著者
福井 一喜
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-13, 2019 (Released:2019-01-29)
参考文献数
19
被引用文献数
4

東京大都市圏に居住する若者の観光・レジャーにおけるSNS利用を,目的地による情報環境の差異と,SNS上での影響力の個人差に着目して分析した.観光・レジャーにおいてSNSを積極利用するのは,SNS上での影響力が大きい者であり,彼ら彼女らは情報探索時に自治体や観光協会のSNSアカウントよりも,企業のほか友人や知人などのSNSアカウントを参考にしている.それは彼ら彼女らが,SNS上で他者から凡庸と判断される情報の探索や発信を慎重に忌避したり,自身の観光・レジャー体験をより上質なものにしたりするために,目的地の情報の量や流通速度の差を認識しながら,SNSで拡充した個人的な社会関係を活用したためである.こうしたSNS利用は,若者たちが置かれる他者評価を重視せざるを得ない相互監視的な情報環境の中で,戦略的にICTを活用し観光・レジャーを効果的に実施しようとした結果だと解釈できる.
著者
内田 順文
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.495-512, 1989-07-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
2 9

わが国の著名な避暑地・別荘地である軽井沢を事例として取り上げ,場所イメージの成立とその変化の過程を具体的に示すことによって,どのように「高級別荘地・避暑地」としての軽井沢のイメージが定着し,より多くの人々の問に浸透していったかを明らかにする.方法として,まず軽井沢を扱った文学作品や新聞・雑誌の記事などをもとに,過去の人々が抱いていた軽井沢のイメージを復元し,それを軽井沢の開発史と重ね合わせながら,軽井沢のイメージ,とくに「高級避暑地・別荘地」としてのイメージが歴史的にどのように形成され,定着していったかを記述した.次にそのイメージの定着の結果として引き起こされた地名の改変とくに「軽井沢」の名を冠した地名の分布の拡大という現象を解釈した.これらの結果は,ある一定の社会集団のレベルで,ある種の場所イメージが定着することを記号関係の形成(場所イメージの記号化)として捉えることにより,よりよく理解することができる.
著者
山元 修
出版者
一般社団法人 日本熱傷学会
雑誌
熱傷 (ISSN:0285113X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-15, 2020-03-25 (Released:2020-03-25)
参考文献数
110

化学熱傷とは, 化学物質が皮膚・粘膜に一次性に接触した際, その物質固有の化学反応によって惹起される急性組織反応で, 原則として熱作用は伴わないものをいう. 原因化学物質としては, 酸・アルカリ・腐食性芳香族化合物・脂肪族化合物・芳香族炭化水素・石油関連製品・金属およびその化合物・非金属およびその化合物・化学兵器 (毒ガス) ・その他に分類される. 臨床像は通常の熱傷に類似するが, 化学物質によっては特徴的な症状や経過を示し, あるいは皮膚からの吸収による全身症状を呈することもあるため, 個々の物質の特性を知っておく必要がある. 治療の原則は可及的かつすみやかな流水洗浄であるが, 化学物質によっては特殊な治療が必要である. 化学熱傷を診る機会のある形成外科医, 皮膚科医, 救急医, 総合診療医, 外科医は, 化学熱傷に関する最低限の知識を知っておく必要がある.
著者
原田 悠紀 青木 久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000213, 2018 (Released:2018-06-27)

1.はじめに 海水飛沫帯の岩石表面に形成される微地形に,タフォニやハニカム構造(以下,単にハニカムとする)がある.両者は塩類風化によって岩石表面の強度が低下した結果形成される窪みであるが,一般に,ハニカムはタフォニよりも窪みが浅く,蜂の巣状の平面形態を示す地形である.ハニカムはタフォニの生成初期の地形であると指摘する研究が存在するものの,両者の関係性を実証的かつ定量的に考察された研究はない.本研究では,海岸域に建設された砂岩塊からなる石垣表面にタフォニとハニカムがみられることに着目し,それらの分布,窪み深さ,および岩石強度を調べ,タフォニとハニカムの形成条件を明らかにすることを目的とする.さらにそれらの結果からタフォニとハニカムの関係性について考察する. 2.調査地域 千葉県銚子市海鹿島海岸は砂浜や波食棚が発達している.その波打ち際には全長約100 m,高さ約2.5 mの昭和初期に建てられた石垣が存在する.石垣は砂岩塊で積み上げられた最大7段の積み石からなっている.砂岩塊の大きさは,幅約40 ㎝,高さ約30 ㎝である. 3.調査方法 まず観察により,砂岩塊表面に見られる微地形について,窪みの有無,風化物質の有無,平面形態に基づき地形分類を行った.タフォニとハニカムのように窪んでいる地形については窪み深さを計測した.次にエコーチップやシュミットハンマーを用いて砂岩塊表面の強度計測を行った. 4.調査結果と考察砂浜背後の砂岩塊には,多くのハニカムが形成されており,波食棚背後の砂岩塊にはタフォニが卓越していた.潮間帯の砂岩塊は風化物質が付着しておらず,ほとんど窪んでいなかった.タフォニとハニカムの窪み深さを比較してみると,タフォニの方がハニカムよりも大きかった.風化していない砂岩塊(以下,未風化砂岩),タフォニ,ハニカムの岩石強度を比べてみると,岩石強度は,タフォニ<ハニカム≦未風化砂岩であった.この結果から,タフォニはハニカムに比べて,塩類風化によって強度が大きく低下した砂岩塊に形成される地形であり,ハニカムとタフォニの形成の差異は,砂岩塊表面の風化による強度低下量の違いに関係することがわかった.同一の砂岩塊においてハニカムとタフォニが共存していたり,ハニカムの側壁に穴が空いていたりする地形が観察された.以上のことから,塩類風化によってわずかに強度低下した砂岩塊に形成されたハニカムは,風化の進行に伴い,窪みがより深くなり,側壁が破壊されることによってタフォニに変化していくと推察される.付記 本研究は科研費(17K18524)の助成を受けて実施された成果の一部である.
著者
松本 良恵 李 楊 新井 さくら 井上 裕香子 清成 透子 山岸 俊男
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
pp.2210, (Released:2023-10-20)
参考文献数
54

Empirical studies have shown that beliefs in conspiracy theories are associated with low self-reported attitudinal trust in other people in general. However, self-reports do not always reflect actual behaviors. The present study investigates whether beliefs in conspiracy theories are negatively associated with actual trust behavior. We conducted a secondary analysis to examine correlations between conspiracy beliefs and trust behavior measured in a monetarily incentivized economic game (trust game) as well as self-reported attitudinal general trust. The results demonstrated that the more people believed in conspiracy theories, the less they entrusted their money to strangers when there was a risk of being betrayed and losing money. The present research confirms that conspiracy beliefs are associated with low trust regardless of whether trust is self-reported attitude or actual behavior which entails the risk of betrayal.
著者
木村 充 亀谷 真実 梶丸 弘幸 園山 裕靖
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.781-785, 2019-10-25 (Released:2019-10-25)
参考文献数
7

術後感染症予防の為セフェム系抗生物質を投与した患者において,ビタミンK欠乏による血液凝固障害が見られた症例を経験した。術後よりセフォペラゾンとスルバクタムの合剤の投与を開始し,5日目にプロトロンビン時間(prothronbintime; PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastintime; APTT)の異常延長を認めた。クロスミキシング試験,凝固第VIII因子,第IX因子等の検査結果より,ビタミンK欠乏症が疑われた。凝固障害判明後ただちに,ビタミンKの投与,抗生物質の変更が行われ,翌日にはPT,APTTは改善し出血症状は確認されなかった。ビタミンK欠乏の原因としては,食事由来のビタミンK不足,一部のセフェム系抗生物質に含まれるN-methyl tetrazole thiol基(NMTT基)によるビタミンK代謝障害などが考えられた。重症患者,特に経口摂取不良の患者には,凝固異常の可能性を考慮して定期的な凝固検査の実施や,ビタミンKの予防投与も視野に入れる必要がある。
著者
齊藤 正彰
出版者
北海道大学大学院法学研究科
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.1-57, 2020-09-30
著者
佐藤 喜和
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.79-84, 2005 (Released:2006-12-27)
参考文献数
34
被引用文献数
3

20 0 0 0 OA 破傷風

著者
古橋 正吉
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.206-212, 1967-09-15 (Released:2018-11-10)
著者
戸髙 南帆
出版者
Japanese Council on Family Relations
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.59-74, 2023-07-15 (Released:2023-10-13)
参考文献数
35

本稿では、子どもに家事を教えることに着目して、性別役割分業意識を平等化する可能性を検討する。「子どもの生活と学びに関する親子調査」のペアデータを用いて、親子それぞれの性別役割分業意識をふまえながら、小学校高学年から中高生の子どもを対象に、母親が家事のしかたを教えるという行為の効果を探った。その結果、女子と比較して、男子は「男性は外で働き、女性は家庭を守るほうがよい」という性別役割分業を支持する傾向にあるものの、母親に家事を教えてもらった経験がある男子ほど、性別役割分業を支持しない傾向がみられた。この傾向は母親の性別役割分業意識などを考慮しても確認された一方で、女子については有意な効果が認められなかった。このことから、子どもが男子である場合、性別役割分業に沿わない家事という行為を教えること自体が、ジェンダー意識を問い直す契機となり、意識の平等化を促す効果をもっていることが示唆された。
著者
土屋 祐司 佐原 篤 神保 達也 中野 哲志 加藤 和子 小粥 敏弘 小杉 国宏
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.153-158, 2015-09-30 (Released:2015-10-24)
参考文献数
6
被引用文献数
6 6

On 16 January, 2014, a large-scale mass food poisoning caused by Norovirus occurred in 19 elementary schools in Hamamatsu City, Shizuoka, Japan. Of 8,027 people eaten the bread, 1,271 were infected. The causative food was determined to be bread for school meals. At the Hamamatsu City Health Environment Research Center, stool specimens of patients and food handler, and lunch ingredients were inspected for causative agent. A total of 137 of the 435 (31.5%) specimens were positive for Norovirus G II by RT-qPCR assay. Phylogenetic analysis of the capsid N/S region nucleotide sequences indicated that these strains showed a high degree of similarity (≧98%) to G II.4 Sydney 2012 variant. The bread was processed using PANSORBIN Trap Method, G II.4 was detected from 2 specimens, and the quantity of virus was 2.4E+03, 3.3E+03 copies/g each. It was estimated that the polluted bread contaminated through the finger of the worker who held Norovirus or work clothes at the time of inspection work.
著者
三野 和宏 後藤 順一 土橋 誠一郎 服部 優宏 飯田 潤一 小野寺 一彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.835-840, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
15

被嚢性腹膜硬化症(encapsulating peritoneal sclerosis: EPS)は,腹膜透析患者に発症し癒着,被膜により腸閉塞を起こす病態である.一方,リフィーディング症候群は,飢餓状態に対し急速にブドウ糖負荷を行った際に,主にリン低下により心不全・痙攣等を起こす病態である.今回,われわれはリフィーディング症候群を合併したEPS症例を経験したので報告する.症例は41歳女性で,EPSに対し癒着剥離を施行した.1,000kcal/日の補液を開始したところ,術後5日目に血清リン値が0.6mg/dlまで下降し,心不全兆候を認めた.以後,リンの投与を行い症状の安定を得た.当科ではEPS術後生存例の50%にリフィーディング症候群を認めていた.EPSはリフィーディング症候群となるリスクが高いと考えられ,注意深いモニタリングのもと,適切なエネルギー・電解質の補充を行う必要があると考えられた.