著者
田口 精一 平石 知裕 高瀬 和真 前田 理久
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

バイオオポリエステル生合成酵素の質的改変をとおして、ポリエステルの生産性・物性を積極的に改善する研究を展開している。今年度は、3HBをベースとしたPHA共重合体を合成できるPseudomonas sp.61-3重合酵素(PhaC_<Ps>)を対象に、望みの共重合組成(3HBとそれ以外のモノマーユニットとのモル比)を有するPHAの合成を実現する進化酵素をさらに多数創成すると同時に変異解析に基づく本酵素の構造と機能の相関について総括的考察をおこなった。対象酵素PhaC_<Ps>は、3BベースのPHA共重合体を合成できるが、3HB基質取り込み能力が微弱であるという課題があった。そこで、この性質を利用することによって、3HBだけから成るPHBホモポリマーの蓄積能力が向上する(PhaC_<Ps>の3HBに対する基質特異性向上あるいは全活性の向上)ということを指標としたスクリーニング系を構築した。この人工進化実験の特徴は、野生型酵素だと微量のポリマーしか蓄積できない組換え大腸菌(JM109株使用)との比較で、より多くポリマー蓄積する進化酵素保有大腸菌株を精度高く識別できる(ポジティブセレクション)という点にある。すでに確立した人工進化システムから得られた複数の優良変異点のうち、477番目のSerと130番目のGlyに着目し、これらのサイトにおいて総アミノ酸置換を実施した。全変異酵素を保有する組換え大腸菌(β酸化系変異株LS5218使用)によって生成されるポリマーの含量およびモノマー組成は、HPLCおよびGCにて分析した。その結果、JM109株でのPHBホモポリマー蓄積量において野生型を上回る変異体酵素が得られた。さらに、LS5218株にC4からC12までのモノマー基質を供給できる酵素遺伝子(phaA<Re>B_<Re>J_<Pa>)を補強した状態で、各変異酵素遺伝子を導入した。その結果、PHA共重合体の生産性が向上すると同時に、モノマー組成の多様性が生じていた。このインビボでのPHA含量の向上あるいはモノマー組成変化から、477番目のポジションが酵特に基質特異性決定に関与することが、130番目のポジションが特に比活性向上に関与することが推定された。これらの結果は、一部インビトロでの活性測定結果とよい一致を示し、立体構造情報が無くてもPHA重合酵素の機能マッピングができることを始めて示すことができた。
著者
中川 裕志 佐藤 一誠
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

プライバシー保護データマイニングのひとつである差分プライバシーは有望な方法であるが、データベースのレコード間に相関がある場合の分析があまり進んでいなかった。本研究では、相関がある場合に従来の差分プライバシーを適用した場合、データ入手を狙う攻撃者が相関に関する背景知識を少なく持っているほうが、流出する情報が大きいという直感に反する状況を明らかにし、この状況を改善するために背景知識も考慮したベイズ型差分プライバシーの数理モデルを確立した。この数理モデルにおいて情報漏洩の確率を与えられた閾値以下にする加算すべきラプラス雑音のパラメタを求める近似的アルゴリズムを示した。
著者
梅崎 修 田口 和雄 青木 宏之 島西 智輝 南雲 智映 鈴木 誠 谷合 佳代子 金子 良事 間宮 悠紀雄
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、労働史オーラルヒストリーの未調査の確認と新調査、方法の開発、史料館との連携を行った。第一に、過去の労働史オーラルヒストリーをリスト化した。また、新しい調査を実施し、そのすべてを冊子化した。第二に、米国で7か所、英国で数カ所のオーラルヒストリー拠点を訪問・交流し、その視察報告を作成した。また、学会にてオーラルヒストリーの方法論や教育に関する報告を行った。特にオーラルヒストリーの映像の扱い方について議論を深めた。第三に、大阪エルライブラリーにて労働史オーラルヒストリー・アーカイブというWEBサイトを作成した。現在著作権の許諾中であるが、2015年度中に公開予定である。
著者
宮野 加奈子
出版者
国立研究開発法人国立がん研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

現在、満足できる疼痛コントロールができているがん患者は多くなく、より効果的な鎮痛薬の開発が求められている。近年、一次知覚神経に発現するtransient receptor potential (TRP) superfamilyであるTRPV1およびTRPA1が疼痛伝達に重要な役割を果たすことが明らかとなっている。さらに、局所麻酔薬リドカイン誘導体のひとつであるQX-314がTRPと電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)を発現した神経のNav活性を遮断することが報告された。そこで、本研究はTRP発現神経特異的遮断候補薬としてリドカイン誘導体に着目し、リドカイン誘導体の薬理作用を解析した。
著者
林 良嗣 谷口 守 土井 健司 佐々木 葉 杉原 健一 冨田 安夫
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

人口減少・少子高齢化が早く進む地方都市において,郊外からの計画的撤退と中心市街地の再構築が必要であることを示し,さらにその具体的な方法論を明らかにするために,愛知県豊田市をスタディエリアとして,以下の検討を行った.1.将来状況予測:人口予測に基づき,市内各地点の居住環境質,インフラ維持コスト,環境負荷を計測し,郊外部での悪化傾向を示し,人口減少・少子高齢化が進行する地方都市では双対型都市戦略(郊外からの撤退・中心市街地の再構築)の必要性を示した.さらに,今後の都市域縮小策による社会基盤整備コスト削減効果を世代会計の手法を用いて評価した.2.政策目標運成度指標:QoLインディケータを適用した欧米の事例調査に基づき,わが国の都市構造検討に適用可能なQoL・市街地維持コスト・環境負荷の面からなる多元的評価手法を開発した.さらに,QoL向上を可能とする都市構造として分散集中型構造の提案を行った.3.市街地デザイン:街区デザイン検討のための3次元都市モデル自動生成システムの開発を行った.,これを用いて,複数のシナリオにもとづく将来の建物の更新結果の景観を予測評価し,現状の容積率の引き下げ(ダウンゾーニング)の案などを提示した.一方,中心市街地再構築に必要不可欠な自動車依存脱却策の1つとして,自動車共同利用に着目し,国内の事業化事例を対象とした分析を行った結果,自動車保有台数削減等の環境改善効果が観測された.4.事業化検討:日本の密集市街地整備事業の現状と課題を整理し,民間非営利組織による密集市街地整備事業の先進的な事例分析に基づいて,民間非営利組織の役割および特徴について明らかにした.また,TDR制度導入による郊外田園の開発抑制と,都市空間の広域的管理手法としての開発権取引の導入効果について検討した.
著者
住吉 智子 田中 美央 岡崎 章 菊池 司 坂本 信
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

入院児への,ゲーミフィケーション要素を盛り込んだ学習教材として,AR(Augmented Reality)を応用したデジタルコンテンツを開発した.この学習教材は,探索型として子どもがiPad miniを操作しながら,画像が3D(3-dimensional)に出てくるものである.親子の印象評価実験からは,満足感と達成感が得られていた.また,2週間後の再テストでは,子どもは医療従事者が説明したことよりARで出てきたキャラクター場所を記憶している傾向があった.対象である子どもが能動的に体を使って遊びながら主体的に学んだ内容は時間が経過しても,知識が定着する可能性が高いことが示唆された.
著者
秋山 晶則 篠宮 雄二 森下 徹
出版者
岐阜聖徳学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、災害と地域の関係性を探る一環として、木曽三川流域での「宝暦治水」事業(1754-55年)を中心に検討を行ったものである。関連史料の収集・分析を通して、大規模普請の措定・実施には、地域社会の利害と共同性が深く関わっていたことを明らかにするとともに、労働編成や技術面での検討課題を整理した。
著者
常石 敬一
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は旧日本陸軍における主に軍事秘密とされた研究の分析を通じて、陸軍科学研究所が発足した1921年から日本敗戦の1945年までの、科学技術研究の実態とその構造の解明を目的としている。2001年度から03年度までの3年間、主に生物兵器および化学兵器の研究開発の実態を中心にして資料収集および分析を行った。このうち化学兵器については、陸軍での生産が軌道に乗ると、民間に移して生産させるのが常であり、具体的な例としてはイペリット生産のためのエチレン製造技術が1930年代半ばには民間に移転されたし、さらにシアンの合成の技術も戦後、合成樹脂や合成繊維の製造に寄与しているといった事実が、軍の公文書や特許明細書によって確認できた。陸軍が民間に移転した技術は決して陸軍独自に全て開発したものではなく、諸外国から技術あるいは特許を導入し、それを日本国内で生産技術として実用化したものが中心だった。研究開始当初は軍と民との相互技術移転を想定していたが、軍の文書を見ている限りでは、軍から民への一方的な技術移転が大部分であった。これは戦後の官主導による研究開発組織である研究組合のプロトタイプと見ることが可能かもしれない。また文献調査上の成果としては、生物兵器開発については、その研究開発の中心だった陸軍軍医学校防疫研究室が発行していた「防疫研究報告第2部」について新たな発見があった。従来は本報告者が既に分析した約100部ほどしかその所在は不明であったが、1号から900号くらいまで刊行されていること、そのうちのほぼ800部についての所在確認を行うことができた。これは今後、分析を続けるが、旧日本軍内部のみならず、戦前の日本の医学研究のありようを明らかにする上で、重要な資料となることは間違いない。
著者
木下 尚子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

弥生時代の貝交易を琉球列島の貝殻集積の分析を通して再検討した。その結果交易されたゴホウラのほとんどは沖縄諸島で作られた貝輪粗加工品であることが明らかになった。貝殻集積に沖縄諸島で試作された弥生人向けの腕輪試作品が混在していることから、弥生人の腹面貝輪のデザインが沖縄諸島で生まれていたこと、これが貝殻運搬を行う弥生人と沖縄貝塚人によって生み出された可能性のあることがわかった。貝交易は、背面貝輪の粗加工品が登場する「開始期」、腹面貝輪の粗加工品が主体を占め貝殻の質が低下し始める「展開期」、腹面貝輪の粗加工品が登場する「最盛・衰退期」の 3 段階に区分される。開始期は弥生時代早期に遡る可能性がある。
著者
三枝 康宏 水野 耕作
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

骨軟骨移植の動物実験として、日本白色家兎を用いた関節軟骨損傷のモデルを作成し、肋軟骨のみの移植(軟骨移植)と肋骨肋軟骨連結部の移植(骨付き軟骨移植)を行った。移植後3、6、12、24、36、48週で摘出し、ヘマトキシリン-エオジン染色、サフラニン-O染色およびI型、II型コラーゲンの染色を行い、両者を比較検討した。移植後48週において、肋軟骨移植では移植軟骨表面は糜爛、不整等がみられ、間質にも亀裂を生じており、軟骨細胞が広範に壊死、消失している部分もあった。またI型コラーゲンに染色するなど関節軟骨とは異なる性状を示した。これに対し、肋骨肋軟骨連結部移植では移植後48週までの長期に亙って軟骨表面は糜爛等が少なく平滑であり、間質の亀裂や軟骨細胞の壊死もほとんど認めなかった。またII型コラーゲンにも染色性があり、関節軟骨により近い性状と思われた。肋骨肋軟骨連結部移植では軟骨部分を薄くすることが可能であり、また肋骨部分と海綿骨との間で移植後早期に骨癒合し血行の速やかな再開が期待できるため、軟骨表面の糜爛や間質の亀裂、細胞壊死等の変性所見が少なく、良好に生着していると考えられた。また肋軟骨は硝子軟骨でありながら関節軟骨と異なりI型コラーゲンが主成分であるが、肋骨近傍ではII型コラーゲンにも染色されることからより関節軟骨に近いと思われ、この点でも関節軟骨損傷に対する移植材料として有利であると考えられた。臨床的には軟骨欠損が比較的狭く、損傷が軟骨下骨にまで及ぶ離断性骨軟骨炎や特発性内顆骨壊死、骨軟骨骨折等の治療に応用が可能と思われた。
著者
山村 朝雄
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

劣化ウランは全世界で120万トンを超える膨大な保管量があり、その有効利用法の開発は重要な課題である。ウランはIII価とIV価、V価とVI価の組み合わせにおいて電極反応が可逆であることは、アクチナイド固有の化学的性質である。このことを利用すれば、実用化しているバナジウム電池を超えるエネルギー効率を持つレドックスフロー電池の構築が期待できる。バナジウム電池では、正極反応VO2++e→VO2+は酸素の脱着を伴う遅い内圏反応であるため、電流密度70mA/cm2での充放電サイクルにおいてエネルギーの16%が活性化過電圧により失われる。これに対してアクチナイドでは両極反応は高速であり、活性化過電圧によるエネルギー損失はネプツニウムの場合2%にとどまる。このようにエネルギー効率の高いウラン電池の構築により、風力発電等の再生可能エネルギーの出力平滑化に資することを目指している。平成16年度には、ウラン電池セルを実際に構築し、U(V)を正極液、U(IV)を負極液とするウラン電池の動作を確認し、展示用モーターの回転に十分な電圧・電流を得られることが確認できた。その一方で、放電状態におけるウラン(V)錯体、充電状態におけるウラン(III)錯体の濃度は数時間程度の半減期で自然に減少し、ウラン錯体の安定性が十分とは言えないことも明らかとなった。そこで、平成17年度には、ウラン(V)およびウラン(III)錯体の検討を進め、半年を超す半減期をもつウラン(V)錯体溶液を調製することに成功した。また、ジアミドを配位子として有するウラン(III)錯体の調製と磁気的性質、分光的性質の検討に成功し、溶液中のIII価状態の半減期が11時間と短いことが判明した。しかしこの時間内に、U(IV)/U(III)の電極反応の検討を行うことに成功した。
著者
酒折 文武 山口 和範 渡辺 美智子 田村 義保 竹内 光悦
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

サッカーや野球などのスポーツでは選手やボールのトラッキングデータが収集され、選手の走行距離やスピード、ボールに関しない選手の動きなどを評価するようになってきた。スポーツ分野におけるデータ活用の重要性は高まってきている。本研究では、こうしたデータを活用し、プレイデータや統計情報、トラッキングデータ、さらには試合映像のようなスポーツ非構造化データを用いた統計分析法の確立と実践を目指した。その結果、スパースモデリング等を用いて野球の投手の肘故障の危険やその要因をトラッキングデータから明らかにする方法、サッカーのトラッキングデータからその時に起きているアクションの自動タグ付けの方法などを提案した。
著者
坂本 英俊 藤本 萌 福田 悟
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015

本研究は敗血症性脳症において、睡眠・覚醒をつかさどる神経核の機能異常の解明と共に睡眠・覚醒サイクルを制御すると考えられる視交叉上核への影響を明らかにすることである。最初の課題は、視交叉上核により制御されている松果体からのメラトニン放出が安定して測定できるマイクロダイアリシス法を確立することであった。従来の方法は、上矢上静脈洞からの出血や松果体までの距離が長く手技的に問題であった。我々の新手法は、マイクロダイアリシスガイドカニューラを松果体右上方から角度17°にてアプローチするもので、特殊な回路を必要とせず出血の危険性もない。この方法でラットにおける暗期(20時~8時)のメラトニン分泌量を測定したところ、1日目0.30±0.38、2日目0.21±0.20、3日目0.15±0.16、4日目0.15±0.15(pmol、平均±標準偏差)の放出がみられた。一方、明期(8時~20時)ではメラトニン分泌量は1日目0.07±0.10、2日目0.02±0.02、3日目0.01±0.01、4日目0.01±0.01(pmol)とごく微量であった。我々の開発した新メラトニン測定法は、従来の方法による結果とほぼ同じであり、今後の睡眠・覚醒研究に有効と考えられた。次に、この手法を用いて敗血症性脳症時の暗期メラトニン放出を検討した。敗血症性脳症モデルとしては、脳内での炎症を媒介する蛋白であるHigh mobility group box 1蛋白(HMGB1)脳室内投与モデルを用いた。HMGB1を1μg/5μl脳室内投与すると、1日目および2日目のHMGB1投与群の暗期メラトニン放出量は生理食塩水投与群に比較しどちらも有意に抑制された(P<0.01二元配置分散分析)が、3、4日目の放出量は影響されなかった。以上の結果より、敗血症性脳症時にはメラトニン放出が抑制され睡眠・覚醒に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
新妻 実保子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

知能化空間における人と環境(場所やモノ)とのインタラクションを観測し,「人がある場所やモノをどのような目的で使用しているのか」を示す人に対する「場所やモノに対する意味づけ」を推定することにより,人の活動内容に応じた柔軟にサービス設計を実現しようとするものである.場所やモノの機能や意味づけを設計者が一意的に紐付けてしまうことは,実際にサービスを提供されるコンテキストと紐付け内容(サービス)との不一致を引き起こし,知能化空間にとって根本的な問題となる.本研究はこれを解決するものである.場所やモノヘの意味づけを推定するためには人の活動履歴を獲得する必要かおる.本研究では,"Spatial-Knowledge-Tag(SKT)"と名づけた仮想的なタグを用いて,実空間内の3次元座標と情報とを紐付け,人の活動履歴を実空間へ記述する「空間メモリ」を使用する.空間メモリシステムは,利用者が自らの手先や胴体の位置を用いて実空間における情報の蓄積と取り出しを実現するものであり,従来のコンピュータに比べて直感的かつ瞬時な情報の取り扱いが実現する.そのため,SKTは空間内に配置された利用者にとって活動を遂行するうえで必要な情報とみなすことができ,またその配置の構成は利用者の活動目的や情報整理のポリシーの現れであると考えることができる.すなわち,利用者によって主体的に作成されたSKTはその利用者の活動履歴そのものであるといえる,これより,利用者がある環境を使用する中で作成されたSKTを(事前知識を用いずに)分類すること,人の活動内容を表現する表現形式を検討する(パラメータを選定する)こと,分類されたSKTの構成と表現形式に基づいて活動内容を記述すること,活動内容による場所とモノの意味づけを推定(マッピング)することが課題となる.空間メモリを用いた活動内容の記述において,観測される活動は空間メモリを用いている場合のみであるというける問題点あつた.人の活動は,空間と人,人と物の動的な相互作用とみることができることから,物を観測対象として含めることによって,記述対象を広げ,かつ記述精度を向上させることにつながると考えられる.人とモノの動的な関係を記述するため,いつ(when),だれが(who),なにを(what),どこで(where),どのように(how)使用したか,という人とモノの物理的なインタラクションに着目し,モノ情報として記述するシステムを構築した.物理的インタラクションの発生を検出するため,人の手とモノに3軸加速度センサを有するアクティブ型RFIDタグを取り付けた.操作者を特定することにより,(when,who,what)が取得される.それぞれのモノの位置を計測することは困難であるため,人の手の位置を観測し,モノの操作者が特定されたときモノの位置として与える手法を提案した(where).そして,人の手には慣性センサを取りつけ,腕の加速度や姿勢を計測し,モノの使用動作とした,これをクラスタリングすることにより,主要な使用動作パタンを抽出する(how),という手順で4W1Hとしてのモノ情報の獲得を実現した.
著者
新妻 実保子
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

(1)角度比較による時系列データの分類位置座標に依存しない時系列データの分類について検討した。初期姿勢が類似度計算に影響を与えないよう,初期姿勢補正を考慮した類似度計算手法を提案し,人の歩行経路の分類,及び手の動作の分類に適用し,位置の近さではなく形状の類似度に基づく分類を行い,その有用性を示した。(2)地図による活動内容の記述とその分類環境地図,及び活動履歴を階層に分けて,選択的にデータを更新・利用できる仕組みを提案した。人,物の移動履歴として,移動度合いを移動頻度,及び移動速度に基づいて算出し,グリッド地図として表現する手法を提案した。(3)持続的な観測のための観測システムの実装RTミドルウェアによるシステムのコンポーネント化を行い,ロボティクス技術の埋め込まれた住宅実証環境へ統合・実装した。活動モデルの構築と活動内容の推定を行うためのプラットフォームを整えることができた。
著者
高橋 則英 石川 寛夫 白井 靖男
出版者
日本大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

本年度は、主研究対象である堆朱カメラについては、レンズの光学測定および湿板写真による撮影実験を中心とした。また本研究が属する特定領域研究「江戸のモノづくり」の合同調査に参加して行った佐賀藩および武雄鍋島家の史料調査、トヨタコレクション写真関連資料調査、三重県松阪の竹川家史料調査・津の萱原コレクション調査、そして信州松代の佐久間象山関係史料調査や上田市での大野木家史料調査などは、同時期の初期写真関連史料として、堆朱カメラの歴史考証を行う上で貴重な情報が収集できたと考えている。さらに関連史料に含まれるカメラのうち、佐賀藩の湿板カメラや島霞谷所用カメラなどについては堆朱カメラと比較するため同様な光学測定を行うこともできた。このような本年度の調査研究の実施内容は以下のとおりである。○平成15年6月2日 日本カメラ博物館 「日本カメラ創製期」展において堆朱カメラ3台および関連カメラ機材の調査。○平成15年6月3日〜4日 佐賀県立図書館・鍋島報效会徴古館 旧鍋島藩資料の湿板カメラ3台についての調査および報道発表。○平成15年7月29日〜31日 佐賀県立博物館・佐賀県立図書館 金武良哲資料、鍋島文庫、武雄鍋島家資料の調査および調査結果の報道発表。○平成15年8月11日〜12日 東京文化財研究所 トヨタコレクションの写真関連資料調査。○平成15年9月8日 東京文化財研究所・日本大学芸術学部 佐賀藩湿板カメラのX線撮影および光学測定。○平成15年9月17日・19日 日本大学芸術学部 堆朱カメラ2台(福井市立郷土歴史博物館蔵・石黒敬章氏蔵)のレンズの光学測定、湿板写真実験。○平成15年10月30日〜11月2日 松阪大学ほか 「江戸のモノづくり」松阪大学シンポジウム「江戸時代伊勢地域における科学技術」および津市・萱原コレクションの写真関連資料調査○平成15年11月25日〜26日 東京文化財研究所 トヨタコレクションの写真関連資料調査。○平成15年11月29日 日本大学芸術学部 島霞谷所用レンズ(松戸市戸定歴史館蔵)の光学性能の測定。○平成16年2月21〜23日 長野市立博物館・長野市真田宝物館・上田市史編纂室 佐久間象山関係史料および上田藩士大野木左門写真関連史料調査。○平成16年3月17日〜18日 日本大学芸術学部 堆主カメラによる湿板写真撮影実験・調査のまとめ。
著者
中塚 幹也 関 明穂 新井 富士美
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

教員を対象として,性同一性障害に関する授業を行うことへの意識,必要な教材などについてのインタビュー調査,質問紙調査を実施した.この調査結果は,公開シンポジウム,教育関連,小児科医,精神神経科医,産婦人科医などの学会にて発表した. 全国の教員に対するアンケート調査結果や性同一性障害に関する専門家や性同一性障害当事者からの助言なども参考とし,教員が効果的に生徒に性同一性障害に関する情報を提供するための資料,また,より深く議論ができるようなワークを作り,テキスト,DVDを制作した.
著者
若吉 浩二
出版者
びわこ成蹊スポーツ大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では,水中水平姿勢時での,換気量の変化に応じた手部・足部の鉛直方向の力を計測し,浮力と浮心重心間距離の即時測定システムを構築することを目的とした.加えて、浮心重心間距離と水泳のパフォーマンスとの関係について調査することも目的とした。結果は、換気量の変化に対応した手部と足部にかかる力を測定でき,換気量とも直線の関係にあった.よって本システムにより,簡便に水中水平姿勢での浮力と浮心重心間距離を求められた.加えて、水泳選手は、非水泳選手に比べて浮心重心間距離の短い傾向にあることが判明した。以上のことから、本システムは、水泳パフォーマンスの有益な評価法として利用できるものと考えられる。
著者
村田 浩平 土屋 守正
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

外来植物セイタカアワダチソウが侵入したことで,絶滅危惧種オオルリシジミや希少な食糞性コガネムシの生息環境がどのような影響を受けたかについて節足動物相を調査することで解明を試みた.また,草原生態系における捕食‐被食関係の解明の一環として,希少な草原性の食糞性コガネムシや土壌節足動物に関する調査を実施するとともに,捕食-被食関係を調査し,オオルリシジミを中心とした食物網を解明した.また,セイタカアワダチソウが侵入した環境において,除草の効果を評価した.研究期間中,阿蘇山の噴火や熊本地震により調査地が被害を受け,当初計画した一部の研究は実施ができないなどの問題も生じたが研究成果の公表に努力した.