著者
神崎 正英 佐藤 良
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.453-459, 2011-11-01

国立国会図書館(NDL)は,書誌データの開放性・利用可能性を向上させる取り組みの1つとして,書誌データ提供におけるセマンティックウェブ技術への対応を進めている。この一環として,2010年6月には「ウェブ版国立国会図書館件名標目表(Web NDLSH)」,2011年7月には提供範囲を全典拠レコードに拡大し,システムの機能を拡張した「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)」の開発版をリリースした。「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)」の開発版では,典拠データをRDFモデルにより表現し,Linked Dataのスキームに準拠する等,セマンティックウェブ技術に対応した形式により提供している。本稿では,当サービスの概要,提供する典拠データの内容,RDFモデルの設計等について紹介をする。
著者
徳永 正二郎 FRIEDEN Jeff 池間 誠 ANDERSON Kym NOORDIN Sopi EATON Jonath WONG John 大野 健一 中本 悟 PAULEY Louis 中尾 茂夫 DEKLE Robert 高坂 章 UNGER Daniel 花崎 正晴 FRANKEL Jeff ARIFF Mohame PAULY Louis LINCOLN Edwa KIM Chang So 楊 秀吉 桜井 真
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本研究では、(1)日本、アジアNIEs、ASEAN、中国へと連鎖したアジア経済のダイナミックな発展とそれに平行して現実性を持ちはじめた太平洋両岸の地域経済圈形成(「北米自由貿易協定」を軸としたアメリカ大陸自由貿易圈形成並びに「東アジア経済協議体(East Asia Economic Caucus)」にみられるアジア経済圏形成)の動きがみられるが、それら両者はどのような相関性および相互作用を持っているか、(2)アジア地域経済において日本・アジアNIEs、ASEAN、中国を中心に相互依存の関係が深化拡大しているが、そのプロセスでアジア諸国、日本、米国において経済・通商政策に変化がみられるかどうか、また発展の程度や立場を異にする諸国経済の経済・通商・投資・金融政策相互の間にいかなる軋轢や収歛(convergence)がみられるか、(3)アジア及び北米における地域主義の台頭が日米の政治・経済関係にどのような影響を及ぼし、日米関係がいかなる方向に変容しつつあるか、という設問の上で、調査研究を進めてきた。この作業は、アジア経済の成長と日米関係の変容という二つの(複眼的)分析視角のもとで、ポスト冷戦期の世界経済秩序を展望することを意図している。初年度(1993年度)には、アジアと北米の地域主義に焦点を当て、その問題を軸に(1)地域経済の発展とアジア太平洋地域経済秩序、(2)アジア太平洋経済における日本と米国、(3)アジア太平洋地域経済の発展-課題と展望という3つのセッションに分かれて調査研究した(九州大学にてワークショップを開催し、Asian Economic Dynamism and New Asia-Pacific Economic Orderとして刊行)。次年度(1994年度)には、東南アジアにおける実態調査を行い、ポスト冷戦期という政治的経済的世界システムの再編過程で発生している通商・金融・援助等多岐にわたる日米間の経済的摩擦がアジアの成長とどのように関係しているか、またアジアにおける地域主義の実態について分析した(タイ王国チュラロンコン大学経済学部及び国際経済研究所の協力で、本プロジェクトの共同研究者とチュラロンコン大学、タマサート大学その他研究機関の研究者とが一堂に会してワークショップを開催した)。本年度(1995年度)の研究テーマは、初年度と次年度の研究成果を踏まえて、「アジアにおける経済成長、社会経済的変容及び地域主義」を日米双方の立場から調査研究した。この調査には、アジア金融市場及びアジア域内資金フローの研究に業績をあげている奥田英信(一橋大学講師)、ベトナムやラオスなどインドシナ半島の社会経済問題のエキスパートであるモンテス(Manuel F.Montes;ハワイ東西センター研究員)、日本研究のエキスパートであるモリソン(Charles Morrison;ハワイ東西センター)、韓国の対外経済研究の第一人者であるリ-(Lee H.Chun;ハワイ大学韓国研究所所長)及び米国における日本研究の先導者モチヅキ(Michael M.Mochizuki;ブルッキングズ研究所主任研究員)を研究協力者として招き、ハワイ東西センターでワークショップを開催した。これは、角度を変えてみれば、アジア地域の社会経済的発展を日米関係を通して調査研究することであり、アジア太平洋の新しい経済秩序を構成する二つのファクター(すなわち、「アジアの成長・社会経済の変容・地域主義」という古いシステムを破壊するファクターと「日米基軸」という伝統的ファクター)の相関性と相互作用について認識を深めることにつながった。1994年度及び1995年度の研究成果は、初年度同様公刊の予定である。
著者
岸本 寛史 斎藤 清二
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は次の4点である。(1)バウムテストの創始者であるKarl Kochの基本姿勢をドイツ語原著に基づいて明らかにする。(2)『英訳版』とその本訳である『邦訳版』の問題点を明らかにする。(3)我が国へのバウムテストの導入過程を検討する。(4)バウムテストを臨床的に発展させるために事例研究のスタイルについて検討する。結果の概要は次の通りである。(1)コッホはバウムテストを心理診断の補助手段として位置づけようとしていたが、意味論的分析をという手法を用いて、コッホが意図していた「心理診断」を明らかにした。その結果、コッホは判別診断を最終目標としていたのではなく、それも組み込んだ形での総合診断、バウムと描き手とを重ねる形での見立てを目指していたことが明確になった。(2)コッホが示している事例解釈の部分を、ドイツ語原著、英訳版、邦訳版を対比させながら翻訳の問題点を明らかにした。コッホはバウムのイメージを持ち続ける中で開けてくる直感を大切にする、優れた描写はそのまま解釈になる、バウムのイメージを各種の指標を使いながら外からみると同時に、イメージの中に入り込んで内側から見る、被験者への責任感、といった基本姿勢が理解されていないために、邦訳版ではそこで示されている解釈が読者には理解できないものになってしまったと思われた。(3)バウムテストの導入過程については、文献的検討により、邦訳者はコッホの原著の中でも主として発達診断的側面と空間象徴に基づく解釈仮説を盛んに紹介していたが、上記のようなコッホの基本姿勢が紹介されないため、これらの指標や仮説が一人歩きしていることが懸念された。(4)臨床的発展のためにバウムテストの事例研究を行うことが不可欠であるが、そのスタイルについては、従来の全経過を検討するようなスタイルだけでなく、ワンセッションにフォーカスを当てた事例研究が必要だと思われた。
著者
一宮 慎吾 氷見 徹夫 佐藤 昇志
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)は高親和性抗体の産生に重要で、また可塑性を示す一方、ヒトTfh細胞の機能制御機構や疾患との関連については未だ不明な点が多い。本研究では臨床検体を用いてヒトTfh細胞の医学的意義や機能制御機構を探ることを目的とした。研究の結果、Tfh細胞は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因である肥大扁桃に多く含まれ、またアレルギー性鼻炎や気管支喘息患者の末梢血液中のTfh細胞サブセットの構成比が健常人と比較して異なっていた。不均衡な分化を示すTfhシフトあるいはTfh2シフトに、ALOX5関連脂質メディエーターやPOU2AF1転写制御因子が関係している可能性が見出された。
著者
新垣 裕治
出版者
名桜大学総合研究所
雑誌
名桜大学総合研究 (ISSN:18815243)
巻号頁・発行日
no.9, pp.21-31, 2006-03

沖縄本島北部地域の"やんばる"には,ヤンバルクイナ,ノグチゲラ,ヤンパルテナガコガネなどの固有種を含め多くの種が生息している。沖縄島におけるマングース対策事業は1993年から行われているが,マングースの"やんばる"地域への分布拡大は防ぎきれていない。"やんばる"地域におけるマングースの連続分布北限は北上を続け,2003年には国頭村辺土名から安波ダムを結ぶ線まで到達したと予測されている。"やんばる"地域ではマングースの生息密度が低く,籠ワナ捕獲だけで分布域の全体像を把握することが困難であると考えられ,本調査では地域住民の目撃経験をアンケートで聞くことにより,マングース分布の現状把握を試みた。目撃数では東村が最も多く58件,次に大宜味村の26件で国頭村では12件であった。東村と大宜味村における目撃場所は村の南側で多かった。大宜味村の脊梁部では,大国林道沿いと脊梁部の西側の林道沿いでの目撃が多くなっていることより,分布は脊梁部を大国林道沿いに西側よりに広がっていると考えられる。国頭村では,県道2号線沿いで6件が目撃されており,これ以南では9件,より北側では3件であったことは,県道2号線が"やんばる"地域における連続分布北限であることを示唆している。目撃情報から推察すると,国頭村,大宜味村及び東村へのマングースの侵入時期は,2001-2002年と1989-1994年と考えられる。マングースの侵入時期前後の目撃件数(ヤンバルクイナは鳴声も含む)の変動より,マングースによる捕食の影響を受けていると思われる動物は,オキナワトカゲとヤンバルクイナであり,一方,ホルストガエル,アオカナヘビ,キノポリトカゲ及びミフウズラには影響が少ないと思われる。マングースの"やんばる"地域北側への分布拡大は,大国林道沿いに進んでいることが予測されるため,沖縄県が平成17年度に林道を遮断するように塩屋-福地ダムライン(SFライン)に沿った防護フェンスの設置を決定したことは,マングースの北上を阻止するのに有効に機能すると期待できる。しかし,SFラインより北においても既にマングースが生息していることは確かであり,フェンスの北側で徹底した捕獲作業を行う必要がある。また,国頭村内におけるマングースの分布から,県道2号線が連続分布北限と考えられるので,県道2号線沿いでも早急な対策を進める必要があると思われる。"Yambaru", the northern part of Okinawa Island, has many indigenous species, such as an Okinawa rail, an Okinawa woodpecker, and a Yambaru long-armed scarab beetle, and many native species. The countermeasures against mongooses in Okinawa Island have been conducted since 1993, however, expansion of mongooses into "Yambaru" area was not prevented. Continuous distribution of mongooses from southern and middle part of Okinawa Island is expanding into "Yambaru" area; it is expected to reach the line between Hentona in the west coast and Aha-dam in the east coast of Kunigami Village. In this research, questionnaire was conducted for estimation of population of the animal in the "Yambaru" area. The number of sightings was 59 in Higasi Village, 26 in Ogimi Village and 12 in Kunigami Village. The number of sightings was higher in the south side of Higasi and Ogimi Village. Since the number of sightings was many along Okuni-rindo forest path and those in the west side from Okuni-rindo in the mountain area in Ogimi Village, the estimated distribution of mongooses was westward from Okuni-rindo. In the Kunigami Village, estimated distribution border was on prefectural road No. 2: 9 in the south from the road, 6on the road itself and 3 in the north of the road. Date of sightings suggested invasion of the mongooses into Kunigami and Ogimi Village occurred in 2001-2002 and 1989-1994, respectively. Changes in the number of sightings of prey animals before and after invasion of mongooses, the most vulnerable to predation were Okinawa-tokage (five-lined skink) and Okinawa rail and less vulnerable were Holst's frog, Ao-kanahebi (Takydoromus smaragdinus), Kinobori-tokage (mountain agama) and Mifu-uzura (bustard quail). Since it was suggested that the invasion of mongooses into "Yambaru" area were along Okuni-rindo forest path, the security fence along the line between Shioya-Fukuchi Dam (SF line), which is going to be build in 2005 fiscal year by the Prefectural Government to block the Okuni-rindo is expected working well for prevention of inversion of mongooses. However, it is obvious that the distribution of mongooses had expanded already beyond the SF line to the north, thus it is needed to capture them also in the north of the SF line. Because the continuous distribution of mongooses border is considered to move to the north up to along prefectural road No. 2, the quick actions for preservation of indigenous species should be needed.
著者
川端 秀明 磯原 隆将 竹森 敬祐 窪田 歩
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2011-CSEC-53, no.3, pp.1-6, 2011-05-05

Android OS の特徴として,利便性の高いアプリケーション (以下,アプリ) を実現するパーミッションという機構があり,アプリケーションのインストール時にユーザが承認することで,端末の情報や機能へのアクセス権を制御している.また,アプリの可用性の向上のために web 機能をアプリに内包する webkit を搭載している.これを用いることで,Android アプリと HTML,CSS,JavaScript など Web アプリとを柔軟に連携できる.しかし,webkit を利用したアプリが,外部サーバから JavaScript を受け取り実行した場合,アプリに与えられたパーミッションの範囲で実行される脅威がある.要するに,アプリ単体では不正な動作をしないが,後から送り込まれた悪意の JavaScript によって端末を操作されてしまう.そこで本研究では,アプリの静的解析により得られるコードの特徴から,後から送り込まれる JavaScript の機能を把握し,潜在的な脅威を推定する手法を提案する.これはアプリの実行コードの逆コンパイルによるコード解析であり,外部サーバの JavaScript から呼び出されるメソッドを特定することで,情報漏洩や端末の不正操作を推定する.
著者
加藤 幹郎 田代 真
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

21世紀の日常生活は、ヴァーチュアル・リアリティ化され、それがインタラクティヴィティと呼ばれる、主体と客体との間の「柔らかい」相互干渉性である。この環境は、人間の身体/精神になんらかの回復不可能な傷痕を残し、新たな身体/精神機制を構築することになる。そこではデカルト的二元論によって規定されてきた近代心身二元論がきわめて希薄化される。
著者
古閑 博美
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.145-157, 2003-10-01

今また、論語が注目されようとしている。それは、「心の乱世」と呼ばれる現状があることと無縁ではない。社会や教育の荒廃は、人びとの行動や精神に悪影響をおよぼし、取返しのつかない状況を生む。大学教育の現場で、学生の学力低下や態度不良が指摘されるようになって久しい。社会人としてふさわしい態度を形成するうえで、徳行や礼が実行されない環境を放置してよいはずがない。歴史的経緯からも、論語は、日本にもたらされた当初から教育的価値の高い書物として活用されている。古典に親しむ教育を検証し、かつて実行された日本のよき教育的指導のあり方を、再び学ぶ必要があると思われる。筆者の実践から、現代の大学生であっても、礼をともなった交誼のあり方に心地よさを感じている者が少なくないと断言できる。政治経済・福祉・教育を取り巻く情勢は厳しい。少子化に歯止めが期待できない今日、大学の今後も決して楽観できるものではない。しかし、人間が作った社会である以上、人間がその現実を直視したうえで是正し、よりよいものにしていくしかない。論語に学ぶ意味も、まさにその点にあると思う。
著者
古野 哲郎 神山 亜紀 明石 智義 臼井 真理子 高橋 武美 綾部 真一
出版者
Japanese Society for Plant Cell and Molecular Biology
雑誌
植物組織培養 (ISSN:02895773)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.275-280, 1993
被引用文献数
10

西洋タンポポのカルス培養細胞から完全な植物体を再生させた. カルス細胞をNAAとBAを添加した1/2MS培地上明所で培養すると, 一部の培地上で著しいシュートの形成が見られた. ホルモン無添加培地で発根させ, バーミキュライトを経てポット中の土壌に移植したところ, 開花し, 種子を得る事ができた. カルス培養ではトリテルペン酸 (オレアノール酸, ウルソール酸) が顕著に検出されたが, 再分化すると検出されなくなり, 代わりに分化器官ではトリテルペン-3-オール量が増加した. トリテルペン-3-オールの組成をHPLCで解析したところ, カルスではα-およびβ-アミリンが主要な成分であるのに対して, 分化器官ではタラキサステロール, ルペオールなどがさらに見出され, 特に乳液ではタラキサステロールが主成分であった.
著者
大野 公男
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.911-912, 1993-11-05
著者
豊川 秀訓 鈴木 昌世
出版者
(財)高輝度光科学研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

半導体放射線検出器の電子等価雑音は電子・正孔密度(n_e,n_h)に支配され、指数関数的な温度依存性n_e=n_h∝exp(-E_<th>/kT)を示す(E_<th>:活性化エネルギー、T:温度、k:ボルツマン定数)。E_<th>=1.1eVであるシリコンではT=25℃に於ける電子・正孔密度が10^<10>cm^<-3>程度となり、室温動作が可能になる。一方、E_<th>=0.7eVであるゲルマニウムでは、同温度で、10^<13>cm^<-3>となり冷却動作が必須で、放射線計測の常識として液体窒素温度に冷却して使用されている。しかし、近室温領域(T=-65℃)ではゲルマニウム中の電子・正孔密度も室温に於けるシリコンのそれと同程度に減少する事が予想される。更に、この熱雑音電流は、Ge結晶中に一様に存在し、素子体積に比例し、本研究で最終的に想定するピクセルサイズ100μm角程度の微小空乏層に関しては、熱雑音電流が100nA以下に減少することが予想される。一方、入射放射線励起の電子正孔対は、体積には依存せずに、入射放射線の持つエネルギーに比例し、かつ数100μm角程度の微小領域で発生する。この事実は、数100μm角サイズのGe検出器では、暗電流が著しく軽減され、近室温で動作する可能性を示唆する。上記の趣旨に基づき、単素子1mm角の単素子微小Geセンサーを製作した結果、熱雑音電流が室温(22℃)でさえも10μA程度に抑えられ、近室温の-73℃ではさらに2桁程度減少する事を確認した。この結果は、ピクセル化した際の基本的なサイズ、0.2×0.2×0.3mm^3では、約30nA程度になる事を意味し、本課題の目的である近室温で動作が可能である事を示唆する。ただし、印加電圧10V以上では、表面電流の影響と考えられる暗電流の増加が問題となった。この表面電流の影響を防ぐ為に、最終的に、ガードリング付き単電極素子(素子サイズ5mm×5mm×0.5mm、電極面積2mm×2mm)、ガードリング付き多電極型素子(素子サイズ5mm×5mm×0.5mm、電極面積0.75mm×0.75mm、電極数2×2個)を製作した。本研究の結果は、2003年春季応用物理学会(「ゲルマニウム検出器の温度特性」、神奈川大学)、日本物理学会2003年秋季大会(「微小ゲルマニウム検出器の温度特性」、岡山大学)、及び、同学会第59会年次大会(「微小ゲルマニウム検出器の温度特性II」、九州大学)に於いて口頭発表を行った。また、国際会議SRI2003に於いてポスターセッション発表を行った。
著者
櫻井 啓志 宮本 貴朗 青木 茂樹 岩田 基 汐崎 陽
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.442, pp.213-220, 2011-02-24

近年,通常のキーボード操作による非定型文を対象としたキーストロークの特徴を利用したユーザ認証に関する研究が行われている.本稿では,複数のキーストロークの特徴から得られる指標を組み合わせてユーザを認証する手法を提案する.まず,予め登録しておいた複数のユーザのテンプレートを用いて,各指標のパラメータをユーザごとに適切な値に設定する.次に,設定したパラメータを用いて,ニューラルネットワークの結合重み係数をユーザごとに学習させる.そして,ログイン後に文字を入力することに,テンプレートとの類似度を各指標からそれぞれ算出し,これらの値をニューラルネットワークに入力し,ユーザを認証する.提案手法を用いて実験を行った結果,他人受入率が0.17%,本人拒否率が2.38%となり,従来手法と比較して高い認証精度が得られた.
著者
飯田 克弘
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究では,平成9年度において(1)駅での乗り換え行動の把握,(2)移動手段別の負担感の比較,(3)乗り換え行動の負担の算出について調査および分析を行った.平成10年度では,これらの成果を踏まえた上で,分析対象とする行動を自宅を起点とした外出行動に拡大し,検討項目を追加した.そして2箇年の成果を総合化することで公共交通機関を利用した移動環境の評価を試みた.具体的にはまず,大阪府豊中市全域を対象として,市民の外出行動の状況を訪問回収方式のアンケート調査により把握した.この調査の中では,個人の社会的属性以外に,公共交通利用環境(例えば,主に利用する経路,利用交通機関,交通費など)を調査すると同時に,現在の経路を選択する理由,代替経路の有無,現状の施設整備・運賃制度・情報提供に対する不満・問題点を調査した.そして,これらの調査結果を分析することで,乗り換え行動に影響を及ぼす施設面の問題に加えて,金銭的な負担や情報収集の問題と外出行動との関係を明らかにした.さらに,施設利用面,金銭負担面,情報収集面からの評価指標の相互関係を考慮した上で外出行動(主として外出頻度)との関係をモデル化することで,総合的な公共交通機関利用環境評価を行った.
著者
新井 豊子 富取 正彦 村田 英幸
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、独自開発した電圧印加非接触原子間力顕微鏡/分光法(Biasnc-AFM/S)を発展させ、試料表面上の原子と探針先端原子との間の結合形成の過程・電子状態の変化を明らかにすることを目的とした。このために高感度力センサーの開発、電子回路の高感度化により探針試料間相互作用力、電流、エネルギー散逸の高感度同時計測を実現した。シリコン-シリコン原子間の共有結合力は、局所電子状態密度に強く依存していることを明らかにした。
著者
及川 昌典
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.14-25, 2005-03

動機づけや目標の非意識的な生起や追求に着目した近年の研究では, 行為者の自覚なしに生じる動機づけが行動や感情に影響を及ぼすことが示されている。これらの研究は環境による自動的過程の影響を強調しているが, 個人内過程の役割を十分に考慮していない。本研究は, 非意識的な達成動機の影響が個人の持つ知能観によって調整されることを検討した。研究1では, プライミングによって達成動機を活性化された参加者は, 統制条件の参加者よりも後続の課題の遂行が高まっていた。また, 課題遂行後の感情は, 参加者が持つ知能観によって異なり, 実体的知能観を持つ者は, 増加的知能観を持つ者と比べて否定感情を強く報告していた。研究2では, 参加者の持つ知能観と一致している目標と一致していない目標の活性化の影響を検討した。参加者が持つ知能観と一致する目標が活性化された場合には, 課題遂行の向上が見られたが, 一致していない場合には, この促進効果が見られなかった。よって, 個人の持つ知能観が, 達成動機と目標の連合を調整すると考えられた。個人の信念が非意識的な動機づけと目標の連合に影響するメカニズムについて論じる。