著者
中山 周一
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2017年、2018年の国内梅毒トレポネーマ検体につき、分子型別、マクロライド耐性分布に関して検討を実施しMSM由来とheterosexuals由来とで大きな差異が有ることが判明し、報告した。2014~ 2018年の検体につき全ゲノム解析を試行し、計20検体で成功した。世界各国検体でのデータと比較解析を行い、日本株は中国株と最近縁の関係にあることを示すと同時にこの2国の株をほぼ細分化できる一塩基置換候補を抽出することに成功した。型別、マクロライド耐性分布で差異の見られた国内のMSM由来とheterosexuals由来株の差はこの全ゲノム解析によっても裏付けられた。
著者
菱田 慶文 柴山 信二朗
出版者
四日市看護医療大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

アブダビ首長国において、最も振興されていたのがブラジリアン柔術である。学校体育で導入され、男子はグレード6から12まで(小学6年生から高校3年生まで)が必修であり、女子には選択授業として開講され、約8割の女子生徒が学んでいた。アブダビ首長国は、柔術の導入において、青少年の心の成長や健康問題の改善、さらに世界に通用する柔術選手を育成し、首長国の愛国心の高揚を期待していると考えられる。学校体育に導入されたことで、女子の格闘技に対する教育観や娯楽観に変容があったとみられる。それまでアブダビの女性は、格闘技を行う人が少なかったが、現在では、多くの女子が柔術の試合に参加することから分かる。
著者
藤本 貴史
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

一部のドジョウでは天然でクローン生殖や倍数性配偶子の産出が認められ、その特殊な配偶子形成を人為的に制御できれば非常に有用な技術となりうるが、その分子メカニズムは未だ不明である。このメカニズム解明において、ゲノム倍加が起こるタイミングの特定とその時期の生殖細胞を単離し解析しなければならず、そのためにはドジョウの生殖腺発達段階のステージングと生殖細胞を解析するための新たな実験系を構築する必要がある。そこで、本年度はサンプルとして入手が容易な通常両性生殖個体を用いて実験家系を作出し、継時的に体長測定を行うとともに生殖腺を採取し、組織学的に解析に供した。そして、本年度の研究によって仔魚期から性分化期までの生殖腺の発達段階のステージングをおおむね行うことができ、生殖細胞の増殖期と減数分裂開始時期の特定ができた。その結果、成長初期の生殖細胞の活発な増殖はメスで顕著に観察され、ある一定の体サイズに成長した段階で、雌の生殖腺では減数分裂に移行し卵形成が開始することが明らかとなった。本知見はクローンドジョウの生殖腺における生殖細胞のゲノム倍加が生殖腺発達段階のどの時期で起こっているかを調査するためには必須の基礎的知見であり、希少なクローン個体を用いた生殖腺サンプリングにおいて、調査に必要なサンプリング時期を定めるためには重要である。しかし、生殖腺ステージングで明らかとなった減数分裂開始時期は、卵巣発達過程においてかなり早い段階で起きており、この発達段階の卵巣を実体顕微鏡下で単離することはかなりの困難を要する。この対策として密度勾配遠心による卵巣細胞の分離が考えられ、本年度はパーコールを用いた生殖細胞の分離・純化技術の開発を遂行し、特定の密度分画における生殖細胞の分離が可能となった。
著者
守山 裕大
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

イカ、タコに代表される軟体動物頭足類は心臓を3つ持つことが知られている。一つは体心臓と呼ばれるもので全身に血液を送り込むものであり、他の二つは鰓心臓と呼ばれ、酸素を取り込む器官である鰓に血液を送ることに特化している。どのようにして頭足類は心臓を3つ持つようになったのか、その発生学的メカニズムを明らかにし、進化過程に迫ることが本研究の目的である。本研究ではヒメイカ(Idiosepius paradoxus)をモデル動物として用いている。前年度まではwhole mount in situ hybridization法によって様々な心臓発生関連因子の時系列的な発現様式を詳細に解析した。それらの結果を踏まえ、本年度では体心臓、鰓心臓において発現が確認された遺伝子の機能解析、また心臓前駆細胞の挙動を追跡すべく、ヒメイカ胚への顕微注入法の確立を目指した。まず、様々なモデル生物においてこれまでに確立されている顕微注入法(マウスMus musculus, ゼブラフィッシュDanio rerio, アフリカツメガエルXenopus laevis など)を試みたが、いずれも卵殻を突き破ることができず、成功には至らなかった。そのため、次に卵殻を薬剤を用いて処理すること、またレーザーを照射することなどにより卵殻の除去を試みたが、これらも成功には至らなかった。本年度の達成度心臓発生関連遺伝子のクローニングとその発現解析、またそれに伴う組織学的解析は詳細に行うことができた。しかし心臓発生関連遺伝子の機能解析、また心臓前駆細胞の挙動の追跡は顕微注入法が確立できなかったために遂行することができなかった。
著者
小林 哲郎 松井 勇佑 佐藤 真一
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究は深層学習の技術をテレビニュースの内容分析に応用し、大量の映像情報を目視に頼ることな、自動的に分析する方法論を確立する。深層学習は、分析対象の分類に有効となる特徴を自ら学び取っていくため、様々な角度や表情で人物が映されるテレビ映像の分析に有効である。本研究の文脈では、事前に特定することが困難な政治家の顔の特徴をアルゴリズムが自律的に学習していくことで、ニュース内における特定の政治家の出現を高い精度で検出することが可能になる。こうした深層学習に基づいた計算アルゴリズムと網羅性の高いニュースアーカイブを組み合わせることで、従来の内容分析では回答できなかった社会科学的問いに答えることを目指す。
著者
佐藤 秀一 芳賀 穣 近藤 秀裕
出版者
東京海洋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

淡水魚と海水魚は、栄養要求は大きく異なっている。特に脂肪酸要求やアミノ酸関連物質であるタウリンの要求が異なっている。そこで、タウリン合成に関与するシステイン硫酸脱炭酸酵素の遺伝子の構造解析等をマダイ、ブリ、スズキ、マツカワについて行った。さらに、各器官・組織での発現を調べた結果、肝臓、幽門垂で強い発現がみられた。またひらめにおけるDHAおよびタウリン含量の異なる餌料および環境水中の塩分量がDHAおよびタウリンの合成酵素遺伝子の発現に及ぼす影響を調べた。餌料中のDHAおよびタウリン含量ならびに塩分の変化によって、DHAおよびタウリン合成酵素様遺伝子の発現量が変動することが明らかとなった。
著者
石川 雄樹
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では,草食性魚類の植物選択的な食嗜好性の発現機構について明らかにすることを目的として研究を行った.前年度の検討において,ゼブラフィッシュの味覚受容体発現である組織であるmaxillary barbel(ひげ組織)を摘出し培養用ウェルプレート上に接着させることで味質応答機能を有したまま培養維持できることを明らかにした.今年度はまずこの方法がソウギョにおいても適用可能か検討した.麻酔下のソウギョから味蕾を含む組織である口唇の一部を切り出し,次亜塩素酸ナトリウム溶液中で減菌後ゼブラフィッシュと同様の方法で培養を試みたところ,培養2-3日目に組織片から培養プレート底面への細胞の進展・接着が認められ,定着した細胞に対しカルシウムイメージング法による呈味成分への応答性を評価したところ,一部のアミノ酸で応答挙動を示す細胞が認められた.また草食選択性機構への関与が考えられる分子を網羅的に明らかにすることを目的として,口唇上皮組織と,舌から咽頭部分の上皮組織をそれぞれ剥離し,RNA-Seq解析に供しデータを取得した.今年度の期間中には残念ながらソウギョの植物認識成分を特定することができなかったものの,本課題内で確立したソウギョへの近赤外イメージング法による摂食選択性評価法に加え,カルシウムイメージング法による末梢レベルでの細胞応答測定を組み合わせることで,草食性に関わる成分を絞りこみ特定してゆくために必要な基盤を整えることができた.得られた発現データについても両組織間の発現差異およびデータベース上に登録されているソウギョ別組織との発現差異を比較することで特異的発現を示す遺伝子群を明らかにしていくことが今後の課題である.
著者
北 将樹
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

陸棲哺乳類由来の特異な麻痺性神経毒の研究を行った。ブラリナトガリネズミの顎下腺より分子量約5 kDaの神経毒をほぼ精製した。またカモノハシの毒液から,ヘプタペプチド (HDHPNPR) など11種の新物質を単離し,その生物活性を解明した.さらに爬虫類やトガリネズミの毒と同様,カモノハシ毒にもカリクレイン様プロテアーゼが含まれることを示した.これら神経毒の作用機序解明により,新たな鎮痛剤や血圧降下剤などへの展開が期待される.
著者
宮沢 孝幸 見上 彪 堀本 泰介 小野 憲一郎 土井 邦雄 高橋 英司 見上 彪 宮沢 孝幸 遠矢 幸伸 望月 雅美
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

本研究はベトナムに棲息する各種食肉類(ネコ目)から、レトロウイルスを分離・同定し、既知のレトロウイルスとの比較において、レトロウイルスの起源の解析を試み、さらにレトロウイルスの浸潤状況を把握し、我が国に棲息する野生ネコ目も含めたネコ目の保全に寄与することを目的とする。本年度はホーチミン市近郊およびフエ市近郊で2回野外調査を行い、ハノイ農科大学で研究成果発表を行った。さらに、台湾においても家ネコの野外調査ならびに学術講演を行った。まずホーチミン市近郊の家ネコおよびベンガルヤマネコより採血を行い、血漿中のネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ネコ巨細胞形成ウイルス(FSV)に対する抗体およびネコ白血病ウイルス(FeLV)のウイルス抗原を調べた。FeLVは家ネコ、ヤマネコともに陽性例は見られなかった。FIVは家ネコの22%が陽性であったが、ヤマネコには陽性例はなかった。FSVは家ネコの78%、ヤマネコの25%が陽性であった。次いで家ネコの末梢血リンパ球からFIVの分離を試み、6株の分離に成功した。env遺伝子のV3-V5領域の遺伝子解析から、5株がサブタイプCに、1株がサブタイプDに属することが明らかとなった。サブタイプCはカナダと台湾で流行していることが報告されている。今回の結果からホーチミン市近郊のFIVは、カナダや台湾から最近持ち込まれたか、もともと日本を除くアジアでサブタイプCが流行していた可能性が考えられた。アジアでのFIVの起源を明らかにするためには今後、ベトナム、台湾以外のアジア諸国のFIVの浸潤状況調査とザブタイピング解析を進める必要があると思われる。また、今回レトロウイルス以外のウイルス感染疫学調査から、ネコヘルペスウイルス1型、ネコカリキウイルス、ネコパルボウイルスの流行が明らかとなった。特に、ネコパルボウイルスでは今まで報告のない新しいタイプの株(CPV-2cと命名)を分離した。
著者
柏村 征一 原 健二
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

覚せい剤アンフェタミン、メタンフェタミンはそれぞれ2つの立体構造(光学異性)が存在する。乱用されているのはd-体であるが、治療薬セレギリンの代謝物のメタンフェタミンは1・体である。治療薬か乱用薬かの判別のため、中毒作用に関する情報を得るために、光学異性体の識別分析は重要である。我々は本研究において、2つの試料調製法をガスクロマトグラフィー・質量分析法に応用を検討した。これらの方法は1.光学異性体分離用誘導体トリフルオロアセチルプロリルを珪藻土抽出カラムを使って簡易調製、通常分析に使うキャピラリーカラムによる分析、2.通常分析に使うヘプタフルオロブチリル誘導体を、気化平衡法で行い、固相マイクロ抽出により試料導入を行い、光学異性体分離キャピラリーカラムを使って分離、というものである。光学異性体GC-MSに関する、従来からの欠点の一つに、測定時間が長くなることがある。そこで、本研究では、分析時間の改善に力点を置いた。方法1は、内径の小さいカラムを高圧キャリアガスで使用することで関連物質まで含めて5分以内で分析できる条件を作成した。方法2は光学異性体分離カラムの特性より4から5分の短縮にとどまった。また、実用化ということから、血液、体組織試料への応用を試みたところ、試料中の脂質を有機溶媒抽出で除くことで、方法2の高感度分析が可能になった。これらの方法は、簡素な試料調製、分析時間の短縮化ということで法中毒学に有用であり、今後、実務分野での応用が期待される。
著者
中村 修平
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

細胞内外の様々な要因で損傷を受けたリソソームは有害となることが知られているが、細胞がどのようにこれに対処するかは不明であった。我々は、オートファジー・リソソーム生合成のマスター転写因子であるTFEBの活性化が損傷リソソーム修復に必須の働きをすることを見出した。さらにこの活性化はオートファゴソームマーカーとして知られるLC3タンパク質のnon-canonicalな機能に依存していることを明らかにした。また、マウスを用いた動物実験からこのLC3によるTFEB活性化がリソソーム損傷を伴うシュウ酸カルシウム腎症の病態悪化を防いでいることが示唆された(中村ら 投稿中)。
著者
米村 滋人 水野 紀子 武藤 香織 磯部 哲 徳永 勝士 田代 志門 奥田 純一郎 中山 茂樹 佐藤 雄一郎 猪瀬 貴道
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年度分の研究活動(2018年4月~2020年3月)の実績の概要は以下の通り。当年度は、まず、総合調整班において全体的な研究計画と調査項目・検討課題を決定した。具体的には、先行研究課題である科研費・基盤研究(A)(課題番号24243017)の研究成果として、米村編『生命科学と法の近未来』(信山社、2018)が公表されているため、これを素材に国内外の関連研究者・専門家等からの意見と課題提示を受けた上で、総合調整班において検討を行った。その結果、現在の日本では臨床研究法をめぐる法運用が多大な混乱を惹起しており、医学界からは臨床研究全体が抑制されているとの指摘も見られるため、臨床研究法の法規制のあり方を検討することが適切と考えられ、海外法制度調査もその観点を中心に行う方針とした。以上をもとに、一般的実体要件班・一般的手続要件班において、国内の法学・生命倫理学・医学関係者に臨床研究法の問題点や改善の方向性等につき意見聴取を行うほか、海外の文献調査や国外の機関に対する訪問調査を行う方針とした。国内調査に関しては、各研究分担者の調査内容を研究会の場で共有したほか、永井良三・自治医科大学長や藤井眞一郎・理化学研究所生命医科学研究センターチームリーダーなど医学研究者の意見を直接聴取した。また、ドイツの臨床研究規制については、ヨッヘン・タウピッツ教授を始めマンハイム大学医事法研究所のスタッフに調査を依頼しており、その中間報告を数度にわたり聴取したほか、フランスの臨床研究規制についても文献調査の形で調査を進め、2019年3月に研究分担者・磯部哲と研究協力者・河嶋春菜の助力によりフランス渡航調査を実施した。特殊研究規制検討班においては、研究分担者・徳永勝士を中心に、国内研究機関や海外研究機関・研究者に対するヒアリング調査を行う形でゲノム研究や再生医療研究の規制状況の調査を行った。
著者
中江 花菜
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、近代日本における洋風額縁製造の第一人者である長尾健吉が製作した洋風額縁の着想源・製造法およびその意匠の全容について明らかにするものである。東京藝術大学では、長尾が明治期中葉に東京美術学校に額装・納入した作品を150点超収蔵し、その作品は納入当時の額装を今日まで保っている。これらの作品を研究対象の中心に据え、長尾が西洋製の額縁の意匠や製造技法を取り入れながらも、日本の展示空間や風土に見合う額縁をいかに生み出し、洋画の発展に貢献したかを実証的に検証する。
著者
山下 隆之
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2011年以降の円高の下で、日本の製造業者は、輸出における為替差損を避けるために、海外での現地生産を進めた。この傾向は、産業空洞化として知られる脱工業化現象に対する懸念をかきたてた。しかし、2014年後半の円安により製造業者の一部に海外の生産拠点を国内に戻す動きが見られるようになった。この国内回帰が産業空洞化による損失を埋めることができるかどうか注目される。本研究は、為替変動に呼応する対外直接投資の動向が国内の雇用と経済成長に与える影響を、シミュレ-ション分析により明らかにする。
著者
小林 博樹 瀬崎 薫 西山 勇毅 川瀬 純也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

本提案は申請者らが実施中の福島原発事故対応で直面している技術的な課題の解決を目指す野生動物装着センサの研究である。移動する動物にセンサを装着し、行動や周辺環境をモニタリングする構想はセンサネットワーク研究の初期から見られる。ここでの課題は電源・情報・道路・衛星インフラが存在しない高線量空間に生息する小型の哺乳類に対応可能な情報基盤技術の実現である。
著者
小林 博樹
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

NFCタグ装着の動物を誘き出して情報を取得するユビキタス基盤、A1)物理的な刺激を用いて動物を「誘き出す機構」と、A2)誘き出された動物に装着しているNFCタグと「非接触通信する機構」を開発した。そして、連携研究者が飼育する犬を用いて有効性の評価を行った。A1)に関してペットの犬を対象とし、犬小屋の内部形状を改善することで、非接触通信動作に必要な行動制限や行動停止が起こりやすい条件を明らかにした。具体的にはスチレンブロックを使用して、高さ方向や幅方向の内部形状変更による犬の姿勢評価を通じて、小屋への入場を阻害せず、かつある程度の姿勢制御が可能な条件を見つけることが出来、成果をSI2017、SCI’18で発表した。この内部形状条件を利用して、床と両壁部3か所に非接触ステーション、犬体部には両肩、腹の計3か所に非接触コイルを貼りつけて非接触通信評価を行った。結果、肩部でかなり安定した非接触通信状態を作ることに成功し、評価に使用した2匹の犬で犬小屋滞在時間80分、436分のそれぞれ、55%、36%の時間、コイルが通信可能な位置に存在することが確認出来た。A2)に関しては動物装着側と基地局側のプロトタイプを作成した。このプロトタイプデバイスは、動物装着側デバイスで収集した情報をNFC(Felica)タグのタッチ動作をトリガーにして基地局との無線通信(ZigBee)を行い、装着側保持データを基地局に転送するものである。NFCをトリガーのみに使用することにより、転送データ速度に対する柔軟性をもたせるとともに、タッチ動作が発生するまでは通信機器の電源はOFFにしており、タッチ動作をトリガーにして動物装着側、基地局側双方の通信機器の電源をONすることにより省電力性も同時にもたせる仕様にした。
著者
池田 証壽 鈴木 慎吾 永崎 研宣 大槻 信 斎木 正直
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本の平安時代に僧侶の手によって編纂された漢字字書である高山寺本『篆隷万象名義』、天治本『新撰字鏡』、図書寮本『類聚名義抄』、観智院本『類聚名義抄』の四書は当時の日本人による漢字研究の優れた成果であり、人文学研究の基礎資料となっている。しかし、いずれも古写本であるため、崩し字や異体字が多く、解読に困難が多い。上記の四書のうち観智院本『類聚名義抄』は、収録の和訓が『日本国語大辞典』等に多数収録される重要資料であるが、これまでに全文の活字翻刻はなかった。本研究では観智院本『類聚名義抄』の全文翻刻と注釈を作成して、その内容をインターネット上に公開し、自在に検索できるようにすることを目指す。
著者
赤塚 俊隆 松浦 善治 神吉 泰三郎
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

我々はC型肝炎ウイルス(HCV)の感染性RNAを接種して単一のウイルスによる感染実験に成功したチンパンジー、1535と1536のPBLをEBウイルス(EBV)でトランスフォームすることにより、HCV特異的IgG抗体産生B細胞クローンが感染後どの時点で出現するかを検討した。同時に血清のIgG抗体価も測定し比較した。その結果2頭のチンプともに、ALTの上昇がみられた20週には血中にC抗原に対するIgG抗体が出現したが、E1、E2抗体の出現は殆ど認められず、1536においてのみ45週以降になってE2抗体が出現、10週にわたる抗体価の上昇を認めた。しかしEBV-transformationの結果では、C、E1、E2いずれの抗原に対するIgG抗体産生B細胞も35週の時点で同頻度に認められた。これは54週になっても同じであった。EBV-transformationでは完全に成熟した抗体産生より分化段階の低い細胞が検出されると考えられるので、我々の結果はウイルス中和に関与すると思われるE1、E2抗体を産生するB細胞の分化が、何らかの機序により最終段階の一つ手前で押さえられていることを示していた。平成12年度は、1536において、感染後45週というかなり遅い時期に、ウイルスのE2タンパクの1つのアミノ酸に変異を生じたウイルスが出現し、その時期に一致して抗E2抗体の上昇が見られたので、そのアミノ酸変異を中心としたペプチドを合成し、ヘルパーT細胞の反応を検討した。変異アミノ酸配列のペプチドに対するヘルパーT細胞の反応が生じてE2抗体産生が引き起こされたという仮説を立てたが、結果は正常ペプチドも変異ペプチドも陰性でありその説明は成り立たなかった。更に検討を加えた結果、この45週という時期には,E2のみならず、C抗原に対してもIgM反応が急激に上昇していることが分かった。C抗体はIgGが感染初期にすでに出現上昇しており、これに遅れてIgMが出現するという、通常の免疫反応とは極めて異なる抗体反応パターンを示していた。この事は変異ウイルスが出現した時期に一致して宿主の免疫系にも新たな刺激が生じ、CとE2に対するIgM抗体産生が起こったことを示唆している。変異ウイルス自体には新たな抗原性はない可能性がので、変異ウイルスの挙動か何かにそれ以前のウイルスとは違うものがあって、それが免疫系の抗原認識に影響を与えたことが考えられる。その後我々は、この2頭のチンパンジーの感染後8週のB細胞がHCV抗原を発現していることをみいだした(未発表)。現在この抗原発現の詳細を検討しており、次に感染後期でのB細胞におけるそれと違いがないかを検討する予定である。
著者
平野 葉一 河村 勝久 中村 義作 秋山 仁 板井 昌典
出版者
東海大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は高校数学教育における数学史活用のための教員用マニュアルおよびCD-ROM作成であるが、平成11年度においては、研究最終年を迎えて具体的な実践を含めたまとめに向けての研究を行った。特に、東海大学付属高校の数学教員の協力もあり、作成資料(テキスト)の検討、実際の授業での活用を踏まえた共同授業なども試みた。研究活動および成果以下の通りである。1.数学史に関する教員用マニュアルに関しては、特に2003年からの高校数学教育改訂を念頭におき、授業での生徒たちの作業的・実践的活動が可能になる事例の収集を行った。特に新しい数学基礎との関連を考えた「黄金比」に関しての資料の充実、科学実験との関連をも考えた「指数・対数関数」が中心であった。また、ブールを中心とした集合・論理に関する研究、数学パズルに関する歴史的考察も行った。2.CD-ROM制作に関しては、Internetの普及を考慮してホームページ形式(htlm形式)とすることにした。特に、ピタゴラスからケプラーまでの数学と音楽の歴史展開を基礎とした内容の作品は、高校教員と担当の生徒たちの協力もあり、現場に即したものとなった。3.データベースの作成では、数学史関連項目を約100点選び、その歴史関連文献(約1500件)を収集した。現状では文献リストの形だが、今後内容を含めてデータベース化する予定である。具体的な成果に関する口頭発表は以下の通りである。平成11年12月3日・4日 数学史および数学教育に関するWorkshop開催(発表論文集作成中)論文報告:「数学史の通時と共時:本Workshopへの問題提起として」「ブールの『思考の法則』についての研究」など3件平成12年1月13日 韓国・ソウル、団体Mathlove主催のMath-Festivalでの招待講演「数学博物館と数学教育-数学史的視点からの考察を含めて」