著者
黒川 勲
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

交付申請書の「研究の目的・研究計画」に対応した研究実績の概要は以下の通りである。1.ホッブスの物体論とスピノザのコナトゥス論との比較を通して,コナトゥスに関してホッブスがもっぱら位置の移動としての運動の意義を見いだすのに対して,スピノザはものの本質として包括的・有機的に運動を説明する方向性が見いだせる。2.デカルトの物体的世界とスピノザの物体的世界の構成に関する比較を通して,デカルトの物体論は物体の本質を不完全性のもとに位置づける伝統的な把握であるが,スピノザの物体論は延長に無限性・完全性を認める特徴的なものであることが明らかになった。3.スピノザのコナトゥス論の中世哲学との連関の検証については,関連する文献・先行研究の資料収集に努めるとともに,『Suarez Opera Omnia』の物体論・運動論及びヘールボールド『Meletemata philosophica』の著作における「原因性」・「実体性」に関する該当箇所の翻訳を試みた。4.スピノザのコナトゥス論及び物体的世界の構成に基づき,スピノザ哲学の頂点である「最高善」・「第三種の認識」について検証を行った。すなわち,最高善とは「コナトゥスの自覚化」において見いだされるものであり,第三種の認識は人間存在全体の統合的本質である「コナトゥスの認識」に他ならないのことが明らかになった。
著者
黒川 勲
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

交付申請書の「研究の目的・研究計画」に対応した研究実績の概要は以下の通りである。1.ホッブスの物体論とスピノザの物体論との比較,及びコナトゥスの意義の抽出については,ホッブスの物体論の精査と文献・先行研究の資料収集に努め,一方スピノザ哲学の成立史に関係する文献・先行研究を網羅的に収集した。コナトゥスに関してホッブスがもっぱら位置の移動としての運動の意義を見いだすのに対して,スピノザはものの本質として包括的・有機的に運動を説明する方向性が見いだせる。2.デカルトの物体的世界とスピノザの物体的世界の構成に関する比較,及びコナトゥスの位置付けについては,その結果,デカルトの物体論は物体の本質を不完全性のもとに位置づける伝統的な把握であるが,スピノザの物体論は延長に無限性・実体性を認める特徴的なものであることが明らかになった。3.スピノザの物体論の中世哲学との連関の検証については,関連する文献・先行研究の資料収集に努めるとともに,スアレス『Disputationes Metaphysicae』及びヘールボールド『Meletemata philosophica』の著作における「完全性」・「無限性」の該当箇所の翻訳を行った。4.スピノザの物体論の核心は,無限性を中心とする特徴的な神理解にあり,その根幹は実体性であることが明らかになった。
著者
荻野 弘之 大橋 容一郎 田中 裕 渡部 清 勝西 良典 谷口 薫
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

過去4年間の研究を集約して以下のようなまとめを得た。(1)西洋古代哲学の領域では、実践的推論の結論を字際の行為に媒介する「同意」の概念から派生した「意志」に相当する「われわれのうちにあるもの(如意)」(epi hemin)に関して、後期ストア派、特にエビクテトスとマルクス・アウレリウスにおける展開が跡づけられた。これについては07年度末までに、単行本として成果の一端を刊行する予定。(2)アウグスティヌスの内面的倫理思想の分析として、正戦論の祖とされる聖書解釈の検討により、中世盛期スコラ学の自然法思想との相違が明らかになった。これらについては単行本の形ですでに刊行された。(3)同時にこの概念が、仏教的な「如意」の思想として近代日本思想史に接続する状況を跡づけた。その結果、西川哲学を、孤立した(独創的な)日本独自の思想としてのみならず、明治期の西洋哲学の受容史のうちに置き据えることにより、これまで仏教、特に禅との比較でのみ論じられがちであった西田哲学を、キリスト教の受容史の視点から読み直すという新しい視座を獲得しつつある。これについては渡部によって引き続き研究が継続される。西田に関しては新カント派を経由するかたちで大橋によって、また東西の比較霊性史の見地から田中によっても積極的な提題があり、とりわけ「自覚」と「意識」「人格」の概念的な結びつきが改めて問われることになった。清沢満之の新しい全集の刊行もあって、今後はストア倫理学と仏教思想、キリスト教修道思想の微妙な関係を歴史的、構造的に問題にしていく可能性が開かれつつあることは大きな前進といえよう。(4)残された課題も依然として多い。そのうちでも、近年英米圏の哲学において「後悔」「自信(自負)」といった感情の分析が、モラル・サイコロジーの手法によって、また哲学史研究としても隆盛を見せている、こうした研究動向を睨みながら、従来の思想史の読み直しがどういった可能かについては、今後の課題でもある。
著者
長谷川 聖修 衣笠 隆 木塚 朝博 本谷 聡 檜皮 貴子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

研究の目的は、JPクッション・ソフトジム・Gボール・バランスボードなど、動的なバランス運動「遊び」に関するブログラムを開発し、高齢者の動的バランス能力や不安定な環境時の身体動作の改善を目指すことであった。高齢女性26名を対象に6ヶ月間にわたる転倒予防教室を実施した。各種体力測定を実施した結果、動的なバランス能力に改善が認められた。また、アンバランスな状態からの回避動作に改善傾向が示唆された。
著者
鈴木 有 青野 文江 後藤 正美
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.185-192, 1995-11

本論では、1994年12月28日に発生した三陸はるか沖地震地震で主要な被災地となった青森県八戸市を対象に、市の健康福祉部と八戸市域消防本部がまとめた負傷者の資料に基づいて、若干の統計分析を行い、1993年釧路沖地震の場合と比較しながら、人身被害の発生状況と発生原因、建物被害の地域分布との関連等を、特に高齢者の被害に注目しながら考察した。本論での検討結果をまとめると、次のようになる。(1) 本地震は、2年前に発生した釧路沖地震と発震の季節や日時、主要被災地の環境条件が似通っており、人身被害の発生にも共通する傾向が認められた。(2) 女性の被災率が男性を上回ること、災害弱者となる高齢者(特に女性)に負傷の発生率が高いこと、がまず指摘できる。(3) 最近の地震による人身被害の発生過程と同様に、重量のある家具や設備機器の転倒や落下で身体の各部位に挫傷・打撲・捻挫等が、散乱した落下物の割れ物で下肢や手部に切傷が、被震中や直後の対処行動時の転倒・転落・衝突で各部位に打撲・捻挫・骨折等が、そして石油ストーブ上の熱湯による下肢の熱傷が著しかった。釧路沖地震の場合と比べると、熱傷の発生比率が半減し、挫傷系列の占める割合が多いこと、ガス中毒の発生が少なかったことが今回の特徴である。(4) 今回の地震は本震の10日後に強い余震を伴った。両者の震源が異なるため、地動分布に差を生じ、負傷者発生の地域分布も相当に変わったが、余震時の人身被害の発生は本震の体験を経て抑制されたと評価できよう。(5) 高齢者は心因性による内科性や神経性の発症割合が他の年代よりも多く、非常時の精神的ダメージの影響が大きいことが現れている。また外傷性では、骨折・捻挫が多くを占め、特に女性に目立っている。これは高齢に伴う身体全体の老化に加えて、骨粗鬆症など骨の老化が起こりやすい女性の特性を反映していると考えられる。(6) 釧路沖地震の場合も含めて、重傷は骨折・捻挫と熱傷から多く発症している。また年代別では、高齢者に重傷の発生割合が高く、身体機能の低下により、軽傷で防ぎ切れない場合が多いことをうかがわせる。(7) 震度6程度の揺れでは、建物の大きな被害が起こる以前に、生活空間中の多様な存在物が危険物と化し、在室者の対処行動の混乱も加わって、負傷発生の原因となる。寒冷地における熱傷防止には、暖房用火器への作用度の高い対震自動消火装置の装備普及に加えて、湯沸かしや加湿のための容器を直上に置かないこと、本体の転倒抑制を工夫することが必要となる。打撲や挫傷の防止には重い家具の転倒・落下対策が、切傷の防止には割れ物の破損対策が基本で、安全空間の事前確保が肝要である,特に高齢者を含めて弱者への配慮を心がけたい。こうした一連の備えが重度の被害防止に役立つはずである。
著者
舩冨 卓哉 飯山 将晃 角所 考 美濃 導彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1530-1538, 2005-08-01
参考文献数
8
被引用文献数
3

光切断法による人体の三次元形状計測では, 人が完全に静止できないことに起因する計測形状のひずみを軽減するため, 計測の高速化が図られてきた. これに対し, 本研究では, 形状計測中の体の揺れである身体動揺を部位ごとに計測し, これに基づいて計測形状を補正することにより, 計測の高速化をしなくても計測精度を向上させる手法を提案する. 実験により, 光切断法による計測精度が1mm以下であっても, 身体動揺の影響で計測形状の誤差が10程度になること, 提案手法では2mm程度の計測精度を達成できることを示した.
著者
岡田 謙一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

近年,世界的に様々な分野においてデジタルデータの圧縮技術や伝送技術の進歩により,情報のデジタル化が進んでいる.放送業界においてもデジタル化が進展しており,放送の主流はアナログ放送からデジタル放送へと移行しつつある.一方,大学内の情報環境においては数百Mbpsの高速LAN環境やPCの普及などデジタル情報を取得するための通信基盤が整っている.実際に,大学ホームページでの学内行事などさまざまな情報を取得できるだけでなく,Web上での履修申告というのが主流になっている.しかし,大学内放送ではアナログの音声放送のみであり,しかも授業の妨げになるという理由からあまり頻繁に利用されていないのが現状である.そこで,本研究では次世代のデジタル校内放送を想定した情報配信プラットフォームを提案する.この次世代の校内放送では音声放送のみならず,現在の掲示板に貼られている情報,学事課や図書館からの配布情報などさまざまなコンテンツを対象とすることを想定する.また,コンテンツの形式においても静止画のみならず,動画の作成技術の進歩に伴い動画形式のコンテンツも増加することが予測されるため動画も対象とする.このような想定環境において,以下のような特徴を持つ提案を行った.(1)通信の信頼性を確保できるユニキャストの利点、そしてデータ受信者数が増加してもデータ配信のコストがそれほど変化しないため,クライアント数が非常に多い場合に通信品質を落とすことなく情報配信ができるブロードキャストの利点の双方を生かした通信方式,(2)ユーザ全員が放送することができる自由な放送を可能にすること,(3)放送場所,放送対象,放送チャンネル,放送重要度,有効期間という属性を付加することによる柔軟な放送,(4)静止画の再生時間,繰り返し放送間隔を設定し,コンテンツの属性である放送重要度と有効期間から決定される放送スケジュール.
著者
生越 重章 秦 正治 吉田 彰顕 西 正博
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

(1)伝搬損失距離特性市街地(岡山・広島)、郊外地(高松・岡山)、丘陵地(広島・岡山・高松)を自動車で走行しながら、UHFテレビ放送波の受信レベルを測定し、伝搬損失距離特性を求めた。(1)市街地では、平均建物高と送信アンテナ高との関連で見通伝搬の影響が大きく、伝搬損失は、奥村-秦式より10dB程度小さい。伝搬定数は、奥村-秦式の値2.8とほぼ一致する。(2)郊外地では見通伝搬が顕著であり、伝搬損失は奥村-秦式より10dB程度小さい。高松では、変動幅が10〜20dB程度と大きい。伝搬定数は、奥村-秦式の値より大きい。(3)丘陵地では、伝搬損失は奥村-秦式とほぼ一致する。伝搬損失の変動幅は20〜30dB程度と大きい。伝搬定数は、広島では奥村-秦式の値とほぼ一致し、岡山、高松では奥村-秦式の値より大きい。これから、固定送信・固定受信を前提としたUHFテレビ放送帯を用いた通信・放送融合型情報ネットワークの構築においては、上記結果を考慮したシステム設計を行う必要があることを明らかにした。ダイバーシティ受信時にも見通伝搬が顕著であることが示された。具体的な改善効果については今後の検討を待たなければならない。(2)システム関連事項(1)通信放送融合システムの形態下りにテレビ放送、上りに移動通信システムの適用を前提として、セル構成と周波数割当について検討した。overlapped法とsuperimposed法の特性について比較した。(2)サービスエリア評価走行受信を前提としたシステムのサービスエリアを評価した。受信レベル変動幅が大きいことにより、デジタル放送では、従来のアナログ放送エリアの35〜55%に減少する可能性があることを指摘した。(3)情報配信アルゴリズム利用者のアクセス頻度、データサイズ、リンク伝送速度などに基づいて、次のフェーズに配信するデータを適切なリンクに割り振る方法について有効性を明らかにした。
著者
鈴木 治
出版者
鳥羽商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、アナログ放送にかわるデジタル放送を船舶で受信し、船舶でも家庭用の受信装置と市販のアンテナでハイビジョン放送が受信可能であることを確認した。日本のデジタル放送は、十分な電界強度を得られれば、陸上と同じ画質を得られることがわかった。しかし、既存の無指向性アンテナを使用する場合、アナログ放送に比べると、受信可能範囲が狭く、本研究で開発した受信系のシステムが必要となることがわかった。
著者
本城 凡夫 島田 秀昭 大嶋 雄治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、有明海の有機スズ(TBT)等化学物質の汚染、および二枚貝の繁殖に及ぼすTBTの影響について実施した結果、以下の点が明らかとなり、化学物質が貝類の激減に関与していることが示唆された。1)有明海の化学物質汚染:1998年と2001年に有明海で採取した二枚貝のサンプルについてTBT濃度を調べたところ,すべての試料からTBTが検出され,アサリでは1998年が0.062-0.125μg/gおよび2001年が0.008-0.033μg/gであった。さらにタイラギでは2001年採取分が0.009-0.095μg/gであった。本研究よりTBTの使用規制後も,沿岸域においてTBT汚染が続いていることが明らかになった。また、重金属(水銀、銅、カドミウム)については顕著な汚染は認められなかったが、農薬については2003年8月に有明海筑後川河口3地点より海水を採取して,567種農薬の一斉分析を行った結果、3地点から計12種類の農薬が検出され、有明海の生物に影響を与えている可能性が考えられた。2)二枚貝繁殖試験:TBTをアコヤガイおよびアサリの親貝に暴露し、繁殖への影響を調べた結果、アコヤガイでは、生殖腺のTBT濃度が0.088μg/gで次世代の初期発生が阻害され、アサリでは体内TBT濃度が0.099μg/gで卵の発生が20%阻害されることが明らかになった。よって、有明海における貝類激減の原因のひとつとしてTBTの関与が推定された。また、本研究室で単離した付着珪藻(Cylindrotheca closterium)-海産自由生活性線虫(Prochromadorella sp.1)のバイオアッセイ系に対してTBTを暴露した結果、3.26μg/Lの濃度では線虫の成長が若干阻害され、32.6μg/Lで付着珪藻および線虫が斃死した。
著者
塩見 浩人 中村 明弘 田村 豊
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度〜平成16年度の2年間、「ハムスターの冬眠制御機構解明と低温負荷による生体侵襲に対する保護因子の同定」に関する研究を遂行し、以下の成果を得た。1.導入期の体温下降は、adenosineが前視床下部を中心とした内側視床下部のadenosine A1受容体を介し熱産生を抑制することにより惹起されることを明らかにした。Adenosine系による冬眠時の体温制御は体温下降開始27時間から30時間の間にopioid系に切り替わることも明らかにした。2.維持期(体温下降開始30時間以降)の低体温はμ1-opioid受容体を介する中枢opioid系により制御されていることを明らかにした。3.覚醒期の体温上昇はTRHが視索前野、背内側核を中心とした内側視床下部のTRH type-1受容体を介し、交感神経系を活性化することにより褐色脂肪組織における熱産生を亢進させて惹起されることを明らかにした。4.ラット初代培養大脳皮質ニューロンにおいて、低温処置によりアポトーシス様の神経細胞死が誘発されることを明らかにした。5.低温で処置すると冬眠動物のハムスターにおいても神経細胞死が発現した。6.アデノシンはA1、A2両受容体サブタイプを介して低温処置により誘発される神経細胞死に対して保護作用を発現することを明らかにした。7.モルヒネはμ、δ及びκ受容体を介して低温処置により誘発される神経細胞死に対して保護作用を発現することを明らかにした。8.ヒスタミンはH1受容体サブタイプを介して低温処置により誘発される神経細胞死に対して保護作用を発現することを明らかにした。9.セロトニンは低温処置により誘発される神経細胞死に対して保護作用を発現することを明らかにした。
著者
清野 健
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

1.非ガウス型の確率過程の数理生体信号や経済指標などのゆらぎは裾の厚い非ガウス型の確率分布を示し、粗視化スケールの拡大に伴って非常にゆっくりとガウス分布に近づくものがある。本研究では、そのような確率過程を特徴づけるため、発達乱流のモデルであるCastaingの分布関数に用いた解析法を提案した。さらに、非ガウス分布に従うランダムウォークを仮定することでゆらぎに含まれる高次相関を特徴付ける解析法も提案した。これらの方法を心拍変動の解析に応用することにより、健常人心拍変動にみられる確率分布の非ガウス性やスケール不変性といった新たな特徴を見出した。そのようなスケール不変性と強い相関をもったゆらぎは、連続相転移が起きる臨界点においてしばしば観測されていることから、非平衡系における臨界現象と健常人心拍変動の類似性に注目した研究を進めた。2.心拍変動の動的相転移健常人の心拍変動を示す長時間相関やマルチフラクタル性に基づいて、心拍変動と臨界現象の関連性が議論されてきた。また、平常の身体活動の範囲(睡眠時を含む)では、そのような性質はほとんど変化しないことが報告されている。しかし、健常人の心臓循環系の状態が臨界点近傍にあるということに機能的意味があり、適切な生体制御と臨界現象が関連しているならば、身体活動の状態によっては健常人であってもゆらぎのせ異質が変わることが期待される。この点を検証するため、健常人の心拍変動の性質と活動状態の関係について調べた。日常活動中、睡眠中、持久的運動中の3つの状態において測定された心拍変動時系列の解析を行い、長時間相関が睡眠中と持久的運動中には消失することを見出した。また、これまで調べてこなかった非ガウス性や局所分散の相関についても新たな解析法を導入し、その特徴を各条件で比較した。解析の結果、心拍ゆらぎ性質は活動状態依存して変化しており、強く相関したゆらぎは覚醒時の日常活動中にしか現れないことを見出した。
著者
林 農 神近 牧男 若 良二 原 豊 田川 公太朗 河村 哲也 山田 廣也
出版者
鳥取大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
2000

本研究は、世界各地の乾燥地で運転可能な風車と風力発電を開発することを目的として着手した。得られた研究業績の多くは、その取り組みの容易さから、サボニウス風車と直線翼垂直軸風車の数値シミュレーションにまず成果を得た。風車の性能試験は風洞実験施設の設計と建設に時間を必要としたこと、新技術風車もまた設計と試作に時間を必要としたので多くの研究業績を得るまでには至らなかった。この研究期間の内に挙げることができた研究業績は次のように分類することができる。(1)直接研究:サボニウス風車、垂直軸風車の数値シミュレーション、風洞実験など(2)関連研究:(a)沙漠に関する研究(b)風力発電に関する研究:(i)風況精査に関する研究(ii)風車の要素技術に関する研究本研究のために開発した風洞は、風車研究用風洞として世界に稀な特性を有する風洞である。すなわち、動翼ピッチ可変式の軸流送風機により定常風のほかに自然風のように時間とともに風速が変動する風を吹かせられる風洞であり、脈動風、突風、瞬間風の3種類の変動風パターンを発生することができる。この科学研究費補助金は地域連携を推進するための助成金であるので、地域の産学官連携に携わる人達、鳥取大学と共同研究を望む人達、流体力学の分野で活躍する研究者達、風力発電を事業化しようとする自治体の人達など、鳥取大学を訪れる多くの人達に沙漠環境風洞を見学する機会を提供した。さらに、本研究費の趣旨に則って、地域の企業との産学連携を積極的に推進するために多くの共同研究を受け入れ、鳥取県、NEDOや企業などからの委託研究も積極的に受け入れた。さらに、本研究は、最終年・平成14年度に文部科学省の21世紀COEプログラムに採択された鳥取大学「乾燥地科学プログラム」の自然エネルギーグループに研究が引き継がれる幸運が重なることになった。したがって、地域連携推進研究費で設計し試作した新技術風車は、その風車の改良を含めて、乾燥地科学プログラムのなかで、詳細な特性試験と再設計を繰り返して完成品へと導かれることになる。
著者
山澤 一誠 石田 皓之 岡本 崇弘 小田 昌宏 前橋 久美子 浅井 俊弘 牧田 孝嗣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.532, pp.133-144, 2002-12-13

パターン認識・メディア理解(PRMU)研究専門委員会は,平成9年より研究活動の一環として,若手研究者の発掘・育成を目的としたアルゴリズムコンテストを実施している.第1回目のアルゴリズムコンテストではランダムドットステレオから視差画像を求めるコンテストを行った.第6回目の今年はその第1回目のテーマに立ち戻り,さらに多眼というアレンジを加え,多眼ランダムドットステレオをテーマとしてアルゴリズムを募集した.ステレオ画像の枚数に応じて3つのレベルを設定し,ひとつのアルゴリズムによる複数のレベルへの応募も可能とした.募集の結果,18アルゴリズム,のべ34件の募集があり,審査により6アルゴリズムを入賞とした.さらに情報科学技術フォーラム(FIT2002)において審査結果発表と表彰式,入賞者によるアルゴリズムの紹介,第1回アルゴリズムコンテスト最優秀賞受賞者による特別講演を行った.本報告ではそれらの実施報告と入賞者によるアルゴリズムの紹介をする.
著者
木津 祐子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、中国の規範言語とみなされてきた「官話」が、中国とその周縁地域においていかなる位相を呈していたかを、琉球を手がかりに明らかにしようとするものである。研究は以下の点から実施した。(1)明清期の琉球で、誰が「官話」を用いたか、(2)各使用者がどのように「官話」を用いたか、(3)その「官話」位相にどのような特徴が見えるか。基礎となる史料は、沖縄県立博物館、県立図書館、さらに石垣市立八重山博物館などで収集し、次の成果をあげることが出来た。(a)八重山士族の家譜は、官話による記事を多く含む。その多くは、中国人及び琉球人の黄海での漂流を、極めて特徴ある文体で綴ったものであった。その中でも最大の収穫は、中国江蘇省通州の商人姚恆順の陳述書を付す家譜の発見で、乾隆年間の官話学習とその使用を探る大きな手がかりとなった。(b)沖縄県立図書館には、官話で記されたイギリス聖公会の宣教師ベッテルハイムと琉球の通事(中国語通訳)間の書簡が所蔵され、官話や日本語などの語学学習について論じた内容も含まれる。(c)琉球から中国に漂着した難民の呈文(沖縄県立博物館や八重山博物館、また琉球大学の所蔵)には、中国の役人(通事を介す)との訊問の会話記録など、興味深い記事が見られた。これらの「官話」に関する諸史料は、中国東南海域に位置する琉球列島に、「官話」が境界を超えて広く受容され、かつ多様な受容形態を見せていたことを示す。まさに境界を超える「境界性中国語」(vehicle language)として、「官話」は単に規範言語であっただけではなく、口頭また書記の場でも、現実的なコミュニケーションツールであったことが見て取れる。このように、八重山という琉球のさらなる周縁での事例から、「官話」の境界言語としての一側面を明らかにすることができた。