著者
王 鵬
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.60, pp.47-50, 2009-10-23

近代産業社会からポスト産業社会、高度情報化社会、豊かな消費社会に移行するなかで、人々の関心が「物の豊かさ」から「心の豊かさ」へシフトするにつれ、組織における人間観や人々の労働観も変容してきている。その結果、従来の「機能的合理性」一辺倒の仕事人間や管理型組織の見直しが不可避となっている。こうした状況下で組織デザインにおいても、人間・組織・労働のダイナミックな意味作用によって、バランスのとれた「意味創造の組織」へのパラダイムシフトが求められているのである。本論文では、第1に、近代経営組織論における人間観と労働観はどのような展開をしてきたのかを辿り、その問題点について検討する。第2に、時代の変化とともに、新しい人間観について、またこうした人間観と密接な相互関係にある労働観の変容について分析し、その価値観が変容する方向性を明らかにする。第3に、組織における人間観・労働観の変容は今後の組織デザインにどのような影響を与えるのか、その方向性について検討する。
著者
[市古貞次著]
出版者
クレス出版
巻号頁・発行日
2003
著者
内藤 靖彦 ELVEBAKK Arv WIELGOLASKI フランスエミル 和田 直也 綿貫 豊 小泉 博 中坪 孝之 佐々木 洋 柏谷 博之 WASSMANN Pau BROCHMANN Ch 沖津 進 谷村 篤 伊野 良夫 小島 覚 吉田 勝一 増沢 武弘 工藤 栄 大山 佳邦 神田 啓史 福地 光男 WHARTON Robe MITCHELL Bra BROCHMANN Chirstian ARVE Elvebak WIELGOLASKI フランス.エミル 伊村 智
出版者
国立極地研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

北極の氷河末端域における生態系の変動は温暖化に強く関連するといわれているがあまり研究はなされていない。とくに今後、北極は4〜5℃の上昇が予測されているので調査の緊急性も高い。本研究では3年間にわたり(1)植生及び環境条件の解明、(2)繁殖過程の解明、(3)土壌呼吸と温度特性の解明、(4)土壌節足動物の分布の解明、(5)人工環境下での成長変化の解明を目的として調査、観測が実施された。とくに気候変動がツンドラの生態系に及ぼす影響を、遷移初期段階である氷河モレーン上に出現する動物、植物の分布、定着、生産、繁殖、移動について研究を行った。調査、観測は海洋性気候を持つスバールバル、ニーオルスンの氷河後退跡地で実施した。初年度は植生及び環境条件の解明を目的として6名の研究者を派遣した。氷河末端域のモレーン帯の植物の遷移過程の研究では、氷河末端域から約50メートル離れたモレーンに数種の蘚類が認められ、これらはパイオニア植物として考えられた。種子植物は100メートル過ぎると出現し、地衣類の出現はむしろ遅いことが明らかになった。また、遷移段階の古いチョウノスケソウ群落は立地、土壌中の窒素量の化学的特性の違いによって7個の小群落に区分された。2年度は植生と環境条件の解明を引き続き実施すると共に、遷移初期段階における植物の繁殖、土壌呼吸と温度特性、土壌節足動物の生態の解明を目的として実施された。現地に6名の研究者が派遣された。観測の成果としては昨年、予備的に実施したスゲ属の生活形と種子繁殖の観察を踏まえて、本年度はムカゴトラノオの無性繁殖過程が調査された。予測性の低い環境変動下での繁殖特性や繁殖戦略について、ムカゴの色、大きさ、冬芽の状態が環境の変化を予測できるという実装的なアプローチが試みられた。パイオニア植物といわれているムラサキユキノシタは生活型と繁殖様式について調査され、環境への適応が繁殖様式に関係しているなど新たな知見が加わった。また、氷河末端域の土壌呼吸速度は温帯域の10%、同時に測定した土壌微生物のバイオマスはアラスカの10%、日本の5%程度であることが始めて明らかにされた。土壌節足動物の分布の解明においては、一見肉眼的には裸地と見なされるモレーン帯にもダニ等の節足動物が出現し、しかも個体数においては北海道の森林よりもむしろ多いなど興味深い結果が得られた。最終年度は2年度の観測を継続する形で、6名の研究者を現地に派遣した。実施項目は氷河後退域における植生と環境調査、土壌と根茎の呼吸調査、および繁殖生態調査が実施された。観測の成果としては植生と環境調査および土壌と根茎の呼吸速度の観測では興味深い結果が得られ、すなわち、観測定点周辺のポリコンの調査では植物および土壌節足動物の多様性が大きいことと、凍上および地温に関する興味深いデータが取得された。また、土壌および根茎の呼吸速度の観測では、実験室内での制御された条件での測定を行い、温度上昇に伴って呼吸速度は指数関数的に上昇するが、5度以上の温度依存性が急に高くなり、これは温帯域のものより高かった。これらを更に検証するためにより長期的な実験が必要であるが、今後、計画を展開する上で重要なポイントとなるものと考えられる。さらに、チュウノスケソウの雪解け傾度に伴う開花フェノロジー、花の性表現、とくに高緯度地域での日光屈性、種子生産の制限要因についての調査では、生育期間の短い寒冷地での繁殖戦略の特性が明らかにされた。初年度および最終年度には、衛星による植物分布の解析し環境変動、北極植物の種多様性と種分化について、ノルウェー側の共同研究者と現地で研究打ち合わせを持った他に、日本に研究者を招聘して、情報交換を行った。最後に3年間の調査、観測の報告、成果の総とりまとめを目的として、平成9年2月27、28日に北極陸域環境についての研究小集会、北極における氷河末端域の生態系に関するワークショップが開催された。研究成果の報告、とりまとめに熱心な議論がなされた。
著者
角田 裕之 小野寺 夏生
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-20, 2006

目的: 本論は,論文の引用関係をもとにして,研究者のインパクトを示す新たな計量書誌学的指標を提案することを目的とする.方法: 論文(Webページ等の資料を含む)とその論文から引用された論文との関係は,論文をノードとし,引用関係をエッジとする有向グラフで表すことができる.また,同一著者の論文,同一雑誌の論文等の論文集合体をノードとする引用関係グラフも考えることができる.これらの有向グラフに対応するグラフ行列の連立方程式や固有ベクトルを用いて,論文や著者のインパクトを示す指標を与えるいくつかのモデルを考案,検討する.結果と考察: 論文のインパクト評価モデルとして,次の2つを提案した: (1)引用元評価値配分モデル(DCM),(2)学術知識プールモデル(KPM),いずれのモデルも,引用が必ず過去への1方向であるという論文の特性を考慮して,インパクト評価指標としての連立方程式や固有ベクトルの解の存在を保証する工夫をしている.次に,著者のインパクト評価モデルとして ResearcherImpact(RI)を提案した.これは,グラフ行列の要素として,ある著者が引用した他の著者の論文数を用いる.計量書誌学の主要研究者15人に対し,この手法を適用した.結論: (1)ここで提案したDCM,KPM,RIでは,単純な被引用カウントに比べ,被引用数の多い論文/著者(ハブ)からよく引用される論文/著者が高い評価値を得る.すなわち,インパクトの高いコミュニティの抽出に有効である.(2)RIを用いてインパクトを計算する際には,同分野かつ同時代の研究者を対象とすること,自己引用及び同一所属機関内/同一研究グループ内の引用に注意することが必要である.
著者
小川 知之 亀高 惟倫 永井 敦 小川 知之
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究では工学に登場する非整数階微分方程式の解析およびその差分化を行った。また高階微分方程式の境界値問題のグリーン関数についてソボレフ不等式の最良定数計算への応用を中心に調べ、さらにパターン形成の問題と関連して分岐解析法を整備した。得られた結果は以下の通りである。1.流体力学に登場する非整数階微分方程式であるチェン方程式において、ピューズー展開法を用いてミッタークレフラー関数解を求めた。またこれらの初期値問題は、ミッタークレフラー関数の漸近挙動を用いることにより、(非整数階微分を含まない)2階および4階常微分方程式の境界値問題で近似されることを証明した。2.地球内部のマントルの運動に関連して,球面上でのラプラス作用素の有限要素法による差分化を行い、反応拡散系でのパターン形成の数値シュミレーションを行った.この問題はレーリー・ベナール対流のパターン形成などとも関連し,分岐理論による解析法を整備した.球面上に現れたパターンの球面調和関数による分岐解析などは今後の課題である.2.弾性理論に登場する4階常微分方程式の境界値問題のグリーン関数の区間長依存性を調べた。その結果、4階特有の興味深い現象が現れることを発見、解析的に証明した。同時に2M階常微分方程式のグリーン関数があるヒルベルト空間の再生核であることを証明し、この結果をソボレフ不等式の最良定数計算に応用した。
著者
Hiroki Oguri
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
Bulletin of the Chemical Society of Japan (ISSN:00092673)
巻号頁・発行日
vol.80, no.10, pp.1870-1883, 2007-10-15 (Released:2007-10-12)
参考文献数
98
被引用文献数
13

Ciguatoxins are the major causative toxins in ciguatera seafood poisoning. The limited availability of ciguatoxins has precluded structural elucidation and development of a reliable and specific immunoassay for detecting the toxins in contaminated fish. To seek a solution for the longstanding problem of ciguatera, we addressed the synthetic challenge by utilizing rationally designed model compounds of ciguatoxins. The C2 configuration and entire absolute configuration of ciguatoxin were successfully elucidated with minutest amounts of natural toxins, using an approach which combined partial structure synthesis, microscale chemical transformations, and the CD exciton chirality method. On the basis of the absolute configuration, the partial structures of ciguatoxins were designed and synthesized as haptens for the preparation of anti-ciguatoxin antibodies. Monoclonal antibodies (mAbs) against both ends of ciguatoxin CTX3C were prepared by immunization of mice with protein conjugates of synthetic haptens of the ABCDE-ring and the IJKLM-ring, in place of the natural toxin. Haptenic groups with surface areas larger than 400 Å2 were required to produce mAbs, which could bind strongly to CTX3C itself. A direct sandwich enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) using these mAbs was shown to detect CTX3C at the ppb level with no cross-reactivity against other related marine toxins, including brevetoxin A, brevetoxin B, okadaic acid, or maitotoxin. In order to make the sandwich immunoassay protocol a general method for detecting other ciguatoxins congeners, the preparation of mAbs for the left-end of ciguatoxin was investigated. Expeditious synthesis of the left end of ciguatoxin with installation of the 3-butene-1,2-diol side-chain of the A-ring as well as surface plasmon resonance (SPR) analysis of the antibody–hapten interactions are also described.
著者
外 須美夫
出版者
克誠堂出版
雑誌
麻酔 (ISSN:00214892)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.572-576, 2004-05
著者
石綿 肇 杉田 たき子 武田 明治
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.145-150, 1997-02-24

プラスチック製品は、生態系において分解しにくいことから環境問題として大きく取り上げられている。生分解プラスチックの開発、製品化も図られているが、現在、市販されている製品は大部分が既存プラスチックである。分解促進のために、ポリエチレンのような熱可塑性プラスチックへのデンプンの添加なども試みられている。メラミン樹脂をはじめとする熱硬化性プラスチックは、物理的強度を保つために、通常、製造原料として17%から50%のセルロースが加えられている。そこで、環境保全の観点から、メラミン食器の酵素的及び非酵素的分解について検討を試みた。食器用の未硬化メラミン樹脂コンパウンド及び2種類のメラミン樹脂製コップを粉砕したものを試料として用いた。コンパウンド及びコップ粉末に0.1Mリン酸緩衝液(pH4.5)中40℃でセルラーゼを48時間作用させたところ、コンパウンドではグルコースとして603ppm、コップ粉末では88ppmの糖が遊離した。セルラーゼ無添加では遊離糖は検出されなかった(Fig. 1及び2)。遊離糖のHPLC分析を行ったところ、主成分はグルコースで、セロビオースは見られなかった(Fig. 3)。この時、ホルムアルデヒドとメラミンモノマーの増加がみられたが、セルラーゼの添加による促進は認められなかった。従って、ホルムアルデヒドとメラミンモノマーの増加は、樹脂の非酵素的分解によるものである。コップ粉末での48時間後におけるこれら3種類のモノマーの合計は、原料の約3%であった。メラミン樹脂の非酵素的分解は、温度が高いほど促進され、また、酸性あるいはアルカリ性で促進された(Fig. 5)。これらの結果は、メラミン樹脂は自然環境下で酵素的、非酵素的に徐々に分解されることを示している。遊離したメラミンモノマーはある種の微生物により資化されることが知られており、モノマーによる二次汚染の可能性は低いと考えられる。
著者
澤勢 一史 延原 肇
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.32-40, 2009-02-15 (Released:2009-06-18)
参考文献数
17
被引用文献数
4

大量の画像情報を束構造として可視化することで,情報の大局の把握および未知の関係構造を発見するための,形式概念分析に基づく束構造可視化システムを提案する.このシステムでは,画像と対応する特徴を示す属性からなるコンテクスト表を作成し,属性の集合の包含関係を順序関係としたコンセプトラティスを得る.本研究では,コンテクスト表作成の際の属性選択の難しさに対応するため,直感的に理解しやすい7つの属性と,インタラクション機能を導入したシステムを提案し,ユーザが理解し易い束構造を得る. 提案システムをJAVAベースのプログラミング言語であるProcessingを用い,計算機(CPU=2.13GHz,MM=2GB)上に構築し,Corel Image Galleryより選定した1000枚の画像群を対象とした可視化実験を行う.5名の被験者によるアンケート調査および得られたコメントに基づき,提案システムによる束構造可視化の有用性を確認する.
著者
谷田 創
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

近年「食育」の重要性が指摘されるようになり、全国各地で乳幼児から高齢者まで様々な年齢層を対象とした食育が試みられている。米作り、イモ掘り、野菜の栽培など、農業体験を通して子ども達に食生産の大切さを学ばせる試みは以前から行われており、小中高の学校教育に「総合的な学習の時間」が取り入れられたことで再び脚光を浴びているが、これらは一過性の体験に留まっており、体系的な教育とはなっていないのが現状である。また、子ども達が生きた家畜に触れたり、見たりする機会は大幅に減少している。広島大学附属農場では、遠足や社会見学など地域の幼児及び児童を広く受け入れているが、家畜に触りたがったり、餌をやりたがったりする子どもがいる一方で、触りたいけれども恐くて手が出せなかったり、牛の大きさに驚いて泣き出してしまったり、畜舎に入ろうとしない子どもなど、家畜を見る体験が初めてという行動を取る園児がほとんどであり、「農」や「家畜」との分離を目の当たりにしている。本研究は、食材から食事までを扱う「食育」に加え、家畜を介在した教育を効果的に組み合わせることで、幼児に「食」「食材」「食を支える家畜」の関係性を認識させることを目的とし、そのための基礎的データを収集した。その結果、幼児に対する家畜を介在させた食農教育(家畜介在型食農教育プログラム)を実践することで、一般社会の食農リテラシーを高めることが可能となり、人と家畜との関係性も向上することが示唆された。今後は、様々な教育機関で実践可能な家畜介在型食農教育プログラムを開発することで、人及び家畜の福祉の向上、食の安全性の向上につながるものと考えられた。
著者
名久井 孝義
出版者
仙台電波工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この報告書では,研究課題に関して以下の観点から日本の明治期における女性スポーツ(主にボールゲーム,体操,柔道,戸外運動<アウトドア・スポーツ>)の性差について歴史的事実の掘り起こしと言説分析を行った.その1つは,生物学的性や性差を形成してきた医学・衛生学的言説と女性性や性差の社会規範を形成してきた社会・教育的言説の対峙性と相補性に着目した.2つ目は,体操を含めた欧米スポーツと日本的スポーツ,さらに国内外の戸外運動と女性性・性差の創造や変革との関連性に着目した.しかもその分析は,制度的資料以上にスポーツする側の女性が立ち現れる教育現場(ローカルな資料)の資料に基づいた.この論文では,既存の制度史研究での知見を補う女性スポーツの歴史的展開を提示した.研究の結果,女性スポーツにおける女性性や性差の創造と変革には,医学・衛生学的言説(科学的知)と社会・教育的言説(思想・実践的知)が時系列的に対立物の統一となって立ち現れた.しかも社会・教育的言説による女性性・性差(いわばジェンダー)の変革の転機は,前世紀初頭の国民国家形成期に胎動し,高等女学校の制度化と連動していた.明治期の女性スポーツでは,欧米女性スポーツと日本的スポーツが,「稽古の思想」「技術化の思想」という形で発見・創造され,両者が文化習合するなかで女性性を「品性=淑女=レディ」を育む教育方法として位置づけられて展開した.加えて,女性の自転車乗り(サイクリング)・登山(遠足を含む)などの戸外運動がステータス・シンボルとなり,女性へのスポーツ解放を促進した.
著者
守口 絵里
出版者
明治鍼灸大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

軽度発達障害、なかでも行動に障害を有するADHDをもつ子どもの集団生活における安全管理あるいは見守りという点でのICタグの有用性を検討するために、本研究では、疾患の有無を問わず一般の保育園に通う子どもを対象としてICタグシステム(RFID)を用いた実験を行った。実験の結果、保育士の背後にいる子どもが離れた際に保育士がその情報をすぐにキャッチできるという点で本システムは有用であった。ICタグシステムに対する保育士のニーズとしては、遠足のようにさらに大きい集団を引率する必要がある場合に、子どもの活動範囲も拡大するため有効であろうとのことであった。ただし、本実験のように研究者が同行しない状況下で使用するためには、アンテナを簡易に保持できることが求められる。ADHDを幼児期から鑑別することは難しい例が非常に多い。本研究の対象者にはADHD児は含まれておらず、多動性のみられる子どももいなかったため、ADHD児にとってのRFIDシステムの有用性についての確認はできなかったが、アラーム信号の頻度から多動性を推測し、経時的に子どもの行動をフォローアップすることは可能であると考える。
著者
三俣 昌子 江角 眞理子 楠美 嘉晃 安孫子 宜光 東 浩介
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

第一に血流下における内皮の増殖と粥状硬化発症の関連を検討した。層流性ずり応力に比べ乱流性ずり応力は内皮の増殖と単球接着を増加させた。内皮の増殖を抑制するp21^<Sdi/Cip/Waf1>(p21)は乱流による単球接着増加、内皮のTXNIP,VCAM-1,CCL5,CXCL10,L-selectin発現を抑制した。血流下でp21は単独で、または内皮の増殖抑制を介して、内皮のレドックスバランスを抗酸化状態へ導き、接着や遊走因子発現を阻止し、単球接着を抑制して抗粥状硬化性に作用すると思われる。第二に、粥状硬化発症への歯周病菌(Pg)の関与を検討した。ヒト大動脈のAtheromaのマクロファージにPg由来r40kDa蛋白が存在し、Fatty streak,DIT、冠動脈のAtheromaには認めなかった。Pg由来LPSで刺激した単球の培養上清は内皮のTLR2 mRNAを発現させ好炎症性に作用した。
著者
中村 卓司 SZASZ Csilla
出版者
国立極地研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では、北半球中緯度で最も高性能な流星レーダーとして稼動できる京都大学の大気観測用大型レーダーであるMUレーダーを用いて、種々の散在流星ソースの流星フラックスの変化を明らかにするとともに高緯度のEISCATその他のレーダーの結果と合わせてグローバルな流星数の季節変化分布を明らかにすることを目的としている。本年度は下記のように極めて順調に研究が進展した。1)データ解析とデータベース化 前年度から継続して、MUレーダーによる毎月24時間のキャンペーン観測を実施した。集積した流星ヘッドエコーデータは1年分以上にのぼり、これを解析し輻射点の天球上のマップの年周変化を得ることに成功した。すなわち、ソース(太陽、半太陽、向点方向など)毎の季節変化とその特性を明らかにした。また、光学観測との比較から流星エコーの対応する光度と質量範囲を推定した。散在流星の他、ヘッドエコー観測による群流星は希少であり詳しく解析した。とくに、10月のオリオン座流星群については2009年のアウトバーストを捉えることに成功し、レーダー散乱断面積とエコーの空間分布から、レーダーの観測空間範囲を精密に推定し、流星フラックスを求めることに成功した。オリオン座流星群は、2010年も観測時間を拡大して観測し、現在解析中である。以上のデータは、光学観測データとも合わせてデータベース化している。2)EISCAT他のレーダーとの比較検討 特別研究員がこれまで解析研究たEISCATはじめ種々の緯度(高緯度、低緯度)のレーダー観測データとMUレーダーの結果、性能を比較した。また、南極域初の大型大気レーダーとなるPANSYレーダーでのヘッドエコー観測が南天を含めた全天の流星をカバーする上で重要であることを示した。以上の研究結果は国際会議で発表し好評を得ており、論文誌に投稿(改訂)中である他、継続して数編を執筆中である。
著者
橋本 隆
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

γチューブリン環状複合体gTuRCは酵母、動物から植物まで保存されており、γチューブリン2分子とGRIPモチーフをもつGamma-tubulin Complex Protein 2(GCP2)とGCP3それぞれ1分子ずつから成るキャップサブユニット小複合体とさらにGCP4,GCP5,GCP6,GCP-WD(NEDD1)が追加された環状複合体が存在する。我々はアラビドプシスのGCP2とGCP3に蛍光タンパク質を融合させてゲノム制御領域を用いてmCherry-TUB6微小管標識アラビドプシス植物体で発現させ、微小管重合開始点をin vivoイメージングした。大部分のgTuRCは表層微小管上に出現する。そのうち約半分のgTuRCは短時間(5秒以内)に消えるが、残りの約半分は微小管上に出現してから5秒以内に新たな微小管を形成する。新生微小管の6-7割は約40度の角度で伸長するが、それ以外は既存の微小管に沿って伸長し、束化が起こる。カタニン変異株ではgTuRCは重合開始点に留まり、新生微小管が既存の微小管から切り離されることはなかった。従って、カタニンがgTuRCと新生微小管のマイナス端の間付近の構造を認識して、表層微小管の重合開始点からの切り離しを行っていると推測される。アラビドプシスにはEB1a,EB1b,EB1cの3種類のEB1があるが、EB1a,bは主に間期の微小管に局在し、EB1cは核内に局在し分裂期の微小管の機能を制御している。eblc変異株では紡錘体微小管とフラグモプラストの配向が乱れており、微小管薬剤に対して高感受性を示す。EB1cの分裂期微小管制御機能にはその特徴的なC末端が必須であり、EB1a,bでは代替できなかった。
著者
小幡 琢磨 佐々木 洋輔 久保村 千明 亀田 弘之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.615, pp.177-181, 2006-02-17

教師を必要とせずにエージェントを環境に適応させる枠組みとして強化学習がある.強化学習ではエージェントが環境に対して試行錯誤を繰り返すことにより,それぞれの状況に適した行動を学習することができる.試行はエージェントに実装されている行動の種類と状況の数によっては大量におこなうこととなる.現実的な環境を想定した場合にはこれらの数は増加してしまい,結果として学習が収束するまでには学習に反映されない大量の無駄な試行が存在することとなる.これらの無駄な試行には学習に有効に利用できる試行が存在すると考えられる.また状況間の類似を考慮することで,無駄な試行を減らすことが可能と考えられる.本研究ではこれらの無駄な試行に着目し,無駄な試行を経験として蓄積し,有効に利用することで学習速度を向上させることを目指した.具体的には,学習の過程における試行のなかで無駄な試行を学習に反映させる手法と,経験を蓄積することにより,類似した状況下で効率的に行動選択することのできる手法を提案する.
著者
廣島 文生 伊東 恵一 寺本 恵昭 島田 伸一 廣川 真男 松井 卓
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度-19年度科学研究費申請時に掲げた研究目標(a)-(e)にそって研究成果の概要を述べる.(a)基底状態の縮退度の評価:埋蔵固有値の縮退度の上からの評価を与える一般的な方法を構築した.またスピンを含む場合には対称性から基底状態の縮退度が少なくとも2以上であることを示した.スピンを含むハミルトニアンが生成する熱半群を「スカラーな積分核」で表現し,新しいエネルギー不等式を発見した.(b)基底状態の高次regularityと非存在:新井,廣川との共同研究で任意次数のregularityを示した.また赤外発散があるときには個数作用素の1/2乗の定義域に含まれる基底状態が存在しないことを示した.(c)Gibbs測度の確率論的解析:確率2重積分を含む連続パス空間上の確率測度の族のtightnessをV.Betzとの共同研究で示した.(d)くりこみ理論:場の理論の模型には有効質量が定義される.結合定数で展開したときの係数の発散のオーダーの物理的な予想は対数発散であるが伊東との共同研究で多項式的に発散することを示した.(e)全運動量を固定した模型の解析:ハミルトニアンを汎関数積分表示して解析した.全運動量=ゼロでの基底状態の存在が知られている.我々はこの基底状態が一意的であることを証明した.スピンがある場合には非連続なパス空間上の測度をつかった汎関数積分表示をJ.Lorincziとの共同研究で得た.その結果ある種のエネルギー不等式を示した.またその応用としてスピン-ボゾン模型の基底状態の一意性を廣川と共同で示すことが出来た.
著者
相澤 彰子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.94-104, 1995-01-25
被引用文献数
14

本論文では,確率的スキーマ貧欲法(Stochastic Schemata Exploiter,SSE)と呼ぶ新しい集団型探索アルゴリズムを提案する.SSEは遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithms,GA)と同様に,スキーマと呼ばれる超平面表現の処理により解空間の探索を進めるが,GAと比較して局所的探索処理を重視している点が特徴である.従来,GAに関しては,その適応的な大域的探索能力が長所として強調されてきた.これに対してSSEでは,現実の最適化問題への適用ではGAの大域的探索能力が必ずしも有効な形で反映されないという観点から,GAの大域的探索処理を,集団型探索の特徴を生かしつつ簡単化して,制御パラメータの数が少なく単純な探索法を実現している.論文中では,GAにおけるスキーマ処理を概観した後にスキーマ貧欲と呼ぶ性質を定義し,これに基づきスキーマ貧欲な探索アルゴリズムを構成,簡単なGA容易/困難テスト問題を用いて単純GAと比較・評価を行っている.