著者
畔上 泰治
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

第二次世界大戦後のドイツにおける教育は、戦争に対する深い反省から出発した。取り分けアメリカ合衆国やイギリス、そしてフランス占領地区においては、ナチ政権がユダヤ人やシンティ・ロマなどを「共同体異分子」とし、暴力を用いて排除したことに向きあい、徹底した脱ナチ化政策が実行された。こうした中において宗教や言語など文化を異にする人々との共存を目指した異文化・他民族理解教育は大きな位置を占めていた。その重要性は、東西分裂後の西ドイツにおいては、「奇跡的な経済復興」にともなう「外国人労働者」およびその子弟の増加を前に、ますます高まっていった。その中においては、非キリスト教文化圏出身者、取り分けトルコ人労働者・子弟との共存が大きな課題であった。1990年の東西ドイツ統一後は、厳しい社会的な現実に対する不満が次第に顕在化するようになった。統一にともなうインフラ投資のための増税、経済不況による高い失業率などを背景に、ネオナチ等の極右勢力の不満は外国人や東欧からの帰国移住者、難民など社会的弱者に向けられ、暴力行為が頻繁に起こるようになった。これは戦後一貫しで脱ナチ化を唱えてきたドイツの教育界にとって、大きな衝撃であった。その中でまた、マルチメディアの発達が青少年の行動に与える影響も大きなテーマとして登場してきた。即ち、インターネット等を通した外国メディアとの接触は、異文化理解教育に大きな貢献をなしうる一方で、他方においては犯罪の助長という負の側面をも露呈した。いま、インターネット、コンピュータゲーム、CD、DVDなどのメディア・ソフトを通した多量の情報を前にして、如何に若年者を保護するかという課題が突きつけられている。
著者
多田 孝志 米田 伸次 米田 伸次 渡部 淳 大津 和子 藤原 孝章 森茂 岳雄 嶺井 明子 多田 孝志
出版者
目白大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本共同研究では、以下を目的とする研究を理論研究分科会と実践研究分科会との協調により進めてきた。(1)国際理解教育の理論的研究をなし、その概念を明確にしていく。(2)カリキュラムに関する諸論考を分類・考察し、知見を深め、児童・生徒の発達段階との関連をさせつつ国際理解教育のカリキュラムの特色を明らかにする。(3)全国規模で国際理解教育の現行カリキュラムを収集・分析し、考察を加え、問題点や課題を把握する。(4)国際理解教育のさまざまなモデル・カリキュラム案を開発し、提案する。またカリキュラム作成の基本的な考え方や教師のカリキュラムデザイン力、基本的技能としてのコミュニケーション力等について考察する。3年問の研究の成果として、実践研究分科会では、グローバル時代における国際理解教育の目標、学習領域・内容等を考察し、そこからカリキュラム開発のフレームワークを作成した。それらをベースに、学習領域に対応した多様なモデル・カリキュラムを開発してきた。またカリキュラム開発に関わる、評価、教師のカリキュラムデザイン力等についても考察し、在るべき方向を明らかにしてきた。理論研究分科会では、国際理解教育の歴史的変遷、関連諸学会の研究の方向や海外の国際理解教育の動向、カリキュラム開発の理論等について検討し・考察し、国際理解教育の概念を明らかにしていった。なお、研究成果は2冊の報告書にまとめ、また日本国際理解教育学会ホームページでも公開している。
著者
C P.Scherrer
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、以下の四点に重点的に取り組んだ。ルワンダ、ブルンジにおける過去の大量虐殺と集団暴力、コンゴ民主共和国の集団暴力、少数民族(特に脅威にさらされている少数民族と先住民族の権利)のための国際的な人権保護機構について。1.中央アフリカにおける実地調査は、主要アクターへのインタビューと観察調査により行った。ルワンダには「ガチャチャ(フランス語ではガカカ)」として知られる大量虐殺を裁く法廷がある。この調査では、近代化し、改良されたガカカ法廷の進展に注目した。試験期間を2005年に終了したガカカ法廷は、100万を超える事例を抱え、大量虐殺を裁く世界最大の法廷となった。事例のうち8割はすでに取り上げられている。シェラーは1994〜95年以降、大量虐殺後の裁判に深く関与している。2.破綻国家ブルンジとコンゴ民主共和国での活動-ブルンジ新政府の政策は、国家統一を目標としている。しかし、同国は説明責任を欠き、裁判の開廷にも解放国民軍(FNL)との話合いにも失敗し、その結果として人権侵害が増加した。キヴ州における衝撃的状況のため、コンゴ民主共和国は世界最悪の緊急事態に陥っており、国連組織と国際救済委員会の調査によると、1998年以来、530万人が亡くなっている(現在も紛争と大量虐殺による残虐行為が続いている)。3.人権保護機構に関する活動は、2007年の7月〜8月にかけて、ジュネーブにある国連で継続して行われた。しかし、そこでは、国連人権理事会によって、主要アクターである国連先住民作業部会(WGIP)が、時期尚早の段階で廃止されていた。先住民族の人権保護を目的とした恒久的な機構に関する交渉は、滞っている。WGIPの主な業績である「先住民族の権利に関する国連宣言」の草案は、2007年9月に国連総会によって採択された。
著者
大林 正博 井出 雅弘 久保木 富房
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.591-598, 1997-12-01
被引用文献数
6

アレキシシミアを伴う書痙患者に対して, 5年余り(200回余り)のフォーカシングによる面接を行った。面接第30回くらいまでの話題の大半は, 右手の違和感など症状に関するものであった。しかし, 「日常の問題が出ないこと」の指摘などの直面化をしたり, 面接140回頃よりコーネルによる方法を取り入れたこともあり, しだいにアレキシシミアとしての印象は薄らぎ, さまざまな「気がかり」なことに触れたり, 神経症的な葛藤や不安を表現するようになった。一方, 書痙症状は徐々に軽快し, 去勢不安とも取れる事柄を語るようになった第170回頃よりほとんど完全に消失した。フォーカシングは心身症に対しても試みる価値がある治療技法であると思われた。
著者
大藪 加奈
出版者
金沢大学
雑誌
言語文化論叢 (ISSN:13427172)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.131-158, 1998-03

昨年に引き続き,自分のことを語ったり,書いたりしそうにない主人公を扱った作品で,語りがどのように可能になっているかという事を,テイモシー・モーのThe Redundancy of Courage(1991)をテキストとして見てゆく。舞台となっている東ティモアは,1996年のノーベル平和賞で有名になったが,ここでは内戦やゲリラ戦下のマイノリティという,不安定で危険な状況の中,どの陣営にとっても「便利屋」である事で生き長らえようとする中国人主人公の姿と,彼のアイデンティティーの問題を考察し,同じように危険な状況に巻き込まれてゆく小数民族の主人公を描いた,ブッチ・エメチタのDestination BiafraやV.S.ナイポールのThe Mimic Menなどと比べ,書きことばによって形成されるアイデンティティーのあり方について考える。
著者
小柳 公代 本多 秀太郎 武田 裕紀
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

我々は、科学思想上でのデカルト、パスカルのこれまでの位置づけに疑問を提出し、通説成立のゆえんを当時の時代状況の中へ置きなおして検討し、それを広く内外の研究者に発信することを目的として2年間の研究活動をおこなった。具体的には次の7項目:(1)実験や科学史での専門的知識をもつ研究協力者をまじえた研究会、(2)海外協力研究者を招聘してのワークショップ、(3)海外調査研究、(4)公開実験会、(5)デカルト、パスカル科学、思想関係書誌作成、(6)科学史学会年会での報告、(7)成果報告集(欧文)の刊行、を挙げた。このうち(2)が海外研究分担者の来日とりやめによって実現できなかったほかは、すべて実行し、多くの稔りをえた。研究会での討議から、デカルトでは17世紀のネーデルランド、イギリスをも含む生理学の発展に注目すべきことを発信し、パスカルについては、計算機の考察から単位数の研究を深め、『パンセ』のパスカルとの有機的関係なども議論できた。とりわけ、数種の真空中の真空実験の復原公開実験と科学映画のプロ撮影者による図解つき記録映画DVD作成は、予期した以上の反響をよび、大きな成果をあげた。ブレーズ・パスカル国際センター主催のDVD上映会では、我々の研究報告に対して、フランス・イタリアの研究者たちから多くの意見が寄せられた。我々もまた20年前に詮議した「実行可能性」「思考実験」の問題から、空気の弾性についてのパスカル、ロベルヴァルの認識の違いを討議するところへと進んた。また、装置のガラス管端をふさぐ「膀胱膜」の正体を追求し、パスカルの風船の実験との関連などで研究を進捗させた。実際に膀胱膜、膀胱風船を作って実験することが今後の課題である。収集したデカルト・パスカル書誌は、近々にWEB搭載して、内外の研究者の供覧に付する。
著者
宮本 陽一郎 鷲津 浩子 竹谷 悦子 馬籠 清子 ロンベール ラファエル
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

筑波大学プレ戦略イニシアティブ「〈知識のコズモロジー〉、あるいは〈わかる〉とはどういうことか」と〈デザイン〉をキーワードにした共同研究を行なった。また『アメリカ文学評論』21号〈特集ネットワーク〉(2008年)と22号〈特集デザイン〉(2011年)、共著本『知の版図』(悠書館、2008年)を出版した。
著者
後藤 順一 眞野 成康 島田 美樹 山口 浩明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

プロテオミクス手法を駆使して、脳内胆汁酸の機能解明に挑戦するとともに、胆汁酸シグナル伝達解析法の構築を試みた。まず、成長ホルモンとケノデオキシコール酸の結合につき、アフィニティーラベル化法により解析し、受容体結合部位とは異なる部分にケノデオキシコール酸が結合することが判った。次に、特異的誘導体化法と疑似ニュートラルロスを組み合わせるリン酸化タンパク質解析法を構築し、本法が複雑なタンパク質混合物中のリン酸化タンパク質の特定に有用なばかりか、リン酸化部位の同定にも優れることが判明した。さらに、ケノデオキシコール酸固定化cleavable affinity gelを用いて肝細胞中の結合タンパク質の抽出を試み、胆汁酸結合タンパク質として知られているジヒドロジオールデヒドロゲナーゼのほか、ペルオキシレドキシン1 がケノデオキシコール酸と結合することが明らかになった。
著者
花井 信 柏木 敦 谷 雅泰 三上 和夫
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

日野村は、三方を山に囲まれた、扇状地一帯に開けた。米を除けば、産業の主力は桑栽培であり、次いで木材・炭である。人口構成は、日露戦争後の時期でいうと、年齢に応じたピラミッド型を形成している。結婚世帯の増加による児童増であり、村の再生産にとって大きな意味を持つ。学校設置の地域については、日野村の産業の中心地である、間山区に置かれた。人口集密区でもあったのだろう。学校暦、たとえば休日については、地域の農繁期にあわせて学校も休日になる、村の神社の祭日にあわせて学校は休日になるなど、地域一体型といえる状況であった。学校行事としての運動会は、明治期には登場しない。山間僻地ともいえるところでは、運動会として行くところも近在にはなかったのだろうか。明治30年代になって、同窓会・夜学会・青年会が結成され、活動を開始する。それらに学校教師が参加し、学校をそれらの活動場所として提供する。学校と地域社会の連携が、この時期から始まると見ていい。子守などの仕事で学校に来られない子どもに対しては、特別学級が作られて、受け皿を用意した。貧しい農村にあっては、その状況に応じた学校態勢が必要だったのである。これを慈善的教育と考えるのではなく、地域に応じた学校づくりと積極的に評価すべきである。
著者
平松 携 Hiramatsu Sugaru ヒラマツ スガル
出版者
尾道大学経済情報学部
雑誌
尾道大学経済情報論集 (ISSN:13469991)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.75-120, 2009-12

1 戦前の運動活動 戦前に開校したのは、尾道商業学校、尾道高等女学校、尾道中学の3校である。運動会は、3 校とも創立後の早い時期に開催している。このことから運動会は学校教育の範疇で重要な行事の一つであった。寒中稽古は、3 校とも1 月の寒期に武道の寒稽古を10 日間程実施している。寒中稽古は、心身の鍛練を目的にしたもので3校とも学校教育で価値ある行事の一つであった。3 校の運動の特長ある行事をみると、尾道商業学校は大遠泳であった。尾道高等女学校の運動は女性らしいバレーボールとテニスに人気があった。尾道中学校は、毎週、尾道中学から千光寺まで3キロメートルのマラソン、月に1度の10 キロメートルのマラソン、年に1度の18 キロメートルのマラソンであった。2 戦前から体操・体練から今日の保健体育へ尾道高等女学校の教科をみると、開学からの昭和17 年まで体操科、昭和18 から21 年まで3年間の教練、戦後の昭和22 年から23 年の2年間の体育、24 年から今日までの保健体育と変遷してきた。3 戦後の運動部の活躍広島県高等学校総合体育大会の団体優勝、総合優勝を学校別にみると、各校が運動部の隆盛が読み取れた。昭和20 年代は尾道北高等学校の独占から、昭和30 年代は尾道商業高等学校の独壇場と移った。昭和40 年代以降は尾道高等学校の黄金時代となっていった。広島県高等学校野球連盟で甲子園に尾道商業高等学校が7回出場し、準優勝2回を数えた。また、尾道高校の水泳男子は全国大会、国際大会で優秀な成績を残した。昭和20 年代と30 年代において、好成績をあげた運動部指導教員は、母校に赴任し指導した教員が多かった。Ⅰ 学校の開校と研究目的Ⅱ 戦前中等教育の身体活動から1 戦前における各校の運動会(1)尾道商業学校の運動会(2)尾道高等女学校の運動会(3)尾道中学校の運動会2 寒中稽古(1)尾道商業学校の寒稽古(2)尾道高等女学校の寒稽古(弓道)(3)尾道中学校の寒稽古(柔道、剣道)3 尾道商業学校の大遠泳4 尾道高等女学校のバレーボール5 尾道中学校のマラソン・中国駅伝Ⅲ 戦前の体操から戦後の保健体育へ1 尾道高等女学校から今日の尾道東高等学校の教科の変遷 2 尾道高等女学校の開校から100 年間の保健体育担当教員Ⅳ 戦後の運動部活動1 広島県総合体育大会優勝校の変遷2 尾道商業高等学校の野球部の活躍3 尾道高等学校の水泳部の活躍4 各高等学校の運動部の活躍Ⅴ 終わりに
著者
加納 隆 今岡 照喜 大和田 正明 大和田 正明 JAYANANDA M.
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

隠岐島後の基盤岩中に, 新たに典型的なS-type花崗岩を見出し, その産状と岩石学的性質を明らかにした. また飛騨片麻岩に伴うミグマタイト質花崗岩との性質を比較し, 産状は同じでも, 母岩の片麻岩の岩相構成と対応して両者に違いがあることを見出した. これにより, 従来飛騨-隠岐帯として一括されてきたが, 両者は異なる地質体に帰属する可能性が大きいことを示した. また併せて飛騨帯とダルワールクラトンの花崗岩類の温度構造や熱史について比較・検討した.
著者
郡司 賀透
出版者
筑波大学大学院博士課程教育学研究科
雑誌
教育学研究集録 (ISSN:03867927)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.63-73, 2004

1. はじめに 1970年代以降、欧米を中心に理科教育内容選択過程のポリティクスを論点とした研究が展開されてきた。レイトン(1973)が19世紀のイングランドにおける理科カリキュラムのポリティクスを歴史的に分析して、一連の研究の先鞭をつけて以来、 ...
著者
樋口 岳雄
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の最終目標は、B_s中間子のJ/ψ中間子とΦ中間子とへの崩壊を利用し、時間に依存した解析手法によってΔГs/ГsやCP非対称パラメータを決定することである。データサンプルが高統計になった場合の検出器の応答のモデル化が非常な難題であることが判明し、研究計画期間内に最終目標に至ることはできなかったが、研究過程で検出器の応答の精密なモデル化に成功した。時間に依存した解析手法の研究では、B中間子の崩壊点の決定結果とその誤差をどう解釈するかが精密測定の要である。これは検出器の応答が正規分布を示さないため、誤差自体も信頼性の低い値となるからである。本研究において、崩壊点の決定結果に付随するX^2パラメータを修正した物理量の考案と導入によって、B_d中間子の崩壊モードによらずに崩壊点の決定誤差を訂正できるモデルを発見した。これは分岐比の小さい崩壊モードの検出器応答を、任意の崩壊モードを用いて決定できるメリットを意味する。このほか、B_d中間子の二次崩壊粒子のうち有限の寿命をもつ粒子が与える崩壊点決定への影響の新しい評価方法の提案や、ΔzからΔtを求める場合の運動学的により正しい計算方法の発見など、種々の新しい成功をおさめた。そのうえで、ここれらのモデル化と改良によって、Belle実験が収集した全Y(4S)共鳴のデータを用い、CP非対称パラメータをS=+0.668±0.023士0.013、A=+0.007±0.016±0.013とこれまでの最高精度で決定することに成功した(本結果は現在出版準備中である)。本研究のここまでの成果を基に、引き続き研究を続行する。
著者
高橋 京子 川瀬 雅也 東 由子 廣川 和花 宮久保 圭祐 江口 太郎 原田 和生 村田 路人
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

博物学的生薬資料並びに医療文化財に基づくプロファイル情報は、実地臨床使用の根拠を有し、伝統医療の国際化に伴う材料天然物の有効性・安全性・均一性を担保できる標準化インデックスであることを示唆した。江戸・享保期の薬種国産化政策の実践例として育種・栽培されてきた大和芍薬を対象に、網羅的元素分析(メタロミクス解析)とγ線を利用したメスバウワー効果測定法を構築し、原料生薬の品質が漢方薬(当帰芍薬散)の臨床効果に反映することを明らかにした。
著者
芦川 孝三郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.46-51, 1972-02-29
被引用文献数
2
著者
佐藤 隆幸 RAICU Valerica 川田 徹
出版者
高知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

開発に関する基礎研究シャイ・ドレーガー症候群では、延髄を中心とした神経変性のため血管運動中枢が冒される。そのため、動脈圧反射失調となり重度の起立性低血圧になる。そこで、圧センサー→人工的血管運動中枢→電気刺激装置→交感神経刺激装置→交感神経からなるフィードバックシステムを試作開発した。シャイ・ドレーガー症候群様の動脈圧反射失調を呈するラットでは、head-up tiltにより、数秒以内に動脈圧が60mmHgまで低下するが、本装置を埋め込んだラットでは、head-up tiltによる動脈圧低下を検知した人工的血管運動中枢から、自動的に電気刺激の頻度が増加し、動脈圧の低下が防止された。さらに、その機能的ダイナミクスは、生体固有の動脈圧反射と類似していた。すなわち、本装置が、生理的な血管運動中枢の機能を代行できたことになる。以上のようなことから、シャイ・ドレーガー症候群の起立性低血圧を克服するバイオニック動脈圧反射装置の開発は可能であると結論づけられた。ヒト動脈圧反射のダイナミクスの同定法の開発バイオニック動脈圧反射装置を臨床応用するためには、まず、ヒトの動脈圧反射のダイナミクスを同定する必要がある。しかし、その同定方法が未確立であった。そこで、新しく同定方法を開発した。健常男子(20-30歳)の撓骨動脈をトノメータ法で測定しながら、チルトベッドのチルト角を0か30°に4秒毎にランダムに変えた。ついで、動脈圧反射を開ループにするために、トリメタファンを持続投与しながら同様の計測を行った。チルト角変化が動脈圧変動に与える影響を伝達関数として記述した後、動脈圧反射の開ループ伝達関数を推定した。開ループ伝達関数の定常ゲインは5.4±2.1で、入力周波数の増加とともに、ゲインが減衰する低域通過特性を示した。遮断周波数は、0.02Hz付近であった。
著者
寺岡 慧 高桑 雄一 岩本 安彦 馬場園 哲也 早坂 勇太郎 中島 一朗 唐仁原 全 東間 紘 渕之上 昌平
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

膵虚血、虚血再灌流傷害と微小循環障害の機序について、赤血球脂質膜および膜骨格蛋白の構造解析、赤血球連銭形成、変形能、通過能の面から検討し、以下の知見を得た。1.Ektacytometer法による赤血球、赤血球膜の変形能、膜安定性の検討A群(健常対照群)、B群(非糖尿病透析患者)、C群(非腎不全糖尿病患者)、D群(糖尿病透析患者)の4群間において、Ektacytometerを用いたレーザー回折法により、全血、RBCおよびRed Ghosts(RGs)の変形指数(deformability index:DI)を検討した。(1)赤血球、赤血球膜の変形能の検討:全血ではB群のDIはA群と同等であったが、C群およびD群では低下する傾向を示した。赤血球のDIについてもB群はA群とほぼ同等であり、C群、D群では低下していた。しかしRGsのDIについては4群間で差は認められなかった。また赤血球をフェニルヒドラジンで酸化してレーザー回折法を用いて変形能、膜安定性を検討したが、酸化により赤血球の変形能は低下した。またRGs内に酸化ヘモグロビンを封入すると変形能の低下と膜安定性の亢進が認められ、赤血球膜骨格蛋白間の相互作用が変化したことを示唆すると考えられた。(2)赤血球膜の安定性の検討:赤血球のRGsに一定のshear stress(750dyn/cm^2)をかけ断片化を検討した。DIが0.5(50%)となるT50は、A群15.6±2.3sec、B群20.25±2.63sec、C群17.9±4.02sec、D群16.25±1.44secであり、むしろB、C群で赤血球膜の安定性は増加する傾向が認められた。2.連続減衰負圧式ニッケルメッシュフィルトレーションによる赤血球通過能の検討4群間で、赤血球希釈溶液に-50mmH_2Oまでの連続減衰負圧をかけ、径4μmのニッケルメッシュに対する通過能を検討した。Flow Rate-Pressure曲線はB、C、D群ではA群と比較して右にシフトしており、通過能の低下が認められ、とくにD群では通過能の低下が顕著であった。3.赤血球の膜骨格蛋白である4.1蛋白質の生化学的・構造生物学的解析4.1蛋白質はスペクトリン、アクチンとともに赤血球膜骨格の網目状の水平構造を維持する膜骨格蛋白であるが、カルモジュリン/Ca^<++>との結合により、N末端30kDaドメインを介して、赤血球膜リン脂質の脂肪酸と疎水性に結合することが判明した。4.SDS-PAGEによる赤血球膜骨格蛋白の検討上記の4群においてSDS-PAGE法により赤血球膜骨格蛋白を検討したが、Spectrin、Band3などの蛋白については4群間に差は認められなかった。5.赤血球の形態学的検討4群の赤血球についてGiemsa染色により形態観察を行った結果、B、D群の一部に大小不同が認められたが、顕著な差は認められなかった。6.赤血球膜脂質組成の検討赤血球浮遊液にFITC標識annexin Vを添加し、染色後Flow cytometryでannexin V染色性を検討したが、D群において有意にannexin Vの染色性が増強し、通常は脂質2重膜内層に局在するphosphatidyl-serine(PS)の脂質膜外層における表出が認められた。7.赤血球膜荷電の検討4群における赤血球の膜荷電を、陽および陰イオン吸着樹脂に対する吸着性により検討した。赤血球の吸着性における各群間の差は認められなかった。また赤血球は膜表面に存在する糖蛋自側鎖のシアル酸の陰性荷電により相互に反発しあっているが、endo-β-galactosidase処理により膜表面から糖鎖を除去すると、脂質面が露出し、赤血球相互の集合が認められた。さらに糖鎖に特異的に結合する種々のレクチン処理により、赤血球の変形能の低下が認められた。以上より膵腎複合移植の対象となる糖尿病透析患者では、赤血球の変形能および通貨能は低下しており、さらに脂質膜外層へのPSの表出が認められ、赤血球相互の集合が観察された。また酸化的ストレスにより変形能は低下し、赤血球膜骨格蛋白質の相互作用が変化することが示唆された。