著者
星野 一正 木村 利人 唄 孝一 中谷 瑾子 青木 清 藤井 正雄 南 裕子 桑木 務 江見 康一
出版者
京都女子大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

文部省科学研究総合A研究班として『患者中心の医療をめぐる学際的研究』というテーマのもとに、平成3年度からの3ヵ年間、専門を異にしながらもバイオエシックス(bioethics)の観点から研究をしている十名の共同研究者と共に研究を進めてきた。単に医学・医療の面からの研究では解明されえない人にとって重要な問題について、宗教学、哲学、倫理学、法律学、医療経済学、生物科学の専門家に、医学、医療、看護などの医療関係者も加わった研究班員一同が集まって、異なる立場から議論をし、さらに既に発表されている文献資料の内容を分析検討し、現在の日本社会に適した生命倫理観を模索しつつ共同研究を積み重ねてきた。第一年度には、主に「人の死をめぐる諸問題」を、第二年度には、主に「人の生をめぐる諸問題」に焦点を合わせて研究をし、第三年度には、前年度から進行中の研究を総括的に見直し、必要な追加研究課題を絞って研究を纏めると共に、生と死の両面からの研究課題についても研究を行った。最近、わが国において議論の多い次のようなテーマ:臓器移植、脳死、植物状態,末期医療、がんの告知、自然死、尊厳死、安楽死、根治療法が未だにないエイズ、ホスピス・ビハ-ラ、体外受精・胚移植、凍結受精卵による体外受精、顕微授精、男女の生み分け、遺伝子診断を含む出生前診断・遺伝子治療、人工妊娠中絶などすべて検討された。各年度ごとに上智大学7号館の特別会議室で開催してきた当研究班の公開討論会の第3回目は、平成6年1月23日に開催され、「研究班の研究経過報告」に次いで「医療経済の立場から」「法学の立場から」「生命科学の立場から」「遺伝をめぐるバイオエシックス」「生命維持治療の放棄をめぐる自己決定とその代行」「宗教の立場から」「臨床の立場から」の順で研究発表と質疑応答があり、最後に「総合自由討論」が行われた。今回は、3か年の研究を基にしての討論であっただけに、多数の一般参加者とも熱気溢れる討論が行われ、好評であった。
著者
尾上 雅信
出版者
岡山大学教育学部
雑誌
岡山大学教育学部研究集録 (ISSN:04714008)
巻号頁・発行日
no.135, pp.147-154, 2007

本稿では、1879年師範学校設置法の成立過程について、下院にその骨子を提案した検討委員会の報告(ポール・ベール報告)の概要と特質、ならびにその報告を受けて行なわれた下院における第一回の審議の概要と結果について考察した。ポール・ベール報告は男女の師範学校の設置を各県に義務づけるとともにその実施方策として各県の初等教育事業に関わる特別税で負担する原則を明確にするものであり、その論議過程では各師範学校に附属周学校の付設を義務づける修正案が提案されたことも強調するものであった。その後の第一回審議では、既に設置されることが決定していた女子師範学校のために、委員会提案の法案が暫定的に可決されたのであった。
著者
三井 誠 酒巻 匡 橋爪 隆 上嶌 一高
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本件研究の目的は、組織的犯罪対策に関する諸問題について、刑事実体法的観点、手続法的観点から包括的な考察を加えつつ、望ましい対策のありかたを提唱する点にあった。とりわけ平成一一年八月に、いわゆる組織犯罪対策関連三法が国会で成立したのを受けて、従来の法制度と改正法制度との比較分析、組織犯罪対策関連三法案の立法過程の調査・分析、ドイツ法・アメリカ法をはじめとする諸外国の法制度との比較法的研究など、多角的な視点のもと、分析作業を進めた。その具体的な内容としては、(1)「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」の規定と、憲法が要請している令状主義と適正手続保障との関連についての研究、(2)いわゆるロッキード事件に関する最高裁判例における刑事免責に関する判断の趣旨・射程範囲の分析、(3)刑事免責制度の導入の可能性に関する立法論・比較法的考察、(4)マネー・ロンダリング処罰を拡大することに関する理論的問題点の検討、(5)組織犯罪における刑の加重と違法要素・責任要素への関連づけの検討、(6)ドイツにおける最近の財産刑制度に関する議論の状況などの諸点である。さらに、刑事実体法的かつ刑事学的関心から、暴力団構成員を中心とする近時の執行妨害事犯の現況に関する調査を行いつつ、競売入札妨害罪をめぐる最近の最高裁判例の当否についても分析を加えることができた。結論として、組織犯罪対策関連三法は基本的に適切な方向にあることが確認されたが、対策として不十分な点や、理論的な正当化が不十分な点など、なお問題点が残されている。もっとも、これらの研究は基礎理論的な考察に多くを費やしたこともあり、その具体的な諸問題への適用については、その研究成果はなお不十分なものである。今後は、具体的な法運用までを視野に入れつつ、さらに継続的に研究を進める必要が残されている。
著者
矢澤 真人 橋本 修 和氣 愛仁 川野 靖子 福嶋 健伸 石田 尊
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

代表者、分担者、協力者の協力も得て、以下のことを行い明らかにした。国文法理論に関しては、形態論重視の文法理論と、それに対抗する意味論重視の文法理論とを検討し、包括性・初学者への分かりやすさでは前者に、認知論との関連・直感的な興味深さでは後者にメリットが多いことを明らかにした。これと相関して学習指導要領における文法教育・言語事項の位置づけや、教育現場での実際の取り扱い等を検討し、現況にあった有益な文法教育の目標としては、言語感覚の養成・母語への愛着の涵養等がより中心的になるべきであることを示した。他の文法理論については、それぞれ、存在動詞構文・ハイパレージ現象に対して構文文法的アプローチ、中世日本語述部(特にテンス.アスペクト)に対して形態・機能論的アプローチ、非分末の「ですね」に対して談話文法論・情報管理理論的アプローチ、自他の形態(の少なくとも一部)に対して認知・計算意味論的アプローチ、テイル文に対して(生成)統語論的アプローチが、有生性の心的実在性に対しては実験心理学(脳科学)的アプローチが有効であることが、それぞれの具体的分析・実験等により示された。また、教育文法に関しては、枠組みとして、身体活動も含めた言語行動ルールとしての文法の必要性、国語教材の選択・使用法について具体的手順(活用の既定の一部修正・教授順序の変更)を経たカスタマイズのありかた、生徒が作成する要約文の特徴と字数との関連等が示された。
著者
サイト エリカ 松本 洋子
出版者
駒澤大学
雑誌
論集 (ISSN:03899837)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.169-182, 1990-03

国家社会主義者によって一貫して推し進められてきた女性学卒者の職業的地位からの排除は,-ここでは特に女教師についてであるが-すでにヴァイマル共和国に存在していたこれらの女性に対する社会的意識と法的措置を基盤に行うことが出来た。ヴァイマル共和国は,女性にとってはその解放の可能性という点では矛盾した諸条件をつくりだした。法的・形式的な同等や男女同権と並んで,依然としてしっかりと根を下ろした伝統的な女性観や家庭観,また増大する経済危機が,その実現,ないしは発展の継続を阻止した。より高い職業的地位と社会的に影響力のある役割での貢献と正当な評価を求める女性学卒者の困難な戦いは,経済的危機のために法的基盤すら狭められた。失業が増大する時代には,職場をめぐる競争は不可避であるが,女性たちは伝統的な考えによって,男性が所望する職場から駆逐されていった。経済的危機と厳しい競争への不安から,多くの女性たちは,彼女たちにとって安全な領域,つまり家庭へ,むしろ自ら戻ることを選ぼうとさえした。さらにヴァイマル共和国における女性の経済的解放は,まだ巾広い社会的基盤の上に行われていなかった。それは今まで男性が多数を占める分野に敢えて出て行こうとする女性があいかわらず少なかったことにも問題があった。国家社会主義者は,こうして彼らの女性観を現実化するための準備された耕地を手に入れた。1932年5月12日の女性官吏の法的地位に関する法律が憲法第128条にはっきりと抵触していたにもかかわらず,国会によって可決された。それは女性を100年前の状態に引き戻した。この法律は国家社会主義者に,彼らが女性官吏に対してさらにそれ以上の制限を課し,また官吏法の中に最終的に明記し得る基盤を提供した。国家社会主義者はまず最初に女性学卒者に対する措置を取った。国家社会主義者の女性政策は,もちろんすでにヴァイマル共和国で進められた政策を極端に展開しただけではなかった。その継続的な展開のほかに,彼らはさらに質的にいくらか新しいことを具現した。国家社会主義者は,今や女性たちから教育と職業の機会均等の権利を完全に奪い,彼女たちから,その組織と雑誌を廃止し,画一化することで,自主的な社会・政治的活動の基盤と影響力を奪い去った。さらに女教師たちは,他のすべての社会的に重要なグループと同様に,国家社会主義思想とその価値規範に基づいて「整列」させられた。残忍な弾圧によってあらゆる反対派はすでに芽のうちに摘み取られた。女教師自身の気持ちの中にあった保守的女性観の要素は,国家社会主義運動に彼女たちが急速に統合されていくうえでの重要な条件であった。意図は様々であったにせよ,同性に対する教育者として,排他的な,少なくとも女性の特別な権利についての女教師たちの要求が,徹底的な男女分離教育を目指す国家社会主義者の要求と一致したのも無理からぬところであった。依然として少女の将来における「母親としての役割」を強く志向していた女子教育に対する彼女たちの実際的考え方や女教師自身が職務を遂行するにあたって果した「母性的役割」は,国家社会主義者の同じ見解に敵対することを難しくした。彼女たちの「国民への奉仕」という基本思想は,彼女たちが国家社会主義国家に進んで協力を申し出ることを容易にした。最も低い地位と最も影響力のない社会的分野においてさえ,彼女たちはこの思想によって,特別な価値があるように思うことが出来た。いろいろのグループと利害関係によって分裂していたヴァイマル共和国の婦人運動は,女性の側から国家社会主義に反対する統一的な防御闘争を組織することを不可能にした。このことは議論すらもされなかったし,また努力もされなかった。彼女たちは,男性同僚,とりわけ文献学者同盟に組織されていた同僚たちの中に,国家社会主義に反対する闘いでの同盟者を見いだすことは出来なかった,なぜなら同盟はすでに早くからはっきりと国家社会主義に協力を申し出ていたからである。どちらかといえば保守的陣営に属する彼女たち自身の政治的立場ゆえに,他の同盟者,たとえば社会民主党や共産党などは,女教師連盟にとってはじめから問題にならなかった。彼女たちの女権的な,または自由主義的基本姿勢にもかかわらず,女教師たちもまた意識面では保守的な官吏に属していた。ドイツの官吏は特殊なブルジョア的意識を持っていて,その自由主義的要素は19世紀末以来,強力な国家主義と社会進化論に影響されて新しい形を形成していた。その保守的傾向は,とりわけ国家社会主義がドイツ官吏に再び社会的特権とそれにふさわしい社会的地位を保障するであろうと期待していたことに現われていた。ドイツの教員集団は,さらにその教育的基本姿勢では,反自由主義的,民族的傾向で思想的に国家社会主義と強く共通していた世紀の変わり目の「文化批判的改革教育」に影響されていた。国家社会主義者は巾広い分野で,多様な方法を用いて彼らの目的を宣伝した。保守的な基本思想は,改革・変革を求める急進的な要求やさらには社会正義さえ混ぜ合わせていたので,この時期,失業者の大きなグループであった女教師たちもこの標語の急進性に魅せられていった。「…腐敗を容赦なく取り締まるというのはナチスの術であった。ナチスは歴史的なものに対して活力,生命,若さを声高に宣伝した,そうすることで過去の慣習を一層確実にとり戻そうとしたのだ。」かっての女権論者の多くは,国家社会主義者の人種理論に魅せられているのを感じていた。彼女たちはゲルマンの原始時代を回想する中で,「北方人種」に属していることから,今や「選ばれた女性」として巾広い社会的活動の可能性を期待していた。全ドイツ女教師連盟の指導者たちの国家社会主義に対する警告は女性特有の困惑の表れであった。それは彼女たちが国家社会主義思想と政策を,主にこの分野においてのみ分析していたからである。彼女たちは国家社会主義思想と政策をその全体として拒否しようとはしなかった。それにもかかわらず,この警告と後に国家社会主義の期間中これらの女性たちの側から示めされた批判は,ともにブルジョア・自由主義的側にあった潜在的抵抗力の一つの現れであった。国家社会主義は巧妙な,また同時に弾圧的な政策によって,これらの潜在力を政治的に封じ込むことが出来た。国家社会主義は,さらに様々な思想的潮流や経済的危機によって生じた不安や偏見をとらえ,彼らの目的に利用する術を心得ていた。
著者
井上 真二 山田 茂
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.40-46, 2010-01-01
被引用文献数
1

現実のソフトウェア開発では,通常,契約時に納期が決定される.したがって,ソフトウェア製品の最終的な品質/信頼性の確認作業が行われる総合テストは,テスト作業を時間内に効率的に完了しなくてはならない.通常,テスト期間中のフォールト修正作業に要する労力は,テストに要するコストは去ることながら,運用段階におけるソフトウェア保守コストに影響を与える.これら2つのコストはトレードオフの関係にあるため,開発管理者は最適なテスト労力投入量に関するソフトウェア開発管理面からの問題に興味をもつ.本稿では,最近になって提案された2次元ソフトウェア信頼度成長モデルに基づきながら,テスト期間が一定である状況において総期待ソフトウェアコストを最小化するテスト労力投入量を求めるソフトウェア開発管理面からの問題について議論する.
著者
伊藤 幸子
出版者
奈良佐保短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13485911)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.37-43, 2005

介護保険制度が導入され5年が経過した.本稿では介護保険制度の中でケアマネージャーとしての役割を果たす介護支援専門員が,保険の給付管理業務や煩雑な事務作業に追われてケアマネジメント本来の業務である利用者の支援が充分には行えていないという現状について,文献をもとに考察を行った.とりわけ,介護支援専門員の業務内容については利用者宅訪問や利用者との関わりなどの現状を具体的に示した.さらに,2003年度の介護報酬の見直しおよび2005年に可決された介護保険制度改正案を軸に,それらの問題点および課題について考察した.
著者
河合 誠之 綾仁 一哉 片岡 淳 吉田 篤正 三原 建弘
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、HETE-2およびSwift衛星からインターネットを通じて配信されるガンマ線バースト速報に対応して、自動的に即時にバーストの方向を撮像する望遠鏡システムを開発し、ガンマ線バーストに伴う可視光フラッシュの観測を行なうことである。本年度は、次の作業を行なった。1.別予算にて岡山県美星天文台屋上に設置した口径30cm望遠鏡の測光精度を調査した。Landolt測光標準星との比較によれば、本システムはフィルター無しにもかかわらず、Rバンドでは標準星のカタログ等級と0.1等以下の誤差でよい比例関係をもつことを確かめた。2.昨年度に製作して宮崎大学工学部の屋上に設置したロボット望遠鏡システム第二号機の調整、試験を行い、指向・追尾性能試験および撮像試験を行った。試験観測として、美星天文台に設置した一号機とともに、変光星、獅子座流星群、超新星2002apなどの観測を行った。3.ロボット望遠鏡システムを統括制御するソフトウェアを改良し、自動観測運用を開始した。雨あるいは雪による機械的、あるいは電気的な不具合が生じたので、修理・対策を施した。4.HETE-2およびBeppoSAX衛星が検出したガンマ線バースト4個(GRB010921, GRB011019, GRB011030, GRB020124)に対して追観測を行った。可視対応天体の検出には至っていない。
著者
長谷部 信行 BEREZHNOI Alexey A.
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究は、主に3つに分類される。1)月表面から放出されるガンマ線の評価2)月表面における揮発性元素の存在可能性3)流星群衝突と月震による月からの電波放出1)月表面におけるガンマ線及び中性子の発生と輸送機構を実験的及び数値計算的にシミュレートし、元素濃度の評価方法の基礎過程を構築した。それに基づけば、ガンマ線分光計のエネルギー分解能が5keV以下の場合、水素、及び硫黄(1wt%以上存在した場合)の検出が可能であるという結論を得た。また、Lunar Prospectorによる観測結果を再検証しApolloやLunaミッションと比較した結果、月西部の海において、深刻なSi存在量の過小評価とAl, Mgの過大評価を発見した。2)月面揮発性元素の彗星起源説について評価を行った。その結果、炭素に富む彗星では現在までに推測されている揮発性元素の存在量を説明することはできず、酸素に富む彗星であれば、十分に存在量を説明することができるとの結論に至った。また二酸化酸素及び二酸化硫黄が安定に存在できる極域内の面積を算出し、それら元素の注入率に制約を与えた。3)1999年から2001年までのしし座流星群到来時の電波観測データの解析を複数の波長を用いて行った。1999年のデータからは月からの信号を見出すことはできなかったが、2000年、2001年においては流星群によると思われる信号を発見した。また、数分にもおよぶ振動の存在を確認した。
著者
山本 真行
出版者
高知工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は明るい流星の出現直後に稀に見られる流星痕について、研究代表者らが1998年より開始した市民参加の観測キャンペーンである流星痕同時観測(METRO)キャンペーンによって得られた史上初の大量流星痕画像を解析し、未知の部分を多く残す流星痕生成メカニズムならびにその地球超高層大気における消散過程を統計的に調査したものである。本研究課題ではMETROキャンペーンのデータを各種パラメータと共に記録した画像集として世に残すため、まず2編の流星痕カタログ論文を出版した(Toda et al., 2004 ; Higa et al., 2005)。これらの論文は1988〜2002年の国内流星痕観測を纏め上げた世界初の流星痕画像カタログであり、流星痕研究の基礎をなすデータとして今後も活用が期待される観測史的に貴重な文献である。以上は本研究課題によって平成16年度に成された成果である。平成17年度には、さらにカタログ論文に掲載しきれなかった画像についても世界の研究者による利用の便を考えweb上におけるMETROキャンペーンアーカイブとしての整備を進めた。現在、最終の確認作業中であり、著作権等の確認の後に公開される予定である。流星痕の高度解析結果については、1988年〜2001年に得られた観測例のうち、解析に必要な十分な時刻精度と空間分解能を備えたデータ20例を吟味し整約計算を進めた。結果として、オリオン座流星群による2例しし座流星群による18例(計20例)の永続流星痕の高度解析結果から、永続流星痕の出現高度に関して109km〜75kmの高度領域を得た。流星雨の夜の数時間にメソスケール程度の領域に得られた10例のしし座流星群による流星痕に関し、平均中央高度93.0kmを得た。この高度は、Borovicka and Koten (2003)モデルのフェーズ3である主に酸化鉄FeOによる発光過程における流星痕発光高度を統計的に初めて明らかにした成果である。同発光過程においてはオゾンの中間圏・熱圏下部からの供給と酸素原子の供給、拡散を支配する背景大気圧力のバランスが重要であるとJenniskens (2000)等により指摘されているが、本研究はこれを観測的に求めた成果である。20例の分布から、流星痕高度の上端は100km付近で一定であるが、下端については地方時(輻射点高度)依存性が見られ、流星痕発光領域の流星経路長依存性が指摘できる結果を得た。これらの成果は、Yamamoto et al. (2005)としてEarth, Moon, and Planets誌に出版された。その過程で、Abe et al. (2005)における分光観測結果に対し高度情報を与える成果も得た。三次元構造解析の時間発展から中間圏・熱圏風速場について研究した成果は、日本地球惑星科学連合2006年大会にて発表予定である。
著者
千田 恭子 篠原 靖志 坂内広蔵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.7, pp.21-26, 1996-01-19
被引用文献数
2

検索の初期入力を支援するため、汎用シソーラスを利用して検索対象の文章中に含まれる語を意味別に分類して提示する索引メニューシステムについて報告する。検索に役立てるために、対象領域用のシソーラスを作成し、文書中の用語をそのシソーラスの分類にそって意味別に提示するシステムがある。しかし、検索対象ごとにシソーラスをつくるのはコストがかかる。そこで我々は、「分類語彙表」という汎用的なシソーラスを利用し、ある企業の規定文書を対象に、低コストで簡便な索引メニューシステムを試作した。しかし分類語彙表の体系は索引提示に利用するために作成されていないため、そのまま利用するには、最上位のメニュー提示に適した階層がないなどの問題点があった。そこで、索引項目を二つに分け、分類の視点がより明確である項目を先に提示するなどの修正処置を行なった。本論ではそのような修正を含めた索引メニューの構築方法と、その考察を述べる。We report a nex method for making an index menu of full text database. This index menu and its presentation system supports finding keyword for the users unfamiliar to the target text database. Although, some existing full text database systems have special thesaurus developed to match their contents, it is expensive to develop different thesaurus for each databases by the experts. Hence we developed an index menu by modifying a general thesaurus "Bunrui-Goi-Hyou" to make an index of text databases in general. We discuss on the general thesaurus, modification process, and an index menu presentation system.

1 0 0 0 OA 史料通信叢誌

著者
近藤瓶城 編
出版者
史料通信協会
巻号頁・発行日
vol.第6編, 1897
著者
長澤 正氏
出版者
沼津工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

流星バースト通信(MBC)は、流星が大気に突入する際に残す電離気体柱を電波の反射体として利用し見通し外通信を実現する通信方法である。小容量の通信路であるが衛星を使ったシステムに比べ安価に実現できることことから、広範囲にわたる気象データの収集などに利用されている。本研究ではMBCの最も有効な応用分野であるデータ収集ネットワークシステムのプロトコルについて過去に提案された方式の数学的なモデルによる解析および新たな方式の提案を行った。研究は静岡大学が運用する流星バースト通信実験システムRANDOMでの通信路の観測および通信路のシミュレーション装置によって行われ、本補助金は主に観測実験の旅費およびシミュレーション装置の構築に充当した。研究初年度には流星バーストによるデータ収集プロトコルの各種方式の分類、比較等をまとめて電子情報通信学会論文誌に発表した。その論文ではグループポーリング方式のグループ再編方式が実用に際して有効であることが理論的に述べられている。また、新たに主局の送信電力を変化させて効率を上げる電力変化法を提案している。電力変化法の有効性を理論面から解析するためには、従来用いていた通信路の数学モデルを見なおす必要があった。そこで、研究2年度には数回の観測実験を行い、電力変化法の解析に必要な通信路の数学的なモデルを得た。研究3年度には、これらの成果を「流星バースト通信におけるプローブ電力と通信路特性の関係」として電子情報通信学会論文誌に発表した。また、1998年11月に33年ぶりの大出現が予測された獅子座流星群について、流星バースト通信の観点から観測をおこなった。この実験により、MBCにとって特異な状態である流星群出現時においても我々が提唱しているモデルがパラメータの変更のみである程度適用できることが判明した。
著者
戸田 雅之
出版者
東急ファシリティサービス株式会社
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

○研究目的(1)短痕の高度解析:2001年に大出現したしし座流星群の2点同時観測動画データから痕の発光部分の抽出を行い、その高度を明らかにする。(2)主要流星群の流星痕観測:しし座流星群以外の主要流星群でも流星痕観測を実施し、対地速度毎の短痕発生頻度を明らかにする。(3)短痕用スペクトル観測装置の製作とその観測:カラーインパクトロンを使用した観測装置を立ち上げ、8月のペルセウス座流星群を皮切りに主要流星群の流星痕分光観測を実施する。○研究方法(1)移動体検出と画像解析に特化したPCを使い、25例の流星痕の発光高度を求めた。(2)(3)平成19年8月のペルセウス座流星群、10月のオリオン座流星群、12月のふたご座流星群、平成20年1月のりゅう座流星群にカラーインパクトロンと一眼レフデジタルカメラを用いて観測をした。○研究成果(1)短痕の出現高度が明らかになった。短痕の上端側は緩慢な高度低下を示し、下端側は流星本体の高度低下と共に一旦下降し、本体消失後に上昇する傾向が常に見られた。発光高度の中央部分は多くの例で高度110km前後で収束し、大気依存が予期される結果となった。この成果は平成19年6月中旬にスペイン・バルセロナで開催された国際会議「Meteoroids2007」および同年9月の日本惑星科学会高知大会において発表した。(2)(3)観測地の当日の天候に邪魔されたり、周辺機材のケーブル断線等の不良等で動画撮影は殆ど出来ず、今回期待していたスペクトル撮影は出来なかった。平成20年度以降は高知工科大学と連携して長期間定常観測を実施し、より多くの短痕画像を取得することを狙う。
著者
津田 敏隆 川原 琢也 山本 衛 中村 卓司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、京都大学のMUレーダーで高感度の流星観測を行い、流星の大気への流入及びその時の中間圏界面領域の大気力学場を詳細に観測し、併せてナトリウムライダー観測や大気光観測による中層大気上部の大気微量成分の増減を測定し、中間圏大気の物質の変動と流星フラックスや大気力学場の関係を探る事を目的とした。特に、流星起源であるナトリウムなどの金属原子層の密度が突発的に増大するスポラディックナトリウム層などの現象にも焦点をあて、その成因を探った。また、その過程で種々の知見が得られた。1. レーダー観測から、群流星などの活動期であっても散在流星のフラックスが多く、群流星の活動によって顕著に流星フラックスが増加することはないと認められた。ただし、出現方向、出現高度、強度などを限定すると群流星でもかなりの増大がある。2. レーダーとライダーの同時観測によって、ナトリウム原子密度の周期数時間以上で位相が下降する変動は、大気重力波によると確認された。さらに冬季に見られる周期12時間前後の同様の変動も、半日潮汐波ではなく大気重力波と判明した。3. レーダーとライダーとの同時観測によって、スポラディックナトリウム層と流星フラックスの関連は見出されず、むしろ水平風速の鉛直シアや温度の局所的な上昇などが絡んでいることが解った。さらに統計的な解析からは、風速シアの強度と相関が高いことが解った。4. 大気発光層とレーダーおよびライダーとの同時観測から、流星フラックスの増大と発光層との関連は見られなかったが、大気発光層中の様々な大気重力波イベントの考察やその統計解析など、大気力学研究上貴重な知見が得られた。5. 1998年のしし座流星群観測では、大流星雨予想の約1日前に明るい流星の大出現がレーダー観測された。なお、当日は天候が悪く光学観測は翌日になったがこのときには中間圏界面に顕著な変動は見られなかった。
著者
阿部 新助
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、惑星間空間から地球へもたらさせる彗星・小惑星起源物質(流星ダスト)から、組成と軌道およびその進化を明らかにすること、流星の超高層大気での発光素過程を調べることである。平成18年度に開発を行った超高感度紫外分光TVカメラと汎用小型TVカメラを用い、平成19年度は、幾つかの観測を施行した。汎用小型TVカメラ一式は、京都大学生存圏研究所・MU 信楽観測所内に設置を行い、リモート観測を継続的に行った。関連成果として、Earth-grazing fireball(地球大気突入後、宇宙へ戻った隕石火球)の観測に成功し、近地球型アポロタイプ小惑星軌道であることなどを突き止めた(研究成果欄参照)。同型の小惑星である小惑星イトカワの探査データを用い、イトカワの平均密度、空隙率、組成や重力場の導出行い、申請者が筆頭あるいは主導的役割を担った論文は、Science, Nature他に掲載された。また、超高感度CCD-TV紫外分光観測システムを用い、2007年9月に長周期彗星起源流星の分光観測をハワイで行ったが、悪天候に阻まれた。同システムを用い、2007年10月オリオン座流星群、12月ふたご座流星群の分光観測に成功した。また、EMCCDカメラ(五藤光学研究所)を使い、流星体の月面衝突閃光を世界で始めてカラーで捉えることに成功した。これらのデータの一部は、論文や学会を通して発表を行った。また、彗星・小惑星と流星の関連について、「Meteoroids and Meteors - observations and connection to parent bodies(S. Abe), in Small Bodies in Planetary Systems(Eds. Ingrid Mann, Akiko Makamura, Tadashi Mukai, Springer-Verlag)」に大学院生向けの教科書としてまとめた。
著者
麻生 武彦 岡野 章一 藤井 良一 前田 佐和子 野澤 悟徳 三好 勉信 佐藤 夏雄 江尻 全機 佐藤 薫 小川 忠彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

最終年度におけるそれぞれのサブテーマの実績概要は以下のとおりである1.EISCATレーダーによる極域電磁圏熱圏大気ダイナミックスに関しては2003年11月11日から19日における8日間のキャンペーンデータ等をもとに、流星レーダー等との比較、イオン温度からの中性温度の導出における定量的な誤差評価、中性温度における大気潮汐成分の解析検討、F層イオン温度の緯度分布と電離層等価電流の分布の比較による両者の密接な関連の解明等を行った さらに下部熱圏における大気ダイナミクスの理解のため、EISCATキャンペーン観測データ解析から準2日波、大気潮汐波、平均風の高度変動および緯度変動、イオンドラッグ加速度、コリオリ加速度、および全加速度の導出とそれらの比較を通してのイオンドラッグの重要性の吟味等を行った。またオーロラ粒子エネルギー導出のための4波長フォトメータ観測をトロムソにて実施し、電子密度高度分布をEISCAT観測データと比較した2.流星レーダーによる極域中間圏・下部熱圏大気ダイナミックス観測ではスバルバールでの4年余の連続観測により、極域大気潮汐波クライマトロジーの解明を行うとともに、トロムソ流星レーダー、EISCATレーダー、MFレーダーとの観測値の直接比較、NSMRレーダーとの比較による大気潮汐波モードの解明、高エコー率を利用しての大気重力波の水辺伝播方向解析と平均流とのかかわり、運動量輸送等について検討した3.HFレーダーによる極域電磁気圏・熱圏ダイナミックスの観測については、EISCATヒーティング装置を用いたSuperDARN CUTLASSレーダーとの共同実験により周期の異なる地磁気脈動の励起伝播について興味ある結果を得た4.オーロラ夜光スペクロトグラフによる極冠域オーロラ・夜光の観測では、酸素原子発光および酸素イオン輝線発光と、ESRによる電離層の電子温度・密度、イオン温度、イオン速度の同時観測データから、低エネルギー電子降下時に磁力線に沿った速度数100m/sのイオン上昇流が発生することを定量的に明らかにした。5.ALISによるオーロラ・大気光トモグラフィ観測では、ヒーティングとの同時観測、しし座流星群の光学観測などが試みられたほか、先端的逆問題手法のトモグラフィー解析への応用研究を始めた6.数値モデリングと総合解析においては中間圏・熱圏下部における半日潮汐波の日々変動について、大気大循環モデルによる数値シミュレーションにより調べた。特に、下層大気変動が、中間圏・熱圏下部の半日潮汐波に及ぼす影響および太陽放射量の日々変動(F10.7の日々変動)が熱圏の大気潮汐波に及ぼす影響を調べた。また流星レーダーで見出された12時間周期付近のスペクトル等についてもモデルによる検討を行った