著者
望月 康恵 大形 里美 森谷 裕美子 田村 慶子 織田 由紀子
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、東南アジア地域におけるジェンダー主流化の動きとNGOの役割について考察したものである。望月康恵(研究代表者)は、東南アジアの国際機構・制度に着目し、ジェンダー主流化への対応と加盟国との関係について考察を行い、機構・制度の独自の取り組みについて検証した。また、職務権限上の制限、加盟国への影響、取り組みの評価の必要性や将来への課題についても検討した。田村慶子(研究分担者)は、マレーシアおよびシンガポールの女性政策とNGOの関わりについて現地調査と具体的な検討を行った。それぞれの政府の女性政策と女性の地位について歴史的に明らかにし、またNGOが政府や州の政策にどのような役割を果たしているのか、その協力および対抗関係について分析し、問題点と課題を明らかにした。森谷裕美子(研究分担者)は、フィリピン、パラワン社会におけるNGO活動の個別、具体的な調査を行った。その結果、少数民族社会におけるNGO活動にはジェンダー主流化の配慮が欠けている例が多く見られたため、さらに、少数民族社会に影響力の大きいNGOにどのような課題が残されているかを明らかにし、今後、少数民族社会とNGOにどのような関係が期待されるのかを検討した。大形里美(研究分担者)は、インドネシアの女性政策の流れ、そして女性組織(社会団体、及びNGO)の発展について、インドネシア政府による2000年以降のジェンダー主流化政策が女性NGOの活動とアドボカシー活動によって実現したものであることを確認した。また、ジェンダー主流化に関連する様々な分野で活動を展開している女性NGOに着目し、組織の発展、活動内容について検討した。織田由紀子(研究分担者)は、ジェンダー主流化政策の歴史的変遷を踏まえつつ、アジア地域においてジェンダー問題に関わるNGOについて現状分析を行い、NGOが国境を越えたネットワークを通じて多様な課題におけるジェンダーの主流化の推進に影響を及ぼしてきていることを研究した。なお、研究代表者および分担者は、研究会を定期的に開催し、報告および意見交換を行うことによって、研究の進捗状況および方向性を確認しながら分析を深めた。その成果を日本国際政治学会東南アジア分科会(2002年11月淡路夢舞台国際会議場)にて報告し、また成果の一部を『アジア女性研究』(12号、2003年)の特集「ジェンダー主流化におけるNGOの役割-東南アジアを中心に」に掲載した。
著者
柴田 博 杉澤 秀博 杉原 陽子 黒澤 昌子
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.既存のパネルデータの解析と公表生涯現役の意義と生涯現役の条件の解明という視点から、パネルデータを再解析した。具体的には、ボランティアや介護などの無償労働が高齢者に与える影響、無償労働の継続に関連する要因については杉原が、就労継続、中断、引退が高齢者の心身の健康、家庭生活、地域生活に与える影響については杉澤が分析した。2.第4回パネル調査の実施とデータベースの作成平成17年10月に第4回パネル調査を実施した。これまでの調査の中で強硬な拒否を示した人を除く対象者に対して調査を実施した。今回のパネル調査から、対象者の高齢化により健康上の理由で未回収になる可能性が高くなることを想定し、健康上の理由で調査に応じられない人に対しては、家族など対象者の状態をよく知っている人からの「代行調査」を実施した。さらに、回収率を維持するために、第4回パネル調査の未回収者のうち、不在・体調不良などの理由で未回収であった者に対しては、平成18年1月に追跡調査を実施した。以上の結果、本人回答による回収数は2,603、代行調査の回収数は65、代行調査を加えた回収数は2,668となった。回収率(代行をくわえた場合)は第1回パネル調査の完了者対比では67.1%であった。3.4回のパネルデータの解析(1)就労、ボランティア、家事・介護などのプロダクティブな活動が心身の健康に与える影響について、その因果メカニズムも含めて解析した。(2)ボランティア活動や奉仕活動の維持・促進要因を階層、地域、就労などとの関連で解明した。(3)就労に関しては、定年後の再就業の要因を、就労推進策、階層、職業観、経済、健康の面から多角的に検討するとともに、定年後の就業の質について定年前と比較することで解明した。(4)失業、定年退職が心身の健康に与える影響について解明した。
著者
西村 浩一 佐々木 敦 小林 一義
出版者
釧路工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

10GHzを越える電波は降雨、降雪、霧などの大気条件によって減衰することは知られているが、釧路地方で発生する濃い海霧が12GHz帯衛星放送波の減衰に及ぼす影響については解明されていない。海霧発生時における衛星放送波の減衰について、より正確な実測データを得るため、受信レベルの測定地点における気象データ収集システムと、海霧等の視程値を計測する視程計測システムを製作した。これらのシステムを用い、これまで得られたデータから、次のような結果を得た。雨の場合は、雨量に応じて衛星放送波の受信レベルが減衰している。これに対し、海霧が発生している時の受信レベルは、その減衰量は少ないが絶えず細かく変動している。この受信レベルの細かな変動は、局所的な海霧の濃さの変動によるものだけではなく、海霧の空間的形状にも深く関係していると考えられる。また、視程がほぼ同じであっても、海霧の粒径により受信レベルに与える影響に差がある。粒径が大きな霧(湿った霧)ほど、受信レベルに与える影響が大きい。降雨による衛星放送波の減衰と、ガイシの絶縁特性の低下の間に相関関係があることもわかってきた。降水量が多い場合には、ガイシ表面の汚損物質が洗い流されて絶縁特性が再び回復するが、霧や小雨の場合は絶縁特性を低下させるだけである。特に海霧の場合は、その中に含まれる海塩粒子が絶縁特性をより低下させている。釧路地方で発生する海霧は、その濃さが場所によってかなり異なる。今後の展開として、衛星放送波の減衰と海霧の画像データから、海霧の動きを予想することも期待される。
著者
松尾 眞砂子
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

〔目的〕味噌によって生活習慣病を予防するため、味噌の抗酸化力を維持・増進する味噌の調理法、併用する香辛料や野菜の影響を検討する。〔方法〕調理温度、香辛料野菜の種類による味噌の褐色度、ポリフェノール化合物、イソフラポンの変動とORACの関係を測定する。味噌の生体内抗酸化力への影響は、野菜の味噌煮液をラット肺ホモジネートの上清に加え、SOD活性、GSH-Px活性と12-HETE生成量の変動を測定して推定した。〔結果〕1.調理法の影響 味噌の抗酸化力は主として70%エタノール可溶性画分のORACで、色度の明度、総イソフラボン量やアグリコン量に比例した。味噌の調理法による抗酸化力は蒸す、煮る、妙める、焙る、加圧加熱の順で褐色度、DPPH-SCとORACが増大し、総イソフラボン量とアグリコン量が減少した。加熱によるORACの増大要因にはメラノイジンの生成が示唆された。2.香辛料の影響 味噌を香辛料と調理すると、ショウガやゴマはポリフェノール量とOARCを増加し、ニンニクはポリフェノール量やイソフラボン量は増加しなかったが、ORACを増加した。唐辛子は褐色度とORACを低下させ、和芥子はポリフェノール量を増加したがイソフラボン量をORACを減少させた。これらの結果から、ショウガ、ニンニクとゴマはそれぞれ固有の抗酸化物質を溶出付加して味噌の抗酸化力を向上させ、唐辛子はメラノイジンの生成を抑制し、和芥子はメラノイジンの生成抑制とイソフラボンアグリコン量の減少により味噌の抗酸化力を減少させることが示唆された。3.野菜の影響 味噌をニンニク、葉ネギ、チンゲンサイ、ナスやブロッコリーと加熱するとORACが増加した。その要因には、ニンニクの場合はポリフェノールの溶出により、葉ネギ、チンゲンサイとブロッコリーの場合はポリフェノールの溶出と褐色度の増加が示唆された。4.生体内抗酸化力 ニンニク、ゴボウ、葉ネギはSOD活性とGSH-Px活性や12-HETE生成を促進し、タマネギ,チンゲンサイとピーマンはSOD活性を増大し、白ネギはSOD活性と12-HETEの生成を促進し、ナスはGSH-Px活性と12-HETEの生成を促進して体内でも味噌の抗酸化作用を増強することが示唆された。
著者
井野瀬 久美惠
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、18世紀末〜19世紀初頭にかけて創造され、19世紀半ば以降に確立された「解放する/自由主義の大英帝国」「慈悲深き/博愛主義の帝国」という言説について、この帝国像の構築に重要な役割を果たしたと思われる「帝国からの訪問者」、とりわけ、奴隷解放直後のヴィクトリア朝社会にさまざまな事情でやってきて暮らした非白人、いわゆる「黒いヴィクトリア朝人(Black Victorians)」に当てて、この言説の意味と役割、その構築のメカニズムを探ることにある。多様な形態をもつ彼らのなかから、本研究が分析対象としたのは、イギリス海軍(ないし陸軍)によって現地の苦境から解放、救出され、女王(あるいはイギリス貴族)の庇護の下、(本人の意志とは無関係に)イギリスに連れてこられ、(期間の差こそあれ)ここ帝国の中心部で生活した経験を持つ非白人の少年少女たちである。救出時、10歳前後であった彼らの渡英時期は、おおむね1850、60年代前後に集中しており、彼らが言及されたコンテクストは、奴隷貿易や奴隷制度と深く絡みあっていた。この時期、アジアやアフリカの植民地(正確にはイギリスによって植民地化されつつある地域)からやってきた彼ら、特に彼らの「救出劇」がどのように語られたのかを、同時代の資料(議会報告書や外務省や植民地省への報告書、新聞や雑誌、伝道諸団体の年次報告書など)から分析し、従来の在英黒人(非白人)分析ではすっぽりと抜け落ちていた1850〜60年代が、「奴隷を解放する慈悲深き帝国」という大英帝国の自己像にとって決定的に重要であったことを明らかにした。と同時に、この大英帝国の自己像が、21世紀初頭の現在、深化するイギリス国内のポストコロニアル状況のなかで200年目を迎えた「奴隷貿易廃止の記憶」によって、改めて問題視され、再検討されている諸相を、2007年を通じてイギリス各地でおこなわれた奴隷貿易廃止200周年記念イベントの中に探り、この記億をめぐる現代都市戦略を明らかにした。
著者
麻野 雅子
出版者
三重大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は、現代政治思想における公共性に関する理論研究を踏まえつつ、阪神・淡路大震災時のボランティア活動に関わった人びとの体験記や活動の記録文書を分析することから、現代の日本人が抱いている公共性意識を解明することである。これまで公共に資する活動を行うのは行政機構の専権事項のように考えられがちであったが、阪神・淡路大震災においては数多くのボランティアが、初期の救出作業や防災活動、安否確認にはじまり、援助物資の搬出・搬入、避難所の運営、炊き出しや水くみ、被災者の在宅支援など多種多様な公益に資する活動を行った。ボランティアは、すべての市民に対して責任をもつわけではないので、公平性に拘束されることなく臨機応変な対応で、行政ができない公共活動を行うことができた。ボランティアによる公共活動に参加したり助けられたり人びとは、行政や市場システムが提供するのとは違う公共活動があることに気付いた。ボランティアが公共サービスを提供するやり方は、一つには、自分たちのやり方で自発的に行うという「自己決定」の原理に支えられている。その一方で被災者の立場に立ち、被災の現実を他人事としてではなく自分に関わることとして受け止め、当事者として何か活動をしようという「協働」の原理によっても支えられている。こうした震災ボランティアの活躍によって、「自己決定」と「協働」の原理に基づいて運営される公益活動が広がり、市民自らが公共活動を担っていこうとする市民的公共性の意識が成立する可能性が高まったといえる。
著者
坂井 忍
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

地震時の人的被害軽減を念頭にこれまでに多くの死傷者発生予測式が提案されている。しかしその多くは過去の震害資料をマクロ的に統計処理して得られる実験式であり、建物が何戸倒れ、その結果として死傷者が何人発生したのかというレベルから議論がなかなか進展していない。その一方、近年の地震(フィリピン、イラン、エル・サルバドル)においては緊急救助活動の現場から、どういう建物がどのように倒壊し、何人閉じ込められ、どのくらいのあいだ生きながらえたのか、という資料が蓄積されつつある。これにより従来よりもやや微視的な観点から、死傷者の発生プロセスに深く立ち行って議論することが可能となってきている。本研究では、建物の倒壊から死傷者の発生にいたるプロセスを解明し、モデル化することを目標としている。本年度は、現場資料の充実をはかる一方で、昨年度提案した建物崩壊モデルをもとに負傷者の予測モデルを構築し、プロトタイプモデルとしてコンピュータ上に実現した。本年度の研究期間における成果を、以下にまとめる。資料収集:救助隊からの資料収集を継続する一方、被災現場における救助活動パターンの整理を被害資料等をもとに行った。負傷者の予測モデル:近年の被災現場からの報告書には、瓦礫の下から救出された人間の救命率を救助活動の全期間にわたって記録したものが見うけられ、研究代表者は、これらの解析から建物倒壊時において何割の人々がどの程度の怪我を負ったのかを推定する手法を提案している。本年度では、救助隊から得られた資料を中心にこの手法を適用し、組積造とRCフレーム造の2つの事例について倒壊時における負傷程度を比較検討し、建物の倒壊メカニズムの差異が負傷程度にどの程度の影響を与えるのかを探った。そして、これまでの成果を単一のモデルとしてコンピュータ上に統合した。
著者
深井 純一
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

大正25年に北但馬で発生した大規模な地震の際に、被災地の中心にあった旧制豊岡中学校の生徒が救援活動の第一線に立ち、優れた功績を挙げた経過を手書き作文に残していた。それらの膨大な作文を読みやすい現代語に改めるとともに、分厚い作文集と資料集増補版に収録して刊行した。この研究成果が地方小都市や農山漁村で大災害が勃発した際に、地元に残る中学性・高校生たちの救援活動の旺盛な展開に役立つ教訓を残しえたならば、これほどうれしいことはない。本研究報告は活動中に生徒たちの人身事故を起こさずに、安全に震災救援に邁進した未成年の若者たちへの『青春賛歌』に他ならない。
著者
小島 泰友
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

比較静学モデルによる価格伝達分析を行い,硬質小麦の政府売渡価格やふすまの市場動向,製粉・製パン業の非農業部門など,これらの外生変数による小麦製品の価格変化率に対する寄与率を計測し,小麦政府売渡制度の相対的影響度を明らかにした.高度経済成長期を終え,非農業部門からのコスト上昇圧力が緩和した1980年代半ば以降,小麦の政策価格は,食パン価格の変化に対して,それ以前よりも相対的に強い影響を与えている.1980年代後半以降の小麦価格の引き下げ期に,小麦粉価格の低下が不十分であった要因について,定量分析を行った.製粉大手企業は原料費削減による残余資金を原資に,製販統合・経営多角化を推進し,食品販売部門の強化を図っている.よって,硬質小麦の政府売渡価格の引き下げは,強力粉価格の低下に十分反映されていない.価格支持政策から直接支払政策への農政転換は,必ずしも消費者利益の増加につながるとは限らない.強力粉価格が低下した1980年代後半以降,食パン卸売価格が下方硬直的であった要因を推測的変動モデルで定量分析を行った.製パン大手企業の販路拡大競争と製パン小売業の台頭によって70年代後半,低価格戦略が取られたが,その後,企業合併等で市場集中度が高まると,価格は下方硬直的となった.食品製造業全体を上回る製パン業の人件費の伸びも影響した.70年代後半の市場競争性があれば,90年代末の価格水準は,約6〜12%低いと推定される.規模の経済性をもつ不完全競争下の食品産業を想定し,農業効率化と輸入関税削減が,農産物から加工食品への価格伝達性に対してどのような効果をもたらし,農業生産者と最終消費者にどのような影響を与えるのか,McCorristonらのモデルをもとに理論的考察を行った.農業効率化と関税削減をいかに進めるかだけでなく,加工食品市場の競争性をいかに高めるかという論点も,最終消費者だけでなく農業生産者の利益の確保のために,重要である.
著者
永野 和男 園屋 高志 加藤 直樹 村瀬 康一郎 近藤 勲 生田 孝至
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は,(1)企業等の協力あるいは教師や研究グループによる自主的な活動により各地で多数試行されている「ネットワークを利用したマルチメディア情報通信を学校教育に活用する種々のプロジェクト」の動向を把握し,適切に評価することにより,今後の教育実践及び必要な条件等に関して指針を与える。(2)これまで蓄積されてきた教育情報を相互に利用できるような仕組みを開発し,マルチメディアを中心とした教育情報の組織的な流通の促進を支援する。(3)マルチメディア及び情報通信を用いた教育実践の評価の枠組みと学習の評価の枠組みを作成し,それによる評価分析により,今後の教育実践のあり方等に関する指針を示す。ことである。平成8年度は,前年度と同様,分担者を(A)小・中学校におけるマルチメディア利用・ネットワーク利用の実践に関する試行および調査検討(B)教師支援のためのマルチメディア利用・ネットワーク利用の実践に関する試行および調査検討(C)マルチメディア・ネットワーク利用に関する教育的意義と評価方法の検討の3つのグループにわけて研究を進めた。(A)班では,遠隔共同学習,メディアキッズなど先進的な事例について,経過,成果の調査,問題点の検討をもとに,インターネットで実践できるカリキュラムのモデルとして「野菜・果物データベース」とその教材を開発し,実践してその実用性を評価した。さらに,これまで提供されてきたインターネットホームページを整備し,体験版のCD-ROMを作成して,実践校などに配布,啓蒙活動を進めた。(B)班では,前年度に,蓄積された教育情報(学習素材,メディア教材など)を各大学や各教育センターなどで利用できるように条件整備を図りながら、その教育利用の方法,成果についての実態調査を進めた。(C)班では,昨年に引き続き,Internet 100枚プロジェクトの課題研究,共同学習を中心に,経過,成果を追跡調査,技術的問題点,教師の意識の変容,教員養成の方法などを明らかにした。これらの成果は,最終報告書にまとめると同時に,文部省などに対して,今後進めるべき具体的政策を提言した。
著者
今石 元久 吉田 則夫 佐藤 亮一 桐谷 滋 江川 清 井上 史雄
出版者
広島女子大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1993

交付金により、研究会合を重ねるとともに、平成5年10月22日(金)10時〜15時10分広島市中区中電大ホールにて「新しい日本語社会」「日本語習得の基盤を考える」と題して公開講演とシンポジウムを開催した。全国から多数の参会者があって、盛会に行われた。シンポジウムではメンバーの江川清・土岐哲・佐藤亮一・吉田則夫・真田信治の各氏とNHKの西橋アナウンサーに登壇いただいた。「日本語の習得と話言葉」のテーマの下、それぞれの立場からの提言と討議が行われた。午後から演題「日本語習得の基盤と社会言語学」井上史雄、演題「日本語の習得基盤と音声言語情報処理」桐谷滋各氏の講演があった。その成果を受けて、研究課題「国際化する日本語社会における音声言語の実態とその教育に関する総合的研究」により平成6年度総合研究(A)の申請をした。その内容はつぎの通りである。(1)国際化の進行している日本語社会における音声言語の実態を把握し、有効な教育方策を提案すること。(2)言語理論並びに高度情報処理技術等により、日本語社会における音声言語の教育に効果的な科学的方法を導入すること。この研究目的を、次の6事項に絞って期間内に達成する。A【.encircled1.】日本語社会における音声言語の多様性と標準、【.encircled2.】日本語社会における談話行動の習得過程、B【.encircled1.】日本語教育における学習活動が音声言語の習得に及ぼす効果、【.encircled2.】日本語社会における帰国子女・外国人子弟等の音声言語の習得、C【.encircled1.】日本語社会における音声言語の習得支援システムの開発、【.encircled2.】日本語社会における音声言語の教育用データーベース今年度の成果として、公開シンポジウムと公開講演を冊子にまとめ、研究機関や日本語教育関係機関等に配布した。
著者
立岡 浩一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究はシリサイド系半導体の総合的な研究であり、結晶成長、物性評価からデバイス応用への応用まで広い範囲をカバーしていている。資源豊富で安全である材料を用い、太陽電池や熱光電池,熱電発電素子など環境保全に寄与するデバイスの開発を行った。得られた結果を総合的にまとめ、ファミリーとしてみたシリサイド半導体の光電デバイス、熱電デバイスへの可能性について纏めた。この研究テーマの最終的目標である資源豊富で安全な材料による半導体発電素子の開発が、将来のエネルギーフローを変える事を期待する。
著者
紅谷 昇平
出版者
(財)阪神・淡路大震災記念協会(人と防災未来センター)
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

阪神・淡路大震災の事例では災害後の産業復興には顕著な遅れがみられ、事前対策の重要性が明らかになったが、大手企業へのアンケート調査では事業継続計画(BCP)を策定している企業は4割にとどまっていた。また地域産業復興の事例として、能登半島地震や四川地震、ノースリッジ地震の現地調査・資料調査を行い、仮設店舗による営業支援や日本型TIF(Tax Increment Financing)の可能性検討を行った。
著者
上原 徹三 清水 由美子 荒井 秀一
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

コンピュータによる自然言語研究で辞書とコーパス(文例集。文法情報を付加したものは特に有用)が重要である。単語辞書には読み・品詞情報の他に概念情報が望まれる。現在の日本語については、概念情報を与える単語辞書と文法情報を付加したコーパスが電子化データとして存在する。しかし、古典文に関してはそのような単語辞書もコーパスも存在しない。そこで、単語辞書とコーパスの整備とその応用に関する機能の試作と実験を行ない次の成果を得た。1.総索引からの品詞タグ付きコーパス変換作成機能の試作とそれによる古典文品詞タグ付きコーパスの試作紫式部日記などの日記文学および伊勢物語などの物語文学に関する市販の総索引から、品詞タグ付きコーパスに半自動変換を行った後、人手による修正で古典仮名文コーパスを完成した。2.品詞タグ付きコーパスによる確率的形態素解析上の古典仮名文コーパスを学習・評価データとする確率的形態素解析の実験と評価を実施した。評価においては、学習データとテストデータを順次ずらした繰返し実験により信頼度を求める等の配慮を行った。3.対訳辞書の見出し語の概念推定法訳語の概念が既知の対訳辞書を用いて、訳語からの見出し語概念の推定とその評価を実施した。本技術は、古語辞典(古典語見出しに対し現代語訳語を与える)による古典語の概念獲得の基礎技術となり得るものである。ただし、古語辞典から古語の概念を取得するという研究開始当初の目的は実現できなかった。これに関しては概念辞書の整備、概念推定法の改良など、さらに検討すべき課題がある。
著者
早瀬 晋三
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、19世紀から20世紀にかけての国境線画定時に、無人島を含む島嶼の帰属がどのように扱われたのかを考察するための事例研究を、東南アジアを中心におこなった。そのために、イギリス議会文書やイギリス東インド会社文書などを整理し、考察した。その結果、漁業活動など利用権を主張するものはあっても、居住・耕作地を除いて、排他的占有権を主張するものはあまりなく、実質的な国境が曖昧なままであったことがわかった。
著者
鈴木 淳 上野 洋三 久保田 啓一 西田 耕三 井上 敏幸 山田 直子 上野 洋三 鈴木 淳
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

山形県鶴岡市致道博物館所蔵の、庄内藩第7代藩主酒井忠徳の和歌・俳諧資料は、大名の文事研究の基礎固めのために、全資料を漏れなく集成することを前提として、和歌・俳諧の二つに分け、和歌については、和歌資料目録と同翻字篇(詠草その他・短冊・書簡)に、また、俳諧についても、俳諧資料目録と同翻字篇(俳諧之連歌・一枚刷・詠草その他・短冊)にまとめ、それぞれに解説を付した。この忠徳の和歌資料は、大名家における和歌製作時の、また、和歌修業の実際を伝えるものであると同時に、冷泉家と日野家が入れ替る当時の堂上歌壇の変化を生々しく写したものであり、他に類例を見出しえない貴重な資料であることが判明した。また、俳諧資料は、断片類までの全てが、大名の点取俳諧の実際を具体的に伝えるものであり、この資料の出現によって、初めて大名の点取俳諧の実際、俳諧連歌の創作の場、宗匠と連衆達の遣り取り、点を付け、集計し、賞品を贈るという点取俳諧の手順の実際等々が明らかとなったといえる。長野県長野市松代藩文化施設管理事務所(真田宝物館)、および国文学研究資料館史料館所蔵真田家文書、並びに同館真田家寄託文書中の真田幸弘の和歌・俳諧資料の調査は、ようやく全体を見渡せる地点に達したといえるが、資料の蒐集整理は、その作業に着手したばかりである。現在の進捗状況を示しておけば、 1,百韻620余巻分の詳細調査カード 2,『引墨到来覚』の翻字(全7冊中の3冊分) 3,『御側御納戸日記』全8冊よりの抄出翻字 4,幸弘追善俳書『ちかのうら』の紹介 5,和歌・俳諧・漢詩詠草類リストその他である。真田幸弘の俳諧資料は、総体では10万句を越える厖大なものであり、現時点において日本第一の大名点取俳諧資料だということができる。今後この真田家資料と酒井家資料とを重ねてみれば、大名の点取俳譜の全貌が見えてくる筈である。また、大名家の文事が、親しい大名仲間を核として、和歌・俳諧、さらには漢詩へと広がっていることが特に注目される。酒井家・真田家資料全体の調査研究を通して、新しい近世文学史の構築が期待できるように思う。研究はこれから始まるといってよいであろう。
著者
山本 眞司 江崎 修央 清田 公保
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,視覚障害者,特に文字を覚えている中途失明者のための日本語入力システムに関する研究である.タブレットペンによりオンライン手書き入力をし,認識結果を音声で返して編集作業を行う形式であり,このシステムにより晴眼者との電子メールのやり取りを可能にすることをめざした.本研究期間中に取り上げた主な研究項目と結果は以下の通りである.(1)視覚障害者が書く漢字のデータベース作り.視覚障害を持つ人から大量の文字サンプルを入手することは困難を伴うので,晴眼者の目隠し状態での疑似データを含めることとし,最終的に3216文字種,約10万文字のデータを収集,蓄積した.(2)オンライン文字認識アルゴリズム(1文字単位)の高度化.教育漢字1000字程度を対象とした基礎的なアルゴリズムの開発をさらに発展させ,JIS第1水準漢字,ひらがな,カタカナ,記号,アルファベットなど3216字の文字種に拡大し,この文字種拡大に伴う文字認識精度の低下を補うためにアルゴリズムの一層の高度化をはかった.(3)単語単位,文節単位の認識文字修正アルゴリズムの開発1文字単位の文字認識に失敗した場合の単語単位ないし文節単位の認識文字修正アルゴリズムを2種類追加開発し,全体としての精度改善を果たした.(4)視覚障害者用の文字入力・計算機制御用(マンマシンインタフェース)デバイスの開発.視覚障害者にとって利用しやすいデバイスとして,右手にペン入力デバイス,左手に5本の指に対応したボタン操作を基本とした構造を試作し,複数の視覚障害者に実際に試用して貰うことによりシステムの最適化を図った.(5)文書処理全般に対する視覚障害者用の計算機制御方式の開発.ファイルの管理,文章修正,既存データの利用など日本語入力システムとして障害者と計算機との対話をどのような構造で実現するかが問題であり,(4)項の入力,計算機制御デバイスとも関連して視覚障害者がもっとも利用しやすいシステム構成を検討した.特に視覚障害者が電子メールを自由に取り扱うことが出来ることを目的としたメール送受信、ファイリング関係の充実を重点的に図った.
著者
佐藤 隆之
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

わが国では、被疑者取調べをめぐって、これまで、被疑者の黙秘権に焦点を当て、その侵害の有無によって、その適否を判定する方法が採用されてきた。しかしながら、どのような場合に被疑者の意思が圧迫され、また、緊張・疲労の結果、供述に関する意思決定が歪められたといえるか自体、必ずしも判断が容易ではなく、他方で、裁判例に対しては、明示的に取調べを拒否しなければ、被疑者の同意があるとされているのではないか、という批判も向けられるなど、被疑者の権利・自由の現実的な侵害のみに基づく従来のアプローチが、十分機能していない状況にあったといえるように思われる。本研究は、そのような状況を踏まえ、被疑者取調べの適正さを確保するために、取調べの方法・条件を客観的な準則として明確化し、それからの逸脱の有無・程度を基準にして、その適法性を判定する手法を採用する可能性を探ることを目的とするものである。この点、本年度の研究では、在宅被疑者の取調べに着目して、被疑者の同意がある場合にも、その取調べに応ずるか否か、供述をするか否かを決定する自由に対する配慮という観点から、その限界が導かれ得ることを示した。従来、宿泊を伴う取調べや徹夜の取調べに関する最高裁判例は、被疑者の供述の自由を、捜査上の必要と比較可能な利益と捉えていると批判されてきたが、取調べに応じるという被疑者の同意が有効である場合にも、なお取調べを規律する余地があることを認めているという新たな理解を提示できたことは、取調べ準則制定の可能性を拓く重要な基礎と位置づけることが可能だと思われる(被疑者の意思の自由に対する配慮という観点は、逮捕・勾留されている被疑者の取調べの場合にも同様に妥当すると考えられる)。
著者
小西 加保留
出版者
桃山学院大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本調査の目的は、HIV感染者が社会福祉施設サービスを利用しようとする時に、サービス提供者側が抱える不安や課題となる要因を明らかにすると共に、どのような要因が、サービス提供や受け入れ意向に影響を及ぼしているかを分析することにある。平成15年度に実施した調査の対象は、重度身体障害者更生援護施設、身体障害者療護施設、知的障害者更生施設、児童養護施設、精神障害者生活訓練施設の各全数(平成11年度現在)、合計2377箇所。各施設に対して1)施設長、2)生活・児童指導員、3)その他の計3名に依頼。調査期間は、2003年10月〜11月。有効回収数は、施設数で999箇所(回収率42.03%)。結果としては、因子分析により、12因子が抽出され、受け入れ姿勢への阻害要因や促進要因は多岐に複雑に影響していることや施設種別ごとの課題があることが示された。各施設に共通する因子としては、「他者への対応困難」(一方向)「性の陽性価値観」」(+方向)が代表的なものであった。HIV感染者の受け入れ経験は22施設にあったが、受け入れ経験より研修経験が今後の受け入れ姿勢に有意に関連しており、今後具体的な感染発生時への不安や事後対応に対する具体的な知識・情報提供、施設特性に関連する性の支援システム作り、またコスト保障やハード面の対策も合わせて重要であることが示唆された。16年度は、調査結果を踏まえて、HIV医療の現場で感染者支援に従事するカウンセラーらと共に、さらに総合的に考察、検討を加え、今後の支援のあり方や施策、ガイドライン作成の準備段階としての小冊子を作成し、対象とした施設に配布した。また関連学会において研究報告を行うと共に、研究報告書を作成した。