著者
藤田 豊己
出版者
東北工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ロボットが作業のために手先を動作している画像を観察したときの人間の注視による関心領域を計測し,位置的類似度を用いて特性を検証した.その結果,対象とした動作においては,トップダウン的な処理が優位なScanpath(視線走査)が生じるがわかった.さらに,画像処理手法により関心領域を検出し,その妥当性をその特性結果を利用して評価した.その結果,ボトムアップ処理とトップダウン処理を表す特徴を統合することで有効な注視領域検出が可能となり,基本的な動作検出も可能となることを示した.
著者
北村 雅哉 西村 憲二 三浦 秀信 松宮 清美 奥山 明彦 小森 和彦 藤岡 秀樹 古賀 実 竹山 政美
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.587-590, 2000-08

精巣内精子抽出術(TESE)のうち先天性精管欠損,ヘルニア術後,パイプカット術後など明らかな閉塞性無精子症を除いた44例を対象に非閉塞性無精子症で精子の回収を予測するパラメータを検討した.JSC,精巣容量,FSHで相関がある結果であったがJSC8以上の症例を除外すると相関はなくなり,絶対的パラメータとはなり得なかった.受精に関しては妻の年齢,精子運動性の有無,精巣容量が有意なパラメータとなった.マイクロドロップレット法を用いたCryo TESE-ICSIは新鮮精子を用いたTESE-ICSIと同等の受精率が得られ,無用なパートナーへの侵襲を避けるのに有用と思われたWe reviewed 44 cases of non-obstructive azoospermia treated by testicular sperm extraction and intracytoplasmic sperm injection (ICSI) from July, 1997 to September 1999 at our institutes. Testicular sperm were retrieved from 32 patients (72.7%). ICSI was performed on 29 patients and the partners of 15 patients (46.9%) became pregnant. Out of 10 patients with histology of Sertoli-cell-only, we could retrieve sperm from 3 patients (30%). Testicular volume, Johnsen's score count (JSC), and FSH were significant parameters to predict the recovery of testicular sperm from the patients, but if only the patients with JSC less than 8, are analyzed, none of them was significant parameter. Chromosomal abnormality was not a significant parameter. The partner's age, motility of recovered sperm and testicular volume correlated with the fertilization rate. Chromosomal abnormality or the usage of cryopreserved sperm was not a significant parameter to predict fertilization.
著者
堤 マサエ 大友 由紀子
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

親がどのように子どもの離家・独立・職業選択・結婚の援助をしているか、子どもはどのように認識しているかの実態を明らかにし、世代比較と国際比較の視点から分析した。その結果、若い世代ほど高学歴化し、親の子育て・教育費負担は重い。結婚が一人前の条件ではなくなり、人生における独立することの意味が変化してきた。農村家族は比較的安定した暮らしであるが、若者調査から就職難、親の生活困窮、祖父母の年金で孫の学費を援助するなど世代を超えた援助、奨学金で親子が暮す貧困の実態が新たな問題として出てきた。国際比較から、国際社会の動きに対応し、日本家族の文化や伝統を配慮した子育てとその支援の在り方の重要性が指摘できた。
著者
安藤 隆男 西川 公司 川間 健之介 徳永 豊 千田 捷熙
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、次の二つから構成した。まず、(1)学習の主体である脳性まひ児の学習特性、(2)脳性まひ児の教科指導を行う担任教師、(3)地域における支援の担い手である肢体不自由特別支援学校の支援体制に注目し、通常学級における脳性まひ児の学習支援モデルの開発に関わる基礎的な資料・知見を得る研究である。次に、これらの基礎的な知見をふまえて、とくに附属肢体不自由特別支援学校との開発と展開に関わる共同研究である。この共同研究は、脳性まひ児の学習特性をふまえた教科指導モデルの構想と実践(第一研究)と通常学級における脳性まひ児の学習支援の展開(第二研究)からなる。前者は通常学級における脳性まひ児の学習支援に資する教科指導モデルを、肢体不自由特別支援学校において培ってきた専門性に基づいて構想、実践するものである。後者は前者で構想、実践した教科指導モデルを通常学級に適用、展開するものである。まず、第一研究では、WISC-IIIなどの結果から、認知的な課題がある児童生徒を対象とした各教科の指導の手だて等を開発し、授業において検証した。その結果、認知的な特性をふまえた指導の導入が脳性まひ児の学習パフォーマンスを高めることが事例的に明らかになった。第二研究では、第一研究で構想した教科指導モデルを通常学級の脳性まひ児に適用してその有効性を明らかにしつつも、脳性まひ児の認知に関わる担当教師の気づきの位相によって彼らへの支援を細かく想定する必要性が示唆された。脳性まひ児の学習パフォーマンスに関しては、認知的特性のみならず、運動動作の障害との因果関係も示唆され、改めて自立活動の指導との関連から課題を整理する必要がある。
著者
小林 一 臼木 秀樹 白石 謙 土屋 博男 元吉 真 義家 敏正 石崎 敏孝 櫻井 良憲 永井 泰樹 高久 圭二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.57-62, 2003-04-03

SRAMに対して、平地、高地、地下でのフィールド試験から、ソフトエラーの主要因である高エネルギー中性子、熱中性子、α線の寄与の割合を求めた。その結果、0.18μm 8M SRAMでは、熱中性子起因が全体の3/4、高エネルギー中性子起因が1/4、α線起因は無視できることがわかった。また、原子炉での熱中性子照射実験の結果、熱中性子起因ソフトエラーは、対策によって数100分の1にできることがわかった。最後に、これからの本格的なネットワーク社会におけるソフトエラー問題について展望する。
著者
木島 由晶
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

ニューヨークでのフィールドワークをもとに、販売員の国際比較をおこなった。1.組織構造の逆転日米ともに、通説とは逆の組織構造を発見することができた。日本ではMLMは俗にネットワーク・ビジネスとも呼ばれ、知人を勧誘することでグループを成長・拡大させてゆく。したがってその組織構造は官僚制的なヒエラルヒーではなく、ゆるやかな横のつながりを基調としたものであるとされる。けれども実態は大きく異なり、微視的にみれば販売員は「友だちの輪」によって結びついているが、巨視的にみればピラミッド型の階層構造のなかでインフォーマルに職務の分担がおこなわれている。米国ではMLMはダイレクト・セリングと呼ばれ、直接、企業と消費者を取り結ぶ販売組織であると認知されている。代理店を通さない代わりに、販売組織の中では武道の段位制にも似た階級が設定されており、それに応じてバックマージンの給付率も変わる。だが、明確な階級が設定されていても、販売員の職務には反映されていない。上級クラスに権限は乏しく、販売員は各自の裁量に基づいた販売計画を実行している。2.文化的要因の格差米国の販売スタイルを踏襲した日本のMLMが異なる販売組織の形態をとるようになった背景には、地理的要因、歴史的要因などのさまざまな要因が絡みあっているが、最も重要なのは文化的要因と考えられる。元来MLMは、合理性を追求する米国の気風のなかで生まれた商法だったが、通常のビジネスとは異なる副業としての価値が認知されるにつれ、他に仕事をもつ人が自由におこなう余暇的側面を強めることになった。一方で、日本を中心とした諸外国では、高度経済成長期に流入することにより、旧来の職業的観念とは異なる外資系ビジネスとしての価値を獲得する。そのため筆者の類型でいえば、米国にはMLMに商売以上のものを求める<ディストリビューター>型が多く、日本には現世利益を追求する<ネットワーカー>型が多いということになる。
著者
西村 浩子
出版者
松山東雲女子大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

平成15年度は、愛媛県内の北宇和郡三間町毛利家および上浮穴郡久万高原町(旧美川村)土居家の調査、県外では、富山県立図書館・滋賀県野洲郡野洲町大篠原小澤家・岡山大学図書館において、大学・中庸・論語・孟子集註・詩経、三体詩など角筆文献発掘調査を行った。富山県立図書館蔵の「孟子」(1757年刊)には角筆の書入れよりも墨筆や朱筆で方言形が多く見られ、今後、詳細な調査が必要である。国外では大英図書館において敦煌文献調査を行った。今回は、吉沢康和氏による調査で角筆文字があるとされた「金剛般若波羅蜜多経宣演」(S.4052)の追調査(2枚目〜14枚目)を行った。以前報告された角筆の漢字は、1箇所を除き、確認が困難であった。その原因は、今回は角筆スコープの使用が許可されなかったことによると思われる。しかしながら、誤写を訂正する場合に漢字の上に角筆で斜線が引かれたり、朱点の下に小さなくぼみの点が見られる例を確認した。今後、角筆スコープを利用した調査でさらに発見できる可能性がある。平成16年度は、第6回「書物・出版と社会変容」研究会において、古文書や古書籍に見られる文字について発表した。これまでの調査の成果をもとに、これまでの角筆文献研究の流れとこれからの古文書調査においても角筆文字が発見される可能性があることを述べた。また、C/D班共催研究会において、正岡子規文庫の角筆文献を中心に明治期の角筆文献についての検討を報告した。口頭発表・論文は以下の通りである。(1)第6回「出版・書物と社会変容」研究会 4月10日 於 一橋大学「古文書・古書籍に見られる角筆文字と角筆文献研究-忘れられた書記活動が遺したもの-」(2)第3回角筆文献研究会 9月17日 於 鳴門教育大学「正岡子規と角筆文献」(3)「読書行為の痕跡として見た角筆文献 -法政大学図書館蔵正岡子規文庫の角筆文献を中心に-(特定領域研究成果論文)
著者
末廣 昭 中村 圭介 丸川 知雄 上村 泰裕 株本 千鶴 木崎 翠
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は東アジア7カ国・地域(中国、台湾、韓国、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア)における国家の社会保障制度の仕組みと企業内福祉の実態を比較することを目的とした。国家の社会保障制度については、(1)年金制度、(2)健康保険、(3)労災補償、(4)失業保険の4分野に注目し、企業内福祉については、(1)有給休暇、(2)社宅、食事手当、子弟の学資補助、退職金制度などの福利厚生の提供の有無、(3)労働総費用に占める法定福利と法定外福利の比率、(4)企業内福祉に対する経営側の方針、の4つを主な調査対象とした。企業内福祉に関する国際比較は初めての試みである。平成17年度は文献調査と予備的な現地調査を実施し、その成果として『東アジアの福祉システムの行方:論点の整理とデータ集』(2006年2月、398頁)を刊行した。次いで、平成18年度は企業アンケート調査を実施し、約800社について回答を得た。平成19年度には回収した企業アンケートの集計とデータ・べースを作成し、平成20年2月に、372ページの最終報告書『東アジアの社会保障制度と企業内福祉:7カ国・地域の国際比較』をとりまとめた。調査から得られた知見は以下のとおりである。(1)有給休暇については、各国・地域とも労働法が定める有給休暇の枠内で提供しているが、各国に固有の休暇が存在すること。(2)企業が提供する福利厚生については、モノ志向ではなく金銭志向(補助金の支出)が強いこと、韓国の場合には、子弟の学資補助が際立って高かったこと。(3)法定福利の現金支給に対する比率は、中国、シンガポール、韓国、台湾と続き、タイ・インドネシアが低かったこと。他方、法定外福利の比率は韓国・台湾が高く、シンガポール、中国が低かった。(4)企業内福祉への方針は、いずれの国・地域でも9割以上が重視する意見を示したが、賃金・ボーナスをより重視すべきという質問には国・地域でばらつきが見られた。
著者
竹中 毅 新村 猛 石垣 司 本村 陽一
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

労働集約型産業の一つである外食産業の生産性向上に向けては,提供プロセスの効率化とともに,多様化する顧客価値の理解や廃棄率の低減,従業員のスキル向上を支援する教育システムの開発など多くの課題がある.本研究では外食POSシステムを発展させた提供プロセスの効率化や,顧客のレストランでのメニュー選択行動や食事行動の分析,行動分析による従業員の暗黙的なスキルの理解など,これまでの研究成果を報告する.
著者
岡部 鐵男
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では環境の変化に伴い企業競争が激しくなっている企業の組織編成に関してエージェンシー理論と取引費用理論の有効性について浮き彫りにし、理論的に明らかにした。これらの分析から次のようなことを解明した。(1)プリンシパルとエージェントの二層からなる内部組織において効率的な資源配分を行なうとき、強いインセンティブを与えられた組織ではエージェントの分権化や独立性が高まり組織の生産性も高まるが組織をコントロールするためのエージェンシー・コストや取引費用も高まる。エージェントを動機付けるための価格やボーナスと罰金、また割り当て等の採用による適切なインセンティブ・システムのデザインの仕方がある。シャーキングを避けるためモニタリング制度、インセンティブ・システム、内部監査により組織の非効率を避けることができる。(2)不完備契約によって取引費用が高くつくとき、企業は費用と便役のトレードオフを通じて、市場で取引することを止めて、統合した組織をつくり経済効率を上げようとする。所有権理論は機会主義的行動を抑制し取引費用を節約するので統合した組織をつくる論拠となる。組織のコーディネーション効率の観点からは取引費用とリスク・コスト、セットアップ・コストの和が最小になるところで組織の複雑性の程度が決められる。情報技術の発展は取引費用を節約するので組織の形態を変容させる。(3)取引費用理論とエージェンシー理論によってさまざまな組織構造を分析できる。活動の関連性と技術変化を考慮することによって戦略的に組織を選択できるし、取引費用と内部化を考慮することによって多様化の程度を決定できる。また内部化費用と時間を考慮することによって多国籍企業の組織構造を選択できる。市場と組織の中間に位置するネットワークにあっては取引費用の節約が効果的かつ効率的であるとき維持され、競争上の便役を得ることができる。
著者
東田 陽博 星 直人 橋井 美奈子 横山 茂
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

細胞内のCaをセカンドメッセンジャーとするCaシグナリングは、数多くの受容体の下流に存在する重要な信号伝達機構の一つである。最近、リアノジン感受性の細胞内Caプールを開く細胞内リガンドはサイクリックADPリボース(cADPR)であると考えられるようになってきた。この数年、我々はcADPRがIP3のようなセカンドメッセンジャーであるとするこの仮説を検証してきた。そしてNADからcADPRを産生する膜酵素が受容体によりコントロールされていることをムスカリン受容体を大量発現するNG108-15細胞(J.B.C.,1997)とβアドレナリン受容体を持つ心臓心室筋(J.B.C.,1999)を用いて始めて証明することができた。アメフラシのADPリボシルシクラーゼと相同性を持つことで知られるCD38をノックアウトしたマウスで測定したところ、ADPリボシールシウラーゼが全く測定できなかった。この結果は我々の予測と異なり、CD38以外に酵素活性を持つ、タンパク質が存在しないことを示している。そこで研究として、次の仮定を確かめるために研究を転開した。すなわちパーキンソン病脳におけるcADPリボースの役割を明確にするため、ラット脳線状体でのADPリボシルシクラーゼ活性を測定した。ドーパミン添加によりシクラーゼ活性が上昇することをはじめて見出し、現在この活性上昇のメカニズムを追求している。また、脳可塑性に重要な役割を果たす代謝型グルタミン酸受容体のADPリボシルシクラーゼヘのカップリングを研究し、興味あるサブタイプごとに異なる特異的な反応を見出した。
著者
速水 清孝
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.73, no.633, pp.2489-2495, 2008-11-30 (Released:2009-10-28)

The purpose of this study is to clarify the formation process of the Architect Law, which Tsuyoshi Ichiura personally proposed in 1976, and to consider its characteristics and significance for today. The characteristics of his proposal are as follows: 1. The Law is intended for the individual architectural designers. 2. The qualification of building engineers excluding architectural designers shall be defined by the Law for Professional Engineers, not the Kenchikushi Law forArchitects & Building Engineers. 3. Would not dispute what organization architectural designers shall belong to. 4. Attempted to solve the defect of the Kenchikushi Law for Architects & Building Engineers by improving the overall law system for architects and building engineers. Japanese architects at that time never accepted his proposal since they thought architects shall belong to dedicated architectural firms. However recently, it came to be known that by international standard, the qualification of architects shall belong to individuals, no matter what organization architects belong to. In that sense, his concept of proposal was a pioneer in Japan.
著者
笹島 芳雄
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

役員報酬が極めて高い要因はストック・オプションの普及、取締役会の内部委員会である報酬委員会の機能不全、役員報酬の世間相場情報の利用上での問題、外部コンサルタントの行動、国民の価値観などに根ざしている。高報酬の是正は、社内の報酬構造の見直し、世間相場水準の慣性、アメリカ国民の価値観との衝突などがあり容易ではない。他方、底辺労働者の賃金水準は低く、貧困水準すれすれの状況にあり「生活賃金運動」が活発である。また、公正な賃金の実現に向けて、同一価値労働同一賃金の法制化が推進されているが困難な状況にある。多くの企業で実質的には同一価値労働同一賃金が実現している。
著者
杉山 奈生子
巻号頁・発行日
2005-06-30

名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(文学) (課程) 学位授与年月日:平成17年6月30日
著者
田中 敏光 杉江 昇
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

小学校低学年の児童を対象として,コンピュータ内の仮想空間における三次元造形教育を支援するため,バルーンアートを題材とした子供向けモデリングソフトの開発を行った.このシステムでは,細長い風船にねじる,曲げる,ひねるなどの操作を加えて形状を作成する.子供が理解しやすいように,主要な造形機能はその内容を図示した大型のアイコンで表示している.また,操作ごとに異なる効果音を出すことで,操作の識別を容易にし,かつ,作業に飽きが来ないように工夫している.風船モデリングを造形教育に使うには,作った形を評価してより良い形に導く仕組みが必要である.そこで,児童が作った作品をお手本と比較し,一定の値より差が大きければ修正を示す矢印を表示するモジュールを追加した.この指示に従うことで,作品をバランスのとれた形に整えることが出来る.作成した形状をアニメーション動作させるモジユールも追加した.児童が作った作品各部分の長さに応じてアニメーション用の形状と動作を修正することで,作品に対応したアニメーションを生成する.動作の種類は評価に連動して切り替えることができる.試用実験により,システムの使い方は5分程度の説明と数枚の図解で難なく理解できることが確認できた.また,アニメーションは好評で,動きを見るために形を何度も作り変える様子が観察された.しかし,造形操作で元に戻すことが難しい状況になると,困った挙句,始めから作り直す場面が見受けられた.そこで,undo/redo機能を追加し,任意の時点までモデリング作業を戻すことが出来るように改良した.undoバッファには作業開始からの全ての操作履歴を保存するので,これを利用して,お手本の作成過程をコマ送りで表示する機能も追加した.また,ウインドサイズを大きくし,不要な機能を削ることで,作業領域を約2倍に拡大した.これらの改良により,使い勝手が大幅に向上した.
著者
梅田 富雄
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.125-134, 2009-04-18

システムエンジニアリング方法論は、1960年代に基本的な枠組みが提唱され、代表的なA.D.Hallの方法論には、プロジェクトのライフサイクルに基づく業務遂行フェーズと課題設定から始まる業務遂行ステップおよびそのために必要な専門領域に関わる知識群が織り込まれ、3次元の形態学的フレームワークとして構造化されている。しかしながら、現在ではプロジェクトマネジメントとシステムエンジニアリングは、統一されたフレームワークとして認識されていないように感じられる。本研究では、方法論に関する共通理解がグローバルな業務展開には必要であると考え、プロジェクトをコンテキストとして実行する視点から、企業の求める事業戦略と合致した問題解決のためのシステムエンジニアリング方法論を展開する。
著者
山崎 由美子 小川 昭利 入來 篤史
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.366-377, 2008 (Released:2010-02-15)
参考文献数
57
被引用文献数
9

Researchers studying symmetry, one of the requirements for establishing stimulus equivalence, have contrasted inferences made by human and nonhuman animals and suggested that inference in each animal species is determined by several biological factors developed in the course of the evolution of a given species. This paper reviews the relevant experimental studies with human and nonhuman animals, including studies of young children, individuals with developmental disabilities, and nonhuman mammals. This work indicates that developmental, ethological, and behavioral factors are closely related to produce symmetry. In searching for the neural factors of symmetry, evidence from fMRI studies suggests that brain activity associated with equivalence relationships occurs in the processing of stimuli with or without temporal order. Thus, further research on the processing of temporal-spatial factors of stimuli is needed in both human and nonhuman animals. A detailed analysis of human subjects failing to establish equivalence relationships, and of nonhuman animals performing prerequisites for symmetry, such as identity matching and matching by exclusion, is crucial for understanding the biological origins of symmetry inferences.
著者
有村 俊秀
出版者
上智大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

初めに、昨年度収集した情報をもとに、排出量取引の利点である排出削減費用の抑制効果が、米国二酸化硫黄(SO_2)排出承認証取引制度において発揮されているかどうかについて、実証的な観点から計量分析を行った。具体的には、企業の主な排出削減手段である排出承認証取得、低硫黄石炭への発電燃料の転換、脱硫装置の設置に焦点をあて、州ごとに行われている地元炭鉱の産業保護や排出承認証売買による費用や利益に関する規制などがこれらの選択に対して及ぼす影響を、1995年のデータをもとに多項選択モデルを用いて推定した。燃料購買の長期契約による影響についても分析を行った。結論として、主に3つのことが実証された。第一に、高硫黄石炭の産業保護が低硫黄石炭の選択を減少させることが示された。第二に、排出承認証取引で生じた費用/利益を消費者に転嫁/還元しなくてはならないとする規制によって、排出承認証の需給が減少したことが明らかになった。第三に、排出承認証取引で生じる費用や利益の取り扱いについて不確実性がある場合は、排出承認証の購入が減少することが確認された。次に、昨年度行った脱硫装置の技術・費用に関する情報収集および、パラメータ推計に関する情報収集をもとに、発電所における脱硫装置設置行動を離散的投資モデルとして定式化し、排出量取引の動学的市場均衡モデルを構築した。発電所の離散動学モデルを解析的に明らかにすることは困難なため、数値解析法により発電所の投資モデルを求めた。そして、それらをもとに排出承認証の均衡価格と、均衡下での発電所の行動モデルを明らかにした。最後に、これらの数値解のモデルを用いて、脱硫装置導入の補助金(承認証ボーナス)の効果を定量的に分析した。数値解により、承認証ボーナスの付与がなければ、脱硫装置の投資は行われなかったことが示された。
著者
大谷 真忠 石井 まこと 阿部 誠 幸 光善 本谷 るり
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、大分市内の企業にたいして人事・雇用管理に関するアンケート調査を実施し、雇用・人事管理の今日的特徴を分析するとともに、企業の人事担当者に人事管理の課題について聞き取りを行なった。また、地域の就業構造の特色と変化について統計的な分析を行なった。さらに地域の老舗企業の地域性についてアンケート調査にもとづいた分析を行なった。これらの研究を通じて、とくに雇用・人事管理の面で、次のような最近の特徴が明らかになった。対象企業のなかで職能資格制度があるのは約半数にすぎず、人事評価を定期的に行っている企業も3分の1にとどまる。人事評価で重視されている点は、「能力」がもっとも多く、「業績、成果」、「仕事の姿勢」がそれに続いている。評価結果は主に昇給・賃金の決定、ボーナスの査定に用いられている。最近の人事考課制度の変化として「処遇格差を大きくした」「業績・成果ウェートを上げた」「数量目標を活用」「評価結果を本人に説明」の4項目に集中している。採用管理の面では30歳以上の中途採用が拡大しているが、規模の大きな企業では新卒採用が中心であり、中途採用は補完的な役割にとどまる。他方、リストラの方法としては「パート・アルバイトや派遣社員の積極的活用」が3割ともっとも高い比率を示すほか、「人員削減」を行った企業も多い。100人以上規模の企業は全体的に事業再構築に積極的である。賃金では、賃金テーブルを用いない企業が半数以上を占める一方、一般職の定昇制度は56.4%の企業にある。賃金を決める要素としては、ほぼ半数の企業が「職務遂行能力」で、「仕事上の業績」は4分の1である。人事管理の課題としては「中核的人材・即戦力の採用」が半数を占め、重視されている。地域企業も、基本的には人事管理の全国的な傾向と同じ動きを示しているが、小規模企業を中心として体系的・制度的な整備が遅れているということができる。