著者
佐藤 周友
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

算術的スキーム、特にp進整数環上の正則半安定族上の1サイクルのChow群の有限性と数論的な性質をコホモロジー的な手法で研究する。この手法ではエタールコホモロジーへのサイクル写像を主に用い、サイクル写像の単射性あるいは全射性を示すことによりサイクルの性質を引き出す。これにより、1サイクルのChow群のl進的な性質がかなり一般的な場合に明らかとなり、p進体上の特殊な有理曲面の場合には0サイクルのChow群を具体的に計算することも可能になった。
著者
神保 宇嗣 杉島 一広 小木 広行
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.315-323, 2004-09-30

日本でこれまであまり知られていなかったナニワズハリキバガ(新称)Anchinia cristalis(Scopoli,1763)を北海道本土から記録し,幼虫期および蛹期の習性とともに再記載した.日本のキバガ上科には類似した種はおらず同定は容易である.今回,4月に本種の幼虫がジンチョウゲ科のナニワズDaphne jezoensisの先端の葉数枚を綴ったシェルター内に見出された.幼虫は夜行性で,シェルター外で葉を食害する.蛹化は枝や壁面に尾端で懸垂した状態で行われ,繭が構築されないために蛹が裸出する.蛹はタテハチョウ科で知られる垂蛹に近い.成虫は5-6月に羽化した.国外での食餌植物としては,同じくジンチョウゲ科のヨウシュジンチョウゲDaphne mezereumおよびカラフトナニワズDaphne kamtschaticaの記録がある.本種には極東亜種A.cristalis kuriliensis Lvovsky,1990が記載されているが,この扱いおよび北海道集団の所属は今後の課題である.Anchinia属は旧北区から5種,東洋区から1種が知られるが,極東からは本種のみが記録されていた.知られている限りでは,本属の種はすべてジンチョウゲ科のDaphne属を寄主とする.また,原索動物サルパ綱の属Anchinia Rathke,1835の存在に気づいたが,ナニワズハリキバガの属Anchinia Hubner,1825のほうが先行するので原索動物のほうが新参同名となる.Anchiniaの科階級群の所属に関して,1970年代中期以降様々な提案がなされてきた.それらは大きく分けて三通りに分類される.すなわち,Hypertrophaを模式属とする科階級群にハリキバガ属を含めるとする第一の処置,Amphisbatisを模式属とする科階級群に含めるとする第二の処置,そしてハリキバガ属を含むたかだか6属からなる単系統性の高い亜科ないし族(模式属はハリキバガ属あるいはそれに最も近縁と推定されるHypercallia)を設けるという第三の処置である.第一の処置の根拠は,蛹が裸出し起立するという習性がHypertrophaとハリキバガ属に共通するというものである.しかし,本研究での観察により,ハリキバガ属の蛹が起立するのではなく懸垂することが明らかにされたため,この処置の妥当性は疑問視せざるを得ない.第二の処置は,ハリキバガ属とAmphisbatisの間に顕著な差違があるにしても,より適した群が見あたらないから,という消極的な理由によるものである.この処置は,ハリキバガ属とAmphisbatisが近縁であるとの誤解につながる畏れがあるために採用しがたい.それに対して,三つ目の処置は,その亜科あるいは族の単系統性を支持する形質が複数示されており,さらに先の二つの提案をした著者であっても,その群の近縁性は支持している.従って,この処置を採用しHypercalliinaeを認めることは妥当であろう.しかしながら,この亜科に近縁な分類群は特定されていない.ハリキバガ亜科の強く支持された単系統性と,それに近縁な分類群が未知であることを同時に示すため,本報ではLeraut(1997)の案を採用し,ハリキバガ属を広義マルハキバガ科の亜科Hypercalliinae(ハリキバガ亜科:新称)の一員として扱うこととした.マルハキバガ科は多系統的な分類群であることを前提とした"waste basket"として機能してきたので,ハリキバガ亜科が他の特定の群に近縁であると誤解される可能性は低く,また将来キバガ上科の科階級群の再編が行われる際にハリキバガ亜科が見逃されることも避けられるであろう.
著者
片田 範子 舟島 なをみ 鈴木 千衣 筒井 真優美 及川 郁子 常葉 恵子 平林 優子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

本研究は、現在の小児看護の実態を把握し、入院する小児に必要な看護ケアシステムを将来に向けて考察する目的で3年間に渡り行われた。1.混合病棟でケアされている小児の実態と質問紙の作成(平成2年度)東京近郊の病院の混合病棟での小児看護を質的に参加観察法や聞き取り調査を用いて検討し、その結果を踏まえて質問紙の作成を行った。2.小児の入院状況と看護婦の援助の必要性の質問紙調査(平成3年度)質問紙調査は、全国300床以上の総合病院から回答を得られた434病院で、小児専門病棟および成人との混合病棟の双方に入院している子どもを持つ親、看護婦(病棟婦長、看護部長を含む)、混合病棟の成人患者を対象に行われた。平成3年度に調査を実施し、平成4年にかけて分析を行った。分析結果は多岐に渡って得られ、平成4年には学会発表を行った。母親と看護婦の期待することのずれや、付き添っている者の疲労などの問題が存在し、これからの看護に望まれることが浮き彫りになった。また、小児をケアする看護婦の多くが、親との関りかた、成長発達に沿った援助、精神的支援などの領域で相談する人が欲しいと思っていた。3.小児リエゾンの導入と評価(平成4年度)「個々の小児の成長発達に合った看護の実践上の問題を中心に、小児を看護する看護婦に小児リエゾン的かかわりを持ちその評価を行う」ことを今回の導入の目的とし、平成4年には協力の得られた4病院で小児を看護している看護婦32名を対象にリエゾン・コンサルテーションを行った。来談の理由の主なものは「患児の生活や精神面の看護」、「小児看護をする自分について」、「家族の看護」についてと、事前調査と同様の結果であった。継続的にリエゾンシステムを活用し、看護婦が自分達の行っていることを定期的に見直し、解決の糸口を日常とは異なった面から検討する機会をもつことの意義が示された。
著者
山末 祐二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

この研究では、ヒエ属植物の種子休眠性の遺伝様式を交雑実験の手法によって解明することと、分子生物学的手法によって休眠に関与する遺伝子の単離とクローニングすることを目標とした。1.種子休眠性をもつ雑草型と休眠性を遺伝的に欠損した栽培型のタイヌビエの正逆交雑し、F_2個体が生産する種子の発芽率を個体ごとに調査することによって休眠性の遺伝様式を推定した。この結果、タイヌビエの種子休眠性には優生とする2対の主動遺伝子の存在が示唆された。2.タイヌビエとヒメタイヌビエの休眠種子、自然休眠覚醒種子、KCN処理で休眠覚醒したタイヌビエ種子と栽培ヒエの非休眠種子を供試して休眠種子に特異的なmRNAのcDNAをDifferential display法で検索した。この結果、二つの休眠特異的なcNDA、すなわち、EcD400とEcD700が検出された。また、EcD400とEcD700をノーザン解析したところ、休眠覚醒種子でもそれらのmRNAの発現が100%阻害されているのではなく、休眠種子に比べてかなり量的に抑制されていることが明らかとなった。クローニングされたEcD400とEcD700の塩基配列をデータ・ベース検索した結果、EcD400と高いホモロジーを示す既知のタンパクは検索されなかった。一方,EcD700のホモロジー検索では,さまざまな生物種のミトコンドリア内のATP合成酵素(H^+-ATPase、EC3.6.1.34)のαサブユニットが高い相同性を示した。3.交雑実験と分子生物学的解析は、ともにヒエ属植物の種子休眠性には2つの遺伝子が関与することを示し、その一つがミトコンドリアのH^+-ATPaseをコードする遺伝子ある可能性も示唆された。この知見と我々のこれまでの研究成果を合わせ考えると、ヒエ属植物の種子は好気呼吸によって休眠を維持し、嫌気呼吸能を高めることによって休眠から覚醒するとする考えられた。
著者
小泉 実
出版者
一般社団法人照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.698-701, 2000-09-01
著者
佐野 久 佐藤 昭二 金子 尚 谷本 泰
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, 1978-06-15

河口湖大橋における鋼製フローチングケーソン工法は, 鋼製ケーソンの製作と進水方法, 20mもある軟弱シルトの掘削法, 岩盤が一様でなく部分的に傾いている点, 岩盤掘削法などに問題があった。これらの問題を解決するため, 沈設にはケーソン沈下地点に固定さん橋, およびステージングを設けてジャッキ方式を採用し, 軟弱地盤の掘削は, 土質調査資料を基に行なった。また。傾きおよび滑動を防ぐため, 岩盤に接している刃口部付近の掘削を重点的に行ない, 高気圧中における削岩機の能力を停滞させないように注意し, 発破の掘削順序も効果のあがるよう工夫している。そして, 鋼製ケーソンの部材計算, ケーソンの組立て, 製作をはじめ, 装置, 作動方法, コンクリートの打設, 沈下, 管理, その他設備にいたるまで詳しく述べている。
著者
大谷 実
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,数学と実生活を結ぶ学校・地域・社会の連携モデルを開発し評価することである。これは,2つの分野(ア),(イ)において連携システムを構築することである。(ア)は,学校での数学の教科外活動システムの開発である。モデル国として,オランダのMath-Alympiad並びにMath B-Dayのコンテストで,日常事象の考察に数学を生かす問題を取り上げている。こうした学校での教科外活動は,わが国ではほとんど実施されておらす,その組織,運営形態,実施方法等を実地調査し,それを踏まえて金沢大学附属高等学校で実施し,その成果を評価した。このことに関して,親族の急逝のため,オランダの実地調査を実施することができず,実地調査費用を返還した。(イ)は,地域・社会との連携システムの構築であり,2つの下位課題(i),(ii)を遂行した。(i)は,金沢大学教育学部の地域貢献事業の一つとして,金沢大学のサテライト施設を会場として主催する校外学習の機会である「算数・数学チャレンジクラブ」のカリキュラム開発である。その際に,カリキュラムを日常事象の考察に算数・数学を生かす内容で編成した。(ii)は,諸外国の「数学博物館」や,わが国の「ハンズオン・マス研究会」等の調査研究をすることにより,上記クラブ等に参加する児童・生徒・保護者・一般市民が,触れて観賞することができるハンズ・オン的な展示ブースについての調査を行った。上記に述べた理由により,当初予定していた展示ブースの設置は実現できなかった。
著者
寺田 実
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.664-669, 2002-06-15

今回の問題は,2000年11月につくばで開催されたアジア地区予選の問題G Telescopeである.
著者
武藤 芳照 若吉 浩二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

水泳競技(競泳)のレースには、ストローク局面、スタート局面、ターン局面及びフィニッシュ局面が存在し、競技力向上にはこれらの要素をより客観的に評価していく必要がある。そこで、我々は、1987年より、ビデオ映像を用いた競泳のレース分析に関する研究を開始し、レース中における各要素を客観的に評価して、それらのデータを選手や指導者にフィードバックすることを試行してきた。そこで、本研究の目的では、1)大幅なハードウェアの改良により、分析時間の短縮及び分析データの精度を高めること、2)システムアップとソフトウェアの開発により、自動データ入力を試みること、3)個人データベースのネットワーク化及び個人のデータの数年間の比較を瞬時に行えるようにすること、4)レース分析結果より、競技力向上に活用可能な研究成果を得ることを目的に行ったものである。その結果、レース分析の実験システムにおけるハードウェア及びソフトウェアの開発により、分析データの即時フィードバックを実現することができた。また、過去5年間のレース分析結果の個人別データベースを作成し、インターネット上で閲覧可能なデータベースシステムとしての構築に成功した。これらのデータは、個人名、種目、大会等のキーワード入力により、個人データの数年間の比較または選手間の比較を瞬時に行えるようにした。さらに、これまでのデータを活用することで、スタート、ターン及びフィニッシュタイムから、それらの技能の能力を評価することも可能となった。
著者
遠城 明雄 日比野 利信
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、門司市(福岡県)、下関市(山口県)、仙台市(宮城県)を主なフィールドにして、建造環境(インフラ)の建設過程と各種選挙における地縁集団、実業団体、政党、民衆などの対立と協同の諸関係を検討することによって、近代日本の地方都市における支配構造と地域政治の具体的諸相とその変容を明らかにしようとした。その結果、各集団はその社会経済的位置に規定され、また各都市は中央政府との関係に影響を受けつつ、都市空間の生産をめぐって対立と協同を繰り返しながら、再編成されていく過程が明らかとなった。
著者
初見 基 北島 玲子 OPHULSーKASHI ライノルト
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

科学研究費を受けて行なわれた4年間にわたる本研究の究極的な目的は、1989年の「ベルリンの壁崩壊」、そして90年の東西ドイツ統一に端的に現れた<世界の冷戦構造の解体>を背景に、1990年代のドイツの文化状況がどのような変化をこうむったか、知識人の発言及び発表作品に即して具体的に険証し、それを20世紀思想史の枠組みに位置づけることにあった。ただ、この4年問は、その研究のための準備段階と当初から構想されており、第一に据えられた具体的な課題は、基礎資料の収集・整理だった。そのなかではとくに、1990年以降刊行されたものを中心とする、新刊作品・研究書の充実化、雑誌・新聞等に掲載された論文や記事等の資料の収集、そして、コンピュータ・ネットワークを通じて流されている、主として90年代そして2000年代に入ってからのドイツの言論状況をめぐる資料収集が試みられた。こうしたもくろみの7割方は達成されたかと思うこの4年問の作業において、第二には、上記資料の整理・ファイリングが試みられた。ただ、量的に多いだけでなく、質的にも多岐に渡るため、いまだ充分な整理には到っていない。これは今後の課題として残ってしまった。また第三に、これまでも行なわれてきた共同研究が継続された。定例研究会が開かれた他、全国から研究者が集まるドイツ現代文学ゼミナール、オーストリア現代文学ゼミナールなどにも参加し、研究成果の検討がなされた。この成果の一端は、『成果報告書』にまとめられる他、それとは別途に、4年間の研究の最新成果が論考としてまとめられ、2002年度末に公表される予定である。そこにおいては、統一ドイツにおける、<民族>、<国家>、<性>等の<アイデンティティ>が、従来とではいかに変化しているか、という点についての考察がなされる。
著者
柳本武美
雑誌
科学哲学
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.151-164, 2003
被引用文献数
1
著者
小林 繁樹 佐藤 章 古口 徳雄 水流 京子 和田 政則 宮田 昭宏 中村 宏 渡辺 義郎 八木下 敏志行
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.13-18, 2004 (Released:2007-06-12)
参考文献数
14
被引用文献数
6 7

Indication of early treatment remains controversial for patients in poor clinical condition (Hunt & Kosnik Grade 4 or 5) after subarachnoid hemorrhage (SAH). Since 1997, we have adopted endovascular treatment using Guglielmi detachable coil (GDC) as a treatment option for these patients. In this study, we compared clinical courses of the cases treated in 1990-1996 to those treated in 1997-2002 to evaluate the efficacy of changes in treatment strategy. Between 1990 and 2002, 130 cases with SAH in Grade 4 and 5 underwent angiography as candidates of early aggressive treatment in our hospital. For the 63 cases in 1990-96 (Group 1), treatment options were early and intensively delayed craniotomy surgery and conservative management, while for the 67 cases in 1997-2002 (Group 2), GDC embolization at acute stage was added to these 3 treatment options. We compared the 2 groups of patients in terms of clinical courses and outcomes, assessed with Glasgow Outcome Scale Score (GOS) at discharge. The percentage of the patients in which aneurysm was occluded at acute stage increased from 67% in Group 1 to 87% in Group 2 for Grade 4 and from 33% to 52% for Grade 5. In Group 2, 44% of Grade 4 and 83% of Grade 5 patients were treated by GDC embolization. The outcomes of the cases in both Grade 4 and 5 were better in Group 2 than in Group 1. That is, for Grade 4 cases, the percentage of Good Recovery (GR) significantly increased from 7% in Group 1 to 27% in Group 2. And for Grade 5 cases, good outcome (GR or MD) increased from 5% in Group 1 to 18% in Group 2. Two patients recovered completely from Grade 5 in Group 2, both of which were treated with GDC while none in Group 1 recovered completely from Grade 5. The incidence of symptomatic vasospasm was not changed between Group 1 (20%) and Group 2 (16%). The introduction of GDC embolization extended the indication of early treatment for severe SAH patients because it was less invasive and, as a consequence, improved the outcome of those patients.
著者
御手洗 昭治
出版者
札幌大学
雑誌
比較文化論叢 : 札幌大学文化学部紀要 (ISSN:13466844)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.A33-A43, 2004-10-29

Former U.S. President James (Jimmy) Earl Carter, Jr. won the Nobel Peace Prize on October 11, 2002 for his "untiring effort" to find peaceful solutions to international conflicts. This article explores: 1) Mr. Carter's guiding principle that conflicts must, if possible, be resolved through mediation and international cooperation within international law; 2) a case study of the historical record of the Haiti incident in 1994 with reference to the free-lance diplomacy of the former President; and 3) how Mr. Carter, the first U.S. President to visit Hiroshima, views postwar Japan and U.S.-Japan relations.
著者
鴨志田 昭輝 松本 勉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ
巻号頁・発行日
vol.96, no.365, pp.15-21, 1996-11-18

近年, テレホンカード等のプリペイドカードの変造による不正使用が社会的な問題となっている. カードを変造しようとする者の多くは公衆電話機等を盗んで解体し, カードのライタ(書込装置)を入手し不正に動作させて変造を行なう. 本研究では複数の種類の情報記録方式を同時に用いることで, より変造され難い記録方式を考察し提案する. これにより, カードを不当に書替えることで変造を行なおうとする者はより多くの端末を盗んで解体してカードの記録装置を得なければならない. 提案する方式はテレホンカード等の磁気記録方式だけでなく, ICカードなどに幅広く応用可能なものである.