著者
川辺 良平 河野 孝太郎 北村 良実 鷹野 敏明 井田 茂 中村 良介 阪本 成一 石黒 正人
出版者
国立天文台
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1999

星と惑星系の形成の問題は、現代天文学の重要課題である。ミリ波干渉計による観測の進展で、太陽系外の惑星系の形成現場を直接観測が可能となった。これにより、観測と理論との直接比較から、惑星系形成論の構築が可能になった。一方、太陽系外の惑星系が発見され、その惑星系の多様性が明らかになってきた。これにより、太陽系が普遍的な存在なのか、その多様性をコントロールする物理は何かなど新たな問題が提起されている。ここでは、新たにサブミリ波の領域で、サブミリ波の特徴を生かし、星形成に伴う原始惑星系円盤の形成や、その構造(円盤の初期条件)を干渉計観測で詳細にしらべ、惑星系形成のシナリオを構築することを目指した。また、観測的研究で、円盤の形成・進化、巨大惑星の形成に制限を与えるガス成分の消失時期、固体惑星の形成の形成に制限を与えるダスト成分の消失時期を抑え、理論と比較することにより惑星系形成のシナリオ構築を目指した。また、惑星系の多様性を説明する独自のパラダイムを提案し、観測との比較を行うことや理論的な実証を行った。既存の野辺山ミリ波干渉計を用いてサブミリ波干渉計を目指し、干渉計実験に成功した。本格観測までは実現できなかったが、南半球領域で世界初の10mサブミリ波望遠鏡の実現へと結びついた。一方、波長1300ミクロン等での牡牛座の天体の干渉計観測により、原始星としては初めてガス円盤が存在する証拠を捕らえ、また円盤の進化する様子、降着円盤としての膨張を捕らえることに成功するなど、円盤の形成・進化の様子を世界で初めて捕らえた。また、惑星系円盤(初期条件)の多様性を観測的に捕らえた。理論的には、独自のパラダイムの理論シミュレーションによる実証ができた。また観測的に発見された系外惑星系が、このパラダイムで説明可能であることを明らかにすることができた。ダストとガスの消失時期について、理論的には推定できた。ガスの消失時間を、観測的には抑えるために、チリに設置した10mサブミリ波望遠鏡による観測を今後実行する予定である。これらにより、惑星系形成論の構築に大きく前進した。
著者
小澤 桂子
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

まず、約1年以内に初回の退院をした血液疾患患者を対象に、退院指導についての質問紙調査を行った。退院後の生活等についての説明は、医師から、退院前3〜7日前に、病室で、時間を特にとって、一人で、言葉だけで、どんなことに注意しなければならないかについて説明を受けたと回答した者が最も多かった。それで良かったとの回答が多かったが、面談室で、家族と共に、パンフレットなど紙に書いたものを使って、を希望する意見が多くみられた。P<0.05で正の相関が見れたのは、生活上困ったことの解決の程度と説明が役だったか(相関係数0.737)であった。次に、(1)化学療法とはどのような治療方法であるのかを理解できる、(2)化学療法と自分の疾患の関係を理解し、納得して化学療法を受けることができる、(3)化学療法により起こりうる副作用、自分自身や生活への影響を知り、それらを最小限にするよう、対処方法を獲得できる、(4)得られた知識及び自分の入院中の体験の評価をもとに、退院後に起こる副作用や、自分自身や生活への影響を知り、起こりうる問題に対して効果的な対処方法を検討し、実施することができる、(5)継続した化学療法を行うことを受容できる、(6)自分自身が治療の主体として、疾患や治療とうまくつきあっていこうという意志・意欲を持つことができる、の6つを目標に、退院指導のための看護プログラム及び、パンフレットを作成した。6名の血液疾患患者(男性2名女性4名、平均年齢52.0歳)にプログラムを施行し、退院後1カ月後に質問紙により、プログラム、パンフレットともによくわかり、効果があったとの意見を得た。しかし、副作用などによる生活の困難は依然出現し、退院後の生活を困難にする大きな要因になっているため、この点を改善する方法を検討し、プログラムに取り入れる必要が示唆された。
著者
中西 洋喜 加藤 治久 渡辺 敏暢 石上 玄也 西牧 洋一 丸木 武志 吉田 和哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.654, pp.45-51, 2002-02-15

流星は,彗星を起源とする塵が大気圏に突入して発光する現象であり,この塵には生命の起源となった有機物が含まれている可能性が示唆されている.本論文では,しし座流星群をはじめとする様々な流星群を,大気圏外から観測を行い,イメージおよび分光データを取得する小型衛星,LEOLEO(Leonid-Meteor Observer in Low Earth Orbit)-IIを提案する.本衛星には,I.I. CCDカメラ及び分光器が搭載される.これにより地上からでは大気の影響で観測が極めて困難であった,流星の紫外線領域での分光観測が可能となり,これまで得ることができなかった貴重なデータを得ることが期待できる.
著者
宮嶋 俊一
出版者
東京大学文学部宗教学研究室
雑誌
東京大学宗教学年報 (ISSN:2896400)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.45-59, 1998-03-31

In den 20er Jahren wurde in Europa eine Debatte um den indischen Evangelisten Sadhu Sundar Singh, der damals wegen seiner ,,angeblichen" Wundererlebnisse und Missionsreise nach Tibet in Lebensbeschreibungen bekannt war, ausgetragen. Dieser sogenannte ,,Sadhustreit" wurde hauptsachlich von dem Sadhu verteidigenden Marburger Religionswissenschaftler Friedrich Heiler und dem ihm widersprechenden Pastor und Religionspsychologen Oskar Pfister gefuhrt. Heiler behauptete in seinem Buch ,,Sadhu Sundar Singh: Apostel des Ostens und Westens (1923)", in dem die vorhandenen Beschreibungen von Sadhus Leben zusammengefaBt, 〟religib'ses Leben" und 〟Vorstellungswelt" Sadhus dargestellt und seine Bedeutung fur Indien und das abendlandische Christentum eingeschatzt wurde, daB Sadhu die religiose ,,Wahrheit" sei und seine 〟wunderbaren" Ereignisse historische Wirklichkeit seien. Dagegen pruft Pfister die einzelnen Ereignisse in ,,Die Legende Sundar Singhs (1926)" nach, um historische , Wahrheit" zu suchen, und kam zu dem SchluB, daB alle solchen Ereignisse Legenden, d.h. die Ubertreibungen oder Erfindungen Sadhus seien. Auf Grund dieser historischen fuhrte er psychologische Untersuchungen durch, und stellte fest, daB Sadhu, der zwischen Phantasie und Wirklichkeit nicht unterscheiden konnte, ein Neurotiker sei. Am problematischsten an Heilers Zugang ist, daB er von Anfang an die religiose 〟Wahrheit" Sadhus anerkannte und seine Behauptungen auf Grund dieses 〟Glaubens" aufstellte. Das Wahrheitsproblem, ob Sadhu 〟Apostel oder Betruger (1925)" sei, ist keine religionswissenschaftliche Fragestellung. Die historischkritische Methode Pfisters schien sich nicht unmittelbar auf ein solches religioses 〟Wahrheitsproblem" zu beziehen. Weil er aber auch 〟Wahrheit", d.h. historische , Wahrheit" suchte, wurde die Debatte um die, Wahrheit" gefuhrt. Darilber hinaus war die psychologische Untersuchung und ,,Diagnose" Pfisters nicht religionswissenschaftlich, so daB er die religiose Bedeutung Sadhus nicht klar machen konnte. In diesem Punkt war Heilers Forschunghaltung, daB 〟eligiose Leben" und 〟Vorstellungswelt" im Kontext der indischen Religionen zu untersuchen zu versuchen, religionswissenschaftlich, obwohl er an Sadhus Schriften ausschlieBlich seine eigene Religiositat ablas. Meiner Ansicht nach kann man sich einerseits einem historischen 〟Sachverhalt" durch Materialbearbeitung nahern, obwohl man die historische 〟Wahrheit" nicht erreichen kann. Was von Sadhu untersucht werden sollte, sind erstens solche hypothetischen 〟Sachverhalte". Anderseits sollte die Bedeutung Sadhus nicht im Kontext der personlichen Religiositat, sondern der religiosen Gemeinschaft betrachtet werden. Obwohl sich Sadhu relativ unabhangig von christlichen Gemeinschaften betatigte, kann man z.B. die Entstehung seiner Religiositat historisch im damaligen indischen religiosen Kontext untersuchen und seine Bedeutung innerhalb seiner Anhangerschaft erlautern, zu der auch Heiler gehorte(!). Eine Schwierigkeit ist die Entstehung eines Risses zwischen dem historischen 〟Sachverhalt", den Pfister beim Sadhustreit - mit dem Ausdruck der 〟historischen Wahrheit" - erreichen wollte, und der religiosen 〟Wahrheit", an die Heiler glaubte. Diesen Ris zuzuschutten zu versuchen, konnte zu einer Aufgabe der Religionswissenschaft werden.
著者
横浜 康継 蔵本 武照
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

イセエビ(Panulirus japonicus)とウミザリガニ(Homarus americanus)を用い、それぞれ、個体の酸素消費(呼吸=代謝)速度を差働式検容計と酸素電極法とを併用して観測し、代謝速度と温度との関係を調べた。その結果、ともに、体温の低下に抗して代謝速度が維持あるいは促進される温度域があり、ウミザリガニでは5-13℃であるのに対し、イセエビでは13-20℃であることが明らかとなった。イセエビは15℃以上の暖流域に棲み、ウミザリガニは15℃以下の寒流域に棲んでいる。それ故、この棲息地の環境温度が代謝促進のある温度域と関連しているものと考えられた。囲心腔ホルモンの1成分のセロトニンにより、心筋や腹部緊張筋の酸素消費速度が大きく増大した。それ故、セロトニンが囲心腔器官などから分泌されて、体内に存在していれば、少なくとも筋組織は、体温低下に抗して代謝速度を維持または促進しうることが示唆された。一方、他の囲心腔ホルモン成分のオクトパミンやプロクトリンは筋膜の興奮度を高めた。温度低下に伴い、筋の興奮-収縮連関の効率が落ち、収縮の強度は減少するが、オクトパミンやプロクトリンが存在すれば、膜の興奮度がより高まる結果、興奮-収縮連関の効率の低下が補正されることになる。従って、体温低下に伴う筋収縮度の低下は、囲心腔器官からオクトパミンやプロクトリンが分泌されることにより、防げると考えられた。蔵本らは、イセエビで、5度程度の体温低下に伴い囲心腔器官からセロトニンやオクトパミンが分泌されることを実証している(Biol.Bull.,86,319-327,1994)。かくして、エビ生体内においては、環境温度の低下に伴う体温の低下で、筋の代謝速度が下がらないだけでなく、筋の収縮力も落ちないことが解明できた。低温の酸欠下で、10数分間に渡り心拍が維持される現象が見つかった。この酸欠状態での代謝調節機構は不明で、今後の研究課題である。しかし、面白いことに、イセエビは、腹部の屈伸運動による特異な後方遊泳により、15分で3km位は移動できるので、低温の酸欠水塊に遭遇しても、この悪環境から逃避しうることが示唆された。
著者
藤田 統 加藤 宏 牧野 順四郎 岩崎 庸男
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

行動の個体差の原因と形成過程を知るために、我々の研究室で選択交配により作り上げた情動反応性に関する近交系ラット2系統(Tsukuba情動系ラット)および活動性に関する近交系マウス2系統等を用いて、様々な行動遺伝学的、生理生化学的研究を行った。また、Tsukuba情動系ラットを野外フィールドにおいて自然繁殖させ、生態学的研究を行った。1.Tsukuba情動系ラット(THE系とTLE系)のP_1、P_2、F_1、F_2、B_1、B_2を用いてランウェイ・テストの諸測度について古典的遺伝分析を行い、それぞれの遺伝構築を検討したところ、例えば、選択指標である通過区画数には、♀では優勢効果のない中間遺伝が、♂では高情動側への指向優勢が見いだされた。また、各測度間の遺伝相関、諸測度の遺伝率、遺伝子座の推定値を求めたところ、遺伝子座の最小推定値は♀で2〜4、♂で2〜3であった。2.Tsukuba情動系ラットの脳内生化学物質を定量したところ、例えば視床下部のAD濃度がTLEの方がTHEより高いなど、両系の脳内モノアミンおよび代謝産物濃度に様々の生化学的差異が見いだされた。3.Tsukuba情動系ラットのシェルター付きオープンフィールド・両端部屋付き直線走路・I迷路における諸行動、ホーディング行動、穴掘り行動、攻撃行動等が研究され、両系の行動上の差異が比較・検討された。4.Tsukuba情動系ラットの味覚嫌悪学習が、その習得、把持、消去、外部刺激の効果に関して研究された。消去において系統差が見られた。5.ランウェイ、オープンフィールド、I迷路におけるラットとマウスの諸行動を主成分分折して、主因子を抽出した。6.野外フィールドでのTsukuba情動系ラットの性行動、社会行動、日周リズム等が研究され、個体数の推移も分析された。また、野外フィールド育ちによる行動変容についても研究された。
著者
福林 徹 宇川 康二 新津 守 阿武 泉
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

2種類の前十字靱帯再建例に対してその筋萎縮とリハビリテーションによる回復過程をMRIを用いて検討した。1.腸脛靱帯を用いて関節内外2重再建を行い術後1年を経たスポーツ選手10名の検査結果では健側と比較して大腿四頭筋の体積は平均97%、大腿屈筋の体積は102%と膝伸筋に萎縮が見られた。大腿四頭筋の中でも内側広筋は健側の92%と最も萎縮が強く以下中間広筋、外側広筋、大腿直筋の順であった。また靱帯再建のため腸脛靱帯を採取したことにより大腿四頭筋全体に外旋傾向が見られた。外旋は外側広筋に一番強くまた末梢に行くほど増加し、平均として健側に比較し40%程度増加していた。CYBEXによる筋力測定では60deg/sec、180deg/secとも10〜15%程膝伸展筋筋力は健側より劣っていたが、屈筋筋力に差はなかった。MRIにより等尺性筋収縮時と筋弛緩時を比較すると筋収縮時は大腿四頭筋の外旋傾向は減少していた。2.半腱様筋腱と薄筋腱を用いて前十字靱帯の再建を行い1年以上経た33例では、大腿の外旋傾向は見られなかったものの、やはり内側広筋や中間広筋を中心として5〜9%程度の筋萎縮があった。靱帯再建のため採取した薄筋と半腱様筋はまだ正常な筋力ボリュームの60%と71%を維持しておりTagging Snapshotにて筋肉収縮が確認された。半膜様筋と大腿二頭筋のわずかな肥大が半数に観察された。薄筋腱と半腱様筋腱の再生は見られなかった。大腿筋群のこれらの形態変化は、膝関節伸展と屈曲のピークトルクと軽度の相関があった。
著者
萬場 光一 牧田 登之 利部 聡
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

ファブリチウス嚢組織学的所見と電子顕微鏡および免疫組織学的リンパ球の同定1.ファブリチウス嚢の組織は基本的に、最内層の上皮、粘膜固有層と粘膜下組織、その中に特異的に発達したリンパ濾胞および被膜より構成されていた。2.孵化当日の濾胞のサイズを計測すると、濾胞の大きさは小型で約100μm、特に皮質の発達は悪かった。2〜3週令では濾胞は更に大きくなり、約220μmであり、皮質の発達は良好なところと不良なところがあった。6週令では、濾胞は4、および5週令のものより大型化し、約500μmとなり、皮質は発達し、髄質との間にある基底膜の波状化が認められた。7週令では、濾胞は最大に達し、約700μ以上のものも認められた。また皮質の発達も良好であった。9週令では、濾胞の大きさは減少するものも認められ、約400μmに減少したが、皮質にはまだ衰退は認められなかった。11〜12週令になると、濾胞の大きさは約150〜400μmのものが混在し、皮質にも一部菲薄化が見れた。14週令では濾胞の大きさは約300μmで、大小のものが見られ、皮質も菲薄化したものが多くなっていた。以上の結果より、1.濾胞サイズの検討は、ウズラの成長とリンパ濾胞の発達・消退が極めて密接な関係にあることを、このウズラで初めて見い出すことが出来た。2.免疫組織学的リンパ球の同定ではTリンパ球よりもBリンパ球の存在が多数う認められた。しかし、どちらにも分類されないものも観察された。これらの同定については今後の課題であろう。4.透過型電子顕微鏡によるリンパ球の分類を行ったところ、濾胞皮質には中リンパ球が見られ、有糸分裂も多数認められた。髄質には大、小のリンパ球が認められ、ヘマトキシリン好性の顆粒を持つ、所謂顆粒状物質含有細胞も認められた。5.また、走査電顕でも細胞表面の突起の有無により細胞の同定が可能になった。
著者
徳永 文稔 小出 武比古
出版者
姫路工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

我々は、抗血栓薬ワルファリン投与時に生合成されたビタミンK依存性凝固因子は、分泌されず細胞内で分解されることを示したが、これは薬物誘導による小胞体分解の唯一の例である。本研究ではこのモデル系を用い、平成8年度には、ワルファリン下の細胞内プロテインCは、GRP94、GRP78(BiP)、カルレティキュリンなどの小胞体内シャペロンと会合していることをDSP架橋を用いて明らかにした。また、ワルファリン下プロテインCの細胞内分解は、ラクタシスチンやZ-Leu-Leu-Leu-Hなどのプロテアソーム阻害剤により阻止されつことから、最終的に小胞体内から細胞質へ逆行輸送され、プロテアソームにより分解される可能性が示された。平成9年度においては、ビタミンK依存性因子においてワルファリン投与時に速やかに分解されるプロテインCと比較的緩やかに減少するプロトロンビンをモデルに、γ-カルボキシル化と小胞体分解の感受性を調べた。内在的にこれら因子を産生するHepG2細胞では、ワルファリン下のプロテインCはほとんど分泌されず顕著な細胞内分解を受けたが、プロトロンビンはワルファリン下でも約50%が分泌した。そこで、プロトロンビンのGlaドメインをプロテインCのものと置換したキメラ(GDll/PC)とプロトロンビンのプレプロ配列からGlaドメインまでをプロテインCのそれと置換したキメラ(PPGDll/PC)を作製し、BHK細胞を用いてワルファリン感受性を調べた。その結果、意外なことに両キメラはビタミンK下でγ-カルボキシル化は正常であるにも拘わらず分泌せず細胞内分解を受けた。以上の結果は、Glaドメインとその周辺領域との相互作用も小胞体分解の要因であることを示している。
著者
桜井 裕邦 今井 桂子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.26, pp.47-52, 1999-03-15
参考文献数
9

本稿では3次元における凸多面体の表面に沿った近似最短経路問題に対し,HershbergerとSuriの2倍近似アルゴリズム[5]を計算機実験にて評価をおこなう.ChenとHanはO(n^2)時間で正確な距離を見つけるアルゴリズム[3]を示した.また,近似最短経路問題においては,単純なO(n)時間での近似アルゴリズムが[5]にて提案され,そのアルゴリズムは最適な距離の高々2倍の距離を与える.本稿ではこれらのアルゴリズムを実装し,理論値と実際の性能との比較をおこなう.In this paper, we consider the shortest path problem between two points on the surface of a convex polytope in three dimensions. Chen and Han presented an algorithm for determining the exact shortest path in O(n^2) time. For the approximate shortest path problem, a simple O(n) approximation algorithm are proposed in [5], and the algorithm produces a path of length at most 2 times the optimal. We implement these alogorithms and compare their theoretical and practical performances.
著者
田中 聡 大場 達生
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.57, pp.157-164, 1998-07-08

データウェアハウスについては、昨今、数々の議論がなされてきた。しかしながら、OLAP(OnLine Analytical Processing)という観点では、意外と少ないと感じている。これは、OLAPがデータウェアハウスでありながら、このなかでの位置づけが明確になっていないせいだと考える。本稿ではOLAPのデータウェアハウスでの位置づけを延べ、ここで必要とされる機能と、OLAPとして構築する集計データマートと検索用として構築する生データマートとの違い、およびそれらの連携とHybrid OLAPについて、ドリルスルーという技法を中心に述べる。Recently Data Warehousing has become a pop ular topic to be discussed by people from various fields. However, only a few people talk about a term OLAP (On-Line Analytical Processing), because OLAP has not been recognized as a part of Data Warehousing solutions among these people. In this paper I will define what is OLAP as a Data Warehousing solution and introduce the functions necessary for building OLAP and the difference between the Aggregate Data-mart built for OLAP and the Raw Data-mart built as referential data. Also, I will cover how these two types of Data-mart are related with each other and what is Hybrid OLAP as describing a OLAP method, i.e., Drill-Through
著者
岡田 恭明
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

都市部の幹線道路の両側には中高層ビルが建ち並び, それに加えて高架道路が併設されている場合も見受けられる。このような沿道での音環境は, 建物壁面や高架裏面からの反射音の影響によって悪化することは良く知られている。そこで, 本研究では高架・平面道路併設部を対象に建物壁面と高架裏面からの反射音による騒音の増加量を計算するモデルについて検討を行った。その結果, 道路周辺の騒音レベルは, 建物や高架道路からの反射音の影響により8dB程度増加すること, またその計算結果は室内模型実験と比較して妥当な値であることを明らかにした。
著者
森下 恵造 杉浦 英雄 河村 裕一
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

サブバンド間遷移光吸収が観測できる多重量子井戸を作製するためには表面平坦性、界面急峻性の良い薄膜作製法の確立が重要である。このためには原料ガス(アンモニア、トリメチルガリウム)を基板と水平に、熱対流を押さえ、原料を基板に押圧するためのガス(水素、窒素)を基板と垂直に導入する常圧ツーフロー型有機金属気成長法が最適と考えた。この方法を用いて高品質なGaNを作製することに成功した。この方法で最も大きな影響を及ぼすのは押圧ガス菅と基板の角度である。押圧ガス管の軸と基盤の角度はほぼ垂直であるが、押圧ガスが約1℃原料ガスの方向を向くように設定しなければならない。最適角度に設定すると横方向成長速度の大きい、大きく綺麗な六角錘や六角柱が積層した連続膜になる。しかし最適角度から0.05度ずれると六角錘が欠けた状態になり、0.3度ずれると連続膜とならず島状成長となり、0.7度もずれるとGaNは全く成長しなくなる。上記の結果は原料流速が45cm/s、押圧ガス流速20cm/sの場合である。最適角度は原料流速に依存し、流速が大きくなるほどより傾けなければならない。原料ノズルは基板と平行がよい。下向きになると基板中央では良い膜ができるが、下流側では成長しなくなる。上記の最適角度は原料ガスの基板上での滞在時間を大きくし、アンモニアの分解効率を高め、反応性窒素を効率よく基板に供給する配置となっている。加圧ツーフロー型有機金属気相成長法を用いて、今後短波長サブバンド間遷移発光の研究を続けていく予定である。
著者
本多 昇 岡崎 光良
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.37, pp.17-26, 1971-03

1.高地温が光合成におよぼす抑制的効果について研究するために,1966年にコイトトロンに入れた鉢植えのブドウの地温を,流水によって冷却することより,たとえば気温は35℃にかかわらず地温を約28℃とした. さらに,第1日目には25℃区と40℃(鉢冷)区として処理した両ポットを翌日は25℃のコイトトロンに入れ高温が光合成におよぼす後作用について評定した. 2.Campbell Earlyの25℃:30℃:35℃(鉢冷)区の光合成能は533.8mg/㎡/h(100):209.7(39):367.1(70)であり,Muscat of Alexandriaについては同じ順序で,それぞれ497.8mg/㎡/h(100):202.8(40):312.2(65)であった. 3.Campbell Earlyの初日の25℃:40℃(鉢冷)区の光合成能比数は100:32であり,翌日の同順序の光合成能比数は100:75であるから高温の後作用が判然した. Campbell Earlyと同様に処理したMuscat of Alexandriaについては,初日の光合成能比数が上述の順序で100:14であるが,翌日は25℃区の光合成能が,Campbell Earlyの場合を考慮すると,期待に反して低かったために100:143となった. 4.高温の光合成に対する抑制作用を緩和するために,試験の前週にアスコルビン酸1,000ppm,アデニン20ppm,ビタミンB12100ppmの混合水溶液を4回散布したところ,この期待はCampbell EarlyならびにGros Colmanについてかなり満足された. (第3表) 5.ガラス室のMuscat on Alexandriaの地植えされたもの(90×180×45cm)では,対照区と散布区で,晴天で極めて暑い3日間の平均では,光合成能比数が100:324であったが,曇ったかなり暑いある1日には同様の比数が100:109であった. 前述の混合水溶液(Vitamin B12を除く)を土壌施与することは散布法よりも効果が劣るようである。
著者
戸倉 和 比田井 洋史 平田 敦
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

レーザ光を水存在下で固体に照射すると固体表面で加熱されるばかりか,高温の水との反応や水が分解されて生じるラジカルと気体との反応が期待できる.本研究ではこのような反応を期待し,立方晶窒化ホウ素(cBN)の水熱加工を行なおうとするものである.そこで脱気した超純水,メタン,水素,酸素を溶存させ水,これにエキシマレーザ光(193nm),アルゴンイオンレーザ光,YAGレーザ光を照射して,ポリクロメータで活性種の発生状態を測定するとともに,写真により発光を観察した.その結果,水の構成元素ラジカルの生成を確認するとともに,メタンを溶存させた水では水面に膜が生成されることを見いだした.この膜の性質を調査し,粒径20nm程度の超微粒子から構成される網目構造の炭素膜であることがわかった.このことは炭素系超微粒子合成の道を開くものとして期待できる.これと平行して,大粒の単結晶cBNおよび窒化ケイ素に水中でエキシマレーザ光および可視光のアルゴンイオンレーザ光を照射した.窒化ケイ素では試料から離してエキシマレーザ光を照射しても表面にエッチング模様が現れた.これは上で述べた水の活性種によるものと考えられる.また,cBNにアルゴンイオンレーザを照射すると,アンモニアの発生が確認できるとともに,空気中での照射による形態とは異なる表面が得られた.これは高温で水との反応による化学作用と理解でき,水熱加工への展望が開けたものと理解できる.これら水雰囲気での一連の照射実験では飽和水蒸気中でのレーザ光照射も行った.エキシマレーザを飽和水蒸気圧下で照射した場合,照射容器であるアクリルが瞬時に曇ってしまった.これは生成された活性種によるアクリルとの化学反応が生じたものであり,レーザクリーニングへの知見を与えるものである.