著者
上垣 豊
出版者
龍谷大学龍谷紀要編集会
雑誌
龍谷紀要
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.59, 2012-03-09 (Released:2012-04-02)
著者
松本 秀人
巻号頁・発行日
2010-03-25

本研究の目的は、日本の観光および日本の公共図書館を対象として、観光と図書館の融合の可能性について様々な角度から考察を行うことにより、こんにちの観光および図書館がそれぞれ持っている課題の解決に、観光と図書館の融合がはたす役割を示すことにある。そしてこれにより、観光や図書館の関係者をはじめ、地域住民や行政機関などに、観光の創出、図書館運営のあり方、まちづくりの実践活動について、新たな手がかりを提供する。全体の概略は、まず観光の課題と図書館の課題を述べ、この解決にあたって「両者の融合が双方の課題解決に役立つ可能性がある」という仮説を立て、予備的な考察をふまえた上で、観光と図書館の融合の可能性を具体的に考察し、さらに観光者と地域とを結ぶコミュニケーションの媒介役として図書館をとらえた「観光者と地域とのコミュニケーションモデル」を試案として提示する、という構成とした。こんにちの日本の観光における主な課題として、(1)地域主導による観光振興、(2)観光の多様化・高度化への対応、の2点をあげることができる。本研究では、これらの課題を解決するために公共図書館に着目した。なぜなら、公共図書館は地域によって運営され、地域の情報拠点であり、多様な資料を所蔵している、などの特徴を持っており、これが前述した課題に対応しうる可能性を持っていると考えられるからである。一方、日本の公共図書館も様々な課題を持っており、主な課題として、(1)新たなサービスをどう展開するか、(2)地域にどのように貢献するか、の2点をあげることができる。そこで、「新たなサービス=観光者へのサービス」、「地域貢献=地域情報の発信や観光振興を通して地域に貢献」という発想を導入してみると、図書館の課題に対して、観光を意識した活動を図書館が行うことが対応策のひとつとして考えられるのである。このように、観光の側からも図書館の側からも互いに着目する理由があるように考えられることから、「観光と図書館が融合することによって、双方にメリットがもたらされるのではないか」という仮説を立て、この仮説をもとに考察を進めた。本研究における「融合」という表現は、簡単にいうと、観光と図書館が様々な点で連携し合うこと、直接的あるいは間接的に利活用することなどを意味しているが、特に「融合」という表現を用いた理由は、「融合によって新たな価値がもたらされる」という点に注目したからである。次に、観光と図書館の融合について具体的な考察を進める前に、図書館の特性からみた観光との関連性、観光と図書館の社会対応にみられる類似性の2点について予備的な考察を行った。まず「図書館の特性」については、(1)社会的な記憶装置としての図書館、(2)地域文化の可視化装置としての図書館、(3)情報の濾過装置としての図書館、という観点から説明を行い、図書館の特性が地域文化や観光と関連があることを示した。また「観光と図書館の社会対応にみられる類似性」については、(1)(訪日・在日)外国人への対応、(2)滞在志向への対応、(3)専門性重視への対応、(4)学習重視への対応、という点をあげて、両者の類似性を述べ、ここにも両者に関連性があることを示した。これらの準備的考察をふまえたうえで、図書館の諸要素からみた観光との融合の可能性について、事例をあげつつ具体的な考察を行い、またそれらの整理と分類を試みた。考察にあたっては、図書館の側に視点を置き、図書館の基本的な要素(「資料」「サービス」「施設)について考察し、次に「図書館と地域社会」に関する要素について考察し、さらに「インターネット社会との関連」について考察し、これらに分類しにくいものを「その他」としてまとめた。それぞれの項目では、まず要素について説明を行い、参考となる事例を紹介し、その上で融合の可能性について分析を行った。この考察によって、観光と図書館が様々な点で融合する可能性があることを具体的に示すとともに、様々な要素を分類して列挙することで、今後の研究のためのチェックリストとなるよう配慮した。さらに、具体的な考察の中でみられる観光者と図書館のコミュニケーションの部分に注目し、図書館を媒介役とする「観光者と地域とのコミュニケーションモデル」を試案として提示した。このモデルを提示することにより、観光と図書館の融合において、図書館が観光者と地域とのコミュニケーションの媒介役として機能しうる点を強調した。最後にまとめとして、観光と図書館の融合によってもたらされる「新たな価値」について述べた。すなわち、図書館にとっては「新たな利用者の出現」をもたらし、観光にとっては「図書館も観光資源である」という認識をもたらし、地域住民にとっては「“まちづくり”という営為の記録を次世代に残す仕組み」として図書館をとらえる認識をもたらす。このように観光と図書館の融合は、これまでになかった価値が創出される可能性を持っており、さらに総体的にみれば、観光と図書館の融合によって観光創造に貢献する可能性もあると考えられる。
著者
大宮 卓 佐藤 光 西村 秀一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.463-467, 2020-07-25 (Released:2020-09-05)
参考文献数
9

鼻腔拭い液等の臨床検体からのイムノクロマトグラフィーを原理としたインフルエンザウイルス抗原の迅速検出キット(以下,迅速キット)は,多くの医療施設で使用されている。こうした迅速キットを用いた試験では結果として偽陰性が起こることは,よく知られている。一方で偽陽性反応も,まれではあるが起こる。今回我々は,迅速キットでA,B両型の陽性を示したものの,ウイルス分離及び遺伝子検査でインフルエンザウイルスが陰性で,その後,用いた臨床検体からRSウイルスが分離された事例を経験した。我々はこれを迅速キットの偽陽性反応と考えた。この偽陽性の原因について我々は,検体中に含まれる患者由来の抗体以外の何らかの成分が迅速キットで用いられているマウス由来の抗体に対し反応し,あたかもウイルス抗原が反応したかのような陽性ラインが出現したという仮説をたてた。そして,その証明を目的として,競合試験として当該患者検体に精製マウスIgGを反応させたのち迅速キットにかけたところ,陽性反応ラインは出現しなくなった。これにより,本例が患者由来の何らかの成分とマウス抗体との反応による偽陽性であったことが,強く示唆された。
著者
松川 杏寧 髙岡 誠子 木作 尚子 柴野 将行 有吉 恭子
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.107-117, 2022-11-01 (Released:2023-04-26)
参考文献数
24

This study aims to explore the elements necessary to solve the problem of shelter quality in disaster-affected areas in Japan. The researchers identified twelve positive deviant good practice evacuation shelter management cases from four significant disasters over the past ten years. Interviews with twelve leaders were transcribed. Three disaster researchers from sociology, public health, and architectural backgrounds as well as two crisis management practitioners independently extracted key terms from the same transcript. Through the Affinity Diagram method, eight mutually exclusive super-conceptual clusters emerged. Five out of eight super-clusters corresponded with areas that were prescribed by the National government-issued Evacuation Shelter Management Guideline. Three unique super-clusters also appeared to be characteristic of the competent shelter operation.
著者
増成 友宏 清水 則一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.437-447, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

GPS(Global Positioning System)による変位計測の信頼性を向上させるためには,計測結果から真の変位と計測に混入する誤差との識別を行い,誤差を補正することが重要である.本研究では,GPS変位計測における誤差要因のうち,最も影響の大きいと考えられる気象条件による大気圏遅延について,その補正方法を検討し,気象補正が可能な基線解析プログラムを開発した.そして,実際の計測結果に適用しその妥当性を検証した.
著者
坪村 宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.632-635, 1998-10-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3
被引用文献数
6

従来の高校教科書では電池の項の説明をボルタ電池から始めるものが多い。しかしボルタ電池は, 歴史的な立場はともあれ, 実際は非常に複雑な現象を含むものであり, また安定した起電力を保つことも難しいものであって, これを電池の話の導入に用いることは無理がある。またそのためか, 従来の教科書のボルタ電池の説明には誤りが多く, 化学教育上必要のない, 複雑で末梢的な記述が多い。電池の仕組み, 特長を教えるには, ボルタ電池はやめにして, ダニエル電池などを導入に用いることを勧めたい。
著者
Sasa M TRAILOVIC Jelena Trailovic NEDELJKOVIC
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.591-599, 2011 (Released:2011-05-31)
参考文献数
45
被引用文献数
30 36

Ivermectin is considered a very safe drug; however, there are reports of toxic effects in particularly sensitive populations or due to accidental overdose. The aim of this study was (1) to further characterize the central and peripheral toxic effects of ivermectin in animals and (2) to determine possible therapeutic strategies for use in cases of ivermectin poisoning. We tested the effects of experimental doses of ivermectin previously reported to cause various intensities of CNS depression. However, in our study, ivermectin at 2.5, 5.0 and 7.5 mg/kg i.v. did not produce visible CNS depression in rats and 10 mg/kg resulted in sleepiness and staggering 10 to 40 min after application, while a dose of 15 mg/kg caused CNS depression very similar to general anesthesia. Ivermectin dose-dependently potentiates thiopentone-induced sleeping time in rats. Flumazenil (0.2 mg/kg), the benzodiazepine antagonist, did not affect the action of thiopentone; however, it significantly reduced sleeping time in rats treated with a combination of ivermectin (10 mg/kg) and thiopentone (25 mg/kg; from 189.86 ± 45.28 min to 83.13 ± 32.22 min; mean ± SD). Ivermectin causes an increase in the tonus (EC50=50.18 μM) and contraction amplitude (EC50=59.32 μM) of isolated guinea pig ileum, very similar to GABA, but without the initial relaxation period. These effects are dose-dependent and sensitive to atropine. Our results confirm the central and peripheral GABAergic properties of ivermectin in mammals and also indicate involvement of the cholinergic system in its toxicity. In addition, the results suggest that flumazenil and atropine have potential clinical roles in the treatment of ivermectin toxicity.
著者
永田 雅 猪川 元興 吉住 禎夫 吉田 泰治
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.841-855, 1986 (Released:2007-10-19)
参考文献数
27
被引用文献数
44 48

本論文の目的は冬期北西季節風下において,朝鮮半島東岸沖の日本海西部上に現れる収束雲帯の形成機構を調べることである。いくつかの異なった地表の条件の下での数値実験によって,朝鮮半島と日本海の海陸の熱的な性質の対照が,この収束雲帯の形成に対して本質的な役割を果たしていることが示される。すなわち,冷たい陸地の上では気団変質がより弱く,その結果,対流圏下層で朝鮮半島南東端に中心を持つ中規模の高圧部が,そしてその東端に収束帯が形成される。この収束帯が積雲対流を活発化させ,帯状に組織化する。また,朝鮮半島北方の山地によるブロッキングの効果がこの収束帯を強めるように働く。
著者
趙 潔
出版者
東京海洋大学
巻号頁・発行日
2015

東京海洋大学博士学位論文 平成27年度(2015) 応用環境システム学 課程博士 甲第376号
著者
鈴木 秀憲
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.27-42, 2012
参考文献数
41

In 1980s, Benjamin Libet and his colleagues conducted a series of experiments on voluntary acts. Its result is that certain brain potential (RP) precedes conscious will, which has excited much discussion about the existence and nature of free will. This paper shows that this result admits various interpretations about RP, conscious will, and their relation, depending on philosophical assumptions concerning free will and the relation between mind and brain. I also argue that the process of deliberation, rather than the momentary decision, should be the focus of investigation in order to elucidate the role of conscious will and the nature of free will.
著者
荻野 富士夫
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
1985

制度:新 ; 文部省報告番号:甲677号 ; 学位の種類:文学博士 ; 授与年月日:1985/11/19 ; 早大学位記番号:新1206 概要書あり
著者
足立 修一
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.630-631, 2017-09-10 (Released:2017-09-20)
参考文献数
8
著者
野村 実広 村上 道夫 小野 雄也
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.171-175, 2017-05-01 (Released:2017-05-30)
参考文献数
18

近年,気候変動と犯罪の関連への懸念が増している.本研究では,1967 年から2011 年までの東京都における気温と犯罪件数の関係を調査した.強姦と猥褻が夏季に多いことが判明した.強姦と猥褻の月別犯罪件数比(当該年における1 カ月あたりの平均件数に対する当該月の犯罪件数の比)は,それぞれ冬季,夏季に平均気温の上昇とともに有意に上昇した.気温の上昇は強姦と猥褻のリスクの増加をもたらす可能性があることが示唆された.
著者
池田 華子 田中 智明 石山 智弘 日高 聡太 宮崎 弦太
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.369-379, 2015 (Released:2015-08-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

Ultra-high definition (4K) imaging allows us to achieve considerably higher image quality than would high definition (HD) imaging. The present study examined how 4K and HD imaging could influence subjective impressions of movies differently, in association with the quantities of motion and fields of view of these movies. We found that stronger impressions regarding comfort and impact were evoked for 4K movies with smaller quantities of motion and medium field of view. Stronger perceptions of impact occurred for HD movies with larger quantities of motion and larger field of view. HD movies also gave stronger impression regarding dynamics regardless of motion quantities. Additionally, HD movies down-converted from 4K movies tended to induce higher impressions regarding evaluation and comfort in some situations. These results suggest that subjective impressions of movies are influenced by the differences in resolution images, as well as interactions between imaging types and characteristics of movie contents.