著者
梅原 英一 諏訪 博彦 小川 裕樹
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究ではYahoo!株式掲示版と株式市場の関係を分析した。第1に株式リターンを説明する新たなファクターを発見した。自然言語処理を用いて単語出現頻度(TF/IDF)を計算し、上位700単語の主成分分析でファクターを抽出した。その結果、投資戦略・株式保有・金融経済の3ファクターを抽出した。第2に日経平均VI指数(恐怖指数)との関係を分析した。掲示板にトピック分析(LDA)を行った。トピック投稿率とVI指数に相関があることが分かった。本研究で開発した手法を用いてTwitterとTV深夜アニメ番組の次週視聴率を分析し、投稿数・実況ツイートのネガティブ単語数と有意な相関があることが分かった。
著者
渡邉 英博
出版者
福岡大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

クロオオアリの社会形成において重要な役割を果たす、巣仲間識別の神経機構を解析した。第一に、揮発させた体表物質を手掛かりにアリが巣仲間を識別することを行動学的に発見した。この研究結果をふまえて巣仲間識別に関わる触角感覚子よりインパルス応答を記録し、内在する感覚細胞の嗅覚刺激に対する応答特性を調べた。また、巣仲間認識機構の神経基盤となる脳内領域を一次嗅覚中枢および高次嗅覚中枢で同定し、これらの領域の有無を他種の膜翅目昆虫と比較解析することにより膜翅目昆虫の社会性の進化過程について考察した。
著者
原田 昇 JIAO Pengpeng
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

1)居住地選択モデル世帯の嗜好の変動を表現するために、ミックスドロジットモデルを用いることとし、加えて、目的地間の空間的相関を表現するために、誤差項の定式化に工夫した。また、世帯の異質性を考慮するため、クラスター分析を用いた。次に、複雑な構造を持つモデルのパラメータを推定するため、MSLEアルゴリズムを用いることし、Gauss codeを用いてプログラムを実装した。具体的に、中国・大連のパーソントリップ調査データより抽出した11675世帯を対象にモデルを推定した。特定した五クラスター別にミックスドロジットモデルを推定し、統計的に有意な結果を得ることが出来た。この成果は、東アジア交通学会のジャーナルに掲載された。2)士地利用パターンと交通需要の関連分析交通需要の発生・集中と土地利用の関連性を明らかにするために、大連ならびに藩陽の二都市の土地利用データと交通需要データを整理し、比較分析を行った。統計的に有意な関係式を構築することが出来た。これらは、土地利用・交通統合モデルの基本的要素として重要である。3)居住地と就業地の同時選択モデル居住地と就業地の同時選択は、居住地を先に決定する世帯と就業地を先に決定する世帯が混雑していると考えられる。この問題をここでは、条件付選択モデルと順序選択モデルを組み合わせた潜在クラスモデルとして定式化することを提案し、具体的に推定することによって、その有用性を示した。条件付選択モデルはミックスドロジットモデルによって表現し、順序選択モデルは二者択-のロジットモデルにより表現した。モデル推定プログラムは、居住地選択モデルと同様に、MSLEアルゴリズムを用いて開発した。具体的に、中国・大連の11675世帯より、就業者が-名の3775世帯を選出し、モデルを構築した。ここで開発した手法は、居住地と買物先の同時選択モデル、就業地と買物先の同時選択モデルにも適用可能である。
著者
穐山 直太郎 福田 智美
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

難治性口腔潰瘍は摂食障害・栄養状態悪化から生活の質の低下を招く。難治性口腔潰瘍の治療は未だ不十分な場合も多く、新規治療開発を目標に、ラット口腔潰瘍モデルを用いた粘膜再生過程におけるDNAメチル化制御及び上皮幹細胞/前駆細胞の分化誘導因子Wnt5aの発現解析を免疫組織学的に行った。結果、DNAメチル化レベルは再生上皮で細胞増殖活性の上昇がピークに近づくと低下し、新規メチル化酵素Dnmt3a、3bに制御される可能性が示された。再生粘膜上皮細胞の分化誘導にDNAメチル化制御が強くかかわっている可能性が示唆され、上皮幹細胞/前駆細胞の分化誘導因子Wnt5aの発現様式と一致する傾向が示された。
著者
関口 敦 佐藤 千穂 竹内 光
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、長期的予後の改善が著しい乳がん患者において、がん治療に合併する認知機能障害が注目されている。本研究では、閉経後乳がん患者の術前後および術後半年時点での脳形態変化、および認知機能を評価した。術直後で視床の体積減少および、注意機能の低下が認められ、麻酔薬の量との有意な相関が認められた。また、術後半年時点では、手術のみで治療が完了した群ではこれら変化は回復したが、術後内分泌療法を受けた群では回復していなかった。認知リハビリテーション介入研究は、ゲームソフトを利用したパイロット研究を健常群に対して実施したが、注意機能に対して有意な介入効果は認められず、患者群への介入は実施しなかった。
著者
小島 渉
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

カブトムシの体サイズは一つの個体群において大きくばらつく。これまで幼虫の発育条件が成虫の体サイズを決める主要な要因であると考えられてきた。私は実際に幼虫の餌条件や飼育密度を操作し、高密度条件下や発酵のあまり進んでいない腐葉土を食べたときに、幼虫の成長速度が低下すること、体の小さな成虫が羽化することを確かめた。さらに、母親の産む卵サイズも幼虫の発育に影響を与えることが分かった。体の大きい母親は大きな卵を産む傾向があり、これが卵を通した母系効果として子に伝わっている可能性がある。カブトムシは個体群内だけでなく個体群間においても体サイズが大きくばらつく。それらの変異を定量的に調べるために、国内の5箇所において成虫を採集し、体サイズやオスの角の長さを比べた。その結果、只見(福島県)や屋久島で採集された個体の体サイズは、関東地方などに比べ、ずっと小さいことが分かった。一方、体の大きさに対するオスの角の長さは、只見の個体群は関東のものに比べ変わらないが、屋久島の個体群は短いことが分かった。それぞれの個体群のメス成虫から採卵し、それを同一の条件で育てたところ、只見と屋久島の個体群はやはり関東の個体群に比べ、やはり体サイズが小さかった。つまり、只見と屋久島では、幼虫の生育条件が悪いという理由のみで、野外で小さい成虫が現れるわけではないと考えられる。遺伝的な要因や卵サイズを通した母系効果が影響を与えている可能性が高い。現在、体サイズに対する角の長さの解析を行っている。
著者
狩野 充浩 市川 博之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

筋萎縮症モデルマウスでは、頸部の筋肉に異常が発見された。一部の喉頭に付着する筋にエオジンの濃染が認められ、筋線維の萎縮も観察された。この筋肉は輪状甲状筋であることが同定できた。また輪状甲状筋の運動終板におけるCGRPの発現は非常に強く、この筋での運動終板の変性が確認された。一方、感覚神経の分布は正常マウスの分布と同様であった。また、ALSモデルや加齢マウス及びラットの軟口蓋、咽頭及び喉頭粘膜におけるP感覚及び運動終板の分布は正常動物と大きな変化は認められなかった。本研で観察された筋線維の萎縮や運動終板の変性の原因の同定は不十分であり、今後は、さらなる検討が必要とされる。
著者
三橋 洋治
出版者
近畿大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

H7 7月研究物品購入。申請額を下回る予算の為予定のインキュベータ-の購入ができなかった。培養液及び染色液及びエストロゲン抗体とプロゲステロン抗体などの消耗品のみの購入費用にあて、既存のCO_2インキュベータ-を使用せざるを得なかった。8月よりヒト子宮内膜の分離培養実験を開始するもインキュベータ-が多人数多目的に使用されている為、contaminationが問題となりカビによる汚染により細胞の増加が見られなかった。10月より趣旨を変えパーコールグラディエントを用いた絨毛細胞の単離実験を進めている。12月トロホブラストの単離に成功したがやはりインキュベータ-の精度の不良により、初代培養までは可能となったが継代培養は今も尚成功するに至っていない。従って当初の目的であるヒト子宮内膜の立体構築も残念ながら今だ樹立されてはいない。今後も努力を続けていく予定である。
著者
久曽神 煌 磯部 浩已 福島 忠男
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

超音波モータは,構造が単純で,磁界を発生せず,直接駆動で減速器が不要であるので静粛に駆動することから,その応用技術の開発が進められている.一方,一般的に空気案内機構は,非接触で高精度案内を実現できるが,減衰特性やロバスト性に乏しい欠点がある.ここでは,円筒状のステータの中に,わずかなすき間を介してロータを配置する非常にシンプルな構造のモータを構築する.そして,ステータに周方向に伝搬する超音波たわみ進行波を発生させることで,ロータを非接触支持すると同時に,ロータを非接触で回転させる超音波モータを試作した.さらに,ロータの半径方向運動誤差を動的補正するシステムを構築し,ロータの高精度案内を実現した.空気膜のばねや減衰特性,ロータの質量などから構成されると考えられるロータの振動系の動特性を,圧電素子にステップ上の印加電圧を与えた時のロータ位置の時間的変動から算出した.駆動周波数23.9kHzにおいて,周方向に伝播するたわみ進行波の変位振幅が0.3μm(実測値)となるステータで,軸受すき間10μmの場合,空気膜のばね定数0.028N/μm,減衰比0.38を得た.また,ロータの運動誤差をリアルタイムで補正する制御系を構築し,半径方向運動誤差補正を行い,周波数特性を測定した.その結果,周波数10Hz以下程度の外乱に対しては,補正可能であることが確認された.以上の結果,本機構を精密測定器などの回転数の低い機器に導入できる可能性を見いだした.
著者
若杉 準治
出版者
京都国立博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

絵巻の中で、独立した詞書とは別に画面の中に書き入れられた文字を画中詞と呼ぶ。もともと画中詞は、長い画面に数場面を連続して描く絵巻の場面説明の「……するところ」という書き入れ文字から始まったと考えられるが、その後の画中詞は形式の上から三つに分類できる。第一形式は、連続画面の絵巻に用いられた場面説明や画中人物の会話を記すもので、鎌倉時代中期に華厳宗祖師絵伝や矢田地蔵縁起などに典型的にみられる。そして鎌倉時代後期の天狗草紙においては、場面説明より会話が主体となっている。第二形式は、鎌倉時代末期の尹大納言絵巻等の白描物語絵にみられるもので、一段の絵が短く、時間経過を持たないものであるが、詞書には簡単な状況説明を記して、画中に登場人物の会話を画面の余白がなくなるまで、画中詞として記している。この会話のみの画中詞では「一」「二」……の番号を付してその順が示されるが、こうした方法はすでに華厳宗祖師絵伝で用いられているところから、第二形式は第一形式から派生したと考えられる。そして、第三形式は、室町時代の御伽草紙に典型的にみられ、上の二つの画中詞の形式を受け継いで成立したと考えられるもので、独立した詞書を持たず、というか本来詞書であるべき部分が画面のなかに書き込まれたものである。画中詞が、この順に派生したと考えることには無理がないが、絵巻全体の中で遺品の割合が低く、画中詞が一般的な形式にならなかった理由の一つは、絵画としての純粋さを保とうとしたことにあると考えられる。そして逆に、画中詞が用いられたものは、強いリーダーシップを持って絵巻制作に当たった人物の存在が想定される。すなわち、絵師以上に絵巻の画面に支配力を持つ人物の存在である。このことは、個々の作品の制作事情についての史料的裏付けを要する問題であり、今後研究を続けることにしたい。
著者
馬 子驥
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究では圧縮センシングに基づく事前等化方式を用いて、無線携帯端末の消費電力を削減することである。アップリンクにおけるより少ないパイロットを用いて、受信側の伝搬路情報を送信側にフィードバックするという新たな方式を提案した。圧縮センシングのアルゴリズムを用いて、極少なパイロット信号に基づく伝搬路推定の手法を提案して、高精度な伝搬路推定を示した。圧縮センシング法はナイキスト定理より少ないサンプリング信号からオリジナル信号を復原する可能で、注目されている新技術である。元々画像処理などの領域に応用されている方法だが、今度無線通信に利用して伝搬路推定の精度を向上させることができるを示した。また、推定結果により線形事前等化方式を用いて、受信側の伝搬路推定や信号等化などの信号処理用の電子回路を省略可能である。だから、消費電力を大幅に削減する効果を達成することを目標とした。シミュレーションの結果においてこの性能はもう明らかにした。更に、ビット誤り率をはじめ、演算量や安定性などの高品質的な受信性能を維持することは示した。提案した方式をまとめて、論文を出したし、学会発表を通じて、国内外の研究者に周知した。これから、現状よりもっと改善して、特に演算量を少し削減して、特許の出願を目標とする。
著者
平野 哲郎
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

実体法的側面としては,医療過誤訴訟において医師の過失と患者の損害の間の因果関係が証明されない場合に機会喪失論を適用することを否定したオーストラリア連邦最高裁判所判決を紹介した。同判決は,日本の最高裁判所が相当程度の可能性法理や期待権侵害論によって因果関係の困難を克服しようとしていることと対照的である。訴訟法的側面としては,オーストラリアで普及している専門家を同時的に尋問するコンカレント・エヴィデンスという新たな方式を,これと類似する面のある東京地方裁判所のカンファレンス鑑定と比較した。いずれも裁判官の心証形成を容易にし,より良い判断に資することを目的とする点で共通点がある。
著者
渡辺 邦夫
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

アリストテレスの倫理学と心の哲学が心身関係論を回避せず積極的に荷担したことを示した。かれは徳の説明において感情の状況に応じた「量」にかかわる主張を提出し、状況に応じた直観的認知としての実践的知性から行動が起こると説明したと解釈した。意志の弱さの問題をめぐってもかれは心身因果にかかわる解明を遂行した。心の哲学ではアリストテレスが、欲求を補佐して行動を生む認知の問題に取り組み、行動における人間の認知を、規範という視点から考察しつつ、心身一元論を守ったと解釈した。またかれはスキルや知識や道徳性の学習成果が付帯的知覚としても知性認識としても現れると考えており、知性主義的で一元論的であったと解釈した。
著者
山田 由香里
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

鉄川与助の大工道具の復原を通して、教会建築がどのように実現したのか検討した。次の4点が判明した。①鉄川与助の時代の技術に通じる人は今やごく限られた人である。②復原鉋の削り形状を青砂ヶ浦天主堂(1910)と頭ヶ島天主堂(1919)で対照させた。聖体拝領台手摺り、階段手摺、窓枠などに合致した。③鉋のひとつはフランス・サンテチエンヌのMANUFACTURE FRANCAISE社製(期間は1902~1910)で、日本でもカタログを通じて購入可能であった。④③の溝鉋はド・ロ神父がもたらした可能性が高い。これは、パリ外国宣教会の宣教師の各地での活躍をカタログ通販が下支えした可能性を示唆する。
著者
吉田 二美
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

天体の衝突破壊現象の素過程を現在まで良く保存していると思われる形成年代の新しい3つの小惑星族の小惑星を約50個観測し、自転周期分布、形状分布、自転周期と形状の関係を明らかにした。また、形成年代の新しい小惑星族の小惑星と古い小惑星族の小惑星の表面カラーの比較から、小惑星の表面年齢とカラー変化の関係を確認できた。
著者
森島 繁 村松 郁延 鈴木 史子 西宗 敦史
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

G蛋白共役型受容体はダイマーで機能していると信じられている。我々は、α1A受容体と相互作用するSnapinを発現させた細胞を用いて、研究を行った。Snapinはα1A受容体と結合するが、Snapin自身も2量体を作る。我々はSnapinの2量体形成に伴い、α1A受容体も2量体を形成していることを示唆するデータを得たが、Hill係数の解析から、驚くべきことに、従来の受容体とは異なり、2量体の受容体にたいして1つのアゴニストが結合することが明らかになった。
著者
丹下 健 益守 眞也 坂上 大翼 山本 福寿 本間 環
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

常緑樹の葉は、冬季であれば低温障害を受けることのない低温や降霜によって秋や春には甚大な被害を受けることが知られている。これは常緑樹が周囲の温度環境の変化に応じて樹体の低温耐性を変化させていることを示している。本研究では、暖温帯を主な生育地域とするスギを材料として、周囲の温度環境をどのように感知し、葉の低温耐性を高めたり低めたりしているのかを明らかにすることを目的に、実験的に地下部と地上部の温度環境を別々に制御して葉の水分特性がどのように変わるのかを調べた。葉の膨圧を失うときの水ポテンシャルは、秋から冬にかけて低下し、特に気温が5℃以下で急激に低下する季節変化を示す。この水分特性値の変化は、凍結温度の低下や細胞外凍結時の細胞内水の減少に対する耐性を高めるものである。このような季節変化が、地温を下げることによって早まり、暖めることによって遅れること、水分特性の変化には1週間程度の時間がかかることを明らかにした。この時、飽水時の浸透ポテンシャルの低下は明瞭でなかった。また、地温が5℃以下の時に葉を暖めても葉が低温耐性を失なわず、苗木全体を暖めることによって低温耐性を失う(可逆的な変化)ことを明らかにした。地温の低下に伴う葉の水分特性値や糖濃度の変化を検討し、膨圧を失うときの水ポテンシャルの低下に寄与しているのは、細胞内溶質の増加よりも、体積細胞弾性率(細胞壁の堅さ)の増大の方が大きいことを示した。以上の結果から、秋から冬にかけての地温の低下に応答して、スギの葉が低温に対する耐性を獲得することを明らかにした。季節はずれ降霜(晩霜、早霜)の害は、気温に比べて地温の季節変化が穏やかであり、急激な気温の低下に樹木が応答できないために発生すると考察した。
著者
久保 博子
出版者
奈良女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

夏期のオフィス環境等の室内空間における、温熱的快適性と人体への気流の影響検討することを目的とする研究一環として、空調設備の気流の吹き出し方式の違いによる人体の温熱的快適性への影響を明らかにすることを目的として実験を行った。人工気候室にて夏期のオフィス環境を想定して、気温25℃、27.5℃、30℃の3段階を設定し、相対湿度50%一定とした。気流は3室の人工気候室を用い、「天井吹きだし」「床吹きだし」「壁面吹きだし」の3条件とし、気流速度は被験者の位置で0.2〜0.3m/sの微弱気流とした。夏服着用の健康な平均的体格の青年女子を被験者とし、実験中はパソコンのによる数値入力作業を科し、各温熱条件に60分暴露した。測定項目は生理的反応として皮膚温14点、心理的反応として温冷感、快適感、気流感等とした。(1)平均皮膚温は、吹き出し方式別に検討すると、壁面吹き出しが最も低く、天井吹き出し、床吹き出しの順に低くなる。これは、皮膚温が気流による人体の暴露面積の影響で暴露面積が大きい方がより低下することが考えられる。(2)全身温冷感は、顕著な差は認められないが、気温25℃では床面が、27.5℃及び30℃では天井吹き出しが最も涼しい側の申告である。(3)快適感は、気温25℃では壁面吹き出しが、27.5℃及び30℃では天井吹き出しが最も快適と申告され、天井吹き出しでは「やや涼しい」方が、床吹き出しでは「どちらでもない」で最も快適と快適された。(4)どの気温でも天井吹き出しが「好きな」「満足した」と評価された。
著者
加藤 照之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

高頻度でサンプリングしたGPSデータの地震計への応用可能性を目的してシミュレーションと観測の両面から研究を行った.シミュレータを用いた検証を行った結果,数Hz程度よりも高い周波数の地面振動を受信する際には位相,振幅に有意なずれが生じることが明らかとなった.一方,実際の観測でどのような波形が取得できるかについて,3台のGPS受信機を用いた観測を実施した.いわき,鹿嶋,静岡の3か所に受信機を設置し,50Hzでの観測を実施した.この結果2013年9月20日に福島県浜通りで発生した震度5強の地震による振動波形を取得することにはじめて成功した.