著者
林 久美子 丹羽 伸介 池田 一穂 岡田 康志
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-07-18

分子モーターキネシンやダイニンによるオルガネラ輸送は医療や美容と関連が深い。例えばアルツハイマー病などの神経疾患では軸索輸送障害が問題となるし日焼けの原因となるメラニン色素の顆粒輸送もキネシンやダイニンが担う。非平衡統計力学は輸送を扱う学問であるが、非平衡統計力学の恒等式をこのような輸送に応用した。これらの輸送は非平衡確率過程とみなせるからである。具体的にはシナプス小胞前駆体輸送とメラニン色素顆粒輸送を調べた。前者では恒等式の利用でシナプス形成位置に異常がでる変異体において物理的要因を突き止めた。後者ではダイニン阻害剤シリオブレビンの効果を輸送に関連する力や分子モーターの数から評価した。
著者
金子 和雄 大山 陽介
出版者
四日市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

(a)2次元退化ガルニエ系および(b)4次元パンルヴェ型方程式における超越的特殊解の研究(a)G(9/2),G(5)及びG(14),G(23)に対し、対称解の存在を示し、線型モノドロミを計算した結果につき学会報告した(2010慶応大、名古屋大、2011-3早稲田大)。(b)藤、鈴木系の特異点における有理型解の分類及び線型モノドロミの計算、笹野系の特異点における有理型解の分類による藤、鈴木系との違い、藤、鈴木系および行列型パンルヴェの退化系NY{A4},IV{Mat}およびII{Mat}につき学会報告した(2011-9信州大,2012-3東京理科大,2012-9九州大,2013-9愛媛大)。
著者
森下 修次
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

佐渡市春日地区の祭礼「鬼太鼓」において地元の奏者と在米日系人IV世の演奏を録音し,ProTools によりIOI の計測を行った。その結果、付点音符(例えば〓など)に相当するリズムの比の値が地元の奏者は3.3:1、在米日系人は3.6:1 であった。このことは地元の奏者に比べて在米日系人が長い音符はより長く,短い音符はより短く演奏する傾向が示唆されるものと考えられる。また、同じ曲において日本語で歌われる場合と英語で歌われる場合はどのようにリズムが変化するのかを市販のCD を用いて分析した。その結果英語の方が長短を強めてうたう傾向があることが分かった。これは英語をはじめとした外国語は発音される音に長短が混合するシラブル構造だが、日本語はモーラ構造、すなわち母音と子音を一まとまりとする音が、等拍で発音されることによる影響が考えられる。
著者
吉澤 和徳 吉冨 博之 上村 佳孝
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

標本収集:国内でのフィールド調査により,より幅広い範囲のチャタテムシの形態解析用サンプルが得られた.ヒョウモンチョウ,マルハナノミのサンプリングも継続して行い,追加サンプルが得られた.遺伝子解析:前年度解析したミトコンドリアゲノム情報に基づき,トリカヘチャタテの分子系統解析に必要な追加プライマーの設計を終え,データもほぼそろった.現在外群のデータを追加している状態である.予備解析ではトリカヘチャタテ内の系統関係の解像度も高く,また近縁な Afrotrogla, Sensitibilla, Spekeletor 属との系統関係に関しても良好な解析結果が得られている.トリカヘチャタテの親子判別,集団構造解析に必要なマイクロサテライトプライマーも完成し,それらを報告した論文が受理され,現在印刷中である.形態解析:SPring8での追加の形態解析を行い,十分なデータを集めた.特に,トリカヘチャタテの精子貯蔵構造に興味深い発見があり,それらの解析をほぼ終え,論文の執筆を開始している段階にある.雌ペニスに関連した構造の解析も進めており,現在は比較に必要な雌ペニスを持たない通常のチャタテムシの交尾器の状態の解析を進めている.加えて,共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析も進めており,これらの構造のタンパク質構成などについても解析を進めている.サブプロジェクト:プロジェクトを通して得られたトリカヘチャタテなどのサンプルを用いて,交尾器以外の形態の観察も行った.特に,前後翅を連結する構造の解析を行い,その結果を論文として出版した.この構造から,トリカヘチャタテの飛翔能力が弱いであろう事も傍証された.受賞:本プロジェクトでイグ・ノーベル賞生物学賞を受賞した.
著者
高津 芳則
出版者
大阪経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

フランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」は、フランス憲法において、国歌であると条文で定められている。フランス小学校では、学習指導要領(現行2002年版)で、国歌を教えるものとされている。ところが、2005年9月の新学期から、法律上、小学校で教えることが義務となった。これが、新自由主義が必然的にともなう新保守主義の現れと見ることができるか、検討をおこなった。国歌の教育を義務づける法律は、政府が提案したものではない。2005年1月に政府が提出した、通称フィヨン法の審議の過程で議員立法の形で登場した。政府は、義務化法を政府提案には含めず議会の多数決に任せた。政府の本音は不明である。下院は、さしたる議論もなく多数決で可決した。上院では、修正案が出され議論となった。しかし、ナショナリズムを指摘し、批判する議論はまったくなく、ラ・マルセイエーズの歌詞の一部に残酷な部分があること、子どもの教育にふさわしくない内容を含むことが論点となった。結局上院では、ラ・マルセイエーズを、単なる音楽教育に終わらせることなく、それが生まれた歴史の文脈を含んで学習することを義務づける修正案が可決された。それが現行法となる。すでに、フランス文部省は、社会党のジャック・ラング文相のとき(2002年)、『ラ・マルセイエーズ』(全60頁)という教師用教材を全国の小・中・高校に配布している。そこでは、ラ・マルセイエーズの歴史が簡潔に叙述されており、ゲンスブールのレゲエ・バージョン事件についてもふれている。学校で国歌を教える義務があるとしても、教育行政が特定の価値観(解釈)を上から押しつけるのではなく、相対的な視点を養う大切さにも配慮するフランスの特徴といえるだろう
著者
花里 孝幸
出版者
国立環境研究所
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

魚の放出する化学物質(カイロモン)のミジンコに及ぼす影響を調べた.ミジンコは魚の存在下で成熟サイズを小さくすることが知られており,これはミジンコにとって捕食される前に子供を生むチャンスを増すことになり,利益をもたらすものと考えられている.本研究ではサイズの異なる二種のダフニア[カブトミジンコ(体長0.6〜2.0mm),マギレミジンコ(体長0.4〜1.3mm)]を魚(ブルーギル)のカイロモンにさらし,生活史特性の変化を観察した.大型のカブトミジンコは成熟サイズを低下させなかったが産む仔虫サイズを低下させた.小さな仔虫の生産は次世代の個体群の成熟サイズの低下をきたす.一方,小型のマギレミジンコは成熟サイズを小さくしたが,仔虫サイズは低下させなかった.二種のミジンコの異なった反応は,無脊椎捕食者に対する仔虫の食われ易さの違いを反映した適応の結果と考えられる。また,フサカ幼虫の行動に及ぼす魚のカイロモンの影響の解析も行った.湖沼や海洋で多くの動物プランクトンが日周鉛直移動を行うことが知られている.昼は捕食者である魚を避けて暗い深層部に降り,夜暗くなってから餌の多い表層に上がるのである.最近になって,この鉛直移動がカイロモンによって誘導されることがわかってきた.本研究では,魚のいない池に生息し日周鉛直移動を行っていないフサカ幼虫と,魚(ブルーギル)の多い湖に生息し日周鉛直移動を行っているフカサ幼虫を用い,実験条件下でフサカの行動に及ぼすブルーギルのカイロモンの影響を調べた.湖のフサカでは魚のカイロモンによって日周鉛直移動が誘導されたが,池のフサカではそれがなかった.フサカの個体群によってカイロモンに対する反応が異なることが明らかになった.この違いには遺伝的な違いが反映したものと考えられる。
著者
森岡 隆 手島 和典 吉嶺 絵利 中谷 正 高橋 佑太 倉持 宗起 橋本 貴朗 林 信賢 中村 裕美子 中溝 朋美 高橋 智紀 若松 志保 楠山 美智子 成田 真理子 油田 望花 川口 仁美 安生 成美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

源兼行ら11世紀半ばの3人の能書が分担揮毫した『古今和歌集』現存最古の写本である「高野切本古今集」について、巻五・巻八・巻二十の完本3巻を除く17巻を復元した。このうち巻一・巻二・巻三・巻九・巻十八・巻十九の6巻は零本・断簡が伝存するものの、他の11巻は伝存皆無だが、各々の書風で長巻に仕上げて展示公開するとともに、それらを図版収載した研究成果報告書を刊行した。なお巻五についても、後に切除された重複歌2首の各々の当初の位置を特定し、復元し得た。
著者
小室 一成 内藤 篤彦 野村 征太郎 野村 征太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は、未分化幹細胞が心筋細胞へと分化する過程、心筋細胞の機能が破綻する心不全発症の過程の両者におけるエピゲノム制御機構を解析した。まず分化に伴って活性化するWntシグナルの転写制御因子β-cateninが複数のエピゲノム制御因子と複合体を形成して中胚葉エンハンサーを活性化し下流の遺伝子プログラムを誘導することを明らかにした。さらに1細胞トランスクリプトーム解析とエピゲノム解析を統合することで、心臓への圧負荷によって活性化する転写因子群が心不全遺伝子プログラムを制御するエンハンサーを活性化することを見出した。本研究によりエピゲノムが心筋細胞の分化と破綻の両者を制御していることを明らかにした。
著者
植松 一眞 細谷 和海 吉田 将之 海野 徹也 立原 一憲 西田 睦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

オランダ国ライデン自然史博物館に保管されているシーボルトが採集した日本産フナのタイプ標本を現地で精査した結果、C. cuvieriはゲンゴロウブナに,C. langsdorfiiはギンブナに,C. grandculisはニゴロブナによく一致したが、キンブナに対応するタイプ標本はなかった。一方、C. buergeriのタイプシリーズにはオオキンブナとナガブナが混入している可能性が示唆された。日本各地および韓国群山市で採集したフナ59個体と7品種のキンギョを入手し、筋肉断片から抽出したミトコンドリアDNA(mtDNA)ND4/ND5領域の約3400塩基配列に基づく近隣結合法による系統樹作成、外部形態・計数形質・内部形態の計28項目の計測比較、倍数性の確認を行なった。その結果、これらは1.琵琶湖起源のゲンゴロウブナからなる集団、2.韓国・南西諸島のフナとキンギョからなる集団、3.日本主要集団からなることが遺伝学的にも形態学的にも確認された。日本産と韓国産の2倍体フナは異なる久ラスダーを形成したことから、両者には異なる学名を与えるべきと考えた。日本主要集団の2倍体個体はさらに東北亜集団(キンブナ)、中部亜集団(ナガブナとニゴロブナ)、そして南日本集団(オオキンブナ)に分けられるので、これらに与えるべき学名を新たに提案した。また、ゲンゴロウブナ集団はすべて2倍体であったが、他の2集団は、遺伝的に非常に近い2倍体と3倍体からなる集団であった。すなわち、2倍体と3倍体は各地域集団において相互に生殖交流しつつ分化したものと考えられた。キンギョは遺伝的に日本主要集団のフナとは明らかに異なり、韓国・南西諸島の集団に属するので、大陸のフナがその起源であることがあらためて確認された。フナとキンギョの行動特性(情動反応性)が明らかに異なることを示すとともに、その原因となる脳内発現遺伝子の候補を得た。
著者
加藤 政洋
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、主として東京・岐阜・大阪・神戸・那覇をフィールドに、昭和戦後期都市政策のなかで生み出された、さまざまな場所とその景観の社会的・地理的性格を検討することを通じ、都市の復興(再建)ならびにそれにつづく新たな都市建設に固有の理念と空間的論理を明らかにした。対象となった具体的な場所ないし景観は、戦災都市の食料品市場(自由市場、闇市など)、露店街、スクウォッター地区(引揚者の集住地区)、そして特殊飲食店街であり、いずれも敗戦後の都市空間に空隙を縫うようにして形成されたところばかりである。当初、それらは体系的な都市政策が実施されないなかで空地を占拠するかたちで確固たる地盤を築いていたものの、復興の進捗に合わせて取り払われるべき「不快」な景観として認識され、最終的には再開発すべき対象として都市政治の焦点となり、実際に移転ないし取り払われるまでの経緯を明らかにしている。
著者
志村 浩己 古屋 文彦 一條 昌志 一條 昌志
出版者
福島県立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

新規に発見した微細緑藻類Parachlorella sp binos (Binos)は,福島第一原子力発電所事故にて環境中に放出された主な核種である放射性ヨウ素およびセシウム,ストロンチウム等の放射性陽イオンを高効率に取り込むことを明らかにした。さらに,二次元質量分析により,ヨウ素は細胞質内に取り込み,陽イオンはアルギン酸に富む細胞外マトリックスに結合することにより吸着することを明らかにした。さらに,ヨウ素は光合成により発生された活性酸素により能動輸送されることにより取り込まれることを明らかにした。本藻類を利用した環境中の放射性物質の除染方法は,現在,実際の福島県内の除染に利用されている。
著者
藤村 成剛 臼杵 扶佐子 出雲 周二
出版者
国立水俣病総合研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、主にメチル水銀による神経機能障害に対するローキナーゼ阻害薬の効果について実験を行った。ローキナーゼ阻害薬(FasudilおよびY-27632)は、ラット培養神経細胞においてメチル水銀による軸索変性およびアポトーシス細胞死を有意に抑制した。また、Fasudilは、メチル水銀中毒モデル動物においても末梢神経の神経変性および神経機能障害の指標である後肢交差を抑制した。さらに、ローキナーゼ阻害薬は無機水銀およびRotenone(パーキンソン病の原因候補物質) による軸索変性および神経細胞死についても培養神経細胞を用いた実験において有効であった。
著者
黒田 玲子 大久保 靖司
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

個人の体内時計と社会的スケジュールの不一致によって生じる睡眠時間帯のずれによる社会的時差ボケ(Social jetlag)は、朝型夜型(Chronotype)の違いを調整しても様々な健康影響と関連があるかどうか検討した。まず、質問紙法でのSocial jetlagは高い再現性・妥当性を確認できた。また、Social jetlagの大小と、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、肥満有病率の関連は、U次型の曲線を示すことがわかった。抑うつ症状(K6>=5点)は、Social jetlagが大きい群で有症率が高かった。産業保健分野で社会的時差ボケの認知の重要性と予防対策の必要性を示唆することができた。
著者
三木 英 三浦 太郎
出版者
英知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究が目指したところは、阪神大震災によって大きな被害を受けた地域社会が復興するにあたり、宗教が何らかの寄与を為し得たのかどうかを検証することであった。これまで得られた知見を以下に述べるなら、リジッドな組織を伴う神道、仏教、キリスト教、新宗教が地域社会の復興に貢献することはかなり難しいということがまず挙げられよう。教団は基本的には、そこに所属する信者の方角を向いていたのであり、地域社会全体にその翼を広げることはしなかった(できなかった)のである。たとえば天理教では被災後、活動を地域社会において展開しようとして壁に突き当たったという事実を、本研究は突き止めている。教団へのアレルギーが確かに被災者の間には存在したのである。とはいえ、宗教そのものが完全に被災者によって拒絶されたというわけではない。犠牲者の慰霊を宗教的な儀礼によって行うことは、多くの被災者が求めたところであった。また本研究は、被災地において巡礼が創出されたことを指摘しているが、このことは被災者が自らの心のケアに供するべく宗教的な装置を利用したことを示すものである。さらに本研究では子供達の他界観にも注目をしているが、彼らは、自身にとっては遠い概念であった死に対処するため、他界に言及して心の平穏を取り戻そうとしたようなのである。被災者は、組織という外殻を纏う限りの宗教に対してはネガティブであったといわざるをえない。しかし、外殻を意識させない拡散したかたちの宗教に対してはポジティブな姿勢を見せたといえるだろう。危機的状況に在る社会で、そのダメージからの回復に寄与する可能性を宗教が有することは確かである。ただしそれは、組織的・制度的宗教ではなく、非教団的な宗教であることが本研究から判明したのである。
著者
石橋 宏之
出版者
東海大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

近年、子どもたちの理科離れが深刻な問題となってきている。本来、好奇心旺盛な幼児期に「遊び」を通して様々な体験や経験から学んでいた原理や仕組みが、おもちゃの複雑化・IT化によって、体験から学ぶ事が非常に難しい環境になってきている。更に、小学校以上の義務教育機関では、カリキュラムや単位数に縛られ、子どもたちに体験的学習をさせる事が難しい。そこで本研究では、「遊び」を通して子どもたちに科学的要素を体験できる教育プログラムを実施し、当該プログラムの有用性の調査として、過去に本プログラムを実施した卒園生(保護者含む)と実施しなかった卒園生(保護者含む)を対象にアンケート調査を併せて行ない、より教育効果の高いプログラムの開発を目指す。1. 本田記念幼稚園卒業生へのアンケート調査(対象:1年生~6年生、対象:401名 有効回答193名)を実施設問22.『生活科・理科・算数はすきですか(卒業生回答)』の問では、本プログラム参加者58名中、95%の方が『すごく好き』・『好き』を選択した。不参加者131名中、86%の方が『すごく好き』・『好き』を選択した。したがって、本プログラムを選択した子どもたちは、小学校に進学後も、継続して理系科目に興味を持ち続けていることが読み取れる。さらに、設問36.『当時お子様と一緒に、何かを作ったり直したりした事はありましたか(保護者回答)』の問では、参加者の90%の方が、『よくあった』『時々あった』を選択、不参加者の86%を上回っている。つまり、理系科目に興味を持つには、保護者との関わりも重要であることが読み取れる。2. 全国幼児教育研究大会で報告。2008年8月5日 テーマ:『考えよう思考力の芽生え』研究大会での講評では下記の4つの点を称賛いただいた。a. 材料を自由に選択して制作できる。(材料の紹介はするが、使い方は教えない。自分で考えアイデアを形にしていく)b. 子どものつぶやきを捉える。(子どものアイデアから、新しい素材や材料を準備する。指導者の固定観念にとらわれず、子どものアイデアを尊重する。子どもたちが自己有能感を持てるようにする)c. 子どもが体験から学ぶ時間を作る。(答えを先に教えない。指導者は待つ姿勢を忘れない)d. 本物に出会う(東海大学動力機械工学科の見学(実車のカットモデル、レーシングカー、ソーラーカーなど)京商株式会社来園(電動ラジコンカー、エンジンカーの披露と説明)3. 以上の事を踏まえ、2008年度レッツサイエンスのプログラムでは、期間中の保護者向けの説明会を実施。内容:1.理論 全国幼児教育研究大会での発表内容。2.実践 子どもたちと同じ環境で材料を自由に選択いただき、自由に作る。4. 2008年度レッツサイエンス参加者へのアンケート調査参加園児32名説明会参加保護者18名設問3.『レッツサイエンスグループの活動は楽しかったですか』の設問に『とても楽しかった』88%、『楽しかった』12%と非常に好評であった。説明会の効果は、設問9.『レッツサイエンス説明会はいかがでしたか』の設問に、参加者18名全員の方が『とても良かった・良かった』と評価していただいた。さらに感想の中で、「いままでは、完成した物をほめていたが、この説明会の後では子どもの工夫やプロセスを見るようになった。子どものアイデアを褒めることができるようになった」など、指導者がわの意図が伝わっていた。設問13.『ものづくりを好きになりましたか(車に限らず)(園児回答者)』の問に保護者が説明会に参加した園児は、『とても好きになった』89%、『好きになった』11%と、保護者が不参加の園児は『とても好きになった』57%、『好きになった』43%という回答になった。このように、幼児時期に科学的遊びを体験すことは、世界的に問題視されている理系(技術者)不足への効果的な手段である。その科学的遊びには、幼児が主体的に『作る⇒遊ぶ(試行)⇒考える(学び、工夫)』のサイクルができる内容であり、自己有能感を持てるように関わることが大切である。さらに、保護者に対しても、内容や重要なポイントを十分に説明し、作ることの楽しさを体験していただくことも大切である。指導者と保護者が相互理解をはかり、子どもたちと向き合うことが重要である。
著者
藤盛 啓成 大内 憲明 里見 進 土井 秀之 宮田 剛 関口 悟 大貫 幸二 宮崎 修吉
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

マジュロにて2006年2月20日〜3月22日の期間、自発的に受診希望した者1386名(女性888名、男性498名、平均年齢50.9±12.34才)を対象に問診、エコー検査を行い、結節性病変275名に細胞診を行った。全検診者中608名に検診既往があり、386名がBRAVO cohort、ブラボー事件時0〜5歳であった者は322名であった。全検診者中、エコーで悪性疑い36名2.6%であり、細胞診でPTC or PTC疑いが10名0.72%であった。目的とした対象(BRAVO cohort中ブラボー事件時0〜5歳)では4名1.2%であり、設定したcohort 1055名でみると、その時点で甲状腺癌と診断された9名を除いた1046名中4名(男1、女3)0.38%(3.82人/年/1万人)が甲状腺癌を新たに発症したと考えられた。甲状腺機能、抗体検査では採血した1186名中1153名で検査結果が得られた。以前の結果と異なり、甲状腺自己抗体陽性率は20%程度で特に低くはないと思われた。マーシャル諸島政府が保管するデータベースから、以前の検診者7162中の死亡者数、死亡原因を調査した。3714名のBRAVO cohort、のうち2003年12月31日までの死亡者は642名、死亡時平均年齢63.9才であった。BRAVO cohort中癌死は107名で、最も多かったのは肺癌(男23、女性9)であった。死亡時平均年齢は男性、女性それぞれ62.8才、71.2才であった。男性の死亡診断書には全員heavy smokerの記載があった。BRAVO cohort中乳癌の死亡例は、6名であった。甲状腺癌の死亡例は2名であった。その他、消化管、肝臓、膵臓、子宮の癌死が多かった。癌死以外の死亡は392名であった。肝硬変・肝不全、肺炎・肺気腫の呼吸不全、循環器障害、脳血管障害、腎不全、糖尿病・下肢壊疽・敗血症、自殺・事故が主なものであった。以上より、マーシャル諸島における癌発生、死亡の実態が把握され、BRAVO cohort中0-5才の間に被曝した集団のデータベースが完成した。肺癌については喫煙の影響が大きく、被曝の影響は少ない可能性が示唆された。今後このデータベースを基に解析を進め、甲状腺癌の発生と被曝の関係を明らかにすることが可能となった。
著者
福田 一彦
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

保育園児では昼寝の日課があるために、昼寝の平均持続時間および回数が多く,午後の長い昼寝の習慣は,夜間睡眠の就床時刻を遅らせ,さらに寝起きの悪さや午前中の機嫌の悪さと関連している可能性が示唆されている。では,このような幼児期の睡眠パターンは,児童期の睡眠パターンに影響を与えるのであろうか。かつて保育園と幼稚園のいずれかに通園していた児童を対象に,現在の睡眠パターン等について調査を行った。その結果、小学校1年生と4年生において,平日の就床時刻がかつて保育園に通園していた児童で有意に遅く、2年生で遅い傾向があった。平日の睡眠時間は1年生と4年生で,幼稚園出身児童に比較して保育園児出身児童で有意に短かった。1週間あたりの昼寝の頻度と起床時の気分と夜更かしの頻度に関してはどの学年においても両群間に差は認められなかった。以上を要約すると,夜間睡眠の就床時刻と夜間睡眠の長さに関しては,保育園出身児童で就床時刻が後退しており、夜間睡眠時間も短かったが、回帰直線の傾きからは、その差が加齢とともに減少していく傾向が読み取れた。それに対して、幼児期に保育園児の就床時刻を決定する主要な原因であると考えられた昼寝の頻度に関しては、両群の間に統計的に意味のある差は認められなかった。また、就床時刻の後退とともに保育園児に認められた起床時の気分の悪さや、高頻度の夜更かし傾向などについても両群の間に有意な差は認められなかった。このことから、睡眠パターンを規定する要因であった昼間睡眠の習慣がなくなり、昼間睡眠それ自身も習慣として定着することは無かったにも関わらず、就床時刻や夜間睡眠の長さといった要素は,小学校に進学した後も数年間はその状態が持続する可能性があると考えられ、幼児期の睡眠の習慣がその後の睡眠習慣の形成に対して重要な位置を占めていると考えられた。
著者
大杉 豊 戸井 有希 鈴木 潔
出版者
筑波技術大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

日本手話言語地図の作成研究の第一歩として、全国47都道府県合計94名を対象に調査した範囲で、語彙レベルで地域による違い及び年齢層による違いの両方を示す言語地図の試作版をウェブ形式で製作した。分析の結果、(1)手話語彙レベルで地域的な分布が存在すること、(2)70歳代と比すると、30歳代では手話語彙レベルでの共通化が顕著であることの2点が明らかになった。
著者
大城 沙織 (2023) 大城 沙織 (2022)
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

土帝君とは琉球王国時代に中国から招来された土地神、農耕神であり、現在でも沖縄各地で信仰されている。沖縄各地の土帝君信仰は多様であり、その信仰からは地域レベルでの中国的信仰の受容、琉球王府との関係性、近世から現代に至るまでの土地を巡る歴史観を辿れると考える。本研究では沖縄島と周辺離島で土帝君に関する民俗誌研究を重ねながら、土帝君のルーツとされる土地公との比較を行う。土地公との比較にあたっては、台湾にて歴史的背景を踏まえた現地調査を実施する。そのなかでも本研究は特に現在の祭祀実践に注目し、琉球国時代から現在までの村落の歴史観や民衆レベルでの異文化交流を描き出そうとするものである。