著者
八木 文雄 蒼本 秋 瀬尾 宏美 武内 世生 大塚 智子
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,AO(態度・習慣領域評価)方式,教科型(英語・数学)方式,問題解決能力試験(KMSAT)方式による入学者の,入学後における動向を長期間にわたって継続的に追跡調査・解析することを通して,平成15年度から開始したAO方式による入学者選抜の妥当性について詳細に検証することである。そこで,本年度は,平成15年度入学者が平成21年3月に,6年間の全課程を修了したので,平成15年度全入学者90名を対象として,全履修科目成績,学生間ピア・レヴユーによる態度・習慣領域評価スコア,共用試験(OSCE, CBT)成績,医師国家試験合格率を,各選抜方式による入学者群で比較・解析した。その結果,学生間ピア・レヴユーによる態度・習慣領域評価では,ほとんどすべての評価項目においてAO方式による入学者のスコアが有意に高く,また,1〜3年次および5・6年次の全履修科目およびOSCE(4年次末)の成績は,AO方式による入学者群において有意に良好であった。さらに,教科型方式とKMSAT方式による一般選抜群には6年間の過程において数名の留年者が出現するのに封して,AO方式による入学者にはそのようなケースはほとんど認められなかった。以上のように,AO方式による入学者の入学後における動向が,他の2方式による入学者の動向を凌駕していることから,長時間をかけた態度・習慣領域評価による入学者選抜の有効性が強く示唆された。なお,1〜4年次の研究結果は学術論文として,「大学入試研究ジャーナル」(2007年第No.18)等においてすでに公表した。しかし,医師国家試験の合否は平成21年3月末に判明するため,平成15年度全入学者の入学後6年間の動向に関する本年度における研究成果については,平成21年度4月以降に公表せざるを得ない。現在は,その研究成果の「医学教育」への投稿を準備している段階である。
著者
美濃 導彦 椋木 雅之 森 信介 山肩 洋子 舩冨 卓哉 中村 和晃 橋本 敦史 飯山 将晃 中村 和晃 舩冨 卓哉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

一般の動物とヒトを隔てる「知能」として,本研 究では道具の使用,および論理や推論による問題解決能力を利用して行う「知的行動」の認識を目指し,題材として「キッチンでの調理」を取り上げ,道具,食材,調理動作の認識,および言語的に記述された行動の理解に取り組んだ.観測データから認識できる「表出動作」のうち,特に物体の把持・解放を中心として,レシピ中に言語的に記述された「概念的行動」の完了認識や次の行動の予測をする手法を構築した.また,テキストから扱われる食材の種類やそれに対する行動,目標状態などを概念的行動」として自動で獲得し,レシピ内でのそれらの依存関係をワークフローとして抽出する技術を構築した.
著者
山肩 洋子 今堀 慎治 森 信介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は,Webにある膨大な数のレシピの集合が本質的にどの程度の多様性を持っているのか,足りないのか十分なのか,何が足りないのかを明らかにすることである.そこで本研究では,(i)自然言語処理技術によりレシピ記述から手順構造を抽出し,(ii)手順と記述の観点からレシピ間の関係を解析するとともに,(iii)全体の知識を使って補完可能な欠損を補完することで,レシピ集合が持つ本質的な多様性を解析する機構を構築する.今年度は以下の2点を行った.(1) 国際化に向けた英語対応:Webレシピの急増は日本だけでなく世界で起こっている現象である.米国最大手のAllrecipesの月間ページビューは推定2,000万件で,クックパッドの実に3倍以上である.さらに料理レシピが世界の情報処理の研究対象として国際的に認知されつつある.そこで,平成28年度,英文係り受け解析器RASPの開発で著名なJohn Carroll氏の協力を得て,英文レシピのフローグラフコーパスを開発した.今年度はこれを我々が開発した手法で実装することで,固有表現認識精度が84.8%,固有表現が正しく認識されているときの依存関係推定精度74.1%を達成した.また,和文と英文のレシピの構造的な相違を統計分析により明らかにした.(2) レシピテキストの記述粒度の自動変換:肉じゃがやハンバーグのような代表的な和食は数千からときに数万のレシピが見つかる.同じ料理名をもつレシピのうち,その主たる調理方法が似通っているとき,それらは似た調理手順を説明した異なる記述であると考える.ここで,片方のレシピがもち,もう片方のレシピが持っていない説明は,その手順の詳細説明であると考えられることから,この関係を用いて詳細記述を生成した.また,双方が持つノードはその手法の主幹であることから,それらを取り出したフローを簡略な表現と位置付けた.
著者
小山 由紀江 杉森 直樹 田中 省作
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は理工系学生の英語語彙・語句に関する能力を測定するために、科学技術コーパスデータの分析に基づいたコンピュータ適応型テスト(CAT)を作成することである。この目的ため、科学技術コーパスを分析し、重要語彙・語句を抽出しこれを試験項目に使用した。テスト項目の分析と受験者の能力推定にはLatent Rank Theory(LRT)を採用し、予備テストを実施し230項目の項目バンクを作成した。これらを基に開発した理工系英語CATをmoodle上で実施した結果、科学技術英語のテストとして一定の妥当性があることが解った。
著者
竹下 政孝 柳橋 博之 鎌田 繁 青柳 かおる 吉田 京子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

中東三地域(アラブ・イラン・トルコ地域)全般について、竹下がイスラーム神秘思想(イブン・アラビーおよびその系統)のテキスト、オスマン帝国領域について、柳橋が法学分野のシャイバーニーのテキストおよびスンナ派四法学派の権威的テキスト、イラン・シーア派地域について、鎌田が神秘思想に関するモッラー・サドラーのテキスト、吉田が伝承学のマジュリスィーのテキスト、エジプト、アラブ地域について、青柳がガザーリーの神学テキスト、これらの主要なテキストに関し現代における受容と影響を考察する論文、著作を成果としてまとめた。
著者
青木 千帆子
出版者
静岡県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

国内の電子書籍のアクセシビリティに関する状況は、2015年に販売され売り上げ上位を占める電子書籍の9割近くが、アクセシブルなフォーマットで販売されている。また、対応するアクセシビリティ機能を購入前に判断することができる。一方、電子書籍ビューアーは、課題が残されている。このため、出版関係者と議論し、ビューアーの対応が求められる最優先項目9点を導出した。電子書籍のアクセシビリティについては、著作権法と障害者差別解消法が頻繁に参照される。著作権法を参照する場合、アクセシビリティを支えるビジネスモデルの確立に向けた語りではなく、福祉的取り組みとしての語りが採用され、旧来の状況を再構築している。
著者
平山 勉
出版者
首都大学東京
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究では、高度成長期東京地区のプラスチック用金型産業の展開を、金型製造業者の企業行動の変化に注目しながら歴史的に実証した。従来の研究で、産業政策による産業育成という視点から分析対象となっていた金型産業について、それ自体の展開や発展の在り方を把握することで当該産業の発展要因の抽出を図った。その結果、高度成長期日本の金型産業では、社会的分業、工程間分業、企業間分業といった分業関係の深化と、それともなう「専門性」の向上が、産業発展を促した要因となったことが指摘される。
著者
遠藤 不比人 秦 邦生 中井 亜佐子 田尻 芳樹 シャムダサニ ソヌ
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

英語圏の人文学研究における「情動理論」を英国モダニズム文学という歴史的文脈で再考察した。特に同時代の精神分析的言説との関連、およびマルクス主義美学の政治的可能性という点に関して、海外の研究者と継続的に英語を使用した会議を開催し、当該テーマをめぐり国際的な研究成果をあげることができた。それを踏まえて、さらに、近代の「心理学化」に抗う「反=心理学」と呼ぶべき言説的系譜が新たな視点として浮上し、それについての国際会議をロンドン大学で行った。
著者
星野 幹雄
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

小脳をモデル系として、神経幹細胞アイデンティティの時空間制御機構について調べた。小脳菱脳唇の神経幹細胞ではAtoh1が、小脳脳室帯の神経幹細胞ではPtf1aが発現し、その部位での空間アイデンティティを規定することで、それぞれ興奮性神経細胞と抑制性神経細胞を生み出す形質を与えられているということを明らかにした。また、小脳脳室帯の神経幹細胞は、最初にプルキンエ細胞産生神経幹細胞であったものが、その後抑制性インターニューロン産生型神経幹細胞へと形質を変えることを見いだした。その過程では、転写因子Olig2とGsx1が関与することも見いだした。
著者
越智 光夫 味八木 茂 亀井 直輔 中佐 智幸
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

偽関節等の難治性骨折はしばしば治療に難渋する。microRNA(miRNA)は様々な生命現象に重要な役割を担っており、疾患の病態にも関与している。本研究は、骨形成を促進するmiRNAを同定し、難治性骨折モデル動物に合成miRNAを磁気ターゲッティングと併用することにより骨癒合を促進することを目的とした。ヒト骨髄間葉系幹細胞(hMSC)を骨分化誘導し、分化前後で発現変動するmiRNAを網羅的に解析し、microRNA-222 (miR-222)を抑制すると骨分化が促進することがわかった。miR-222 inhibitorを、ラット難治性骨折モデルに局所注射したところ、骨形成が促進されていた。
著者
添田 雄二
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,北海道における小氷期の実態とそれに伴う自然災害の特徴を地質学的・考古学的手法によって明らかにし、それが自然界や人間社会に与えた影響についてまとめた。小氷期の北海道は寒冷化の影響によって、顕著な海退が起きていた。特に17~19世紀は、低地でも地下深部まで凍結していた。度重なる大雪や低温は、自然界の資源を減少させ、狩猟採集に大きく依存したアイヌ民族に深刻な影響を与えた。
著者
瀬戸 浩二 佐藤 高晴 田中 里志 野村 律夫 入月 俊明 山口 啓子 三瓶 良和
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

南極地域において小氷期では乾燥的な気候であったと考えられる.その後,相対的に湿潤に変化したようだ.亜寒帯オホーツク海沿岸海跡湖群では,人為的環境変化以外では大きな環境変化は見られなかった.濤沸湖で湾口の閉鎖あるいは縮小が見られた.これはわずかな海水準低下に起因しているものかもしれない.温帯日本海沿岸海跡湖群では,小氷期終了前後(1600-1800年頃)に洪水堆積物が認められ,比較的大きな降雨があったことが明らかとなった.その後は人為的な環境変化が大きく,個々の汽水湖に個性的な環境変化を示している
著者
外山 勝彦 小川 泰弘 大野 誠寛 中村 誠 角田 篤泰 松浦 好治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は,日本法の動きに関する情報を即時に,分かりやすく国際発信するための支援環境の構築である.特に,統計的機械翻訳の利用とターミノロジーの構築により,法令の要約である「法令のあらまし」の翻訳・理解・発信を支援する手法とその有効性を示す.本研究の結果,「法令のあらまし」に対する日英統計的機械翻訳手法と文書構造化手法,複単語表現対訳辞書の構築手法とそれを用いた統計的機械翻訳手法の開発,法令改正に伴う法令ターミノロジーの経時変化の抽出・可視化手法などを開発した.また,「英文官報」からの対訳法令用語2,750語の抽出や,現在有効な定義語6,890語からなる法令ターミノロジーの構築も行った.
著者
真田 久
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

古代オリンピックで実施されていた吹奏競技と布告競技は芸術競技の範疇に入るものであり、その伝統を受け継いで、今日のオリンピックは文化プログラムを行うことがオリンピック憲章にて決められた。バルセロナ大会(1992)より、前大会終了後から4年間に及ぶ文化プログラムが行われ、カルチュラルオリンピアードと名付けられて今日まで継続されている。オリンピアードとは、大会開催年の1月から4年間を指すので、大会終了後も文化プログラムを続け、オリンピックレガシーとするべきである。日本から発信すべき文化プログラムとして、嘉納治五郎の理念、日本の和の心を伝えていくことは、文化交流や国際交流に貢献すると期待される。
著者
石川 幹人
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、疑似科学的広告に注目し、その科学性を判別する評価基準を策定した。文献調査をもとに、実証的効果を示すデータ面の評価基準として透明性・再現性・客観性を、効果の作用機序を説明する理論面の評価基準として論理性・体系性・普遍性を、両面にかかわる評価基準として予測性の、合計7つの基準を策定した。また、これらの評価基準の実用性を高めていくための「ユーザ参加型のホームページ」を開発した。
著者
堀 正士 太刀川 弘和
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

研究目体に同意が得られ、音声採取を行った統合失調症患者は12名(男性9名、女性3名)であった。採取時年齢平均44.8歳、平均発症年齢23.5歳、平均罹病期間21.3歳であり、全例が慢性期にある患者であった。全例が抗精神病薬を投与中であり、12例中9例が主に非定型抗精神病薬を投与されており、全例でパーキンソニズムやアカシジア、アキネジアなどの錐体外路症状は認められなかった。これらを我々の主観に基づきプレコックス感あり(以下「あり」と略)とプレコックス感なし(以下「なし」と略)の二群にわけて相違点を検討した。二群間で平均発症年齢、平均罹病期間、採取時平均年齢を見たが相違は認められなかった。しかし、「あり」では5例中2例が解体型であったのに対して「なし」では7例中わずか1例が解体型であり、病型に差違が認められた。また二群間でPANSS得点を比較すると、陽性症状尺度、陰性症状尺度、総合精神病理評価尺度いずれにおいても、「あり」が「なし」に比較して高得点である傾向が見られた。さらに二群間で音声解析結果を比較すると、以下のような傾向が見られた。発声指示から実際の発声までの時間(発声潜時)は怒り、喜び、悲しみのいずれの感情を込めて発声する場合も、「あり」が「なし」よりも短時間であった。なかでも、「なし」では悲しみの感情を込めた発声で他の2つの感情よりも潜時が長くなる傾向があるのに対して、「あり」ではいずれの感情を込めた場合もほぼ同じ潜時であった。また、実際の発声時間においては、怒りと悲しみの感情において「あり」の発声時間が「なし」よりも短時間である傾向が認められた。音声の周波数特性に関しては、二群間ではスペクトログラフィの目視上では明らかな違いが認められなかった。以上まとめると、プレコックス感の認められた症例では解体型が多く、音声採取時点で精神症状がより活発な傾向が認められた。また同群では感情をどのように発声に反映させるかという試行錯誤の時間がプレコックス感なしの群に比較して短く、感情移入の障害があると推察された。
著者
三友 宏志 粕谷 健一
出版者
群馬大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

キノコのベニタケ科チチタケ属(Lactarius属)国産のチチタケ子実体を乾燥後、粉砕し、これをn-ヘプタンで抽出し、メタノールに再沈殿させることによって天然ゴムを得た。これをトルエンでさらに精製後、元素分析で窒素含有量が0であることを確認した。これはゴムアレルギーの主因であるタンパク質を全く含まないことを意味する。このキノコからゴムの収率は約6.6%であった(これは完全なシス1.4-ポリイソプレンであり、キノコゴムと呼ぶこととする)。次に中国産のチチタケから得られたキノコゴムの収率はさらに1%ほど向上した。市販の天然ゴムの数平均分子量は20万以上であるが、国産キノコゴムのそれは4万前後であり、中国産でも約5万であるが、このままでは液体ガム状で成形品にならない。これを改善するため、対照試料として化学合成のシス、トランス混合の1,4-ポリイソプレンオリゴマー(分子量:約1万)を用い、これに数種類の放射線架橋剤を混合し高分子量化を行った。最も有効な架橋剤としてはTrimethylolpropane triacrylate (TMPrA)と1,6-Hexanediol diacrylate (HDDA)であることが分かった。両者のキノコゴムにHDDAを5phr混合して100〜200kGy照射するとかなり耐久性のあるゴム体が得られ、天然ゴムの約50%ほどの力学的性質を示すことが分かった。一方、チチタケを採取後これのフラスコ培養を試みたが成功しなかったので黄チチタケ菌糸体Lactarius chrysorrheus(L.C.)を入手し、これの液体培地中での培養も比較のために行った。培養日数は28日であった。L.C.菌糸体からのゴムは、収率は約2%、数平均分子量は1500前後となり、チチタケ子実体からのゴム(収率:6.6%,分子量:40,000)と比べて収率、分子量とも低くなり、これにTMPTAやHDDAを5phr混合してγ-線照射するとある程度の固さを持った固形物が得られた。このL.C.ゴムはNMR測定の結果、シス型ポリイソプレンのみでトランス型ポリイソプレンは含まれないことが分かった。チチタケの菌糸を大量培養法を検討した。また、固体培養でも大量培養系を検討した。チチタケのイソプレン生産能力は、培養形態や培養条件に依存することが判明したが、分子量を増加させることはできなかった。天然ゴムの老化がキノコゴムでも起こり、これへの対策が求められている。
著者
杉山 弘 斉藤 烈
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

本研究は、ブレオマイシン金属錯体による酸素活性化機構をモデル化合物や修飾オリゴヌクレオチドを用いて、有機化学的に詳細に検討し、錯体の構造、DNAの切断の分子機構の本質に迫り、その機能制御を行ない、新しいブレオマイシンを創製することを目的としている。今年度の研究によって以下に示す知見及び成果が得られた。1)ブレオマイシン金属錯体によるDNA切断機構の解明ラジカルの寿命を測定する化学プローブであるラジカルクロックを、ブレオマイシン金属錯体の反応サイトに導入し、それぞれの錯体により生成するラジカルの寿命について検討を行なった。その結果、コバルトによる反応においても鉄錯体と同様、4´位水素引きぬきにより4´位のラジカルが生成していることを世界に先がけて確認できた。この知見に基づいて新たな反応機構を提案した。2)ブレオマイシンコバルト錯体の構造解析錯体の構造が確定しにくい鉄錯体のモデルとして、コバルト-ブレオマイシンについてNMR,CDスペクトルなどの分光学的手段を用いて、総合的に配位構造についての検討を行なった。その結果、コバルトの錯形成により生成するグリーン、ブラウン錯体は錯体部分が逆の配位構造をとっていることが判明した。またこれに基づいて、ブレオマイシン-コバルト錯体とDNA6量体との結合モデルを構築し、AMBERによる力場計算を用いて、構造最適化を行ない、コンピューターグラフィックスにより視覚化した。
著者
山肩 洋子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

一般の調理者の多くは,新しい料理に挑戦する際,料理本などのレシピテキストを読むのが一般的であるが,テキストを読みながら包丁や火を扱うのは危険なため,レシピテキストに基づき調理法を音声で教示するシステムの構築を目指した.これを実現するには,レシピテキストをただ音声で読み上げればいいわけではなく,レシピテキストにおいて「1を2に混ぜてください」というように手順番号で示されている中間食材に対して,「先ほど切った玉葱」や「玉葱と人参の混ざったもの」というように,どの中間食材を指しているか調理者が容易に判別できる呼称を与えなければならない.そこで本研究では,調理者が中間食材をどのようなものと認識しているかを理解し,また調理者との間で共通の名前空間を確立することで,中間食材の呼称を決定する機構の研究を行った.この研究の成果により,中間食材は『直前の加工名』『構成材料名』『料理名』のほか,『器』『位置』『よく使われる中間物名(生地・タネ・出汁等)』などが組合さった呼び方がなされ,よってキッチンの状況をリアルタイムに認識することで呼称の自由度が向上することが示された.また,本研究で提案したモデルに従い言語解釈することにより,調理中に現れたすべての食材のうち93%の食材について正しく同定できたことを示した。さらに,料理コミュニケーション支援ソフトウェアIwacamの開発に参加し,Iwacamに音声対話システムとこれまで開発してきた食材認識技術を組み込んだ.これにより,カメラやマイクにより調理を観測し、その情報を逐次解析したり,音声対話により認識誤りを補正することで、各時刻に調理台上にどのような食材が存在するか、どのような加工を加えられているか、それは過去のどの物体と同一のものかを判別するシステムを実装した.
著者
山肩 洋子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、調理者が調理をしながらその調理法を説明した音声から、レシピテキストを自動生成する手法の研究を行った。レシピテキストにおいては、手順番号①の手順で生じた中間食材を、「①に②を混ぜます」というように手順番号で照応するのが一般的である。しかし音声でそのような中間食材を表現するときは、『さっき切った野菜』というように、適当な呼称を用いることが多い。そこで、調理観測映像から得た情報と調理者との対話から得た情報により、食材の調理状況を認識することで、調理者が食材を音声で表現した際に用いた呼称を照応表現に自動変換する手法を開発し、学会発表を行った。