著者
小坂 直輝 小林 哲則 林 良彦
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.3Rin477, 2020 (Released:2020-06-19)

近年,インターネット上で個人が小説を投稿できる,小説投稿サイトが多数開設され,数多くの作品が投稿されている.こうした作品はweb小説等と呼ばれ,これらの中には商業用に書籍化・映像化される作品も存在している.一方でこれらweb小説に関して,その作品数の多さから読者が好みの作品を探すのが難しいという問題や,人気の作品や最新の作品といった限られた少数の作品に大多数の読者が集中し隠れた良作が出来てしまうという問題がある.本研究の目的は,上記問題点を解決し,ユーザが作品を探すのを助ける推薦システムを実現することである.具体的には,作品の本文とジャンルやキーワードといった付属情報から,作品の類似度や質を推定することで,読者の評価情報が無い作品の推薦や,ユーザによる推薦基準の操作が可能な推薦システムを試作し評価を行った.結果として,作品の類似度や質を一定の精度で予測でき,試作したシステムが隠れた良作を発掘するのに有用であることが示唆された.
著者
工藤 豪
出版者
Japanese Council on Family Relations
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.57-73, 2013-07-10 (Released:2017-02-14)
参考文献数
46

本稿は、隠居制家族が現代日本の家族構造を理解するにあたって重要な意義をもつという立場から、これまでの研究が隠居制家族をどう捉えてきたのかを整理するとともに、隠居制家族を「同質論」・「異質論」という議論の枠組みの中にどのように位置づけるべきなのかについて考察を試みたものである。     社会学、民俗学、社会人類学において展開されてきた研究を踏まえて、清水と上野による整理を土台としながら新たな視点を加えて考察を行ったところ、家族構造・社会構造および隠居制家族と東北日本型・西南日本型に関する六つの考え方が存在することが明らかになった。以上の結果、隠居制家族の位置づけにおいて、家族構造についての捉え方が同質論か異質論か、隠居制家族について重点をおく部分は相続か生活単位か、そして「西南日本型」に関する理解と用い方、この三点が重要な指標になってくるのではないかとの結論に達した。
著者
安藤 温子 安藤 正規 井鷺 裕司
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.77-89, 2020 (Released:2020-05-21)
参考文献数
36

DNAメタバーコーディングは、複数の生物由来のDNAが混在するサンプルについて、特定のDNA領域の塩基配列を次世代シーケンスによって大量並列的に解読し、データベースと照合することでサンプルに含まれる分類群を同定する手法である。糞のDNAメタバーコーディングによる食性研究は、対象種の詳細な食性を非侵襲的に評価する手法として注目されており、植食性動物については哺乳類を中心に研究が蓄積されつつある。本稿では、本手法に興味を持つ研究者に実践的な技術提供を行うことを目的とし、著者らが実際に行った分析手法を紹介する。本稿では農地で採食する水鳥と森林で採食するニホンジカ、カモシカを対象とし、糞のサンプリング、DNA抽出、糞を排泄した動物種の判別、次世シーケンサーを用いた食物DNAの塩基配列解読と分類群同定、食物の候補となる植物のデータベース作成までの各工程について、詳細なプロトコルを公表する。これらのプロトコルを多くの研究者に実践していただくことで、本手法の精度が向上し、多様な研究テーマに活用されることを期待したい。
著者
石井 夏生利
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.271-285, 2015-07-01 (Released:2015-07-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

本稿は,「忘れられる権利」をめぐる一連の議論から明らかになった論点と,今後の課題を論じることを目的とする。具体的には,グーグルに検索結果からのリンク削除を命じた欧州司法裁判所の判決,英国貴族院の報告書,第29条作業部会の指針,グーグルの諮問委員会意見書の概要,および日本のヤフーが公表した有識者会議報告書および同社の対応方針を取り上げた。欧州司法裁判所の判決は,EUと米国のプライバシー保護に関する対立軸の中で下されたものであり,権利者保護に偏った判断といわざるをえない。同判決の判断基準が日本の法解釈に大きな影響を与えるともいいがたい。また,過去の情報の暴露は古典的なプライバシー侵害の問題であり,「忘れられる権利」は過去の議論の延長線上の問題としてとらえるべきである。他方,本判決およびその後の一連の議論は,検索エンジン事業者に削除基準を検討させる契機を与えるとともに,表現の自由や知る権利との関係で,削除した旨をWebサイト管理者や検索エンジン利用者に通知すべきか否か等の問題を提起した点において意義が認められる。
著者
小林 敬一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.401-414, 2020-12-30 (Released:2021-01-16)
参考文献数
57
被引用文献数
1 2

近年,教授による学習が効果的な理由を説明する様々な考えが提案されてきた。本論文では,その学習効果の背後にどのような心的過程が仮定されているかという観点から,それらの説明を次の5つの仮説に整理した。(a)知識構成仮説:教授・教授準備が知識構築や生成的処理を促進することで学習効果を生み出す。(b)動機づけ仮説:教師役を務めることが学習内容の知識構成的な処理を動機づける。(c)説明生成仮説:説明産出の行為やその準備が知識構成を促す。(d)メタ認知仮説:教授的説明の産出や生徒役との相互作用がメタ認知的モニタリングを介して知識構成を促進する。(e)検索練習仮説:説明産出に伴う検索練習が学習効果を生み出す。さらに,先行研究の知見を批判的に検討した結果,知識構成仮説とメタ認知仮説を肯定する証拠は多少揃っているが,残り3つの仮説については証拠がほとんどないか知見が分かれていることが示唆された。最後に,教授による学習研究の課題と展望を述べた。
著者
藤稿 航平 趙 晋輝
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 34.6 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.29-34, 2010-02-15 (Released:2017-09-21)
参考文献数
15

色空間がRiemann空間であるということが知られている.Riemann幾何学を利用することで,色空間にRiemann正規座標系と呼ばれる原点からの測地線と等距離線で構成された極座標系を構築できる.これにより,等明度平面上で色相と彩度で表現されるマンセル表色系の拡張系を得ることが可能となる.しかし,空間内の曲率の値によって構築時に測地線の交差が問題となることがある.曲率とは空間の曲がり具合を表したものでその符号によって測地線の振る舞いが決まる.現在,色空間におけるRiemann幾何学は測地線や計量については十分な検討がなされているが,曲率については十分な考察がなされていない.そこで本論文では,Riemann幾何学の性質の中でも曲率に着目し,Riemann正規座標系は負曲率の色空間でしか存在しないことを示す.また,CIELAB色空間とCIELUV色空間において,2組の色弁別楕円データとそのデータから計算された曲率の性質から,曲率と測地線の振る舞いの関係を示し,正曲率問題に対する解決策について考察する.
著者
國分 功一郎
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.12, pp.12_63-12_66, 2021-12-01 (Released:2022-04-22)

コロナ禍に際し、世界の著名哲学者たちが重要な発言を残した。特に注目を集めたのがジョルジョ・アガンベンの発言である。死者の権利と移動の自由の重要性を訴えた彼の発言は非難の的にもなったが、コロナ禍でものを考えることを巡る重要な教訓がそこにはあるように思われる。
著者
阪上 由美 小西 かおる
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.20-28, 2017 (Released:2018-08-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2

目的:本研究の目的は,慢性期在宅療養者が潜在的ニーズを自覚するまでの訪問看護実践のプロセスを明らかにすることである.方法:修正版グラウンデッドセオリー(M-GTA)により,訪問看護師11人の半構造化面接データを分析した.結果・考察:結果として,24の概念,4サブカテゴリー,4カテゴリーが生成された.訪問看護師は【専門性を生かした基本的ニーズの充足】を行いながら,限られた時間のなかで〔「語り」の時空を創る〕実践を行っていた.そして,【在宅療養者の意向を重視して添う】かかわりや在宅療養者の【「生きる活力」の充填への実践】を行うといった≪在宅療養者の「生きる活力」を支える訪問看護実践≫を為すことで,次に〈今後の見通しを立てる〉〈背中を押す〉といった【潜在的ニーズを自覚させる実践】を行っていた.そして,訪問看護師による看護実践が,パターナリズムになっていないか,絶えず〈訪問看護実践のリフレクション〉を行っていた.結論:慢性期在宅療養者が潜在的ニーズを自覚するまでの訪問看護実践のプロセスは,≪在宅療養者の「生きる活力」を支える訪問看護実践≫を行いながら,在宅療養者が潜在的ニーズを自覚することができるよう,エンパワメント支援する実践であった.
著者
和泉 眞喜子 高屋 むつ子 長澤 孝志
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.343-349, 2005-08-05 (Released:2013-04-26)
参考文献数
26
被引用文献数
2

The optimum amount of water suitable for boiling spinach was evaluated by investigating changes in the color and tenderness, and the decrease in oxalic acid and potassium contents by increasing amounts of boiling water. The result of a sensory evaluation showed that the flavor and overall evaluation of the cooked spinach tended to decrease as the amount of boiling water was increased. There was no difference in the color tone, while the tenderness of the cooked spinach increased with increasing amount of boiling water. The oxalic acid content of spinach boiled in 5 times the amount of water decreased to about 61 % of the value for raw spinach harvested in the spring, and decreased to 45% of this value in 20 times the amount of boiling water. The change in potassium content was similar to that of the oxalic acid content. Although the content of free oxalic acid differed by 100 mg between 5 times and 20 times the amount of boiling water, there was no difference in the sensory evaluation. These results suggest that about 5 times the amount of boiling water is the optimum for boiling spinach.
著者
加藤 諭
出版者
日本薬史学会
雑誌
薬史学雑誌 (ISSN:02852314)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.5-9, 2023 (Released:2023-08-10)

Research into the history of pharmacy often makes use of materials held by university archives. This paper analyzes the difference between the role of historical research and that of archives. An important role of archiving is to appraise which records to keep and which to discard. University archives have been established for the purpose of preserving materials from institutions that have emerged in the past, as well as those materials collected in the process of compiling university histories. The first university archives in Japan was established at Tohoku University in 1963. This was followed by others at The University of Tokyo, Kyushu University, and Nagoya University in the latter half of the 20th century. The role of archives has been strengthened by law since the 21st century. The number of university archives has also increased. Currently, there are 12 institutions with functions equivalent to those of the National Archives of Japan. On the other hand, the operation of university archives often requires expertise in the field of history. University histories also need to be compiled on a regular basis. For this reason, university archives need to cooperate with institution administrations, libraries and museums, and archivists are required to have a deep knowledge of university history.
著者
井田 秀行 高橋 勤
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.115-119, 2010 (Released:2010-06-17)
参考文献数
30
被引用文献数
2 5

2004年よりブナ科樹木萎凋病によるナラ枯れが顕在化している長野県飯山市では, 1750年にも同様の被害が発生していた。当時の様子は古文書に, 「神社の社叢において, 多数のナラ樹の葉が夏頃から変色し始め, 秋にほとんどが萎凋枯死した。虫は樹幹に加害しており駆除の手段がない」と記されていた。また, 対処法として, 被害発生の翌年, 直径19∼35 cm程度のナラ樹35本が売却され, 売上金が社殿の修復料に充てられたことや, 他の枯死木から約500俵 (約9.4 t) の木炭が作られたことが記されていた。これらの状況から, 当時の被害はカシノナガキクイムシが病原菌Raffaelea quercivoraを伝播して発生するブナ科樹木萎凋病による被害であると考えられる。すなわち, カシノナガキクイムシは江戸時代以前から我が国に生息しており, ブナ科樹木萎凋病は社叢のような大径木が多い立地で発生を繰り返していた可能性が高い。
著者
矢島 稔
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.106-117, 2015-10-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
5

(1) 皇居内に幼虫を放流し40年にわたって羽化したヘイケボタルとゲンジボタルの個体数の変化を記録した.放流終了後もホタルとカワニナが世代を重ね,個体数を変動させながらも個体群が維持される生息環境の復元に成功した.(2) ゲンジボタルを野外の水槽で飼育した孵化幼虫の成長の変異に基づき,1年で羽化する個体に加え,羽化するまでに2年以上を要する個体が存在する可能性を指摘した.(3) 関東地方に生息するゲンジボタルは越冬後体長が30mmに達した幼虫が流れから上陸するのは4月中・下旬に限られる(日長時間が13時間以上の雨の夜).この生活史は餌のカワニナの繁殖・生存と密接に関連していると考えられる.
著者
西上 泰子 柳沢 幸雄
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.129-138, 1995-05-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
21

人口増加と食肉需要の増大に伴い,牛の飼育頭数は急激に増加した。かつて牛は草や農作物残滓を食べて,牛肉や牛乳,皮革を人類に提供し,役畜として働き,その排泄物は肥料にも燃料にもなった。現在は大量の牛の飼育のために放牧地の植生が劣化し,熱帯林が草地へ転換されている。特に先進国では穀物飼育を行い,畜産排泄物は淡水資源を汚染する。これら畜産による地球環境負荷を考察した。さらに温室効果ガス(GHG)の地球規模の排出に,牛が関与する割合を計算した。 牛の飼育とGHGの関係には,GHG発生量の増加と,吸収量の減少の二つの側面がある。放出されるGHGとして,牛のルーメンから発生するメタン,呼吸によるCO2,飼料用穀物の生産のために発生するCO2などがある。他方,過放牧のために植生が減少したり,また草地を作るために森林が開拓されて,大気からのCO2の吸収量が減少する。また化学肥料の使用によって亜酸化窒素(N20)も空気中に放出される。これらの植生劣化まで含めて計算した結果,人為的GHG総排出量に対して,牛が関与する割合はCO2で25%,メタンで19%,N20では不確実性を伴うものの18%となった。メタンについては比較的短い寿命のために,大気中濃度安定化のための削減必要レベルは人為メタン総排出量の10%と小さく,牛の存在がなければメタンの問題は解決し,牛の関与分は大きいと言える。他方,CO2とN20については削減必要レベルはそれぞれ60%以上,70~80%と大きく,世界中で牛の飼育を全部削減したとしても,地球温暖化問題を解決するほどではない。