著者
大前 敦巳 岡山 茂 田川 千尋 白鳥 義彦 山崎 晶子 木方 十根 隠岐 さや香 上垣 豊 中村 征樹
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

大学は都市の発達とともに拡大発展を遂げてきた。両者の間にどのような歴史的関係性を築いてきたか、学際的な観点から問い直すことが、今日世界的に注目されている。本研究は、中央集権の近代国民国家を形成した日本とフランスを対象に、都市との相互浸透性の中で大学が拡大し、学問が変容してきた歴史をたどり、大学人にとどまらない重層的な行為者との関わりを考慮に入れた国際比較を企てる。その基底に潜在する学問的無意識を、日仏の経路依存性の違いをふまえながら省察し、今日のグローバル化する共通課題に対し、大学のユニバーサリズムとローカリズムを両立させる持続的発展がいかに可能になるか、国際的な議論と対話を展開する。
著者
田村 厚夫
出版者
The Japan Society of Calorimetry and Thermal Analysis
雑誌
熱測定 (ISSN:03862615)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.186-189, 1995-07-30 (Released:2009-09-07)
参考文献数
30

タンパク質の立体構造は,温度を上げた場合だけでなく,下げた場合にも壊れることが知られており,後者は低温変性と呼ばれている。低温変性が起こる機構および報告例をまとめるとともに,実際上単純な機構にあてはまらないタンパク質系,熱力学上の問題点を指摘した。
著者
北尾 耕二 波部 忠重
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.61-63, 1982-04-15 (Released:2018-01-31)

Hamineobulla kawamurai Habe, 1950 (Figs. 1-2) had been described based on only a single empty shell collected from Okinawa Main Island, Ryukyu Group, and provisionally placed in the family Bullidae. But, after Kitao's observation on radula of the specimen collected from the shallow sandy bottom off Tomioka, Amakusa, the west coast of Kyushu, it was shown that this species has no central tooth and one horn-shaped lateral tooth on each side, suggesting a close relationship with Cylichnatys angusta (Gould) of the Family Atyidae, which has one central tooth and one horn-shaped lateral tooth on each side. Therefore, Hamineobulla kawamurai Habe may be transferred from the family Bullidae to the family Atyidae. According to the original description of Pseudophiline hayashii Habe, 1976 (Figs. 3-5), this species has neither radula nor stomachal plates. But, Kitao has found the vestigial radular teeth in the buccal cavity. The radula has no central tooth, a single large lateral tooth, and two small marginal teeth on each side like in the genus Philine Ascanius, which has only a large lateral tooth on each side. Therefore, Pseudophiline hayashii Habe may be transferred from the family Aglajidae, which has neither radula nor stomachal plates, to the family Philinidae.
著者
孔 昌一 佐古 猛 岩田 太
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

環境に優しく従来よりも低温で高品質化及び高生産性を同時に実現可能な新規グラフェン創製技術の開発を目的とし、黒鉛を出発原料とし、黒鉛の酸化および酸化グラフェン(GO)の還元について研究を実施した。酸化グラフェンをヘキサン、二酸化炭素、アセトニトリル、ベンジルアルコール、アルコール類の超臨界条件で処理した結果、エタノールの方のGO還元効果が一番高かった(最新の研究ではエタノールに微量HIを添加し300℃および10気圧のという穏やかな条件まで下げられた)。
著者
後藤 理咲子 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.81-90, 2023-02-28 (Released:2023-03-31)
参考文献数
27

本研究の目的は,嘘に伴う認知的負荷が有効視野を狭めるかについて検証することであった.実験では,参加者は嘘つき群と統制群のいずれかに割り当てられた.参加者はディスプレイに提示されたトランプカードを記憶した後,カードと同じ内容(一致条件)または異なる内容(不一致条件)を回答し,回答後に現れる光点の位置を同定するよう求められた.嘘つき群と統制群の相違は教示であり,嘘つき群の参加者は嘘をつく時には真実を話しているかのように振る舞い,実験者を騙すよう求められたが,統制群の参加者は求められなかった.光点の正答率から相対的に有効視野を測定した結果,嘘つき群は統制群よりも有効視野が狭まったが,一致条件と不一致条件の有効視野に差は示されなかった.以上の結果は,意図的に相手を騙すこと(嘘の意図性)による負荷は有効視野を狭めるが,事実と異なる内容を回答すること(嘘の虚偽性)および嘘をつく時に真実らしく振る舞うことによる負荷は有効視野を狭めないことを示唆するものである.
著者
上町 あずさ 福井 亘 下村 孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.9-14, 2013 (Released:2014-04-02)
参考文献数
17
被引用文献数
3 1

国内には日本に自生するテイカカズラ,ケテイカカズラおよび中国などを原産地とするトウキョウチクトウの3 系統が流通している。RAPD 法によりこれら3 系統間の系統特異的なマーカーを検出し,系統識別の指標を得た。得られたRAPD マーカーを利用して,国内に流通している緑化用種苗や園芸品種の識別を試みた。その結果,これまで形態からは明らかに出来ていなかった個体を含め,これらの系統を明らかにすることができた。また,外国産のケテイカカズラが緑化用種苗として国内で流通していることが明らかとなった。さらに,テイカカズラ類を混植している圃場で得られた種子由来の後代をRAPD 法により雑種検定したところ,テイカカズラとケテイカカズラとの交雑個体や,外国産のケテイカカズラ由来の園芸品種と国内産のケテイカカズラとの交雑個体が検出され,緑化の現場で植栽されたテイカカズラ類が自生種と交雑する可能性が示唆された。
著者
小林 青樹
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本年度は、西日本の縄文・弥生移行期における東日本系土器の展開を検討し、その分布と各段階における特徴的な様相を追求することにある。北部九州で水田稲作が開始され渡来人の入植が始まる早期1段階から、弥生前期の新しい段階にわたる東西文化の相互交渉を中心に検討をおこなった。まず、西日本における東日本系土器の集成をおこない、これと平行して近畿地方以西の広範囲にわたって併行関係をおさえることが比較可能となる、土器編年の構築作業をおこなった。その結果、東日本系土器は北部九州から近畿の各地で見られ、時期毎にその分布に特徴的な様相が認められる。まず、表の早期1段階以前の晩期中葉、大洞Cl式段階までは土器及び土偶の大量出土に見られるように著しい緊密な関係が存在した。次の早期1段階、すなわち北部九州で水田稲作が開始される段階に突然関係が断絶してしまう。さらに次の前期1段階、すなわち北部九州で最古の弥生土器である板付I式土器が成立する段階に再び関係が活発化する。この段階には、西日本各地の土器様式構造に影響を与えるほどに関係は緊密であり、弥生土器の成立に東日本の要素が色濃く継承された。こうした現象は、弥生文化の成立が決して西日本を中心に単系的に実現されたのではなく、東日本の縄文系文化を含めた広範囲にわたる相互交渉の結果、予想以上の複雑性をもちつつ成し遂げられたことを示している。今後、土器以外の考古資料の検討をおこなう予定である。
著者
外村 彰
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.3-11, 2005-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
10

量子力学は,1920年代に建設された.しかし,我々の常識とはかけ離れた内容を含んでいたために,アインシュタインをはじめとする数多くの研究者の議論を招いた.だが,量子力学の予測は全て適中し,素粒子,原子核,化学,バイオなど,あらゆるミクロな理論の基礎となるに至っている.かつての議論は未解決のまま取り残され,今では,教科書で取り上げられることも少なくなり,量子力学はブラックボックスとして取り扱われることも多くなってきた.ところが,ここ30年の先端技術の急速な進展に伴い,思考実験と考えられてきた量子力学の基礎実験も可能になり,実験によって光があてられた量子力学の基礎に,再び関心が集まってきた.この歩みを日本の寄与という観点から振り返ってみたい.
著者
藤森 千尋
出版者
関東甲信越英語教育学会
雑誌
関東甲信越英語教育学会研究紀要 (ISSN:09112502)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.41-52, 2004-03-01 (Released:2017-07-14)

In recent years, three indicators of language proficiency accuracy, fluency and complexity have been receiving great attention in analyzing speech production. However, there are a number of different statistical procedures used in examining each indicator. What methods should be used is an important issue especially when we have cross-sectional research. This paper addresses several problems of the measures for accuracy, fluency and complexity used in previous studies on planning and task type and in a past study held in 2002. In addition, it offers possible measures that we could employ in future research and in classroom language observation.
著者
中辻 小百合 Sayuri Nakatsuji 国立音楽大学音楽研究科
雑誌
音楽研究 : 大学院研究年報 (ISSN:02894807)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.17-32, 2011-03-31

本稿は、湯浅譲二(Joji Yuasa, 1929-)によるテープ音楽作品《ヴォイセス・カミング Voices Coming》(1969)における創作意図を探ることを目的とするものである。曲は全3曲から構成され、あらかじめ録音された発話言語が主な音響素材として用いられているが、第1曲目〈テレ・フォノ・パシィTele-phono-pathy〉では電話交換手と通話希望者とのコミュニケーションにおける言葉が、続く第2曲目〈インタビュー Interview〉においては発話されたセンテンスの中から抜粋された間投詞と接続詞の部分が、そして第3曲目〈殺された二人の平和戦士を記念して A Memorial for Two Men of Peace, Murdered.〉では浅沼稲次郎(Inejiro Asanuma, 1898-1960)とマーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King, 1929-1968)牧師による演説の中の言葉が選択されている。本稿では、まず曲毎に、使用素材の言語的特性について検討を試みた結果、この作品においては、発話の意味内容と直接的に関わる部分、つまり意味論的側面が主たる問題とされているのではなく、第1曲目においては言語コミュニケーションにおける交話的機能としての側面が、第2曲目では言語の美的・芸術的な部分すなわち吉本の論じる自己表出的側面が、第3曲目においては音響的なヴァイオレンスとしての側面が問題とされていることが明らかになった。曲中では、会話の文脈から切り離された素材の新たな再配置によって、個々の素材の個別的・具体的特性がクローズ・アップされる一方、言語自体の持つ記号性や意味性が希薄となるのである。また、同じ語句によるカノン等の対位法的配置によって、詩における押韻の手法に似た効果が生み出されることで、言語の詩的側面が浮かび上がり、ある種の詩的な空間が作り出される。湯浅がこの作品で最終的に目指していたことは、言語の意味内容を音楽によって表そうとする従来の芸術歌曲やオペラの声の在り方を根本から問い直し、発話言語における指示的側面を排除した上で、音響的側面や自己表出的側面、交話的機能としての側面に焦点を当て、それらを詩的形式によってではなく、あくまで作曲家の立場から音楽芸術作品として、音楽的かつ詩的に再構成することにあったと結論付けた。続いて、本作品が《問い Questions》(1971)、《演奏詩・呼びかわし Performing Poem Calling Together》(1973)、《天気予報所見 Observation on Weather Forecasts》(1983)といった言語コミュニケーションに関わる声の作品群の中でどのように位置付けられるのかを探るべく、各作品を比較検証した結果、本作品はこれらの作品群の発端として位置付けられることが明らかになった。今後は、これらの作品毎の特性をより明確にし、流れを整理した上で、湯浅にとって言語コミュニケーション系列の作品とはいかなるものであるのかを検討していくことが求められる。
著者
西野 康人 佐藤 智希 谷口 旭
出版者
生態工学会
雑誌
Eco-Engineering (ISSN:13470485)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-9, 2014-01-31 (Released:2014-02-06)
参考文献数
25
被引用文献数
3

Lagoon Notoro-ko is connected to the Okhotsk Sea by an artificial channel and the water mass of this lagoon is exchanged by a tidal movement and little river flows. Therefore, this lagoon is assumed a saltwater lagoon and a seasonal change of environmental conditions on this lagoon has been reflected one of the coastal waters on Okhotsk Sea. In order to investigate a property of the lower trophic levels in the Lagoon Notoro-ko, we monitored salinity, temperature, dissolved oxygen and nutrient concentrations in the water column vertically during April to December from 2007 to 2009 (non-iced season). Stratification of the water column was found to occur during June to August and oxygen-deficient water mass was generated in bottom water. Concentration of silicate, phosphate and ammonium were higher in the bottom water. The fundamental importance of these nutrients is that the rate at which they are supplied may determine the rate of primary production. Oxygen-deficient water mass is generally recognized to produce negative effects on fisheries, however, the results of this research showed that it may work to supply nutrients to primary production in Lagoon Notoro-ko.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1925年04月02日, 1925-04-02
著者
渡辺 信 安野 正之 彼谷 邦光
出版者
国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

有毒アオコMicrocystisが細胞内に産生する毒素ミクロシスチンの湖沼生態系での挙動を野外調査及び実験によりあきらかにすることを目的に本研究を実施した。霞ヶ浦及び印旛沼においてアオコ細胞中の毒素ミクロシスチン量は74〜632μg・g^<-1>と変動し,湖沼水中には0〜0.33μg・L^<-1>の濃度で溶解し,動物プランクトンBosmina fatalisに6.3〜270μg・g^<-1>の濃度で蓄積していることがわかった。混合栄養を行う黄金色藻類Poterioochromonas malhamensisは有毒アオコを捕食すし,消化して増殖する。これは,長鞭毛によるアオコ細胞の捕獲-長鞭毛の収縮運動による鞭毛基部への移動-Feeding cupによる捕獲-食胞内への取り込みと消化,という過程でおこなわれる。消化されたアオコ細胞より放出されたミクロシスチンの殆どは分解されずの細胞外に放出される。湖沼水への毒素ミクロシスチンの溶存はアオコ細胞のバクテリアによる分解だけではないことが判明した。イ-ストエキスに含まれるL-リジンは1ppmの低濃度でもMicrocystisの細胞を溶解し,Microcystisのみに特異的に作用することが判明した。霞ヶ浦に溶存する遊離アミノ酸は平均して0.5ppmであるが,季節によってはMicrocystis細胞の溶解,ミクロシスチンの湖水への放出に関与している可能性が示唆された。タマミジンコMoina macrocopaに対する有毒アオコの影響を調べた結果,タマミジンコに致死影響を及ぼす毒成分はミクロシスチンではないが,ミクロシスチンの合成と密接に関連している物質であることが示唆された。一方,食用ガエルRana grylioのオタマジャクシは有毒アオコ及びそれが産生する毒素ミクロシスチンの影響を全くうけないこと,さらに有毒アオコを餌として,オタマジャクシはカエルまで生長すること,また,オタマジャクシは有毒アオコを非常によく摂取し、有毒アオコの水の華を減少させること,が判明した。
著者
金光 義彦
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.680-683, 2017-08-10 (Released:2019-09-26)
参考文献数
38
被引用文献数
1

有機無機ハイブリッド材料の1つであるハロゲン化鉛ペロブスカイト半導体は,太陽電池をはじめとしたフォトニクスにおける新しい機能性材料として注目されている.溶液法で作製できる高品質な半導体がもつ優れた光学特性について紹介する.
著者
桂 智男 丹下 慶範
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.237-249, 2020 (Released:2021-01-29)
参考文献数
13

The Eulerian finite strain of an elastically isotropic body is defined by taking the state after compression as the reference state and expanding the squared length. The second-, third- and fourth-order Birch-Murnaghan equations of state are plainly derived based on the Eulerian finite strain. The key for the plain derivation is no use of differenital or tensor because of isotropic, uniform and finite change in length. For better understanding, the finite strain in the Lagrangian scheme is defined by taking the state before compression as the reference state, and the Lagrange equations of state are derived in this scheme. In this scheme, pressure increases less significantly with compression than the Eulerian scheme. The different Eulerian strains are also defined by expanding the linear and cubed lengths instead of the squared length, and the first- and third-power Eulerian equations of state are derived in these schemes. Fitting of pressure-scale-free data to these equations indicates that the Lagrangian scheme is inappropriate to describe P-V-T relations of MgO, whereas three Eulerian equations of state have equivalent significance, and the Birch-Murnaghan equations of state does not have special meaning compared to the other Eulerian equations of state.