。【考察】 体幹の回旋動作は純粋な軸回旋運動ではなく、回旋とは反対方向及び前方への胸郭の並進が伴う運動であることを確認した。 また、前方並進と側方並進は相関関係にあり、互いに補完的に生じていることが示唆された。つまり、回旋時に対側並進が大きければ前方並進は小さく、逆に前方並進が大きければ対側並進は小さいという関係にあることが分かった。このことは、臨床において対側並進と前方並進のどちらか一方の動きに対して介入を加えることで、他方の動きをコントロールできる可能性があることを示唆していると考える。こうしたアプローチの妥当性に関しては、今回の分析に含めていない骨盤・胸郭の傾斜等が結果への交絡となっている可能性もあるため、更なる検討が必要である。 立位時の体幹肢位と回旋動作時の並進率については、今回は一定の関係を認めなかったが、建内ら(2010)は立位姿勢と体幹回旋可動域には関連があることを報告している。このことから、立位時の体幹肢位は動作時の回旋量の指標にはなり得るが、回旋に伴う胸郭の並進を反映するものではないことが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 体幹の回旋動作は、臨床的にも研究的にも回旋角度のみを指標とされる場合が多いが、実際には前後左右への並進を伴う三次元運動である。そして、副次的に生じる前方並進と側方並進の間に一定の関係が認められたことは、体幹運動の評価にとって有益な情報であると考える。
著者
青木 歳幸 大島 明秀 ミヒェル ヴォルフガング 相川 忠臣 今城 正広 海原 亮 小川 亜弥子 金子 信二 田村 省三 保利 亞夏里 山内 勇輝 吉田 洋一 鷲﨑 有紀
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

3年間の種痘伝来科研において、1849年8月11日(嘉永2年6月23日)に到来した牛痘接種が九州各地へ伝播した様子が明らかになった。たとえば、佐賀藩では全額藩費による組織的な種痘を実施した。大村藩では、牛痘種子継料を全村から徴収し種痘を維持していた。中津藩では長崎から痘苗を得た民間医辛島正庵らが文久元年(1861)医学館を創設した。福岡藩領では、武谷祐之が、嘉永2年の末から種痘を始めた。小倉藩では、安政5年(1858)に再帰牛痘法を試みていた。九州諸藩における種痘普及により、洋式医学校の設立など地域医療の近代化をめぐる在村蘭方医の人的ネットワークが主要な役割を果たしていた実態が判明した。
著者
堤 文生 半田 一登 下畑 博正
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.51-54, 1990-01-10 (Released:2018-10-25)

毎日のリハビリ施行患者数の動向を把握することは,病院経営の面で重要なことである。リハビリ診療箋の集計作業の繁雑さは,どこの病院でも頭の痛い課題である。当院では,受付業務の省力化としてパソコンを用いてリハビリ診療箋の集計作業を行っている。今回,昭和63年4月の社会保険及び老人診療報酬の一部改定に伴い,従来のプログラムを大幅に改正したので紹介する。入力操作は,↓キー・↑キー・リターンキー・テンキーを主に用い簡素化した。
著者
村田 菜穂子 前川 武 Nahoko Murata Takeshi Maekawa
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.119-133, 2019-03-31
著者
中西 央 小野瀬 裕子 草野 篤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1185-1198, 1998-11-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
17

第3章人権条項のうち「男女平等」と「教育の機会の平等」を中心にベアテが第一次案として起草した条項の生成過程を考察してきた結果を以下にまとめる.(1) GHQ内における草案の作成第一次案の作成を担当することになったベアテは, 10年に及ぶ在日経験から憲法で女性の権利を明確にしておく必要性を認知していた.具体的には, 以下の内容を起草している.「法の下の平等」「家庭における男女平等」「家制度の廃止」「母性保護」「既婚・未婚の差別禁止」「嫡出子・非嫡出子の差別禁止」「長子相続権の廃止」「教育の機会の平等」「児童への無償医療制度」「学齢期の児童及び青少年の常勤的雇用禁止」「男女雇用機会均等」「男女同一価値労働同一賃金」「社会保障制度 (生活保護) 」「著作・特許権」等である.その後, 簡潔・原則主義のGHQ内での検討・修正によって, 多くの条項が削除・統括される.ただし, 「法の下の平等」「家庭における男女平等」だけはほぼそのままの形で残り, その他「教育の機会の平等」「社会保障」「勤労の条件に関する基準の設置」が残る.しかし, 削除された中には, 後に法制化の課題として残ったものもあり, ベアテの先進性がわかる.(2) マッカーサー草案から日本国憲法に至るまで次にGHQと日本政府の折衝の結果, 修正が行われた.「家庭における男女平等」について日本側は抵抗を示したが, 通訳としてよく働き好感をもっていたベアテの起草と聞き, 残すことになる.ここにベアテが同席していたことは重要であった.帝国議会では, 「個人の尊厳」に基づく人権意識は希薄で, 議員の多くは戸主権の廃止に危惧感を示した.ベアテが起草していたものと同じ「母性保護」規定を求める提案があったが却下されている.(3) 日本国憲法制定に伴う動きと現在日本国憲法が制定され, その24条が, 個人の尊厳と両性の本質的平等に基づく婚姻を家族の出発点としたことで, 「家」制度を規定していた明治民法, 刑法の規定が改正された.今なお残る課題の中で, 「非嫡出子の差別の禁止」「男女同一価値労働同一賃金の原則」については, ベアテがGHQ第一次案で起草しカットされた条文と重なり, ベアテの先進性がわかる.(4) 第3章人権条項の推移GHQ第一次案として起草された第3章人権条項が, どのように修正され, 統括され, または削除されて日本国憲法となったかを系統的に整理し, 図によって提示した (図1).ベアテ起草条項の文言が日本国憲法になるまでを整理し, 表によって提示した (表 1).以上のように日本国憲法の第一次案の起草にベアテが携わったことで, 第24条, 第26条等が盛り込まれ, 「家族」「両性の本質的平等」「児童」という言葉が使用される等, 民主主義日本の出発にあたって, ベアテの果たした役割の大きい事がわかった.
著者
矢野 環 福田 智子 ヤノ タマキ フクダ トモコ Yano Tamaki Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.25-45, 2019-08-30

資料(Material)本稿は、「《資料》 竹幽文庫蔵『香道籬之菊』の紹介」(『社会科学』第46巻第2号、2016年8月)を受け、「同―同(三)―」(『社会科学』第47巻第1号、2017年5月)、「同―同(四)―」(『社会科学』第47巻第2号、二〇一七年八月)、「同―同(五)―」(『社会科学』第47巻第3号、二〇一七年十一月)、「同―同(六)―」(『社会科学』第47巻第4号、二〇一八年二月)、「同―同(七)―」(『社会科学』第48巻第1号、二〇一八年五月)、「同―同(八)―」(『社会科学』第48巻第2号、二〇一八年八月)、「同―同(九)―」(『社会科学』第48巻第3号、二〇一八年十一月)、「同―同(十)―」(『社会科学』第48巻第4号、二〇一九年二月)、「同―同(十一)―」(『社会科学』第49巻第1号、二〇一九年五月)に引き続き、竹幽文庫蔵『香道籬之菊』所載の組香について、とくに和歌を主題とする組香の翻刻と考察をおこなうものである。本書は、礼・楽・射・御・書・数の6巻6冊から成り、177の組香が掲載されているが、その半数近くは、和歌および歌集の序文など、特定の作品を素材として組み立てられている。そこで、本稿では、書の巻から、三舟香、小町香の、計二つの組香を取り上げた。