著者
川真田 美和子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.991-991, 1988-09-25

東京女子医科大学学会第275回例会 昭和63年6月9日 東京女子医科大学中央校舎会議室
著者
長谷川 耕二郎 福田 富幸 北島 宣
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告. 農学 (ISSN:03890473)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.15-23, 2003-12-25

雌雄同株のカキ'西村早生','禅寺丸'を供試して2年枝単位に満開前2週間と満開時の結縛処理を行い,結縛処理が雄花と雌花の花芽分化と花芽発育,および花芽数に及ぼす影響,ならびに新しょうの乾物率に及ぼす影響について調査した.結縛処理には1.6mmの被覆線を用い,処理開始後50日後に被覆線を取り除いた.1.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'と'禅寺丸'における雄花と雌花の花芽はそれぞれ5月30日と6月9日に分化し,一方,対照区の雌花の花芽はそれぞれ6月9日と6月22日に分化した.2.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'と'禅寺丸'における雄花と雌花の花芽は6月中旬または下旬までにがく片形成または花弁形成の段階に発達したが,7月初旬以降11月中旬までの花芽の発達は花弁形成以降の段階までは進まず,両結縛処理区と対照区との差違はなくなった.3.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'雌花の花芽数と'禅寺丸'雄花の花芽数は対照区に比べて増加した.4.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'および'禅寺丸'の新しょうの乾物率はそれぞれ5月下旬と6月上旬に急激に増加し,両品種の結縛処理区の乾物率は対照区に比べて,5月上旬から6月中旬まで高くなる傾向がみられた.以上のことより,'西村早生'および'禅寺丸'において,満開前および満開時の2年枝結縛処理が新しょうの乾物率の増加を促進し,両品種の花芽分化を早めるものと考えられた.
著者
山本 博昭 山本 昇
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.467-475, 1985-01-31

本報では, 国内果樹園の地理条件, 栽植密度にできるだけ合致しうる小型で自走式の果実振動収穫機と捕果専用機を設計・試作し, それらの基本的な作動特性を明らかにした。1) 試作したリム・シェーカは, クローラ型走行部, スライダ・クランク機構を利用した振動発生部, 枝をつかむブームとクランプ部, クランプを任意の位置へ移行させる位置決め機構部及びエンジンと動力伝達部から構成され, 走行部以外はすべて油圧駆動とした。したがって, 振動数, 振幅も適宜変更することができ, 枝をにぎるきよう握力も調節が可能である。2) 本機は定格8馬力のエンジンを塔載したが, クランプシリンダ等のアクチュエータ作動に約3馬力の動力が消費され, 枝を加振するのに使用可能な限界動力は5馬力程度となる。また振動する枝の正味仕事量を求め, 油圧駆動系加振部の動力伝達効率を計算すると, その値は40%以下となった。したがって, ゆすられる枝の振動負荷が約2馬力を越すとエンジンの動力不足が生じ, 本試作機の加振可能な限界振動数は, 設定振幅20mmで約17Hz, 28mmで15Hz, 43mmで14Hzとなった。より高い加振振動数, 振幅を確保するためには, さらに高馬力のエンジンを塔載する必要がある。3) 試作したキャッチングフレームは, クローラ型走行台車の上に装着された円形捕果面を有し, 油圧揺動モータの作動により瞬時の開閉が可能となる。捕果面は, 中心から円周方向に18°の登り匂配を持ち, その面積は約7m^2と12.5m^2の2通りに変えることができる。4) 捕果面上の各点に加速度計を埋設した木球を落下させ, 衝突時の最大衝撃加速度, 反発率等を測定した。落下高さ1.2mの場合を例にとると, 捕果面上での最大加速度は10∿40gの範囲に分布し, 全般には捕果面を支持するアーム上に近づくほどその値は大きくなるが, 直接地面に落下させた値(硬い地表面で150g, 柔かい地表面で約100g)に対比すると高い緩衝効果が認められた。
著者
武内 享介 乾 昌樹 森 敏之
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.1443-1449, 1992-11-01
被引用文献数
2

妊娠時のマグネシウム投与のカルシウム代謝に与える影響につき, 切迫早産症例において血清, 尿中ミネラルおよびカルシウム代謝調節ホルモンの動態に着目して検討し, 以下の結果を得た. (1)血清Mg濃度は硫酸マグネシウム投与0.5時間後で著明に増加(1.91±0.06mg/dl→4.6±0.71mg/dl, p<0.01), 以後徐々に低下し2時間後からは3.65〜3.88mg/dlの間を推移した. 尿中Mg排泄量(Mg/Cr ratio)は前値(0.05±0.01)に比べ1時間後には3.18±0.8と明らかに増加した後(p<0.01), 緩徐に低下し最終的には1.97〜2.35の範囲内を推移した. (2)蛋白補正血清Ca濃度は投与前は9.04±0.47mg/dlであったが, 血清Mg濃度の増加に伴つて低下, 投与0.5時間後には8.3±0.27mg/dlとなつた(p<0.01). その後はほぼ一定であったが, 30時間後より徐々に上昇し60時間後には8.52±0.31mg/dlにまで回復した. 尿中Ca排泄量(Ca/Cr ratio)は投与前値(0.06±0.03)に比べ投与0.5時間で1.85±0.16と有意に増加した(p<0.01)が, その後徐々に低下し0.58〜0.92の範囲内を推移した. (3)血清PTH濃度(前値181±76.9pg/ml)は投与1時間後に118±42.2pg/mlへと軽度低下したが, 6時間後には294±121pg/mlへと上昇した(p<0.05). (4)血清1α, 25-(OH)_2 vitamin D_3濃度(前値89.3±44.2pg/ml)は投与24時間後には126±38.7pg/mlと有意に増加した(p<0.05). (5)血清CT濃度には経過中有意な変動を認めなかつた. 以上の知見より, 切迫早産におけるリトドリン治療下では, 硫酸マグネシウム投与は尿中Mg排泄量と尿中Ca排泄量の増加を惹起し, 血清Ca濃度の低下を招来する. その結果, PTH分泌の増加とそれに引き続く1α, 25-(OH)_2 vitamin D_3の産生促進が生じ, 血清Ca濃度は正常化に向かう可能性が示唆された. なお, CTの関与は少ないものと思われた.
著者
米田 稔 中山 亜紀 杉本 実紀 三好 弘一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究ではシリカナノ粒子を対象として、一般環境からのナノ粒子の曝露量評価を行った。シリカナノ粒子の生活環境中大気濃度をロープレッシャーインパクターで捕集し、ICP-AESで測定した。その結果、生活環境空気中シリカナノ粒子濃度として12. 7ng/m3という値を得た。この値をマウスの生体組織中シリカナノ粒子の分布モデルの計算に使用した結果、シリカナノ粒子の内、0. 3pgは肝臓に蓄積することが、また人間に対する分布モデルの計算では肝臓に1200pgのシリカナノ粒子が蓄積することが明らかとなった。
著者
柴野 京子
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
no.73, pp.41-59, 2008-07-31

This study aims to examine the impact of distribution systems on publishing and reading in modern Japan. In analyzing the formation of bookstores from the Meiji through Showa periods, this essay considers the two major spaces within those stores - the bookshelf and the table - within their distinct historical contexts. While the use of bookshelves came from the West and formed an intellectual, and constructed space, traditional Japanese books for commoners were sold on tables placed outdoors to provide easy access to the masses. The modern "bookstore" integrated these two spaces, resulting in the formation of an intermediate class of readers.
著者
長與 進 長縄 光夫 原 暉之 エルマコーワ リュドミーラ ミハイロバ ユリア 澤田 和彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

4年間(平成13-16年)にわたった科学研究費補助金による研究課題「来日ロシア人の歴史と文化をめぐる総合的研究」は、研究代表者1名と研究分担者11名(研究開始時の分担者1名が途中で逝去されたため、平成15年より新たに1名を補充)を中心として遂行された。具体的な研究活動は、このメンバーを中心として組織された「来日ロシア人研究会」を母体として、上記年度内に合計して20回開かれた定例研究会(うち2回は函館と長崎における研究合宿)を軸として進行した。定期的な研究活動をもとにして、平成15年3月に『共同研究 ロシアと日本』第5集を、平成17年3月に『共同研究 ロシアと日本』第6集を刊行することができた(「研究成果報告書」その1とその2として提出)。その1には聞き書き2編、論文14編、資料1編が、その2には聞き書き2編、論文19編が収録されている。両論文集は国内のみならず、国外の関連大学・図書館・研究所などに広く配布された。さらに「来日ロシア人研究会」のニューズレターとして、『異郷』を合計11冊(11-21号)刊行した。具体的成果の積み重ねによって、本研究課題を開始した際の「研究目的」-来日ロシア人の社会活動と文化活動が、わが国の文化・思想・宗教・教育・芸術などの学術分野と、さらに日常生活の次元において、どのような形で残され、継承されているかを検証すること-は、かなりの程度果たされたと考えている。
著者
小川 敦司
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

特定の分子が存在する時にのみ、その濃度に応じてタンパク質が発現する仕組みを2つ作った。1つは原核細胞の翻訳システム中で働くもので、もう1つは真核細胞の翻訳システム中で働くものである。これらの分子応答性タンパク質発現システムは、生体システムを利用しているため、生体内外におけるバイオセンサーとして期待できる。また、簡単な調整によって、ターゲット分子を変換することができるため、汎用性も高い。
著者
塚本 徳子 角田 博子 菊池 真理 負門 克典 佐藤 博子 川上 美奈子 福澤 晶子 岡部 薫 向井 理枝 源新 めぐみ 平松 園枝 斎田 幸久
出版者
Japan Association of Breast Cancer Screening
雑誌
日本乳癌検診学会誌 = Journal of Japan Association of Breast Cancer Screening (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.239-246, 2007-10-30
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

わが国で現在乳癌検診の中心はマンモグラフィで行われているが, 高濃度乳房である閉経前女性に対して超音波検診が注目されている。超音波検診の成績は過去多くの報告があるが, 日本乳腺甲状腺診断会議 (JABTS) によりまとめられた超音波検診の要精査基準に従って精度管理され行われたシステムでの報告はまだない。われわれは技師が検査を行い, 医師がこの要精査基準に従って判定した3年間の検診成績をまとめ, この体制での乳房超音波検診の有用性について検討した。<br>乳房超音波検査延べ受診者は17,089名であり, 約90%が50歳未満であった。判定は, カテゴリー1が8,289名 (48.5%), カテゴリー2が8,183名 (47.9%), カテゴリー3以上の精査対象者が616名 (3.6%) となった。このうち73.4%にあたる452名の追跡が可能であり, 48名 (0.28%) が乳癌と診断された。手術症例46例の中で早期乳癌は37例 (80.5%) あり, そのうちマンモグラフィでは検出できなかったものは16例と43%を占めていた。<br>乳房超音波検診の診断に際し, 乳房超音波診断ガイドラインを診断基準に用いることで, 有所見率の高いと言われている超音波検査でも精査率を上げ過ぎることなく早期乳癌の検出に寄与することができた。
著者
白髭 克彦 広田 亨 須谷 尚史 伊藤 武彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

出芽酵母、分裂酵母を用いた解析により、基本的な染色体情報解析システムのパイプラインは構築され、染色体の基本的な構造、染色体機能の制御、そしてその連携機構についていくつもの新しい発見があった。特に、本研究が契機となりひと染色体構造の解析技術を構築できた意義は大きい。興味深い発見につながったものとして、1)ヒトに於いて、ChIP-chip解析が可能となったこと、および、2)ヒトコヒーシンのChIP-chip解析から明らかとなったコヒーシンの転写に於ける機能の発見、があげられる。当初、本研究を開始した時点では、ヒト染色体でChIP-chip解析を行うことは、ゲノムの5割を超える繰り返し配列がPCRで増幅する際のバイアスとなるため不可能であった。そこで、この増幅法の検討を重ね、DNAをin vitro transcriptionにより、RNAとして直線的に増幅し、リピート配列によるバイアスを抑制することで、ヒト染色体構造もChIP-chip解析可能な系を構築することが出来た。さらに、この技術を用いて、コヒーシンについて、効率の良い染色体免疫沈降が可能な抗体を取得し、ヒト染色体上における局在解析を行った。その結果、染色体分配に必須の役割を持つコヒーシンがヒトではその機能とは独立にインシュレーターとして転写制御に機能していることが明らかとなった。
著者
宮本 耕佑
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.471-477, 1965-06-01

習慣性または切迫流早産に対するVitamin Eの治療効果については, 若干の報告があり, おおくはその有効なことをみとめているが, いまだそのさいの作用機序については明確にされていない. そこでその一端をうかがう目的で, Vitamin Eが生体子宮運動にどのような影響をおよぼすかということを, ウサギについてバルーン法によって実験をおこない, つぎのごとき知見をえた. 1) 非妊成熟ウサギの子宮収縮運動は Vitamin E の投与によって抑制される. とくに投与量の増加や投与日数の延長に比例して, 抑制効果も増強する. 2) Vitamin E により抑制された子宮運動は, Estrogen (Estradiol)の併用によりまもなく回復にむかい, ついには著明な昂進をしめしてくる. すなわち Vitamin E の抑制作用は Estrogen の子宮運動昂進作用を抑制するほど強力なものではない. 3) おなじくはじめから Vitamin E と Estrogen を併用投与すると, Vitamin E の抑制効果はきわめてよわく, 投与期間の延長とともに Estrogen の効果のみが顕著にあらわれてくる. 4) Vitamin E と progesterone の併用投与では, Progesterone 単独投与あるいは Vitamin E 単独投与の場合ととくにかわった所見はなく, 波形上からのみでは両者に相剰作用があるかどうかはあきらかにしえなかった. 5) 下垂体後葉ホルモンに対しては, Vitamin E による子宮運動の抑制度にほぼ平行して感受性が低下し, progesterone の場合と類似の経過をとる. しかし Vitamin E に Estrogen を併用したときは, その投与期間に比例して, 感受性が昂進してくる. 以上のごとく Vitamin E ぱ生体子宮の運動を抑制するもので, あたかも Progesterone 様の作用があることを確認した.
著者
曽川 一幸
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

原発性肝細胞癌診断に用いる腫瘍マーカーは画像診断に及ばなく、新たなマーカーの探索が急務である。探索では原発性肝細胞癌患者術前後血清20組(計40検体)を使用し、血清中のメジャータンパク質12種類を除去し、MB-LAC ConA, MB-LAC LCAを使用し、N型糖タンパク質を抽出後、逆相HPLCで分画した各フラクションを二次元電気泳動で解析した。手術前後血清10組以上で、Desmoplakin、Elongation factor 2、Heat shock protein HSP 90-beta、Lamin-A/C、Involucrin、Serpin B3、Serpin B4、Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、Protein S100-A9は手術前で発現量が高く、特にGrowth/differentiation factor 5の発現量の増加がみられた。検証では健常者血清、慢性肝炎患者血清、肝硬変患者血清及び原発性肝細胞癌患者血清各50検体を使用し、Growth/differentiation factor 5 のELISA kitを用いて解析した。肝硬変患者血清と原発性肝細胞癌患者血清との間で統計学的有意差(p<0.01)が認められた。
著者
田中 延亮 蔵治 光一郎 白木 克繁 鈴木 祐紀 鈴木 雅一 太田 猛彦 鈴木 誠
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.197-240, 2005

東京大学大学院附属千葉演習林の袋山沢試験流域のスギ・ヒノキ壮齢林において,樹冠通過雨量と樹幹流下量の研究をおこなった。その結果,スギ林の一雨降水量(P )と樹冠通過雨量(Tf )の関係はTf = 0.877P –2.443で,またヒノキ林ではTf = 0.825P –2.178で表すことができた。全観測期間の総降水量に対するTf の割合はスギ林で79%,ヒノキ林で74%であった。また,同じ試験地で行われた単木の樹幹流下量の研究成果を考慮して,一雨降水量と上層木の樹幹流下量(Sf )の平均的な関係を推定した結果,スギ林でSf =0.064P –0.447,ヒノキ林ではSf =0.114P –0.798という関係式が得られた。また,Sf の全期間の総降水量に対する割合は,スギ林で5%,ヒノキ林で10%であった。これらのTf とSf の集計の結果,6ヶ月ないしは1年間の降水量に対する樹冠遮断量の割合は,通常,スギ林において17%前後,ヒノキ林において16-18%前後であった。本報で得られたTf やSf の値や回帰式の係数は,スギ・ヒノキ林や他の針葉樹で得られている既往の報告値と比較され,スギ・ヒノキ壮齢林におけるTf やSf の特徴を整理することができた。また,スギ・ヒノキ両林分の下層木の樹幹流下量や調べたが,それらは降水量の1%未満であることがわかった。これらは従来の研究結果と比較され,滋賀県のヒノキ・アカマツ混交林やボルネオの低地熱帯林の下層木の樹幹流下量の特性と比較された。さらに,下層木による樹冠遮断量の算定を試みたが,これらの降水量に対する割合は多く見積もっても,スギ林で0.3%程度,ヒノキ林で1.2%程度の微小な量であり,本報の観測システムで正確に検知できていたかどうかについて再検討する必要性が示された。いずれにせよ,本報の観測対象としたスギ・ヒノキ壮齢林の樹冠における降水の配分過程に対する下層木の影響は,非常に小さいことが確認された。
著者
蔵治 光一郎 田中 延亮
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.18-28, 2003-02-16
参考文献数
100
被引用文献数
2

日林誌85:18〜28,2003 これまで世界の熱帯林で行われてきた樹冠遮断量の観測事例を調査した。30の国と地域で73地点,106の観測事例を集め,その中から比較的精度のよい事例を抽出し,樹冠遮断率や樹冠遮断量の気候タイプ,植生タイプ,標高との関係,および蒸発散量と樹冠遮断量の関係について考察した。樹冠遮断率は,気候区分,植生区分,標高にかかわらず,おおむね10〜20%の範囲に入っていた。一方,観測精度に十分な注意が払われているにもかかわらず,この範囲から大きく外れ,非常に大きい樹冠遮断率が観測される事例や,非常に小さい樹冠遮新率が観測される事例が存在することがわかった。
著者
吉村 武彦 杉原 重夫 加藤 友康 川尻 秋生 柴田 博子 市 大樹 加藤 友康 川尻 秋生 柴田 博子 市 大樹
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

墨書土器に関する研究文献データベースは、総計が1,866件になった(継続中)。墨書土器データベースは、全国簡易版(釈文・遺跡名・所在地・出典データ)が108,744点、詳細版は四国4県、鹿児島を除く九州6県と、北陸の富山、東海の静岡、および飛鳥・藤原・平城宮出土の墨書土器を公開した。この成果により、関東以西の墨書土器の全国的比較研究と都城との比較が可能になった。地域研究は、千葉県市川市を対象に進めている。
著者
廣瀬 憲雄
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度の研究目標は、特に隋代から宋代にかけて東アジア諸勢力間の外交関係として散見される「擬制親族関係」に注目して、東アジア地域の外交関係を検討することに加え、特別研究員としての研究成果全体をもとに、外交を通じた東アジア地域の連関を明らかにして、日本史を中心にした各国・各地域の歴史を、「東アジア」という地域の中に改めて位置付け直すことである。まず前者に関しては、以前に行った隋・唐代、および日本-渤海間の擬制親族関係についての予備的な検討をもとにして、時期を宋代にまで広げ、対象も中国王朝と西方・北方の諸勢力間や、日本-渤海間以外にも広げて擬制親族関係の事例を集積して、東アジア地域における実際の外交関係の全体像を明らかにした。その結果、従来説かれてきた日本・中国・朝鮮を中心とする、いわゆる「東アジア世界」に関しても、より広く中国の北方・西方を加えた「東部ユーラシア」という視点や、より狭く日本と朝鮮の類似性に注目するなど、複数の枠組を利用することで、より多様な理解が可能であることを提示した。また後者に関しては、宋代の外交文書・外交儀礼についての新たな研究を土台として、来る5月に歴史学研究会日本古代史部会において、「倭国・日本史と東部ユーラシア-6~13世紀における政治的連関再考-」と題する大会報告を行う機会を与えられた。当該報告では、従来「東アジア」という地域設定のもとに、西嶋定生・石母田正両氏の枠組で説明されてきた、7・8世紀を中心とする「東アジアの中の日本(史)」に対して、「東部ユーラシア」という新たな地域設定と、宋代を加えた新たな時期設定から再検討を加えていく。さらにこの作業を通じて、日本史も含めた広域の地域世界像についても言及していく予定である。最後に、今年度は中華人民共和国・北京大学中国古代史研究中心主催の国際シンポジウムに招かれ、本研究全体を通じた重要な検討課題である、日本-渤海関係の報告を行ったことを付記しておきたい。