著者
山川 岩之助 阿部 一佳 田崎 健太郎 諏訪 伸夫 村木 征人 井上 一男
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究の目的は、我が国競技スポ-ツ選手の競技水準を世界のトップレベルまで引き上げることないしはそれに限りなく近づけることにある。具体的な研究方法としては、第一に、競技水準については、オリンピック大会におけるものを考察の対象とし、それも夏季大会を中心として時系列的には、過去数回のオリンピック大会までさかのぼって考察した。第二に、競技力向上政策をそれぞれの国の実情に応じてスポ-ツ政策それ自体のレベル、労働・雇用問題等の社会政策レベル及び国策としてのレベルの面から考察することとし、具体的には、「概念規定」「歴史的背景」「組織形態」「政策主体及び理念」「立法措置」「予算」「重点施策」及び「選手養成」等について吟味した。その際の政策ないし施策の評価をオリンピック大会における金、銀及び銅メダルの獲得数及び獲得状況からみることとした。スポ-ツ超大国であり、メダル獲得数でも他を圧している米国とソ連からみてみると、米国は「アマチュアスポ-ツ法」の制定にみるように、一項の国際競技力の退潮を、連邦の直接的支援や国内競技スポ-ツ組織の改革等によりおしとどめ且つ押し上げようとした。ソ連はスポ-ツにおける英才教育の整備や競技施設建設の推進や指導法の開発等の研究部門の充実などにより成果を収めてきたが、より一層の競技力向上を求めてスポ-ツ分野におけるペレストロイカやグラスノスチ(公開)による改革が現在進行中である。フランスは米国と同じく国法であるスポ-ツ振興法を制定し改定するなど強力なテコ入れを行っており、西ドイツは、官民相提携して競技力向上政策に務め相当の成果を収めてきた。中でも選手強化策たる拠点強化制度は有名である。英国はスポ-ツカウンシルによる「新10カ年計画」の一環として着々と競技力向上施策が進行中である。わが国はJOCの法人化等組織の改正や選手強化体制の充実による国際競技力の向上を図っているが、その成果はこれから問われよう。
著者
下川信祐 新上 和正 大田原一成
雑誌
情報処理学会研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.116(2003-IS-086), pp.31-38, 2003-11-19

人はどのようにしてシステムと深い関係を形成して行くのでしょうか?これを解き明かすには,従来のタスクレベルを越え,人レベルで利用行動を考察することが必要です.私たちは情報通信と人の幅広く深い関わりに注目します.マクロに眺めると現代の情報通信には,計算機と電話に由来する2元性(双対性)が現れています.これは,アンケート調査の分析で得られたミクロレベル(利用行為)での2種類の複雑さ(多様性と高次元性)に応じています.ミクロからマクロに一貫して2元性に応じている性差に注目し,その行動的起源を辿り,2つのモードをもつ行動モデルを抽出します.これは双対的なマクロ構造や性差研究報告を説明します.ユーザー経験を予想するための参照モデルとしてデザインに利用できます.また,人と深い関係を形成するためのシステム概念,技術と人間社会の発展に対する鳥瞰図,ライフスタイルの長期的シフト(日常化)が導けます.
著者
永松 義博
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.265-270, 1992-03-31
被引用文献数
6

身体的にハンディキャップをもった人々の公園利用への関心が高まり,設計基準等も整備されつつあるあるが,視覚障害者にとっての配慮は,まだ完全とはいえない。快適に適応できる屋外遊び空間(盲人公園)を計画していくための手ががりを得ることを目的として,盲学校生徒の余暇活動の実態を明らかにした。盲学校のクラブ活動では,盲男子は活動的で組織的なスポーツに人気が高く,盲女子では文化系クラブの入部が多く,直接実生活と結びついた活動が目立っている。彼らの戸外活動への関心は高いものの,積極的な余暇時間の活用はみられず,余暇活動として発展していない点が指摘される。
著者
金山 紀久 永木 正和 石橋 憲一 伊藤 繁
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、(1)フードシステム(以下FSと略)に援用可能な複雑系経済理論の検討、(2)複雑系経済理論を援用したFSの時間的構造変化の過程の解明、(3)複雑系経済理論を援用したシステム環境の変化と空間的構造変化の過程の解明、の三つの課題を設定して研究を行った。第1の課題に対する研究では、複雑系の考え方に基づく経済理論を背景にFSを捉えることの必要性を明らかにした。具体的には、「ゆらぎ」と「創発」の考え方をFSの研究に援用することの意義を明らかにした。第2の課題に対しては、牛乳・乳製品のFSと小麦のFSを分析対象として取り上げた。牛乳・乳製品のFSでは、雪印食品の食中毒問題が、経営状況の悪化の過程で停電を引き金にして起こっているが、発生要因を確定できるような単純系ではなく、従業員のメンタルな側面など複雑系のもとで起こっており、このような複雑系下においても食品の安全性を確保するシステムの必要性を明らかにした。また、北海道の加工原料乳の製造は牛乳のFSの「ゆらぎ」をシステム内に緩和する働きを持っており、加工原料乳制度は、その働きをサポートする制度であることを明らかにした。小麦のFSでは、これまでの食糧管理制度が、原料生産者と実需者の関係を断ち切るよう形で生産者を保護しており、需給のミスマッチを発生させていた。FSは原料生産者、加工業者、流通業者、消費者の各主体によって形成され、一つの主体だけではシステムを形成できず、一つの主体だけ単独に存続できるような制度はシステム上問題である。しかし、つい最近まで制度設計者にその認識が希薄であったことを明らかにした。第3の課題に対しては、食品工業の立地変動を分析対象とし、食品工業の立地変動に内生的な集積力があることを確認した。また、FS内での創発によって生まれ、ゆらぎをもたらす技術について、化工澱粉を取り上げ、その特性と冷凍食品への利用について整理した。
著者
成実 弘至
出版者
ポ-ラ文化研究所
雑誌
化粧文化 (ISSN:0388399X)
巻号頁・発行日
no.39, pp.16-25, 1999-05
著者
船越 進太郎 山本 輝正
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.201-208, 1996-09-05

1992年および1993年,6月から10月にかけて,長野県乗鞍高原(東経137°37',北緯36°06',標高1,450m)および石川県白峰村市ノ瀬(東経136°37',北緯36°10',標高830m)の登山センターなどの建物の下でコウモリに食された蛾の翅を集め,同定するとともに前翅長を測定した.乗鞍高原の建物の天井部分はクビワコウモリEptesicus japonensis,ヒメホオヒゲコウモリMyotis ikonnikovi,ウサギコウモリPlecotus auritus,コキクガシラコウモリRhinolophus cornutus,カグヤコウモリMyotis fraterが夜間休憩場所として使用しており,中でもクビワコウモリが多く,時には200頭を数えた.ここでは餌となった8科114種の蛾を同定したが,小型の種が多く,未同定個体も含め前翅長は19.3±6.53(x^^-±S.D.)mmであった.これに対し,市ノ瀬の建物天井部分には主としてキクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinumが多く,わずかにカグヤコウモリが含まれていた.ここでは10科42種の蛾を同定したが,ヤママユガ科,スズメガ科などの大型種が多く含まれていた.前翅長は47.3±15.56(x^^-±S.D.)mmで,乗鞍高原のものとは大きな差があった.乗鞍高原で見られるコウモリは小型種が多く(前腕長33-45mm;優占種クビワコウモリ38-43mm),市ノ瀬で見られるコウモリはそれより大型種が多かった(前腕長36-65mm;優占種キクガシラコウモリ56-65mm).昆虫食のコウモリの中でキクガシラコウモリは他の種より大型であり,大型の蛾(前翅長の最大は81.6mmのヤママユ)から小型の蛾までを捕っていた.これに対し,クビワコウモリは小型種であり,より小さな蛾(前翅長の最大は42.4mmのシロシタバ)を捕っていた.キクガシラコウモリは餌を捕まえるとき腿間膜(足の間の膜)を使用することが知られる.そのため,大型種から小型種までさまざまな大きさの餌を効率よく捕っているのかも知れない.また,コウモリの休憩場所で夏眠するAmphipyra属のシマカラスヨトウA.pyramidea,オオウスヅマカラスヨトウA.erebina,ツマジロカラスヨトウA.schrenckiiがコウモリの餌の中に含まれていたが,資料の収集した日時から夏眠が終了して,夏眠場所を離れた個体であると推測された.
著者
外池 智
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.13-31, 2008-05

今日,戦後60年を越える年月を経て,「ヒト」から「モノ」へ,確実に戦争の記憶や記録,痕跡が移行していく中,体験者の持つリアリティーに迫る理解・共感可能な学習をどのように展開していくのかは歴史教育の重要な課題となっている.本研究では,戦争遺跡に注目し,まず現在の全国における戦争遺跡について,特に文化庁を中心とした「近代追跡調査」による取り組みを整理するともに,その類型的分析を試みた.また,秋田県を事例に,同様の類型的分析を試みた.さらに,そうした戦争遺跡のその学校教育における学習材としての活用について,秋田県を事例に取り上げ,特に土崎空襲を題材にした小・中・高校のそれぞれの実践,すなわち,文化祭において戦後60年(土崎空襲60年)を機に全面的に取り上げた秋田中央高校,沖縄への修学旅行と関連させ,沖縄と土崎との比較研究を取り入れた下浜中学校,「総合的な学習の時間」で体系的に取り組んでいる土崎南小学校と港北小学校について検討した.Under the cicumstances that the number of people with wartime experiences is decreasing, it is an urgent task to establish the teaching of history in which students can share the experiences of those people. As a first step toward this aim, the research under discussion collected data on some of the war sites across japan, especially those related to investigations into modern historical remains, and analyzed them through categorization. Then, the research examined how such data are being used in actual teaching by focusing on the cases of Akita Chuo High School, Shimohama Junior High School, Tsuchizaki Minami Elementary School, and Kouhoku Elementary School, where the Tsuchizaki Air Raids was taken up as a topic of teaching.
著者
栄久庵 祥二
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.49-54, 2005

There are two kinds of effect which tools have, the one being 'sociopetal' and the other 'sociofugal'. The former refers to the effect of tools that pull people together thus encouraging face to face interpersonal communication, while the latter is the effect that puts them apart, independent or isolated. The traditional Japanese heating equipments such as KOTATSU and HIBACHI play sociopetal role, and so does the well in the context of neighboring engaged in by housewives. Today, in general, sociofugal effect as played by mobile tools dominates over sociopetal one due to the nature of tools, technological development and people's value in our affluent society. Even so, desire for face to face communication among people persists strenuously. In this situation, there seems to be something to do on the part of designers.
著者
山本 富久 中曽根 英雄 松沢 康宏 黒田 久雄 加藤 亮
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.329-336, 2004-05-10 (Released:2008-01-22)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

The water quality and discharge from a tea field area in Shizuoka were measured daily and the outflow loads of fertilizer components in runoff water estimated. The results are as follows: The amount of nitrogen fertilizer applied was about 1000kg·ha-1·yr-1 in the tea field. The annual of T-N effluent load from the tea field was 531kg·ha-1·yr-1 and it was 49% of the amount nitrogen fertilizer applied. 97% of the T-N load was composed of the NO3-N load. Its outflow load, which consisted of storm water, was 51%. The outflow NO2-N and NH4-N loads were small in the first half of the investigation period. The T-P outflow load from the tea field was 0.18kg·ha-1·yr-1 and the leaching rate was very low, at 0.05%. Most of the phosphate fertilizer was absorbed by the red-yellow soil in the tea field. The average T-P concentration was as low as 0.01 mg·l-1. However, the T-P concentration was very high after heavy rain in June and September of 2000. Storm water had a T-P outflow load concentration of 64%. The K+ outflow load was estimated to be 89kg·ha-1 for the year. The leaching rate was 14%. The percentage was very low because K+ was absorbed by surface soil containing clay minerals. The annual Mg2+ and Ca2+ outflow loads were 292kg·ha-1·yr-1 and 266kg·ha-1·yr-1, respectively. Their leaching rates were 63% and 26%, respectively.
出版者
日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
no.421, pp.i-iii, 1921-11
出版者
日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
no.421, pp.677-679, 1921-11
著者
田辺 則明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.93-100, 2002

著者が属する社会科学系の調査研究図書館である銀行図書館からみた専門図書館におけるインターネットの利用を述べた:1) 出版状況や事実調査のためのツール 2) 該当資料をインターネットからダウンロードという資料入手ツール,および 3) 自図書館の情報発信ツール。次にインターネットの問題点を述べた:1) 検索エンジンの機能は該当情報にアクセスするには適合性,関連性に関してあらく,情報を探し出す取っかかりにすぎない 2) インターネットから収集,活用できる資料はきわめて少ない。更に問題点として,インターネットで提供される情報の著作権の問題,インターネットから入手した電子資料を電子媒体で保存する場合の経年的な問題も論じた。最後に,インターネットは便利な手段であるがために便利に使えばよい,そしてインターネットは巨大なフリーマーケットであり,巨大なデータ群から有益なデータや有意義な情報を掘り出すことができる手段でもあると述べた。
著者
下野 大樹 大原 美保 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.633-636, 2010

鉄道の早期地震警報は,地震時に新幹線を制御することを目的に開発・導入されてきた.しかし近年では,在来線や多くの私鉄にもP波検知による警報システムが導入されている.そこで本研究では,各鉄道事業者の警報システムが,首都圏の鉄道ネットワーク上で実現できる余裕時間(警報を受信してからS波が到達するまでの時間)を,中央防災会議で想定される東京湾北部地震(M7.3)を対象に算出し,鉄道事故のリスク軽減による減災効果を検証した.その結果,多くの鉄道利用者の危険率が半分以下となり,さらに鉄道事業者間で警報を共有することにより,S波到達前に警報を受け取れる鉄道利用者が大幅に増加することがわかった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
河田 惠昭 田中 聡 林 春男 亀田 弘行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

まず、時間帯ごとの総数死者数および負傷者数の時間変化については、NHKの生活活動調査結果による在宅率などを用い、かつ阪神・淡路大震災のデータを適用して、6つの原因によるものを推定した。その結果、各原因別に時間帯ごとのピークが見出せたほか、被害者総数としては、午前8時前後に最大のピークがあるほか、昼食時や夕方のラッシュアワー時にも大きくなることが見出され、また、兵庫県南部地震が起こった午前5時46分は決して幸運な時間帯でないことが明らかとなった。ついで、被害極限の方法については、間接被害に大きく分けて経済被害と人的被害があり、後者は人命の社会的価値の喪失として位置付けられることを示し、総被害学の評価方法を提案することができた。まず、経済被害としては、阪神・淡路大震災による兵庫県の電力使用料とGRPとの関係から、およそ2兆円と推定され、現象的には復興がすでに終わっていることを示した。また、人的被害の定量化では、平均寿命とGRPとの相関と交通事故による死者、重傷者、軽傷者への保険金支払いなどのコストの比較を用いて、阪神・淡路大震災を解析したところ、およそ2兆円になり、かつこの瞬間的な影響が18年間継続し、その間の総被害額がおよそ10兆円に達することを見出した。したがって、人的被害を軽減することが総被害額を大きく減らすことにつながるという論理が証明され、被害極限には自主防災組織による人命救助の役割が大きいことを見出した。これらのデータをGISに載せ解析することを可能としたが、これまでの町丁目単位ではなく各家屋単位での計算が可能なように次世代GISを開発することを試み、その構築に成功した。これによって、被害者数などを推定しようとすれば、現状の地震動による地盤のゆれの特性(加速度や速度)の評価がまだまだ改良の余地があることを見出した。
著者
原 拓志
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、高度技術システムにおける安全確保のためのテクノロジーマネジメントのあり方について、理論的研究および経験的研究を実施した。すなわち、一方で、技術社会学および組織論における先行研究の検討から理論的枠組みを導出した。他方で、この理論的枠組みを使って、鉄道および航空サービス・航空管制などにおけるフィールドワークや文献資料に基づいた事例研究を実施した。