著者
浦瀬 太郎 川野 唯人 佐藤 美桜
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.83-90, 2022 (Released:2022-03-10)
参考文献数
40

水環境中の薬剤耐性菌についての2000年代初頭の研究事例との比較を目的に、神奈川県内の金目川, 大根川, 渋田川, 鶴見川において, 2019年に大腸菌の様々な抗生物質への耐性率を調べた。下水道の普及率が高い地域においても, セフォタキシム耐性に代表されるヒト由来の大腸菌にしばしばみられる耐性プロファイルを持った大腸菌が多く検出され, 採水場所付近の合流式下水道の越流水の影響や伴侶動物の関与が示唆された。一方, テトラサイクリンとスルファメトキサゾールに同時に耐性を持つ株が渋田川で多く検出された。2000年代初頭の同じ場所での大腸菌における耐性調査に比較して, 今回の調査では, 畜産に関連すると考えられる耐性や一般的な耐性であるアンピシリンへの耐性率が有意に減少した。レボフロキサシンやゲンタマイシンなどへの耐性率は増加したが統計的に有意な増加ではなかった。
著者
佐藤 潤司
出版者
日本メディア学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.77-96, 2018-07-31 (Released:2018-10-13)
参考文献数
14

This paper discusses the danger that the BPO, which should be obliged toact as a bulwark against public authorities intervening in program production,may threaten the freedom of broadcasting and intimidate broadcasters. The aim of this paper is to investigate several cases in which TV stationssubmitted their reports in order to officially express objections to BPO’s decisionsand to clarify the problems of these decisions and issues that the BPOshould resolve. Through the examination of four cases that fit the above conditions, someproblematic decisions were revealed which the BRC, one of the BPO committees,had made. These include one case in which the BRC pointed out ethicalproblems in TV programs based on a misunderstanding of the facts and mistakeninterpretations by the BRC, and another case in which they concludedthat human rights were violated based on information that had not been broadcasted. The BRC should have an obligation to examine factual information, conductverification, clarify the standards of judgment, share their understanding ofbroadcasting ethics with TV stations, in order to make equal and fair judgmentsto regain the trust of broadcasters.The BPO should take these BRC-related problems seriously and become atrue guardian of the freedom of broadcasting, defending the media from theauthorities that intend to intervene in the broadcasting industry.

2 0 0 0 OA 迷信解

著者
井上円了 著
出版者
哲学館
巻号頁・発行日
1904
著者
山口 瑞穂
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.49-71, 2017

<p>本稿は、日本におけるエホバの証人が、その特異な教説と実践をほとんど希釈することなく二十一万人を超える現在の教勢を築いてきた背景を、日本支部設立の過程における世界本部の布教戦略に着目して検討するものである。資料としては教団発行の刊行物を参照した。検討の結果、エホバの証人において重要な位置を占めているのは「神権組織」と称される組織原則であり、この原則における世界本部への忠節さは神への忠節さを意味するため、日本人信者にとっては社会への適応・浸透以上に世界本部への忠節さが課題となっていたことが明らかとなった。遅くとも一九七〇年代半ばには「神権組織」に忠節な日本支部が確立され、数多くの日本人信者たちが本部の方針に従い「開拓」と称される布教活動に参加した。特徴的な教義でもある予言の切迫感が布教意欲を高めたこともあり、布教の成功率が低い社会状況にありながら膨大な時間が宣教に費やされたことが、その後の教勢拡大を促した。</p>
著者
新垣 拓 防衛研究所地域研究部
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.18-19, 2018-12

米国の核兵器運用に同盟国を参画させるという核共有制度は、2つの形式をとりながらアイゼンハワー政権において開始された。第1には、NATOの枠組みとは別に、英国に配備したソー・ミサイルを米英2国間で運用する制度であり、第2には、NATOの枠組みにおいて、英国も含むNATO加盟国との2国間協定に基づいてイタリアとトルコに配備したジュピター・ミサイルや戦術核兵器を運用した核備蓄制度であった。ただし、同政権では、これらの2国間・核共有にとどまらず、第3の核共有制度が検討されていた。それは最終的に、NATO内にMRBM戦力部隊を段階的に創設するという、1960年12月のハーター提案というかたちで同盟国に示されることとなった。すなわち、即応性が高くソ連本土を射程に収めるポラリス・ミサイルを、原潜艦隊という海上プラットフォームに基づき多国間で運用する共有制度を、新たに打ち出したのであった。本稿では、未公刊の一次史料に依拠しながら、どのように多国間核共有論が形成・共有されるようになったのか、なぜMRBMが共有対象に選択されたのか、なぜ政権末期というタイミングでの提案に至ったのかという観点から分析を行うことで、米国政府内の主要な政策主体の認識や、核共有の在り方に関する政策論議を明らかにする。
著者
竹田 隆一 長尾 直茂 タケダ リュウイチ ナガオ ナオシゲ Takeda Ryuichi Nagao Naoshige
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 教育科學 (ISSN:05134668)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.51-68(145-162), 2003-02-17

剣道の技術に関する名辞は, 非常に難解であり, 円滑な技術指導の障害となることも考えられる。しかし, それは, 剣道のもつ身体観や技術観などの文化的特性のあらわれととらえることができる。そこで, 剣道技術指導書の先行形態である近世の武芸伝書を取り上げ, 技術に関する名辞を考察することによって, 剣道の文化的特性を明らかにすることを目的とした。 本稿では, 一刀流の伝書である『一刀斎先生剣法書』取り上げたが, それは, 一刀流が現代剣道の源流の一つに数えられるためである。ただ, 流祖伊藤一刀斎みずからが書いた伝書というものは現在伝わらず, 一刀流を理解するためには, その門人達の伝書によるしかないのである。そこで, 一刀斎の門人古藤田俊直を祖とする唯心一刀流の伝書『一刀斎先生剣法書』を現代語訳し, 技術に関する名辞をスポーツ教育の視点から考察することにした。その結果, 従来から使用されている「事理」, 「水月」,「残心」,「威勢」の意味内容が明らかになった。なお, 今回の考察は, 全16章のうち5章までである。In this report, we gave the modern Japanese translation to "Ittousa sensei kenpousyo (「一刀斎先生剣法書」)" from chapter 1 to 5, which was written by KOTOUDA Toshisada (「古藤田俊定」), and also regarded as the precedene form of the modern kendo instruction, And we tried to examine the meaning and content of the term of the technology in "Ittouryu (「一刀流」)". 1."Waza (「事」)" does not mean some technic, but shows the movement or motion to achive the maximum result. 2. "Kotowari (「理」)" is the theory which constitutes the movement showing the maximum mastering. Then, it can be shown by the metaphor "Suigetu (「水月」)", which means the relation of the surface of the tranquil water and the Moon. Here "Kotowari (「理」)" is not limited like "Waza (「事」)" to the world of the kendo. 3. "Zirihuhen (「事理不偏」)", which means the situation combined "Waza (「事」)"and "Kotowari (「理」)", seemed to be the automatic movement or motion. 4. "Zansin (「残心」)" means the situation reflected the figure of the enemy to himself. It is different from the meaning of the term of the present kendo. 5. "Isei (「威勢」)" is composed of "I (「威」)" and "Sei (「勢」)". "I (「威」)" incluides "Sei (「勢」)", similarly "Sei (「勢」)" incluides "I (「威」)". "Isei (「威勢」)" also potentially receives the theory of the Chinese Taoism (「道家」).
著者
小池 貴行 犬飼 祥雅 山田 憲政
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.508-522, 2009 (Released:2010-09-10)
参考文献数
36
被引用文献数
2

The purpose of this study was to investigate whether the action observation changes the learner's leg stiffness, representing mechanical state of global leg spring, during drop jump (DJ) and whether the process to observe the learner's and model's movement is effective method. We used the drop jump as trial movement, since its performance is influenced by the change in leg stiffness. 21 subjects we employed were divided into 3 groups (GPs) according to the observation type-GP1: observation of both the model's and their own DJ; GP2: observation of only the model's DJ; GP3: no observation with rest. The subjects performed DJ pre and post observation. Leg stiffness was estimated using the leg length (240 fps) and vertical ground reaction force (Fz) (2000 Hz) during stance phase and compared between pre- and post-tests in each group. In GP1, kinetic (the leg stiffness and maximum value of Fz) and kinematic (i.e., contact duration and change in leg compression) parameters in posttest were significantly higher and lesser than that in pretest, respectively. The results indicate that the leg stiffness is increased by the action observation and thus the observation procedure is effective to enhance the DJ skill that utilizes the external force. Further, the results suggest that observing learner's own and model's movements is to enhance the effect of action observation.
著者
上田 容一郎
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.1004-1008, 2020

<p>編集時にCG合成等で付加するようなフレア状の光彩を,ライブ映像に任意に発生させ,付加することができるフレアプラスレンズを考案し,製作,ライブ音楽番組で活用した.フレア状の光彩をコントロールして付加することで,映像にドキュメンタリーや報道番組のようなリアリティ感を持たせることや,幻想的・抒情的な画作りをすることが可能になった.</p><p>フレアプラスレンズのピロティ構造の円筒部に反射素材を撮影者が挿入し,任意にフレア状の光彩を発生させる.挿入する素材によって発生する光彩は変化し,また挿入位置を動かすことで,映像上の光彩の発生位置をコントロールすることができる.</p><p>2018年12月5日に放送された地上波での生放送番組「2018FNS歌謡祭」において活用し,ライブ映像制作において新たな映像表現を創造することができた.</p>
著者
泉 良次
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.243-250, 2006-06-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
4
著者
八巻 知香子 山崎 喜比古
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.13-25, 2008-08-08 (Released:2016-11-16)

今日でも依然として障害者差別や障害者を劣位におく価値観があることは国内外で繰り返し指摘されているが、これらのテーマを扱う研究の多くが、受け手である障害者個人への負の影響という観点からのみの測定が大半を占め、価値観自体の議論や把握はなされてこなかった。本研究は、障害のある人が感じている「障害者への社会のまなざし」それ自体について把握する手法について提案し、是正が望まれている「社会のまなざし」の特徴を明らかにした。結果から、障害者が感じ取る「障害者への社会のまなざし」は、否定的な要素についても、肯定的な要素についても存在を感じている人は非常に多く、否定的な要素については是正を、肯定的な要素については広がりを望んでいた。「障害者への社会のまなざし」の肯定的評価傾向は、対人的な被差別経験および移動・情報入手の不便による日常の不快な経験の多寡と強く関連しており、日常生活の実感に基づくものと考えられた。
著者
齋藤 昭彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-6, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
8 5

四肢が機能するためにはその土台となる体幹の動的安定性が求められる。体幹の動的安定性は他動組織,自動組織,神経系組織の統合的作用により維持されている。本稿では,体幹の動的安定性に極めて重要であるとされている体幹深部のローカル筋の機能に注目し,その評価方法およびトレーニング方法について述べる。
著者
鈴木 靖民
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.152, pp.315-327, 2009-03-31

7世紀,推古朝の王権イデオロギーは外来の仏教と礼の二つの思想を基に複合して成り立っていた。遣隋使は,王権がアジア世界のなかで倭国を隋に倣って仏教を興し,礼儀の国,大国として存立することを目標に置いて遣わされた。さらに,倭国は隋を頂点とする国際秩序,国際環境のなかで,仏教思想に基づく社会秩序はもちろんのこと,中国古来の儒教思想に淵源を有する礼制,礼秩序の整備もまた急務で,不可欠とされることを認識した。仏教と礼秩序の受容は倭国王権の東アジアを見据えた国際戦略であった。そのために使者をはじめ,学問僧,学生を多数派遣し,隋の学芸,思想,制度などを摂取,学修すると同時に,書籍や文物を獲得し将来することに務めた。冠位十二階,憲法十七条の制定をはじめとして実施した政治,政策,制度,それと不可分に行われた外交こそが推古朝の政治改革の内実にほかならない。
著者
三反畑 修 綿田 辰吾 佐竹 健治 深尾 良夫 杉岡 裕子 伊藤 亜妃 塩原 肇
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1. はじめに 鳥島近海地震(M5.6-5.7)は伊豆・小笠原島弧上の鳥島近海に位置する海底火山体の地下浅部で、ほぼ10年に一度観測されている、火山性の津波地震である。最新のイベントは2015年5月2日(JST)に発生した。本発表では、この地震により発生した津波の観測データに基づく、津波解析の詳細を報告する。なお、火山性津波地震の観測からメカニズム提唱までを含む本プロジェクトの概要は、深尾らによる別途発表に譲る。2. 津波観測 2015年の鳥島地震に伴って発生した津波は、伊豆小笠原諸島沿いの島嶼部を中心に、潮位計等で数十cm程度の津波が観測され、特に八丈島八重根港では約60cmの最大振幅を記録した(JMA, 2015)。一方で、我々が震央距離約100kmの深海底に展開した計10点の水圧計アレーでも、高精度の津波記録の観測に成功した。アレーで観測された津波波形は、数mmの負の信号から始まり、2.0 cm程度の正の信号が続き、同程度の振幅の後続波を伴っていた。そこで我々は、アレーで記録された津波波形を用いて解析を行い、鳥島地震に伴う地殻変動に伴う海水面擾乱、すなわち津波波源のモデル化を行った。3. 津波の分散性を考慮した津波波線追跡 まず津波の分散性を考慮して、アレーの津波波形から低周波数成分から順に高周波数成分の位相走時を読み取り、平面波近似によってアレーへの入射方向を調べると、低周波位相ほど、震央と観測点位置を結ぶ大円方向から、入射方向が大きく外れることがわかった。我々は、分散性を含む線形重力波の位相速度式を用いて局所的津波位相速度場を再帰的に計算し、周波数ごとに津波波線追跡を行うことで、特に海溝沿いの深海部で位相速度が周波数によって大きく異なることが、これらの周波数特性の原因であることを明らかにした(Sandanbata et al., 2018, PAGEOPH)。 さらに、走時および入射方向の周波数依存性をもっともよく説明する点波源位置をグリッドサーチによって調べると、点波源は直径8km程度の円形をしたスミスカルデラのリム内に精度良く求まった。仮に点震源をカルデラ外にずらすと、走時と入射方向を同時に説明することはできなかった。一方、津波初動の入射方向も同様に調べ、それを初期値としてアレーから波線を射出し、初動の走時分だけ逆伝播させると、カルデラリム北端近傍に達した。これらの結果は、鳥島地震に伴う隆起現象はスミスカルデラの内部で主要な隆起が発生し、その広がりはリムと同程度の広がりがあったことを示唆する。4. 津波波形差分計算による津波波源モデリング 次に、津波伝播差分計算を行い、鳥島地震に伴う津波波源をより詳細に調べた(Fukao et al., 2018, Sci. Adv.)。上記の結果を踏まえて、スミスカルデラの中心を中心軸とする軸対象の津波波源とし、アレーでの波形記録を考慮して、ガウシアン型の中心隆起とそれを囲む微小な環状の海水面沈降から成る軸対象波源モデルを仮定した。この中心隆起の振幅Aおよび隆起域の半径Rのパラメタを変化させ、差分計算コードJAGURS(Baba et al., 2015, PAGEOPH)を用いて分散性を含む線形ブシネスク方程式を解いた。 様々なパラメタを仮定した時のアレーでの計算波形と観測波形の規格化最小二乗和を計算し類似度を定量化すると、R=4.1kmおよびA=1.5mの時に最小値をとり、計算波形はアレーでの観測波形を非常によく再現した。この隆起域半径R=4.1kmはカルデラ半径とよく一致し、鳥島地震に伴って、スミスカルデラ内で1mを超える大きな隆起現象が発生したことが明らかになった。5. 八丈島八重根港での津波波形 続いて、アレー記録を用いて推定した波源モデルを与えた時に、約60cmの最大波高が記録された八丈島の八重根港での津波波形を説明できるかを調べた。この際、国土地理院の数値標高モデル(DEM)と、日本水路協会の海図を組み合わせて作成した複雑な湾口の地形データを用い、非線形効果も含めJAGURS(Baba et al., 2015)を用いて津波伝播計算を行った。その結果、計算波形は振幅・位相を含めて後続波まで、観測波形をよく再現した。6. 津波解析のまとめ 以上の結果は、2015年鳥島地震に伴う地殻変動について重要な情報を与える。第一に、この地震伴い1mを超える隆起現象がカルデラ内に集中していることが明らかになり、鳥島近海地震はカルデラ地形に関係する火山活動が発生したことを示唆する。第二に、少なくともカルデラ周囲の北東側には、無視できない規模の沈降が含むことが明らかになった。これはCLVD型の震源メカニズムとも調和的な結果である。深尾らの発表で、以上を踏まえ、火山性津波地震のメカニズム提唱を行う。