著者
三野 和雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

マクロ経済学では、依然として経済主体が同質であることを前提とする代表的家計モデルが中心的な役割を果たしている。本研究は、経済主体の異質性を明示的に考慮したマクロ動学分析を行い、同質な経済主体を前提にした従来の標準的理論がどのように修正されるかを検討した。特に、(1)世代重複モデルにおける世代間の消費の外部効果が生み出す影響、(2)無限視野を持つ家計に資産保有の異質性があるような成長モデルにおいて、消費の外部性が長期的な資産分配に及ぼす効果、(3)家計間の時間選好率や選好が異なる成長経済における財政・金融政策の効果、(4)2国間が非対称な場合の2国動学モデルのふるまい、を中心に検討を行った。いずれの場合も、家計の同質性を前提とする標準的な理論では見られない分析結果が得られ、代表的個人の仮定が、分析を簡明にする反面、現実の経済で生じている重要な現象のいくつかを捉え損ねる可能性が高いことを確認した。
著者
大谷 元
出版者
(株)食品資材研究会
雑誌
New Food Industry
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.265-36, 2011-03-18
著者
Sakamoto Wataru
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
Genes & genetic systems (ISSN:13417568)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.1-9, 2003-02-01
被引用文献数
7 90

Leaf variegation has long been known as a recessive genetic trait in higher plants. Unlike albino mutants, leaf-variegated mutants are non-lethal and thus enable us to study a novel mechanism of plastid development and maintenance. Variegation results from a defect that makes chloroplast development unstable, since at least part of the tissues gives rise to normal chloroplasts. Despite the fact that leaf-variegated mutants have contributed to the findings of maternal inheritance or have been used as genetic markers, these mutations and the responsible loci have been poorly understood at the molecular level. A comprehensive study of the leaf-variegated mutants is possible in <i>Arabidopsis</i>, since such mutants have been known and the cloning can be at relative ease as a model plant. Here I summarize recent progress on characterization of the Arabidopsis leaf-variegated mutants. Detailed analysis of the responsible loci revealed that variegation is caused by a defect in various metabolic pathways related to organelle functions. Thus, studies on these genes provide us with novel redundant mechanisms by which heteroplasmic organelles such as plastids and mitochondria can survive from an environmental stress.<br>
著者
児島 伸彦
出版者
理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

神経可塑性の長期変化や長期記憶に重要な分子の候補ICERを中心に遺伝子発現変化を調べ以下の結果を得た。(1)キンドリングおよび恐怖条件づけにおける扁桃体でのICER(inducible cAMP early repressor)発現変化。キンドリング刺激後のICER mRNAの発現変化を調べ、ICER mRNAが電気刺激による神経活動の賦活によって脳で一過性に増加することがわかった。また、ICER mRNAはc-fosと同様に恐怖条件づけ後の扁桃体で増加することがわかった。この発現増加は条件づけ後の条件刺激の再提示によっても観察された。したがって、ICERは条件づけや条件反応後、扁桃体の神経活動の賦活に伴って増加すると考えられた。ICERは負の転写調節因子であると考えられているので、神経活動によって発現誘導される他の最初期遺伝子の転写抑制因子として働いている可能性がある。(2)PC12細胞におけるICERの強制発現。テトラサイクリン制御下でICER-IIを高レベルに発現するPC12細胞を作成した。その細胞にジブチリルcAMPを投与してその後の突起伸長に影響あるかどうかを調べ、ICERの突起伸長抑制効果をみとめた。(3)恐怖条件づけにおける扁桃体での遺伝子発現変化。ICERはCREBの活性化によって発現増加する。CREBの活性化はCRE配列をその転写調節部位に持つ多くの遺伝子の発現を誘導するので、条件づけによって扁桃体でICERが増加することは、条件づけによって他の様々な遺伝子の転写がダイナミックに調節されている可能性がある。そのような遺伝子産物をDNAチップによって系統的に探索し、複数種の遺伝子が条件づけ後の扁桃体で増加することを見い出した。
著者
水口充 中村 聡史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.52, pp.23-30, 2006-05-19

個人の属性/趣味/所有物の誇示やコミュニティへの帰属は人間の高度な欲求に基づく行為であると考えられる.これらの行為は実世界のみならずネット内の活動においても観察することができる.本稿では,ネット内のコミュニティをシンボル化した物理タグを着用することで実世界とネット内での活動を融合し,興味の共有によるコミュニケーション支援や環境ディスプレイを介した気軽な情報アクセスを実現する手法について提案する.Exhibition of personal attributes, hobbies and possessions can be regarded as actions derived from human's high-leveled desires. Such actions can be observed not only in the real world but also in the virtual societies. In this paper, we discuss a linking method between real and virtual activities via physical tags that symbolize communities in the virtual society. We expect this method can enhance communications among users and realize casual access to information through ambient displays.
著者
川村 光 前川 覚 香取 浩子 常次 宏一 有馬 孝尚 廣田 和馬 前川 覚 陰山 洋 常次 宏一 有馬 孝尚 廣田 和馬 大和田 謙二 香取 浩子
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、特定領域研究「フラストレーションが創る新しい物性」の終了年度研究であり、特定領域5年間の成果の取りまとめが主たる内容となる。本特定領域研究においては、伝統的なフラストレート系研究の場であった磁性分野をその基盤に据えつつも、金属・強相関・誘電体等のより広汎な分野をも含む分野横断的なフラストレート系研究を展開し、これら多様なフラストレート系を統合的に扱うことを通して、フラストレーションを基軸とした新概念・新物性の開拓した。その結果、領域設定期間の間に、フラストレート系研究は格段の進展を見て、「フラストレーション」概念は、幅広い有効性を持った一般概念として物性科学分野に定着するに至った。とりわけ、特定領域活動の結果、フラストレート系研究は格段の進展を見、「フラストレーション」概念は、幅広い有効性を持った一般概念として物性科学分野に定着するに至った。例えば、カゴメ格子系、3角格子系、ハニカム格子系を舞台としたスピン液体状態の発見、カイラリティ概念を基軸とした新奇現象-異常ホール効果、スカーミオン格子、Z2ボルテックス、スピン-カイラリティ分離等-の発見と展開、マルチフェロ物質における新たな外場制御法の創出、フラストレート伝導系における新奇な輸送現象や特異秩序状態・量子臨界現象の発見、リラクサー誘電体における局所分極領域の種となる遅い横波振動モードの発見、といったような諸成果があげられる。本終了年度研究においては、これらの研究成果をを集積し領域として有機的に総合した上で、報告・公表を行った。具体的には、メインとなる研究成果報告書冊子の作成と配布に加え、研究成果発信のホームページの作成を合わせて行った。成果報告書は当領域の成果をまとめたコアとなる450ページ程度の冊子体であり、領域メンバーのみならず関連分野の研究者に広く配布した。
著者
稲本 万里子
出版者
恵泉女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

後白河院(1127-1192)はさまざまなジャンルにわたる浩瀚な絵巻を作らせたことが知られるが、その多くは失われ「伴大納言絵巻」「吉備大臣入唐絵巻」「病草紙」「餓鬼草紙」「地獄草紙」などが現存するのみである。これらの絵巻研究は個別の作品研究が中心であり、後白河院による絵巻制作の全容とその意味は未だ明らかにされていない。これは「年中行事絵」をはじめとする行事絵や「彦火々出見尊絵巻」が模本でしか現存していないことが要因であると考えられる。本研究は、今まであまり注目されることのなかった模本の調査研究と資料収集を通して、後白河院の絵巻制作とその機能を複眼的に、また総合的にとらえるものである。まずはじめに、福井・明通寺蔵「彦火々出見尊絵巻」模本と「伴大納言絵巻」「吉備大臣入唐絵巻」を取り上げ、人物表現を中心に比較検討をおこなった。「彦火々出見尊絵巻」に措かれた人物は、絵所絵師常磐光長系の表現としてパターン化されているが、龍王の姫君の特異な表現から、治承2年(1178)平徳子の皇子出産が絵巻制作の契機になったと考察される。さらに、陸地と龍宮を往還する神武天皇の祖父の物語である「彦火々出見尊絵巻」は、異国の征服と皇統の視覚化を目的として制作されたと解釈することができる(詳細は、「措かれた出産-「彦火々出見尊絵巻」の制作意図を読み解く」(服藤早苗・小嶋菜温子編『生育儀礼の歴史と文化-子どもとジェンダー-』森話社、平成15年3月)にて発表した)。後白河院が制作させた絵巻群は、自国の支配と異国の支配、そして、皇統と皇権の表象であった。後白河院は、絵巻制作というイメージ戦略によって、自らの権威を認識させようとしたと考えられるのである。
著者
小森 彰夫 大藪 修義 森崎 友宏 増崎 貴 庄司 主 小林 政弘 鈴木 康浩 水口 直紀
出版者
核融合科学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

先行研究で大きな成果を挙げたローカルアイランドダイバータを,定常運転に対応した閉構造ダイバータに発展させ,大型ヘリカル装置(LHD)に設置した.初期実験では,閉構造化によって中性粒子が数値実験の予測通りに圧縮されていることが確かめられた. また,閉構造ダイバータ配位と共存可能なプラズマ周辺部のエルゴディック層を,外部摂動磁場によって変化させることで,ダイバータへの熱・粒子輸送を制御できることを示した.
著者
林 為人 高橋 学
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

海洋底深層掘削をはじめ,地震断層をターゲットとする科学深層掘削プロジェクトにおける地殻応力の状態を決定するとともに,深層掘削における応力測定手法に関する基礎研究を行った.その結果,東南海地震の発生源である紀伊半島沖の南海トラフ海域の主応力方向分布を明らかにしたほか,台湾集々地震の震源断層付近で地震発生によって生じた応力分布の異常をとらえた.一方,非弾性ひずみ回復法という深層掘削コア試料を用いた応力計測を初めて,海洋科学掘削領域での適用に成功した.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.1, pp.A25-A32, 2005

2004年 4月から 7月に栃木県宇都宮市において,セキレイ属 3種(セグロセキレイ,ハクセキレイ,キセキレイ)の生息分布と生息環境を比較するために,1984年に行なわれた調査(平野 1985)と同じ場所,同じ方法で調査を行なった.調査地は1984年と同様に500×500mの方形区545個に分けられた.各方形区を優占する環境をもとに建物密集地,住宅地,農耕地,大河川,工業団地,丘陵の 6つに分けると,1984年と比較して建物密集地と住宅地の方形区は増加したが,農耕地と丘陵の方形区は減少していた.セグロセキレイの生息分布とその環境は,1984年と比較して,有意な変化はみられなかった.しかし,ハクセキレイは生息分布と生息環境ともに著しく変化した.すなわち,2004年には1984年にほとんど記録されなかった農耕地や大河川に分布を拡大していた.そのため,セグロセキレイとハクセキレイのあいだに,生息環境に有意な違いはなくなった.このようなハクセキレイの生息分布の変化の原因の 1つとして,調査地の都市化による営巣場所の増加が考えられた.なお,キセキレイでは,生息環境に変化はなかったが,分布は有意に縮小した.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.A25-A32, 2005 (Released:2005-11-10)
参考文献数
8

2004年 4月から 7月に栃木県宇都宮市において,セキレイ属 3種(セグロセキレイ,ハクセキレイ,キセキレイ)の生息分布と生息環境を比較するために,1984年に行なわれた調査(平野 1985)と同じ場所,同じ方法で調査を行なった.調査地は1984年と同様に500×500mの方形区545個に分けられた.各方形区を優占する環境をもとに建物密集地,住宅地,農耕地,大河川,工業団地,丘陵の 6つに分けると,1984年と比較して建物密集地と住宅地の方形区は増加したが,農耕地と丘陵の方形区は減少していた.セグロセキレイの生息分布とその環境は,1984年と比較して,有意な変化はみられなかった.しかし,ハクセキレイは生息分布と生息環境ともに著しく変化した.すなわち,2004年には1984年にほとんど記録されなかった農耕地や大河川に分布を拡大していた.そのため,セグロセキレイとハクセキレイのあいだに,生息環境に有意な違いはなくなった.このようなハクセキレイの生息分布の変化の原因の 1つとして,調査地の都市化による営巣場所の増加が考えられた.なお,キセキレイでは,生息環境に変化はなかったが,分布は有意に縮小した.
著者
島ノ江 憲剛 木田 徹也 湯浅 雅賀
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、環境計測用マイクロガスセンサの構築に向けた材料設計を目指し、酸化物半導体の基礎的な解析として、粒子サイズとドナー密度が空乏状態に与える影響、ドナー密度と酸素吸着量の関係、マスキング効果の有効性、増感剤効果とその最適担持法の検討を行った。また、これらの検討結果の一つとして、VOCガスの一つであるトルエンについて好感度検知を試みたところ、ppbレベルの検知が可能であることを見出した
著者
酒井 隆 清原 一吉 伊藤 仁一 勝田 篤 森 義之
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

コンパクト・リーマン多様体上の1点pからの距離関数d_pは重要な幾何学的関数であり,多様体の構造とも関連する.しかしd_pは微分可能でない点を許容し,それはpの切断跡(cut locus)に含まれる.さて,距離関数に対しても危点の概念が定義されるが,危点ではd_pは微分可能ではない.危点を含まない場合には,距離関数に対しても通常のモース理論(イソトピー補題)が得られており,多くの幾何学的応用を持つ.他方,危点を許容する場合にモース理論を展開するためには,まずその指数の概念を定義する必要がある.本研究において,代表者の酒井隆はリーマン計量が自然な非退化性条件を満たすとき,分担者の伊藤仁一と共にこれを実行し,幾何学的な立場から直接に距離関数のモース理論を展開した(掲載済み).その際,切断跡が良い構造(stratification)を持つことを示すのが重要で,危点qの指数はp,qを結ぶ最短測地線の個数とqを含むstratumへの距離関数の制限(これは微分可能でqはその危点である)のqでの通常の指数を用いて書ける.この条件がどの程度まで一般的かについてはさらに考察を続けたい.距離関数に関連して,清原一吉は可積分湖地流の立場から一般次元楕円面(やあるクラスのLiouville多様体)の一般点の切断跡,共役跡の構造を伊藤と共に研究し,勝田篤は境界付リーマン多様体の境界からの距離関数から内部のリーマン計量を復元する逆問題を考察した。計量不変量の間の不等式(等縮不等式・等径不等式),曲率非負のコンパクト・リーマン多様体のラプラシアンの第1固有値評価およびその摂動版については本質的な進展がなかったが,清原はアレキサンドロフ空間の幾何学的不等式に関する結果を得た.これらについては研究を継続する.森義之は量子コンピュータのアルゴリズムを研究し,酒井にコンピュータ支援を行った.
著者
鈴木 健一 山下 久夫 田中 康二 西田 正宏 杉田 昌彦
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

契沖以前から本居宣長以後までの江戸時代の古典学の軌跡を、より詳密に描き出すことに一定の成果を収めた。また、『勢語臆断』『古今通』『土佐日記解』など個別の注釈書の性格や成立について、新見を提示した。
著者
西村 和久
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.63-66, 2005-10-30
被引用文献数
1
著者
谷口 功 FARRELL Nich CHELEBOWSKI ジャン エフ HAWKRIDGE Fr 木田 建二 西山 勝彦 FARRELL Nicholas P WYSOCKI Vick JAN F.Chelbo VICKI H.Wyso FRED M.Hawkr
出版者
熊本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究では、金属タンパク質の構造変化による機能制御の本質を解明、応用するための基礎を確立するため、日米二つの研究グループの得意な領域を有機的に結合して、金属タンパク質の電極上での直接電子移動を自在に制御し、金属タンパク質の電気化学的性質を明らかにすると共に、界面電子移動反応に関する基礎的知見の増大と新しい概念の創出を目指して研究を進めた。本研究の過去3年間の研究成果は以下の通りである。1.金属タンパク質の界面電子移動制御とその生物電気化学的応用について(1)種々の機能電極の開発によって、ミオグロビン、ヘモグロビン、チトクロムc、フェレドキシンなどの電極上での直接電子移動制御が可能となった。(2)ミオグロビンについては、酸化インジューム電極を用いて、不均一電子移動速度定数と電極表面の親水性の関係を定量的に評価し、金属タンパク質の電子移動制御のための界面機能を一般化した概念を提唱した。また、種々の起源のミオグロビンの電子移動と配位子置換による電子移動反応の影響を明らかにした。さらに、マンガン再構成ミオグロビンやモノアザ及びジアザヘミン置換ミオグロビンを作製してヘム鉄の軸配位子の酸化還元電位および不均一電子移動速度定数への影響を明らかにした。(3)チトクロムcのための機能修飾電極について、フレームアニールクエンチ法で作製した金単結晶電極上にチオール系機能化分子を修飾した電極を作製して、その界面機能を電気化学法、分光学、走査プローブ顕微鏡などを用いて詳細に明らかにした。また、機能化分子の微細な構造の相違が金属タンパク質の電子移動促進効果に大きく反映することを明確にした。(4)フェレドキシンのアミノ酸改変体を作製し、そのレドックス電位や酵素反応速度への影響の定量的な解析から、フェレドキシンの機能をアミノ酸残基レベルで酸化還元電位の制御部位と酵素分子との結合部位などに明確に区別されていることを明らかにした。2.金属タンパク質の構造変化のダイナミクス測定について(1)円二色性(CD)分光電気化学法について、電子移動過程の速度論的な情報を得るストップトフローCD測定のための装置の開発・高度化によって、高機能測定装置を組み立てた。(2)本装置を用いて電子移動過程で金属タンパク質構造のin situ時間分解測定を行い、チトクロムc、フェレドキシンいずれも電子移動に伴う構造変化が多段階的に生じることを明らかにした。(3)電気化学法及び新しいCD分光電気化学法などを用いて電子移動過程に伴うチトクロムc、ミオグロビン及びフェレドキシンの電子移動速度及び電子移動に伴う全体的かつ局部的な構造変化のダイナミクスに関する新しい知見を得た。(4)フェレドキシンの電気化学挙動の温度依存性から、ボルタモグラムのディジタルシミュレーション法による解析を用いてその反応機構に微細な構造変化が存在することを明らかにした。3.フェレドキシンの電子移動制御と光合成モデル生体機能化学反応への応用について(1)フェレドキシンの電極反応を、フェレドキシン-NADP^+-リダクターゼ(FNR)系と共役させ、さらにNADPHを補酵素とする酵素と共役させて、立体選択的精密化学合成へと展開した。具体例として、ピルビン酸からLーリンゴ酸が、さらに、オキソグルタル酸からL-グルタミン酸が得られることを示した。(2)電気化学測定から酵素反応の速度論的解析と反応機構の解明のためのディジタルシミュレーション手法を開発した。4.半人工改変金属タンパク質のユニークな機能発現の分子構造的解明(1)ミオグロビンを用いて、その活性中心を人工分子で置換した半人工再構成分子を作製し、その特性を電気化学的に明らかにした。特に、ヘム鉄の配位子であるヘミンの構造やヘム鉄周りの分子内環境が酸化還元電位やミオグロビンの機能の発現に重要であることが示された。(2)フェレドキシンのアミノ酸変異分子の酸化還元電位の大きな変化は、主に、特定のアミノ酸残基への置換によって生じる鉄-イオウクラスターの歪みによって生じる可能性が、コンピューター分子構造モデル計算による立体構造表示から示唆された。