著者
大内新興化学工業株式会社
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.507-510, 1990-08-20
被引用文献数
1

チウラムの安全性評価を行なうための各種毒性試験を実施した.その結果, 本剤は急性毒性が低く, 皮膚に対する刺激性はなく, 感作性も軽微であった.また, 眼刺激性が原体に観察されたが, 実際の使用時の製剤には認められなかった.慢性毒性試験ではビーグル犬の高用量群において重篤な毒性症状が発現し雌雄の全例が死亡したものの, ラットでは一部の臨床病理学的検査に異常を認めたにすぎず催腫瘍性も認められなかった.また, マウスにおいても催腫瘍性はみられなかった.催奇形性はなく繁殖能力に悪影響を及ぼさなかった.変異原性試験ではDNA修復試験および復帰変異原性試験で弱陽性を示したが, 小核試験および染色体異常誘発性試験は陰性であった.チウラムはチウラム・ジラムの混合剤として昭和53年2月に農薬登録を取得したが, 昭和63年10月にチウラムおよびジラムの分離評価が実施された.現在の登録保留基準値はリンゴ1.0 ppm, ナシ0.5 ppm, モモ0.5 ppmおよび柿0.5 ppmと設定された.チウラムは定められた使用基準を遵守すれば, 安全性が高い薬剤であり, 農業資材として有用であると考えられる.
著者
小野 昌彦
出版者
明治学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

不登校経験者が入学者の8割を占めるA定時制高校入学者に対して、2年間、入学時、年度末に学力テストを実施した結果、入学者の学力は、算数は小4、語彙は中1の段階の生徒が最も多い事が明らかになった。また、不登校経験高校生及び大学生を対象に個別支援を実施した結果、的確なアセスメントを実施すれば、学力補充は可能であることが示された。不登校経験者の学力実態を実証的に明らかにした日本で初めての研究といえる。
著者
上野 耕平
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

いじめなどの問題が噴出するなか,現代社会が体育・スポーツ活動に期待する事柄の一つとして,フェアプレイの日常生活場面への般化が挙げられる。そこで本研究ではフェアプレイとして鬼ごっこにおける援助行動に注目し,附属小学校との連携のもと,スポーツ活動及び体育授業の実践を通じて,援助行動の学校生活場面への般化を促進する体育授業を構築することを研究目的とした。本研究の結果,援助・被援助行動が頻繁に行われるなかま鬼及び,その効果を測定する援助自己効力感尺度を開発した。なお体育授業場面への実践及び日常生活場面への般化については新しい研究課題に引き継いだ。
著者
與那覇 潤
出版者
愛知県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は過去、および同時代の日本人たちが明治維新に対して抱いていた複雑な感情を掘り起こすことを目的としている。しばしば言われる、日本人は自らの近代化の成功を誇りとしてきたとする通説的見解に反して、本研究は、多くの日本人の思想家・表現者たちが明治維新に対してむしろ両義的、ないし時として敵対的な姿勢を示してきたという事実を明るみに出す。具体的に取り上げられるのは、小津安二郎、内藤湖南、山本七平などの作品である。
著者
川崎 恭治 加藤 友彦 熊谷 博夫 山藤 馨
出版者
福岡工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

過冷却液体のダイナミクスに対する場の理論的定式化をおこなった。ここで時間反転に対する正しい変換性を持つ事に注意した。又超伝導体の量子化された磁束のダイナミクスを表す簡単な模型について考察した。関連する問題としてスピングラスや量子論的多体系の有効相互作用について研究した。
著者
水本 洋
出版者
鳥取大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

初年度においては無限剛性エア-スピンドルの構成要素となる静圧式自動調整絞り付き空気静圧スラスト軸受と排気制御絞り付き空気静圧スラスト軸受とを設計,製作した.スラスト軸受はスラストプレ-トの直径が65mmであり,自動調整絞りの特性を容易に変更できる構造となっている.また,ラジアル軸受は軸径40mmの複列であり,絞り開度の調節には圧電素子が使用される.ラジアル軸受単独の負荷特性の測定結果より,空気の供給圧0.49MPaの状態で約70Nの荷重範囲にわたって無限大のラジアル剛性が得られた.次年度においてはまず,初年度に製作された静圧式自動調整絞り付き空気静圧スラスト軸受の負荷特性を解析した.特性解析の結果,空気の供給圧が0.49MPaの状態で約240Nの荷重範囲にわたってスラスト剛性を無限大とすることができたほか,正剛性および負剛性の特性を持たせられることを確認した.つぎのこのスラスト軸受と,初年度に製作された排気制御絞り付き複列空気静圧ラジアル軸受とを組み合わせて無限剛性エア-スピンドルを構成し,その特性を解析した.排気制御絞りを複列のxy方向の合計4カ所に取り付け,軸位置を制御した.解析の結果,軸受からオ-バハングしたスピンドル先端においてもスラスト,ラジアル方向とも剛性を無限大とすることができた.回転精度に関しては,数10rpm程度の回転数範囲において,スラスト方向で20nm以内の回転精度が得られた.一方,ラジラル方向に関しては排気制御絞りを作動させない状態での回転精度が0.3μmであるのに対し,排気制御絞りを作動させることで50nm以内の回転精度を得ることができた.以上のように,自動調整絞りを使用することで空気静圧軸受の剛性を無限大にするとともに,回転精度も向上させることができ,本研究の所期の目的を達成することができた.
著者
高橋 祥子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

α-シクロデキストリンとポリエチレングリコールによる包接錯体形成について研究を行った。α-シクロデキストリンとポリエチレングリコールによる包接錯体は、環動高分子材料の前駆体であるポリロタキサンを合成するために最も広く用いられている組み合わせである。包接錯体形成時に形成される環状分子に軸高分子が貫通した構造が環動高分子材料の特異な物性をもたらすため、環動高分子材料にとって包接錯体形成はカギとなる反応といえる。しかし、包接錯体形成に伴ってα-シクロデキストリン同士は凝集を起こし、反応系が溶液から固体まで大きく変化するため、包接錯体形成反応の詳細は未解明であった。そこで、本研究では高分子鎖の片末端を基板上に固定することでポリマーブラシとし、環状分子と高分子の包接反応を2次元系において追跡することにした。主に中性子反射率測定、斜入射広角X線散乱測定、表面プラズモン共鳴測定を用いて研究を行った。中性子反射率測定から包接錯体中で高分子鎖が屈曲した構造をとっており、斜入射広角X線散乱測定からは基板に対して包接錯体結晶が配向していることがわかった。また、表面プラズモン共鳴から、形成された包接錯体量の時間変化がわかった。このように、3次元系では系のゲル化や沈殿形成により知ることが出来なかった、配向性など包接錯体の構造と包接条件との関連や、包接錯体結晶が結晶核の形成と成長の様式を示すことを明らかにすることが出来た。
著者
坂村 律生 新田 勇
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

シュリンクフィッタ技術により微細に集光されたレーザー光を照射できる新しいレーザー装置を作成した。この装置を用いて、ラット背部の皮膚全層に作成した黒墨汁による刺青に、様々な条件のレーザー照射を行った。肉眼所見、組織学的所見に基づいて、刺青の除去に対する、至適レーザー出力、照射方法を検討した。有効な照射条件では皮膚深部の刺青も除去可能であった。少ない副作用で深部への効果を得られる可能性が示唆された。
著者
沖田 典子 成田 善孝
出版者
The Japanese Congress of Neurological Surgeons
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.46-58, 2014
被引用文献数
2

悪性脳腫瘍の臨床試験におけるエンドポイントは, 治療開始からの全生存期間や無増悪生存期間が一般的に用いられる. 神経膠腫の中でも最も予後の悪い膠芽腫に代表される悪性脳腫瘍の病態の本質は, 神経学的な悪化による日常生活機能の低下である. 神経膠腫患者でも長期生存患者が増えるにつれ, 生存期間の延長だけではなく, 「いかによく, 長く生きるか」を評価する必要がある. 悪性脳腫瘍の手術・放射線治療・化学療法による認知機能や健康関連QOL (health-related quality of life : HRQOL) の低下が問題となっているが, 悪性脳腫瘍についての研究は国内ではいまだ不十分である. 国内における悪性脳腫瘍についてのQOL研究を確立するために, QOL研究の評価法について解説し, 研究論文のレビューを行った.
著者
大谷 和彦 薄井 雅夫 青木 純子
出版者
栃木県農業試験場
雑誌
栃木県農業試験場研究報告 (ISSN:03889270)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-18, 2003-12
被引用文献数
1

1995-1999年栃木県産米のタンパク質含有率(玄米乾物)の平均値は7.55%で、5.4-10.2%と変動の幅が大きかった。その変動要因は、地域、品種および土壌ごとに異なっていた。そして、食味改善のためにはタンパク質含有率を8%以下にする必要があった。米タンパク質含有率を高めてしまう肥培管理は、基肥や追肥で窒素を多く施肥することであった。多湿黒ボク土において、基肥窒素量0.2kg/a、出穂前40日に肥効調節型窒素肥料で0.2kg/aの計0.4kg/a、慣行の6割に窒素施肥量を減らすと、米タンパク質含有率が明らかに下がった。気象要因では、登熟期の積算気温の関与が大きかった。特に、登熟後半も高温が続くとタンパク質含有率は高まった。また、出穂前20日の生育量から、タンパク質含有率および玄米収量を予測することができた。
著者
石井 望
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1、崑山の笛の名手・高慰伯氏の演奏を録音し、指法の口述を録畫した。その成果等を参考にしつつ崑曲の音階について探究し、論文を發表した。楊蔭瀏以來ほとんどの研究者が從って來た雅樂俗樂二大音階説を否定し、笛の吹奏の便宜によるいい加減な音階が唐代から崑曲まで續いてゐることを明らかにした。2、前年度までの録音の成果を參考にしつつ、曲韻についての論文を發表した。「中州全韻」の七聲體系を明らかにすることを主眼とした。3、北曲傳承史研究の副産物として、曇陽子と牡丹亭についての論文を發表した。4、長老俳優の演劇歴と自分の研究過程の概略とを纏め、臺灣の雑誌に發表した。5、今後の研究のため、臺灣にて資料を蒐集した。
著者
有馬 麻理亜
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

第二次大戦期におけるブルトン固有の理想主義を分析したうえで、ファシズムの台頭期にツァラ、バタイユとブルトンの再接近を可能としたのは異なる形態の理想主義であること、また、バタイユとブルトンに共通する理想主義的傾向が、大戦後の両者における神秘主義への関心や聖なるものへの追求に関係していることを明らかにした。さらに30年代に断絶したアラゴンとの思想上の相違が文体やジャンルの選択に表れていることを示した。
著者
柿木 隆介
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

種々の非侵襲的計測法を用いてヒトの脳内痛覚認知機構を明らかにすること、及び、基礎的研究によって得られた知見を元にして除痛治療を行う事を主要研究目的として、研究を行った。健常者を対象とした研究では、「こころの痛み」がなぜ起こるのか、鋭い痛みと鈍い痛みに対する脳反応の相違、などについて明らかにすることができた。臨床研究では、治療困難な痛みを持つ患者さんに対する脳外科的治療法の進歩に寄与する事ができた。
著者
津田 恭充
出版者
愛知学泉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

パラノイアの生起メカニズムを自尊心の観点から説明する2つのモデルが提唱されている。ひとつは、潜在的に低い自尊心が顕在化することに対する防衛としてパラノイアが生じるとするものである。これによれば、潜在的に自尊心が低くとも、パラノイア(誰かに陥れられた。私は悪くない)を抱くことで顕在的には自尊心は保護される。もうひとつのモデルは、パラノイアには防衛的な側面はなく、低い顕在的自尊心を直接反映していると仮定するものである。本研究では、質問紙調査および認知実験によってこれらのモデルの検討を行った。その結果、いずれの分析でも後者のモデルが支持された。
著者
鶴池 政明 矢部 京之助 鶴池 政明 福嶋 利浩 三木 由美子
出版者
大阪体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の結果から、重度障害者である頸髄損傷者の活動性能力(車いす移動能力)は、トレーニングにより腰髄損傷者や下肢切断者と同等のレベルまで達す可能性が考えられた。また、健康維持能力(自律神経機能)は、脊髄損傷からの受傷期間が長くなるに従い低下する傾向が認められ、より一層、建康維持に留意する必要があることが示唆された。さらに、電気刺激誘発による伸張反射から上肢の運動ニューロンの興奮性を評価する研究方法を構築し、今後、脊髄損傷者に応用できる可能性を見出した
著者
田中 秀臣 中村 宗悦
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.21, pp.171-186, 2000-03-30

本論文の目的は、戦時下の生活雑誌――月刊『時局月報』『国防国民』の意義を検討することにある。戦時下の日本では「生活雑誌」という言葉は、家事のための雑誌ではなく、政治経済雑誌を意味していた。『時局月報』とそれが名称変更した『国防国民』の両雑誌は、長谷川国雄(一九〇一―八〇)が編集し発行したものである。長谷川は、一九二九年から三六年にかけて、経済雑誌『サラリーマン』を発行していた。『サラリーマン』の独自性は、新中間階級の読者に対する経済知識の啓蒙にあった。『サラリーマン』は、官憲による不法な弾圧によって休刊を余儀なくされてしまった。しかし、『時局月報』と『国防国民』は、『サラリーマン』の直接の後継誌として、同じ編集方針を継承するものであった。さらに、両誌は、統制経済の観点から、人的資源と物的資源の再配置と改善を提唱するものだった。