著者
西口 光一 ニシグチ コウイチ Nishiguchi Koichi
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.18, pp.41-54, 2014

本稿では引用等を手がかりとし文献を辿って、ヴィゴツキーとパフチンがマルクスから何を引き継ぎそれをどう発展させたかを検討した。その結果、ヴィゴツキーとパフチンは共にマルクスの人間観や意識観から意識の記号による被媒介性という見解を導いていること、そしてヴィゴツキーは一貫して発達研究に関心を寄せていることが明らかになった。それに対し、パフチンは意識の記号による被媒介性の見解をさらに推し進めて、イデオロギーと心理の関係、心理と記号の関係、言語活動における心理過程と記号の聞の往還運動、そして対話原理へとさせていることが明らかになった。パフチンのそのような議論は、人と人の接触・交流にこれまでにない新たな視点を提供するものとして、第二言語の習得と教育の研究の立場から大いに注目される。
著者
杉浦 一雄
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.78-62, 2006-12-31

光源氏は、スサノヲノミコトをはじめとする「異郷をめざす物語」の主人公として描かれながら、俗世に身を置き、現実の世界に重きを置いている点で、かぐや姫、在原業平、そしてスサノヲノミコトの生き方とは明らかに様相を異にしている。このような光源氏の人物像は、一体何を模範として造型されたのであろうか。私はその最も強固な源泉の一つに聖徳太子があると考える。光源氏と聖徳太子とのかかわりは指摘されて久しいが、実は二人を結ぶ決定的な共通点こそ、「異郷」に深く心を寄せながらも、俗世に身を置き、現実の世界に「異郷」を現出しようと努めた点にあると私は考えたい。すなわち光源氏は、一面で、スサノヲノミコトには見られない現世尊重の精神を聖徳太子から受け継いだ人物であったと言うことができよう。その意味で聖徳太子は、光源氏の数あるモデルの一人というだけでなく、『源氏物語』を支える二本柱の一つとして、スサノヲノミコトに匹敵する重要な存在だったと結論することができるのである。
著者
田中 嗣人
出版者
華頂短期大学
雑誌
華頂博物館学研究 (ISSN:09197702)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-22, 1999-12-25
著者
馬原 文彦 古賀 敬一 沢田 誠三 谷口 哲三 重見 文雄 須藤 恒久 坪井 義昌 大谷 明 小山 一 内山 恒夫 内田 孝宏
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1165-1172, 1985
被引用文献数
22 61 50

昭和59年5月中旬より7月までの短期間に, 徳島県阿南市において, 紅斑と高熱を主徴とし特徴的な経過を辿ったリケッチア症と思われる3症例を経験した. これらの症例は, Weil-Felix反応OX2陽性で, 恙虫病とは異なる反応を示し, 詳細な臨床的血清学的検索の結果, わが国初の紅斑熱リケッチア症と判明した.<BR>症例は, 62~69歳の農家主婦で, 藪または畑に入ってから2~8日後に発熱, 悪寒戦標をもって発病し, 稽留熱 (39~40℃ 以上) と, 四肢末梢から全身に拡がる皮疹を特徴とした. 皮疹は, 米粒大から小豆大, 淡紅色の痒みを伴わない紅斑で, ガラス圧により消退するが, 次第に出血性となった. 3例中2例で痂皮または潰瘍を伴う硬結を認めた (刺し口). 全身リンパ節腫脹, 肝脾の腫大は認めなかった. 治療は, テトラサイクリン系抗生剤 (DOXY) が著効を示した.<BR>血清学的検査では, Weil-Felix反応で, 3症例共OX2に有意の抗体価上昇を示した. 間接免疫ペルオキシダーゼ反応では, 恙虫病リケッチア3株に陰性であり恙虫病では無いことが証明された. 更に, CF反応で紅斑熱群特異抗原に対し陽性となり, 本症例は, 紅斑熱リケッチア感染症であることが確認された.
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. I, 人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.71-98, 1993-09

「隆達節歌謡」は五一九首の歌と五〇種を超える歌本の存在がこれまでに確認される。このことは研究者が「隆達節歌謡」を引用する際に、きわめて複雑な手続きを要求されたことを意味している。筆者はかつて、「「隆達節歌謡」諸本索引」(『梁塵 研究と資料』第二号<昭和五十九年十二月>)を編集し、「隆達節歌謡」の各歌がどの歌本に収録されているかを示したことがあった。本稿では五一九首の歌謡すべてについて改めて校訂本文を作成し、適宜漢字をあて、読点を付して読み得る詞章とした。また、その歌謡が収録される歌本とその位置を略号を用いて示し、諸本索引としての機能を持たせた。本稿は前稿「「隆達節歌謡」諸本索引」に新資料を増補して大幅に改訂したものである。There are 519 songs and more than 50 song books in"Ryutatsubusi-kayo".This means that complicated procedures were needed when reserchers quoted the songs of"Ryutatsubushi-kayo".I have edited"The Index of Ryutatsubushi-kayo"("Ryojin"Vol.2(December,1984))before,and have shown in which book each song of"Ryutatsubushi-kayo "is contained.I collated all the 519 songs and made a text.It is added to the index in this report.This report is a revision of"The Index of Ryutatsubushi-kayo".
著者
多田 昭雄 中村 良三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.97, pp.25-32, 2001-05-21

並列タスクスケジューリングにおいて, タスク依存グラフよりタスクの実行順序を効率よく求める並列アルゴリズムを提案する. 具体的には, はじめに2つのタスク間の実行順序を示す有向辺を出節点と入節点の組で表したタスク依存グラフすなわちDAGを入出次数が高々1の節点からなる線形リストに分割する. 次に, 線形リストをリストの最終節点に至る流れの単位でグループに分割し, グループ内のリストの細を併合しながらタスクの実行順序を求め, 最後にタスク全体の実行順序を求める並列アルゴリズムである. すなわち, タスクの並列Topological Sortingを提案する.
著者
川上 比奈子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.67-76, 2004-03-31

アイリーン・グレイは、菅原精造から日本漆芸を学び、漆塗り屏風を制作した。建築家に移行した後、住宅「E.1027」において、ジグザグに折れ曲がる窓をデザインし「屏風窓」と名付けた。本稿では、グレイが屏風を建築に展開する契機を探る。彼女の最初の屏風は、伝統的な形式を踏襲した絵画的調度品であったが、やがて漆塗りと屏風の特質によって、立体が浮かび上がって見える幾何学線形の描かれたものが制作される。同時期、屏風に描かれるべき図柄を、多数の小型漆パネルに分解して再構成した屏風が生みだされた。映りこんで見えていただけの立体が、実体として表現されると共に、分解・回転によってできた空隙が屏風の構成要素に加わり、視線も風も遮らないものとなる。空隙は、屏風の既成概念を取り払う切掛けとなり、グレイは、屏風を窓や壁のデザインに展開し、また、新素材の美しさを活用し、住空間に多様性を与えることになった。グレイの屏風は、空間の光や空気を調節するとともに、空間の機能と形も変える変換装置といえる。
著者
茅野 功 薮本 道人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.107, pp.51-56, 2007-06-15

電磁界の人体に対する健康影響評価は社会的急務であるが,ぱちんこ遊技場は複数の同一電子機器に全面を取り囲まれる特殊な環境にあり,このような特殊な電磁環境における生体および体内理込型医療機器への影響については検討されていない.そこで本橋では,この影響評価のための一指標として回胴式遊技機に焦点を当て,5機種の遊技機から放射される中間周波磁界および高周波電磁界の測定を行った.その結果,中間周波領域では最大で卓上電滋調理器の約1/6の磁界を放射しており,また高周波領域においてもVCCI(Class2)の規定値の6.3倍を超える電磁界を放射している機種が紅った.この原因と対策法について,遊技機の電飾や演出表示に関わる装置の配置に焦点を置いて考察した.
著者
森田 光宏
出版者
全国英語教育学会
雑誌
ARELE : annual review of English language education in Japan (ISSN:13448560)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-10, 2010-03

The purpose of the present study is to investigate how Japanese learners of English store and process derived words in their mental lexicon. L1 research in word recognition has given rise to three hypotheses. The affix stripping hypothesis claims that derived words are accessed by their component morphemes, while the full listing hypothesis claims that they are accessed as full forms. Hybrid hypotheses such as the Meta Model claim that the lexical properties of suffixes determine how derived words are processed. Our data show that Japanese learners of English with larger vocabulary sizes tend to decompose highly productive, semantically and phonologically transparent Level 2 suffixes, but not less productive, semantically and phonologically opaque Level 1 suffixes. On the other hand, the learners with smaller vocabulary sizes tend to process both kinds of suffixes by the Decompose Route. It is argued that the learners may have not acquired the meanings and phonology of the derived words with the less semantically and phonologically transparent suffixes. These results support hybrid hypotheses, even for L2 learners.
著者
国松 豊 川勝 剛
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.81-85, 1959-09-01

最近養鶏家の間で冬季特に厳寒期に卵黄が硬化し, 卵白との混和が不可能となる卵黄硬化卵(所謂スポンヂ卵)が多数発見されている。筆者等は卵黄硬化卵に関係があると思われるカポツク粕20%添加配合飼料と実際に卵黄硬化卵の産出が見られたと云う配合飼料を用いて卵黄硬化卵の産出試験を行い, 得た卵黄硬化卵についての一般所見, 卵黄の一般化学組成, 卵黄脂肪の特性について調査したのでその結果を報告する。(1) 0°&acd;3℃で貯蔵した場合, 正常卵の卵黄は硬化しなかつたが, 卵黄硬化卵は明らかに同温度で卵黄が硬化し, 卵白との混和も不可能であつた。又卵黄色も卵黄硬化卵の方が色が濃く橙色を帯びていた。但し温度が上昇すれば除々に軟化し, 間もなく正常卵と同様の性状・色沢を示すに至る。(2)卵黄の一般成分の内水分含量は卵黄硬化卵が正常卵のそれに比してやや低い値を示している。(3)卵黄硬化卵より抽出した卵黄脂肪の沃素価は正常卵のそれに比して低い値を示した。この点恐らく飼料中の飽和脂肪酸を含む油粕類が卵黄脂肪に影響を与えて沃素価を低めたものと思はれる。卵黄脂肪については更に燐脂質或は不鹸化物についての調査が必要であるが, 恐らく飽和脂肪酸を多く含む油粕類が飼料中に添加されると卵黄脂肪中の飽和脂肪酸の割合が多くなり, その結果沃素価の低い, 融点及び凝点の高い脂肪となるため0°&acd;3℃で卵黄が硬化したものと想像される。
著者
吉田 裕
出版者
早稲田大学法学会
雑誌
人文論集 (ISSN:04414225)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.73-98, 2008-02-20