著者
村上 恭通 鈴木 康之 槙林 啓介
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2018年度は東寺領新見荘がおかれた岡山県新見市、弓削嶋荘がおかれた愛媛県上島町で次のような調査を実施し、研究成果を得た。新見市においては前年度、神郷高瀬地区で実施した踏査成果を前提に、5月に貫神ソウリ遺跡、鍛冶屋床遺跡において地中レーダー探査を実施した。その結果ではいずれの遺跡においても明確な構造物の輪郭が捉えられないため、10月、11月に試掘調査を実施し、貫神ソウリ遺跡では後世の土地削平、製鉄関連施設が根こそぎ滅失し、縁辺部にスラグ原のみを遺していることが判明した。これに対し、鍛冶屋床遺跡は石組の構造物を遺し、小舟状遺構の一部を確認し、地下構造が残存していることを明らかにした。放射性炭素年代測定により、前者が13世紀後葉、後者が15世紀後葉~16世紀前葉であることもわかった。これらの遺跡以外にも踏査により新畑南遺跡、永久山一ノ谷遺跡でスラグ原を確認し、スラグ噛み込み木炭を測定した結果、いずれも16世紀を中心とする遺跡であることが判明した。愛媛県上島町では8月に佐島・宮ノ浦遺跡(Ⅱ区)を発掘調査し、併行して上弓削・高濱八幡神社の調査も行った。宮ノ浦遺跡では10~11世紀の遺物をともなう灰白色粘土層と厚い焼土層を検出した。これらは粘土を用いた構造物で、なおかつ焼土を生成するような施設の残骸であり、生産活動に関連する可能性が考えられる。高濱八幡神社は2013年に小規模な試掘を行い、揚浜式塩田の浜床の可能性の高い硬化面を確認していたが、この発掘調査により、一定の面積を有し、砂堆上を整地して粘土を貼り付けた塩田浜床であることを実証した。浜床層に含まれる木炭を資料とした年代測定の結果、下層は9世紀、上層は12世紀を中心とする年代を示し、古代に造成された塩田が中世前期まで使用されていたと考えられるようになった。
著者
末松 和子 黒田 千晴 水松 巳奈 尾中 夏美 北出 慶子 高橋 美能 米澤 由香子 秋庭 裕子 島崎 薫
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

欧米豪で進む高等教育の「内なる国際化」とりわけ留学生と国内学生の正課内外国際共修に着目し、国内の実態調査、海外施策・実践比較研究、日本をはじめとする非英語圏の高等教育現場に適した国際共修教授法の開発、また国際共修の効果検証を通して日本やアジアに特化した国際共修や「内なる国際化」の在り方を明らかにするという本研究の目的に沿って、日本における国際共修の実践実態の把握、「内なる国際化」が進む海外主要国の施策および実践比較研究を通して理論構築を行い、日本やアジア独自の国際共修を考察するための基礎研究を進めた。また、発展的・包括的な国際共修カリキュラムおよび教授法を開発し、国際共修の効果検証を正課外にも拡大することで海外留学の準備や代替としての国際共修を「内なる国際化」の枠組みで捉え、その有効性の明示と政策提言を行うための準備として、論文・学会発表で基礎研究の結果をタイムリーに発信した。具体的には、文献調査やペダゴジー研究を中心とした基礎研究の成果を国内外の学会で報告し、ワークショップでは、国際共修を実践する上での授業やシラバスのデザイン、教育実践者に求められるファシリテーション・コンピテンシー、課題及びその対処法、評価、について有益な議論を展開することが出来た。ワークショップの運営についても国際共修の研究者、教育実践者より建設的なフィードバックを得ることが出来、今後の研究の発展に資する知識基盤の形成につながった。また、国内における国際共修実態調査を実施するためのパイロット事例調査も実施した。日本の高等教育機関における国際共修の実践状況と課題を明らかにするために実態調査を計画しているがその準備にも着手し、来年度の発展研究に向けた下地作りを行うとともに、本年度実施したワークショップの発展版を国内外で実施するための申請作業を集中的に実施した。
著者
伊集院 直邦 宮内 睦美
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

我々はこれまで科研費の補助のもとに、内毒素の歯週組織破壊に及ぼす影響をラットを用い実験病理学的に検索し種々の知見を得てきた。それらの知見の一つとして、内毒素は歯根膜線維芽細胞によるコラーゲン原線維の貧食作用の著しい亢進をきたす可能性を示唆する所見を得た。そこで、そのことをさらに組織化学及び組織計測的な検討を加え確認することを試みた。その結果、歯根膜線維芽細胞は生理学的状態においてもコラーゲン原線維の貧食能が高く、さらに、内毒素によりその作用が有意に亢進される事が明らかになり、辺縁性歯周炎における歯周靱帯の破壊に大いに関与することが示唆された。また、このことをラット臼歯歯根膜より線維芽細胞株を樹立し培養歯根膜線維芽細胞を用いin vitroの系でも証明することを試みた。その結果、顎骨より抜去したラット臼歯歯根より、4種類の歯根膜由来継代可能な培養細胞を得ることが出来これらの細胞は短紡錘形ないし多角形をし、いずれも歯根膜線維芽細胞に特徴的な性状であるアルカリホスファターゼ陽性を示す細胞を含み、免疫組織学的にビメンチン、ケラチン、オステオカルシンに陽性を示すと共に、アリザリンレッドS染色により石灰化能を有することが示された。しかしながら、これら細胞をコラーゲンゲル中で立体培養したところ、細胞内へのコラーゲン原線維の取り込み像を認めたものの本研究の遂行の為には不十分な所見しか得られなかった。コラーゲンゲルの濃度培養条件、観察方法を検討したがin vitroの系で内毒素が歯根膜線維芽細胞のコラーゲン原線維貧食能の亢進を来すことまで証明することは出来なかった。引続き、ラット尾部より調整した生のコラーゲンを用いる事や、培養液中にコラーゲン形成や石灰化等に重要な因子であるアスコルビン酸、β-グリセロリン酸、テキサメサソン等の添加も考慮しながらさらに検討する予定である。
著者
松浦 昇
出版者
東京藝術大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究「浮世絵における西洋陰影法の消去に関する基礎研究」は、江戸中期~後期を中心にした浮世絵の一次資料調査および文献調査を通じて、絵師による西洋陰影法の利用と、その背景にある日本固有の観察方法や陰影概念を明らかにすることが目的である。調査によって、浮世絵における西洋陰影表現は眼鏡絵や洋風版画の影響を受け、葛飾北斎以降江戸の実景とともに使用されていることが明らかになった。また歌川国芳を中心に、西洋陰影表現は月影と影法師との関係として再解釈されていたことが明らかになった。
著者
高坂 泰弘
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

側鎖に重合可能なビニル基を有するβ-アミノ酸,α-(アミノメチル)アクリル酸のエステル,アミドおよびそれらの類縁体の重合について,立体規則性制御を中心に検討し,炭素-炭素骨格を主鎖に有するポリアミノ酸類を合成した.生成ポリマーが水中において温度/pH応答性を示すことを見出し,それらの機能とモノマー,ポリマーの構造的相関について評価した.また,ジビニルモノマー (= ビスアミノ酸エステル) の立体特異性環化重合に成功した.
著者
高岡 宰
出版者
京都府立医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2018-08-24

ダイゼインリッチイソフラボンアグリコン(DRIAs)の子宮内膜症に対する効果および作用機序の解析を行う。DRIAsはサプリメントで、イソフラボンの一種であるダイゼインが豊富に含まれており、副作用の報告なく女性のヘルスケア領域で注目されている。研究代表者は子宮内膜症においてDRIAsが細胞増殖を抑制することおよび抗炎症作用を持つことを明らかにした。本研究ではDRIAsの子宮内膜症に対する細胞増殖抑制効果および抗炎症作用の解析をさらに進め、新たな治療薬としての基盤を確立させる
著者
大嶽 秀夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

日仏の近現代政治史のなかから、さまざまな争点をとり上げて、比較検討した。そのうち、ネオリベラル・ポピュリズムの展開およびフェミニズムの政治史については、それぞれ単著として発表した。さらにヴィシー政権と大日本帝国の比較を行い、それが戦後政治に与えた負の影響を検討した。最後に現代日本の政党政治と社会運動についても、インタビュー調査も行い、詳しい検討を行った。これらの成果については出版準備中である。
著者
村上 晋
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年米国で発見されたD型インフルエンザウイルスは、ウシ呼吸器病症候群(BRDC)の患畜から高頻度でウイルス遺伝子が検出されることから、BRDCの原因ウイルスの一つである可能性が示されている。これまでに私たちは日本にもD型ウイルスが侵淫していることを初めて明らかにした。本研究では、わが国のウシやブタなどの家畜おけるD型インフルエンザウイルス感染の実態を大規模に調査し、そのBRDCとの関連性や、日本に存在するD型インフルエンザウイルスの生物性状を明らかにすることを目的とする。本年度はまずリバースジェネティクス法の開発とその改良に取り組んだ。ウイルスRNAを発現するプラスミド7種とウイルスのポリメラーゼと核タンパク質を発現するプラスミド4種を293T 細胞あるいはHRT-18G細胞にトランスフェクションし、上清中に放出されるウイルス量を比較したところ、HRT-18G細胞の方が多かった。しかし、作製したウイルスの増殖性は、シークエンスは野生型と同一であるにもかかわらず、野生型よりも100倍程度が低かった。その原因を調べるために、ウイルス粒子内に取り込まれるRNA量を比較したところ、作製した組換えウイルスは野生型よりも少ない遺伝子分節があることがわかった。そこでトランスフェクションするプラスミドの割合を変更したところ、野生型と同様の増殖性を持つウイルスの作製に成功した。疫学調査の一環としてウイルス分離を試みた。山形県で呼吸器症状を示したウシの呼吸器スワブから、ウイルスが分離された。分離されたウイルスはこれまで報告のあるD型ウイルスとは遺伝的に異なるウイルスであることがわかった。今後その性状を解析する予定である。
著者
岡部 桂史
出版者
立教大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

20世紀におけるアジア地域の発展をミクロレベルで解明・把握するため,本研究では,両大戦間期から戦時期までのオランダ領東インドにおける日本企業の進出・定着過程を一次資料から検討する。本研究は,従来の統計資料や外交資料に基づく検討ではなく,海外に所蔵されている戦前期日本企業アーカイブの資料を利用して,具体的な企業・産業レベルの分析から,その変化を辿った。特に「環太平洋」という視点から,オランダ領東インドを取り巻く欧州―日本―中国―豪州―米国が,産業・貿易の各側面で相互にどのような関係(支配・従属・依存・補完)を構築していたのか,複眼的な視点から研究をまとめた。
著者
村上 周三 小林 信行 鎌田 元康 加藤 信介 内海 康雄 吉野 博 赤林 伸一
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.はじめに省エネルギーを実現すると同時に清浄な空気環境の維持と快適性の向上を図るためには、従来の一様拡散の仮定ではなく、気流・濃度分布を考慮した換気効率の概念に基づく換気設計や換気システムの評価が必要である。そこで本研究は、換気効率を考慮した空調換気設備の評価方法の確立を目的として、文献調査、実験、数値計算、用語集の作成、測定マニュアル等の作成を行った。2.研究方法と結果(1)研究の現状調査国内外の文献と関連の規格、国際会議の研究動向等を調査し、換気効率の概念や評価法の実測例、実験例をまとめた。その結果、換気効率に関しては様々な概念があって、未だ確立されていない現状が明らかになった。(2)換気効率の概念について関連する用語集と一般的な換気システム図を作成し、各国での換気効率に関する用語の定義を整理した。(3)各種建物を対象とした換気効率の実測・セントラル換気システムを備えた住宅給気系ダクト入口にCO_2ガスを注入し、各室における濃度履歴を測定した。・実大居室模型空気齢を基にした各種測定法の精度・実用性などを実験的に検討した。・3室の縮小居室模型各室の換気効率を測定した基礎的なデータを得た。・事務所ビル単一ダクト方式を採用した事務所ビルの換気効率を実測した。(4)空気齢の測定方法に関するマニュアルの原案作成各種の実験や実測を基に、主要な換気効率指標である空気齢の測定法のマニュアル(原案)を作成した。(5)数値シミュレーション乱流計算プログラムによる空気分布に基づいて各種の換気効率指標の予測手法を検討した。3.まとめ換気効率の概念についての各国での研究の現状を明らかにし、関連用語集を作成した。また、各種建物について実験や数値シミュレーションを実施し、換気効率指標を計算した。これらに基づいて、主要な換気効率指標である空気齢の測定マニュアル案を作成した。
著者
植村 和彦 山田 敏弘
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

日本海生成前の漸新世〜前期中新世植物化石群の組成的・時代的変化と葉状特性による陸上古気候の変遷をあきらかにし,当時の古地理・古地形の復元資料を得るため,秋田県,福島県,岐阜県,瀬戸内沿岸,および北九州での野外調査と化石資料の採集を行った.また,既存の化石コレクションを再検討と化石層の年代測定を行った結果,以下のような成果を得た.1)いわゆる漸新世植物群は,始新世後期〜漸新世前期植物群(神戸,土庄,岐波植物群など)と漸新世後期(野田,相浦植物群など)の2型に分けられ,それぞれ寒暖の変化が認められるものの,始新世中期の新生代最温暖期以降の現代化した,暖温帯植物群として位置づけられる.2)前期中新世植物群は,その前半の温帯系阿仁合型植物群と後半の温暖系台島型植物群に分けられているが,その移行期は2000万年前(20 Ma)であること,および20〜17 Maの台島型植物群は16 Ma前後のものと異なり,フナ属や落葉広葉樹が優占する一方,落葉樹の台島型要素(Comptonia, Liquidambar, Parrotia, Quercus miovariabilisなど)を伴った植物群であることを明らかにした.3)植物化石群の組成的特徴と葉状特性による古気候解析から,日本海生成前の前期中新世植物群の緯度的変化と東西(大陸内陸側と太平洋沿岸域)の変化を調べた.阿仁合型植物群にみられた内陸側-沿岸域の変化は台島型植物群では顕著な差が見られない.これは日本海が生成を始める,当時の古地理的な発達を強く反映している.4)これらは日本海周辺の地域的現象を含んでいるが,海岸低地の植物化石群から明らかなように汎地球的気候変化も示されている.
著者
野口 康彦 青木 聡 小田切 紀子
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、面会交流のあり方と養育費の授受が子どもの発達に及ぼす影響を解明し、離婚後の子どもの利益の実現に向けた問題提起を行うものである。平成30年度の研究実績は、学術論文1本と寄稿論文2本、口頭発表1本であった。その内訳は、「離婚後に別れて暮らす母親と娘との面会交流に関する探索的研究-3人の女子学生のPAC分析を通して-」(茨城大学人文社会科学部紀要)、「親の離婚・再婚を経験した子どもと家族の支援」(『家族心理学年報 36巻』金子書房)、「離婚・再婚家族における子どもの発達と養育支援」(『子育て支援と心理臨床16巻』福村出版)である。いずれも、これまでの調査・研究の一端を踏まえつつ、親の離婚・再婚を経験した子どもの養育問題を概観し、主として子どもの心理的体験に焦点を当てながら、親の離婚・再婚を経験した子どもと家族の支援について述べている。また、2018年11月3日~4日に開催された「第1回日本離婚・再婚家族と子ども研究学会」において、「親の離婚・再婚を経験した子どもの結婚観」の題目で口頭発表を行った。離婚・再婚後の面会交流及び養育費の授受と子どもの心理発達との関連について検証するため、質問紙による調査を行い、関東、関西、中国地方の5つの大学の大学生739名から協力を得た。主として親の離婚を経験した子どもの結婚観について、離婚時の年齢と面会交流の有無の視点から分析を行ったものを報告した。再婚後の親子の面会交流の課題など、参加者との意見交換を通して、今後の調査研究においても有用な示唆を得た。さらに、2018年5月18日に水戸少年鑑別所にて「離婚・再婚家庭における子どもの発達と養育支援」、2018年9月21日に横浜家庭裁判所にて「親の離婚等が子に与える影響と面会交流」の題目で研修担当講師を務めた。その際、科研費による調査によって得られたデータを活用しながら研修を行った。
著者
宮田 修 原 正一 亀山 道弘
出版者
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究計画では「ノズルから放出した油に油処理剤を水中散布することによってO/W型エマルション群や油のみの場合の単一油粒、あるいは単一油粒の集まりである油粒群の浮上について連続的に実験・解析する。そのため、①水中散布の方法としてダクトによって油を集め処理剤を投入し油粒径が最小になる条件を求める。次に、②油粒径の異なるO/W型エマルションの終末浮上速度を求める。さらに、③油の放出条件による単一油粒や油粒群の粒径や形状の変化を含む挙動を明らかにする。最終的には、Re数、Eo数、M数の関係を整理し、油粒形状との関連を明確にできる図表を確立することにより油と油処理剤の最適混合に関する評価を行う。」としている。当該年度は、実験装置の配管や油ポンプの更新を行い。前述の「③油の放出条件による単一油粒や油粒群の粒径や形状の変化い含む挙動」について、A重油・C重油の実験を行った。その実験結果に基づき日本マリンエンジニアリング学会の第88回学術講演会において発表を行った。そこでは、「浮上する油粒の挙動が複雑であることの一つの理由は、油粒が浮上すると周囲に流れを起こし流れに巻き込まれながら浮上していくためであった。また、Re数やEo数とM数で実験結果を整理し、粘性や界面張力が浮上する油粒の形状や挙動に影響を与えている。」について示した。引続き、A重油とC重油を混合し動粘度や界面張力を変化させた実験実施中である。
著者
小野 正夫 城田 英之 藤田 勇 馬 驍 亀山 道弘
出版者
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

海難事故等で海底に沈んだ船舶に搭載された貨物油や燃料油は、重大な環境被害をもたらす怖れがあり回収することが望まれるが、燃料油に多く用いられるC重油は海底の低温環境下で粘度が高くなり、回収は難しいのが現状である。また、海底油田からのパイプラインに蓄積される高粘度物質は石油の揚収の効率を悪化させるとともに最悪の場合、管内の閉塞を引き起こす可能性がある。そこで、重質油等の高粘度物質を効率よく回収するために、水に化学的処理剤等を加えた高温高圧のジェットを高粘度物質に加えて微細化させ、分散化させることで流動化促進を図り、回収効率及び閉塞防止技術を向上させるシステムの研究開発を行うものである。
著者
滝沢 善洋
出版者
長野工業高等専門学校
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では電界紡糸を用いて海洋汚染物質の1つである重油を効率よく回収する機能性カーボンナノファイバーマットの開発を目指す。ファイバー自体のみを機能化する既存の典型的な研究とは異なり、電界紡糸で形成するナノファイバーマット内の空間を巧妙にデザイン(制御、機能化)し利用する。ことに当研究はこれまでに無い新規の重油回収材料と回収方法を提供するとともに、水環境、海洋環境の保全(SDGs)に貢献するものである。
著者
水田 英實
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

デカルトが方法的懐疑を通して心身の実在的な区別に言及する一方、「身体は人間精神によって形相づけられる」とも述べて、人間精神=実体的形相という説を保持していたことは明らかである。ところで人間精神が、一個の実体としての人間の部分であるのか、それともそれ自身として存在する一個の実体であるのかという問題は、トマス・アクィナスにもある(拙論(1988))。ただしジルソンによれば、人間精神を不完全な本質を持つものと見るが完全な本質を持つものと見るかという点にトマス説とデカルト説の決定的な違いがある。さてこのようなデカルト説をとる際に生じる、心身の実体的結合の可能性に関する議論については、ゲーリングスやライブニッツらを含めて、従来から詳しい研究が行なわれてきた。しかし心身の実体的結合の必然性の問題については、近世初頭のアレクサンドロス説・トマス説・アヴェロエス説の間で三つ巴の論争があり、デカルトもそれを承知しているけれども、その詳細が研究されてきたとは言いがたい。この論争の中で、魂の不死性の論証可能性を否定するカエタヌスは、アレクサンドリストのポンポナッツィにくみして、トミストでありながらトマス説と齟齬をきたす主張をするにいたっている。あるいはスピノザの「人間の魂は神の無限の知性の一部である」という主張は、アリストテレスの『デ・アニマ』第三巻の解釈をめぐって十三世紀以来トミズムと対立関係にあるアヴェロイズムの側に位置づけしたのである。アヴェロエス説を論駁するトマスの立脚点は、可能知性の内在説であり、それは人間の魂における能動知性と可能知性の存在的な同一性の主張を伴う点で「殆どすべての哲学者たち」と一致しないだけでなく、離在的な能動知性と存在的に異なる内在的な能動知性の措定を伴う点で全く特異である。このようなトマス説の成立を可能にしたのは、言うまでもなくエッセの思想であり、創造の思想である。
著者
濱田 裕子 藤田 紋佳 瀬藤 乃理子 木下 義晶 古賀 友紀 落合 正行 賀来 典之 松浦 俊治 北尾 真梨 笹月 桃子 京極 新治 山下 郁代
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

子どもを亡くした家族の悲嘆に関するケアニーズを明らかにし、アクションリサーチによって悲嘆に対するサポートプログラムを作成することを目的に研究を実施した。子どもを亡くした家族に個別インタビューを行った結果、子どもの疾患や年齢によって、家族のケアニーズの特徴は異なったものの、共通していたのは【子どものことをなかったことにしたくない】、【子どもの事を知ってほしい】、【ありのままの自分でよいことの保証】、【気持ちを表出できる場がほしい】などであった。グリーフケアプログラムの試案として、フォーカスグループインタビューを4回、グリーフの集いを1回実施するとともに、グリーフサポートブックを作成した。
著者
朝日 祥之
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、大野町から常呂町岐阜への移住者の間で用いられる尊敬語に見られる変 容を明らかにするところにある。本研究は、常呂町岐阜居住者の郷里方言の 使用をより包括的に把握するため、尊敬語に着目する。彼らの郷里である西美濃方言における尊敬語にはさまざまな語形があり、それぞれの意味機能を分担しながら使用される。本研究では、常呂町岐阜の話者の用いる尊敬語を特定し、それぞれの意味用法を明らかにする。これをもとに、常呂町岐阜の尊敬語は西美濃方言の尊敬語よりも単純なものになっていることを示す。その単純化を生み出した言語内的・言語外的要因を明らかにすることも本研究の目的である。
著者
山口 慎太郎 安藤 道人 神林 龍
出版者
東京大学
雑誌
国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
巻号頁・発行日
2017

本年度は、以下の平成30年度研究発表の雑誌論文に示してあるように、多くの査読付き論文を出版するという成果を得ることができた。それらの出版にいたる過程では、下記に記載したさまざまな学会、大学でのセミナー発表を行い、そこでは有意義な討論を行うことができた。また、西宮市と協力して行った保育利用申込者に対するアンケートも集計を行うことができた。それにより、基本的な記述統計を整理し、西宮市に報告書を提出した。平成31年度はデータのさらなる分析を行う予定である。また、学術論文の出版を目標としており、さらなる研究成果が平成31年度に見込まれている。現在は研究実施計画に従って、引き続いてデータ収集・分析の最中であり、今後のさらなる研究成果は平成31年度に得られることが見込まれる。