著者
大峰 光博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
pp.15109, (Released:2016-09-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1

The purpose of this study was to analyze problems related to the mechanism whereby students can accept corporal punishment during extracurricular sports activities with reference to the books Escape from Freedom and Man for Himself that were central to Erich Fromm's authority theory. Specifically, the author focused on the concepts of “authoritarian character,” “authoritarian ethics,” and “authoritarian conscience.” Fromm pointed out that anxiety prompted Germany's citizens to give up their freedom in order to obey authoritarian powers such as Hitler and the Nazis.  Students taking part in extracurricular sports activities were considered from the viewpoint of Fromm's authority theory. It was revealed that students comply with a leader's authority in order to relieve anxiety, and have positive thoughts about corporal punishment. Furthermore, it was found that such acceptance of corporal punishment succeeded in eliminating conspicuous suffering, but not in removing any underlying conflicts.  Fromm pointed that fear of anxiety was relieved by spontaneous activity. To achieve spontaneous activity by students, it was suggested that some form of measure that does not create the type of partnership that occurred between Germany's citizens and Hitler would be desirable for any relationship between the leader of extracurricular sports activities and the students.
著者
Tomoko Maekawa Kouhei Kamiya Katsutoshi Murata Thorsten Feiweier Masaaki Hori Shigeki Aoki
出版者
Japanese Society for Magnetic Resonance in Medicine
雑誌
Magnetic Resonance in Medical Sciences (ISSN:13473182)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.227-230, 2021 (Released:2021-06-01)
参考文献数
12
被引用文献数
2 5

The microstructural underpinnings of reduced diffusivity in transient splenial lesion remain unclear. Here, we report findings from oscillating gradient spin-echo (OGSE) diffusion imaging in a case of transient splenial lesion. Compared with normal-appearing white matter, the splenial lesion exhibited greater differences between diffusion time t = 6.5 and 35.2 ms, indicating microstructural changes occurring within the corresponding length scale. We also conducted 2D Monte-Carlo simulation. The results suggested that emergence of small and non-exchanging compartment, as often imagined in intramyelinic edema, does not fit well with the in vivo observation. Simulations with axonal swelling and microglial infiltration yielded results closer to the in vivo observations. The present report exemplifies the importance of controlling t for more specific radiological image interpretations.
著者
白尾 一定 秦 洋一 立野 太郎 出先 亮介
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.937-940, 2012 (Released:2012-06-15)
参考文献数
5

当院における術前経口補水療法と術後早期経口摂取への試みについて報告する。術前経口補水療法は2009年12月から2011年1月までの52例に適応し、手術前2時間前まで経口補水液 (OS-1) を摂取した。OS-1は平均815mL飲料され、胃内溶液は平均21mLであった。80歳以上の高齢者においても平均871mLの服用が可能であった。アンケート調査の結果では、82%が飲みやすいと回答した。2010年3月から2011年1月まで胃切除6例、胃全摘9例、結腸切除5例に早期補水療法を行なった。早期補水、食事開始に伴う合併症は認められなかった。胃全摘について従来法と比較した。輸液終了日は、早期補水群で有意に短かった。術前OS-1による経口補水療法は、口渇感や移動、着替えなどの日常生活などの制限もなく、高齢者にも安全に服用できた。小規模なsample数で疾患を限定した消化器疾患に対する早期補水、経口摂取は施行可能であった。
著者
松田 一彦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.W3-2, 2016 (Released:2016-08-08)

イミダクロプリドと、それに続いて開発された類縁殺虫剤は、従来の殺虫剤に抵抗性を示す害虫に対しても優れた防除効果を発揮し、さらに植物に対する浸透移行性に優れていたことなどから、殺虫剤市場の主要な一角を占めるようになった。しかし、これらの「ネオニコチノイド」と総称される殺虫剤について、ミツバチの数の減少との関連性や神経作用性の危うさが指摘され、使用の是非が問われている。このようなネオニコチノイドの隆盛と論争を見ながら、演者は、中立の立場でネオニコチノイドとは何かということを研究してきた。ネオニコチノイドが標的とするニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は5つのタンパク質が梅花のように集合した構造を持ち、神経伝達物質アセチルコリンを受容するとカチオンを選択的に通す自身のチャネルを開くことで、神経細胞の興奮を誘起する。天然物ニコチンがヒトのnAChRと昆虫のnAChRのどちらも活性化しイオンチャネルを開く活性(アゴニスト活性)を示すのとは対照的に、ネオニコチノイドは昆虫のnAChRを選択的に活性化する。つまりネオニコチノイドは何らかの理由で昆虫のnAChRの中のアセチルコリン結合部位に強く結合し、活性を発揮するのである。これは、昆虫のnAChRがネオニコチノイドとの相互作用に有利に作用する構造を有するためである。演者はその構造の解明に取り組んだ結果、昆虫のnAChRはネオニコチノイドに特有のマイナスの電荷を帯びた構造との相互作用に有利にはたらくプラスの電荷を帯びた構造をもち、哺乳動物のnAChRにはこうした構造がなく、むしろネオニコチノイドを遠ざけるマイナスの電荷を帯びた構造を有することを突き止めた。本講演では、このような成果のみならず、ネオニコチノイドはどれもが同じようにnAChRと相互作用しないことをも紹介する。
著者
松田 外志朗 栗原 敏修 浅沼 博司 中江 晴彦 冨吉 浩雅 森田 正則 嶋津 岳士 平出 敦
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1-2, pp.71-79, 2012-03-01

[抄録] 糖尿病患者の増加及び高齢化に伴い, 低血糖症例は増加している.重症症例は, 意識障害などのため他者の援助を必要とし, 救急搬送されることが多い.低血糖症例にいかに対応するかは救急医療の現場において重要な問題である.近畿大学医学部附属病院では, 低血糖症例のほとんどが救急診療部門(ER)において初期治療がなされている.当院ERにおいて, 2008年4月から2010年3月までの2年間で84回の低血糖によるER受診があった.意識障害あるいは意識消失を主訴とする症例が多く, 高齢者の割合も高い.内分泌代謝内科で治療されている症例は半数以下であり, 糖尿病以外の疾患のために他の診療科かかりつけとなっている症例が多かった.低血糖症例に対し適切な初期診療を行うために, 当院における低血糖症例の特徴を検討し, 初期診療において必要な情報について解説する.また, 初期診療において, 注意を要する症例として, 低血糖が10時間以上遷延した7症例, 糖尿病治療を受けていなかった非糖尿病の12症例をとりあげる.さらに, 患者の高齢化や社会的な要因から留意すべき点について考察する.
著者
篠田 左多江
出版者
日本英学史学会
雑誌
英学史研究 (ISSN:03869490)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.27, pp.151-164, 1994 (Released:2009-10-07)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Joaquin Miller, a well-known poet as the “Byron of Oregon”, lived his final years on the hills above Oakland, California. Many literary figures and artists gathered there, which seemed to be “a mecca for the lovers of art.” Among them was Yone Noguchi, who wrote some volumes of poetry and was praised in the U. S. and England. He returned to Japan as a world-famous poet.At the turn of the century some Japanese young men follwed Noguchi to stay at Miller's heights, since Miller was born to a Quaker family and was not a racist. Some of them hoped to be poets and others, painters.Isen Kanno, who was born in Sanuma, Miyagi Prefecture, and studied theology in Doshisha, came to Oakland in 1903 and became one of Miller's students. While he learned the art of composing poetry, he fell in love with a sculptress, Gertrude F. Boyle, who stayed there to make a bust of Miller's mother. Though the Japanese were then prohibited from marrying the white American women by law, he was married to Gertrude to prove what love could do.He wrote articles for the Japanese immigrants' newspapers and composed poetry. One of his works was Creation Dawn privately published in 1913, which was staged at the Forest Theater in Carmel-by-the-Sea with Mr. and Mrs. Kanno playing parts of hero and heroin. They got a great reputation from both Japanese and Americans by this performance. Isen Kanno must have been happy to be successful, but Fortune didn't keep smiling on him. His happy life was suddenly broken by his wife's love affair with a young art student, Eitaro Ishigaki. This scandal created such a great sensation among the San Franciscans that Gertrude and Ishigaki could stay there no longer and moved to New York. Isen suffered from the betrayal by the two he had believed in. After a month he left Miller's heights and went to Aileton to be a farmer.This is an essay on Isen Kanno's life from his birth to the days he lived in Oakland and San Francisco. The rest of his life will be made clear in the next essay.

2 0 0 0 OA 自我のゆくえ

著者
船津 衛
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.407-418, 1998-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
45

人間の自我は他の人間とのかかわりにおいて社会的に形成される。自我は, こんにち, 社会の分化・多様化, 変化・変動の進行などによって複雑なものとなっている。そして, 自我は自立的な「個体的自我」から, 依存的な「関係的自我」に変わっている。現代人の自我はいくつもの小さなアイデンティティからなる自我となる。いわゆる「自我の危機」といわれるものは合理的, 自立的, 統一的である「近代的自我」のイメージの消滅であり, 関係的, 多面的・多元的, 感情的, 断片的, 流動的な自我の出現であるといえる。他方, 現代社会に特徴的な「役割コンフリクト」に対して, 人々は「役割選択」, 「役割中和」ないし「役割調整」, 「役割コンパートメント化」によって乗り越えようとし, また, 「役割脱出」を試み, また「印象操作」や「役割距離」行動を行なって対処している。けれども, 「役割コンフリクト」の解決には, 他者の期待に働きかけ, それを修正し, 再構成する「役割形成」が必要とされる。人間は社会構造の現実を認識し, それに意味を付与し, それにもとついて自己をリフレクションする。そして, 「内的コミュニケーション」を活性化して, 「解釈」過程を展開することによって, 主体的な行為を形成し, 社会の変容を行なうことができるようになる。
著者
藤井 まゆみ
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.125-130, 2019-09-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
12

背景 : ブナ科花粉症の研究は少ない。天城山のブナ林に近い伊東市内でブナ科花粉の豊凶を調べた。さらに天城山での調査とアレルゲン抗体検査も実施した。患者を発見し予防を促したい。方法 : 2001 年から伊東市内でダーラムサンプラーを用い空中樹木花粉を計測した。2018 年 5 月に天城山中にワセリン塗布のスライドグラスを吊るし、空中樹木花粉を計測した。スギ・ヒノキ属花粉症で症状が長引く患者にアレルゲン抗体検査を実施した。結果 : 天城山のブナ属花粉は伊東市に届いていない。伊東市の空中ブナ科花粉はほとんどがコナラ属とクリ・シイ属であった。スギ・ヒノキ属の花粉症で症状が長引く患者の約半数がブナ・コナラ属共に陽性であった。結論 : 伊東市のブナ科花粉症の主な原因はコナラ属の花粉であった。コナラ属、クリ・シイ属の花粉飛散期の予防を促し、ブナ林を散策する季節は注意させたい。また、ブナ目樹木の花粉はバラ科の果実と交差反応があるので、口腔アレルギー症候群に気をつけるよう指導したい。
著者
李 尚珍
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.51-64, 2009 (Released:2020-07-20)

本稿では、「白樺派」として西洋芸術に心酔していた柳宗悦が朝鮮・東洋芸術への美的関心を転換していく過程について、浅川兄弟との繋がりを中心に考察し、柳と朝鮮伝統芸術との関係をより明確にする。柳は、朝鮮在住の浅川兄弟と出会ったことによって、朝鮮伝統芸術の美に目覚め、工芸品の蒐集活動ならびに窯跡現地調査を通して、現場を見据えた研究方法を見出した。そして、柳と浅川兄弟は、自然と人間にはおのずからそれらにふさわしい場所、すなわち「適地」というものが存在するという<思想>を具体的に実現するために、「朝鮮民族美術館」の設立運動に取り組んだ。さらに、その運動を通して、柳は、木喰仏像の<もの>とその作者・木喰上人の<ひと>に出会い、ここに日本における民芸運動の出発点とその発展可能性を確信した。そこには柳の朝鮮伝統芸術の研究活動において育まれた<偶然と直覚>が民芸運動の要素となり、西洋と東洋を超越する普遍的な美的感覚を織り成していた。最近相次いで韓国の歴史教科書に柳と浅川巧が取り上げられたり、当時「朝鮮民族美術館」の設立運動に好意的な立場であった東亜日報社主催で、韓国初の柳展「文化的記憶-柳宗悦が発見した朝鮮と日本」が開かれたりして、韓国人の強い関心を集めた。このことは朝鮮伝統芸術の研究活動において、柳が東西の区別を越えた普遍的な美観を提供したように、今日の韓国人に昔今の区別を越えた普遍的な美観を形成するきっかけを与えるだろう、と筆者は考える。

2 0 0 0 OA 味噌の味

著者
伊藤 寛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.881-884, 1980-11-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
24
著者
篠崎 真
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.43-48, 2019-06-01 (Released:2019-07-09)
参考文献数
7
著者
小泉 諒 杉山 和明 荒又 美陽 山口 晋
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.232-261, 2021 (Released:2021-08-03)
参考文献数
58
被引用文献数
3

本稿は,2018年の平昌冬季五輪で浮き彫りとなった五輪招致と南北関係,セキュリティ,環境問題,そして跡地や競技施設の利用にかかわる論点を,ボイコフの「祝賀資本主義」の議論を踏まえ検討した.平昌の五輪招致活動は3度にわたったが,会場計画を含めて,その時々の国内および国際的な政治状況に大きく左右されてきた.国家的なセキュリタイゼーションは平昌でも見られ,東京五輪の関係者による視察が行われたことから,レガシーとして引き継がれる点も多いと考えられる.また平昌冬季五輪開催において国際的な批判の対象となった環境問題は自然林の伐採であり,46年前の札幌冬季五輪と比較しても環境負荷には改善が見られない.長野では大会後の利用困難が見通されていたにもかかわらず競技施設の建設が進められ,平昌もまた同様の事態となった.
著者
Tomio Petrosky 野場 賢一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.121-126, 2017-02-05 (Released:2018-02-05)
参考文献数
10

我々の太陽は数十万個以上の小惑星群によって帯状に囲まれている.火星と木星の間に数多く存在している小惑星の長半径方向の空間分布は縞構造をしており,バンド構造を持っている.また,その分布上の縞構造のギャップの位置が小惑星の振動数と木星の振動数が単純な整数比になるところに存在している事実から,このギャップが現れる定性的な根拠は木星の運動と小惑星の運動の間の共鳴効果によるものであることがわかる.しかし,古典力学では共鳴効果が系の運動の恒量を破壊してしまうために非可積分となり,軌跡を扱う力学の常套手段である正準変換によって系の定量的な振る舞いを解析的に論じることが原理的に不可能になっている.本稿では,その定量的な分析をするために,少数系の古典力学で伝統的に使われてきた軌跡力学とは全く別で,それとは相補的なリウビル力学の立場から,どのようにこのギャップの大きさが評価されるかを紹介する.筆者の一人(TP)は非平衡統計力学を長年研究テーマとしてきて,古典力学でも量子力学のハイゼンベルグ表示に対応する物理量の時間変化を記述する方法と,シュレディンガー表示に対応する状態関数の時間変化を記述する方法があることに深い関心を持っていた.古典力学ではハイゼンベルグ表示に対応する記述法の基本方程式はハミルトンの運動方程式であり,シュレディンガー表示に対応する記述法の基本方程式はリウビル方程式である.非平衡統計力学では自由度の数があまりにも多く,その系に対応するハミルトン方程式を全部書き下すことができない.そのことから,この分野では状態関数というたった一つの関数の時間変化を記述するリウビル方程式を追うことにして,リウビリアンやそれに類似したボルツマン方程式の発展の生成演算子である衝突演算子の固有値問題の解から,系の力学的性質を分析する.そして,これらの古典力学的演算子にも,量子力学のハミルトニアンと同じように連続スペクトルを持つ場合もあれば,典型的なガス系のように不連続スペクトルを持つ場合もあることはよく知られている.それなら,リウビリアンにも結晶中の電子のハミルトニアンのようにバンド構造を持つ場合があるのでないか.もしそうなら,リウビリアンの物理的次元が振動数であることから,Keplerの第3法則によって振動数スペクトルのバンド構造はそのまま小惑星の空間分布の長半径方向のギャップを与えるのではないか,という考えを筆者の一人(TP)は大分以前から暖めていた.最近になって,日本の物性物理学者の何人かの友人と議論することによって,摂動の影響で共鳴点上でのハミルトニアンの固有値の縮退が解け,準位反発によって電子のエネルギーギャップが起こるのと同様な数学的メカニズムで,小惑星の振動数スペクトルにも木星の摂動で準位反発が起こり,ギャップが現れることを見出した.この取り扱いでは,たとえ古典力学の非可積分系であっても,縮退のある場合のよく知られた摂動論を使って,そのギャップを定量的に論じられる可能性を与えてくれる.
著者
坂口 頼孝
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学研究報告 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-11, 2009-03-01

「すごく」と「ひどく」は共に程度の甚だしいことを表し、連用修飾をする。その点で「たいそう」や「とても」と似ている。しかし品詞としては副詞ではなく、形容詞連用形と考えるべきである。他の活用形を持ち、意味も変わらないからである。例えば「やつれ方がすごい(すごかった)」「すごいやつれ方」「すごくやつれる」において「すごく」だけを別品詞にするいわれはない。ところが現行の国語辞典を見ると必ずしもそうなっていない。「すごく」「ひどく」(の一方か両方)を副詞として別に立項しているものがある。しかしそれは受け入れがたい。辞書の内部において矛盾をきたしているものもあるし、違いが判然としないものもある。「すごく」と「ひどく」は共に形容詞連用形と位置付けるべきである。「猛烈に」「いやに」など形容動詞(出身の副詞)についても取り上げる。
著者
王 財源 遠藤 宏 豊田 住江 河内 明 北出 利勝 兵頭 正義
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.319-322, 1992-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

中国の鍼灸補瀉手技のひとつに「透天涼」と呼ぶ鍼技法がある。古くから伝えられて来た刺入方法で, 涼しいような, 冷たい, あるいは寒いといった寒冷感覚が局所に引き起こされる。今回, 腰痛患者5例を対象として, 局所と遠位の皮膚温度および深部温度を測定した結果, 局所より遠位部において, 温度が下降していくような現象が認められた。また, 患者自身の自覚症状においても「冷たくなるような」,「足が冷えて急にトイレへ行きたくなった」などの感覚が引き起こされた。特に炎症症状のある急性期の腰痛患者では,「大変に気持ちが良い」とのことであった。統計学的にも有意な差が認められた。
著者
山崎 誠
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-24, 2008-02-28

願文は神仏に宛てられた文書であり、妄語を恐れる心性から、その内容は世俗化した現代とは異なり信憑性が高いといえよう。この点に注目してみると、解決済みとされたり、見過ごされた問題について、願文はなお有力な証拠を提供していると見做なされる。その例証を大江匡房の家族関係について試みる。The people devoted "Ganmon" documents to Buddha, Devas and the deceased in customs of other days. When they describe for themselves, awed to offend the commandment against lying, therefore the description must be hightly reliable. "Ganmon" which composed by Oe no Masafusa could vouch for illuminating the unsettled issues on his family.