著者
高橋 勝
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.35, pp.32-52, 1977-05-20 (Released:2010-01-22)
参考文献数
56

In contemporary Germany a lively discussion is carried on about the scientific nature (Wissenschaftscharakter) of pedagogy. Against (1) the hermeneutic method (Hermeneutik) which was ruling hitherto in the educational world, since the 1950s, (2) the method of an empirical science (Erfahrungswissenschaft) influenced by English and American positivistic educational research and (3) the method of social criticism (Gesellschaftskritik) gained momentum.In this paper Wolfgang Brezinka's “educational science” (Erziehungswissenschaft) in which the viewpoint of (2) empirical science (more precisely of critical rationalism (Kritischer Rationalismus)) is adopted will be discussed ; the content of his critical observations on pedagogy in West Germany will be examined and their validity will be clarified. In particular, special attention will be given to the view of making an attempt to reinterpret the method of (1) hermeneutics and (3) social critism ss “ideology” emphasizing practice more than theory as not fulfilling the conditions of the construction of a “scientific theory”, and the attempt is made to clarify the relation between “educational theory” and “educational science” on the one hand the non-scientific level of ideology of “educational thought” and “Weltanschauung” on the other hand. Furthermone I shall try to discuss the function of “educational thought” guiding the educator and the role of “educational theory” which examines the correctness or falsehood of his statements and the validity of Brezinka's “metapedagogy” which poses the problem of making a distinction between the two different levels of these functions.
著者
小林 盾 能智 千恵子
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.70-83, 2016

この論文は,人びとが婚活(結婚のための活動)をするとき,どのような要因が結婚を促進したり阻害したりするのかを検討する.これまで,婚活について事例分析は豊富にあるが,計量分析がなかった.そこで,愛媛県の事業であるえひめ結婚支援センターを対象として,約4年間における登録者全員4,779人の推移をデータとした.結婚による退会のハザード率を従属変数としたイベント・ヒストリー分析をおこなった.その結果,(1)男性では,教育・正規雇用・収入という社会経済的地位が高いほど,結婚のチャンスが上昇した.女性では,これら社会経済的地位の効果がなかった.(2)年齢が若いほど,また結婚経験があるほど,男女ともに結婚チャンスが上昇した.(3)他に男性では,身長が高いほど結婚チャンスが上昇した.したがって,男性では働き方を中心とした地位(いわばスペック)が,女性では年齢が,結婚のおもな規定要因となっていた.実践的には,男女とも婚活をすこしでもはやくスタートさせることが重要であろう.
著者
渡辺 勝久 北出 利勝 廖 登稔 佐々木 和郎 北小路 博司 石丸 圭荘 大山 良樹 木下 緑 岩 昌宏 山際 賢 大藪 秀昭
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.154-159, 1993-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

顎関節症は開口障害, 顎関節の疼痛, 関節雑音を主症状とする疾患で, 近年, 若年者を中心に増加の傾向にある。顎関節症は髄伴症状として, 鍼灸治療の適応である頭痛, 頸肩部の凝りなどの不定愁訴を有している場合が多い。そこで, 顎関節症に対する認識をより深め, 具体的な鍼灸治療の方法について, ビデオ教材を作成した。ビデオ教材の内容は, 前半は顎関節の解剖, 顎関節症の病態と分類などを解説し, さらに, 顎関節のMRI画像を紹介した。後半は診察の手順と治療を解説した。鍼灸治療は, 局所的常用穴を述べ手技の実際を紹介した。
著者
芝内 孝禎 笠原 成 松田 祐司 福田 竜生 杉本 邦久
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.128-134, 2013-04-30 (Released:2013-05-01)
参考文献数
59

Strongly interacting electrons can exhibit novel collective phases, among which the electronic nematic phases are perhaps the most surprising as they spontaneously break rotational symmetry of the underlying crystal lattice. Our highly sensitive magnetic torque measurements under in-plane field rotation in iron-based superconductors BaFe2(As1-xPx)2 provide evidence for the electronic nematic ordering below a characteristic temperature T*. High-resolution crystal-structure analysis by using synchrotron X-ray reveals small but finite orhthorhobic distortionbelow T* and the orthorhombicity shows a big jump at a lower temperature Ts. The results imply an electronic origin of rotational symmetry breaking, whose relation to superconductivityis discussed.
著者
平 弥悠紀 Miyuki Hira
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 = Bulletin of Center for Japanese Language and Culture (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.17, pp.19-37, 2020-03

漫画には多くのオノマトペが見られるが、本稿では、「動き」を視点として、オノマトペを取り上げ、中でも「歩く・走る」動きについて、擬音語、擬態語がどのような役割を果たしているのかについて考察した。擬音語・擬態語の辞書によると、人間の全身の「動き」の中で、「歩く」動作に関するオノマトペが最も多く見られる。一方で、「走る」に関するオノマトペは少数である。本稿で資料とした森本梢子著『研修医 なな子』(全7巻、1995-2000年、集英社)では、「歩く」動作そのものを表現する場合、「歩く」に関するオノマトペではなく、擬音語が多く用いられている。特に「走る」に関しては、擬音語を活用して、「走る」動作を表現していると考えられる。絵にオノマトペを添えて、絵では表現しきれない内容を補うばかりでなく、絵はなくても、オノマトペだけで十分「動き」を読み取ることができる場合もある。このような「動き」を表現するオノマトペは、単に「動きの効果を高めるため」の「効果音」というよりも、「動き」そのものを表現するツールになっていると考えられる。そして、「音や動きのない時間を造り出す」促音によって、動きの遅速を表現したり、リズムに変化を与えたり、オノマトペの様々な語形によって、動きの違いを表現し分ける。また、「歩く」カテゴリーのオノマトペは、歩く動作そのものよりも、身体機能に影響されたり、健康状態や心理状態を反映した歩き方を表現していた。
著者
壬生 彰 西上 智彦 田中 克宜 山田 英司 廣瀬 富寿 片岡 豊 田辺 曉人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】変形性膝関節症(膝OA)において,身体知覚に関わる2点識別覚,固有受容感覚および運動イメージの低下や異常が認められており,身体知覚異常が慢性痛に関与する可能性が報告されている。腰痛患者に対して身体知覚異常を評価するために開発されたThe Fremantle Back Awareness Questionnaire(FreBAQ)を基に,日本語版The Fremantle Knee Awareness Questionnaire(FreKAQ-J)を作成し,膝OA患者の身体知覚評価質問票としての信頼性および妥当性を検討した。さらに,Rasch解析を行い,心理測定特性を検討した。【方法】日本語版FreBAQの質問項目にある'腰'を'膝'に置き換えて英語へ逆翻訳し,FreBAQの原著者へ内容的妥当性を確認したうえで暫定版FreKAQ-Jを作成した。対象は,膝OAと診断された65名(男性15名,女性50名,平均年齢68.5±9.1歳)を膝OA群,膝OAの既往がない64名(男性14名,女性50名,平均年齢66.7±7.2歳)を対照群とした。評価項目は,安静時および動作時の疼痛強度(Visual Analogue Scale;VAS),能力障害(Oxford Knee Score;OKS),破局的思考(Pain Catastrophizing Scale;PCS),運動恐怖(Tampa Scale for Kinesiophobia;TSK)及び身体知覚異常(FreKAQ-J)とした。統計解析は,FreKAQ-Jの合計点の群間比較には対応のないt検定を,膝OA群においてFreKAQ-Jの合計点と各評価項目との関連にはSpearmanの順位相関係数を用いた。初回評価より2週間以内にFreKAQ-Jの再テストを行い級内相関係数を求めた。有意水準は5%未満とした。さらに,Rasch解析により,Cronbachのα係数,項目適合度,評価尺度としての一元性,targetingを検討した。【結果】FreKAQ-Jは,対照群に比べて膝OA群で有意に高得点であった(膝OA群12.4±7.6,対照群3.6±4.4)。また,膝OA群においてFreKAQ-Jは安静時痛(r=0.27,p=0.02),運動時痛(r=0.37,p=0.002),PCS(r=0.70,p<0.001),TSK(r=0.49,p<0.001),HADS不安(r=0.46,p<0.001)およびHADS抑うつ(r=0.32,p=0.01)と有意な正の相関を,OKS(r=-0.41,p=0.001)と有意な負の相関を認め,評価尺度としての基準関連妥当性を有することが示された。級内相関係数は0.76であり,高い再テスト信頼性が認められた。Rasch解析の結果,Cronbachのα係数は0.87であり,高い内的整合性が認められた。身体イメージに関する項目7及び9に不適合(misfit)が認められたが,評価尺度としての一元性が認められた。また,FreKAQ-Jは身体知覚異常が高度である対象者をtargetingしていることが示された。【結論】FreKAQ-Jは,膝OA患者の身体知覚異常を評価する質問票として十分な信頼性,妥当性をおよび心理測定特性を有することが示された。今後,本質問票を活用し,膝OA患者の身体知覚異常と疼痛の関連についてさらなる検討を行うとともに,身体知覚異常の改善を目的とした介入の効果検証についても行っていく必要がある。
著者
森田 綽之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.203-216, 2011
被引用文献数
1

日本の「道路構造令」に関わる解説書である「道路構造令の解説と運用」は初版の昭和35年から3回改訂されている.本稿ではその変遷の経緯,位置づけ,解釈を整理,体系化している.その結果,道路の構造の全国的統一を意図した当初の趣旨から地域に適した道路構造を実現するために政令の規定を弾力的に適用する思想へ変遷していること,道路分類において必ずしも階層性が明確でなく,利用者に提供すべき目標サービス水準やこれを実現する具体的な設計法が未確立であること,日交通量で需要と容量を取り扱うことで生じる矛盾を解消する必要があること,車線幅員や設計速度などの設定の経緯やその意味を改めて確認し,現在の道路の作り方や運用に対して適切な基準を検討する必要があることなどを明らかにした.
著者
安蘇谷 正彦
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.1059-1081, vii, 2005-03-30

近・現代における「神道研究」の百年を振り返ってみると、神道研究には、〔I〕神道の科学的研究と〔II〕神道学の二種類あることを提唱した。〔I〕の科学的研究には、神道の〔1〕宗教学的研究、(2)歴史学的研究、(3)民俗学的研究、(4)考古学的研究、(5)神話学的研究、(6)日本思想史学的研究などがあろう。〔II〕の神道学とは、日本の神々信仰の言葉化や理論化を目標にしながら、神道を研究することと規定したい。次にこれらの研究分野ごとに、主要な研究業績を紹介し、各分野の先駆的研究者の研究目的などを中心に述べる。終わりに神道の宗教学的研究者の主要な業績を紹介し、とくに先駆的研究家・加藤玄智の神道論と戦後もっともよく読まれた村上重良著『国家神道』の主張を取り上げた。神道研究者が即ち神道学者と言えないと論じている。
著者
今井 功
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.i-ii, 1969-06-05

2 0 0 0 OA [一柳家文書]

巻号頁・発行日
1500
著者
小島 美子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.371-384, 1993-02-26

日本音楽の起源を論じる場合に,他分野では深い関係が指摘されているツングース系諸民族についてその音楽を検討してみなければならない。しかしこれまではモンゴルの音楽についての情報は比較的多かったが,ツングース系諸民族の音楽については,情報がきわめて乏しかった。そのため私は満族文化研究会の共同研究「満族文化の基礎的資料に関する緊急調査研究―とくに民俗学と歴史学の領域において―」(トヨタ財団の研究助成による)に加わり,1990年2月に満族の音楽について調査を行った。本稿はその調査の成果に基づく研究報告である。この調査では調査地が北京に限定されていたため,満族とエヴェンキ族の音楽について多少の情報を集めることができたに過ぎず,とりあえずこの2つの民族の音楽に,参考資料として一部モンゴルの音楽の情報を加えて報告する。まず満族の音楽については,主としてビデオ資料によってシャマンの音楽を調査した。ツングースの文化にとってはシャマニズムは,きわめて重要な位置を占める。シャマンが用いる1枚皮の太鼓,ベルトなどにつけている多くの鈴などは,他のツングース系諸民族のシャマンと共通しており,また日本の少数民族であるアイヌ・ギリヤーク・オロッコのシャマンとも共通である。そしてこれは日本古代の有力なシャマンや朝鮮韓国の現在につながるシャマンとは明らかに別系である。また満族シャマンの歌は,テトラコード支配の強い民謡音階によっており,日本と共通するところが多い。エヴェンキ族の民謡について,現段階ではもっとも信頼のおける民謡集で調べたところ,エヴェンキ民謡は,モンゴル民謡と同じく拍節的タイプと無拍のタイプに分かれるが,後者は15%程度で意外に少ない。前者も2拍子系の曲と3拍子系の曲,変拍子や途中で拍子の変わるものが,それぞれ大体25%程度を占めており,韓国朝鮮の民謡のリズムに近い。また音階は民謡音階と律音階と呂音階にほぼ3等分されるが,テトラコードの支配はそれほど強くなく,むしろモンゴル民謡の方が日本民謡に近い。またメロディの装飾的な動きは,エヴェンキ族の民謡の方が日本民謡に近い。
著者
菊地 和博
出版者
東北文教大学・東北文教大学短期大学部
雑誌
東北文教大学・東北文教大学短期大学部紀要 = Bulletin of Tohoku Bunkyo College Tohoku Bunkyo Junior College
巻号頁・発行日
vol.1, pp.65-81, 2011-03-31

はじめに 菅江真澄は三河国出身でのちに羽後国秋田に住み着いた江戸時代後期の旅行家・民俗研究家である。真澄は江戸期の東北各地の豊作祈願の芸能について詳細な説明文や写生図を残している。その中には伊達藩の「胆沢郡徳岡田植踊」(現岩手県奥州市胆沢区)をはじめ、八戸藩の「八戸田植踊」・「八戸田植唄」(現青森県八戸市)、南部藩の「田名部県田殖躍唄」・「田名部田植え唄」(現青森県むつ市田名部)などが記録されている。本稿ではこの中で特に「胆沢郡徳岡田植踊」の内容をもとに、現在の東北4県の田植踊りや八戸市周辺及び岩手県北部のえんぶりとの関連や相違点の比較分析を試みた。そのことを通して、「弥十郎」「藤九郎」「えぶり(えぶりすり)」の役柄などを含め江戸期以来の東北の豊作祈願芸能の全体構成を明らかにしようとしたものである。
著者
登本 洋子 高橋 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45026, (Released:2021-08-24)
参考文献数
18

学校も社会と同様にDXが求められている.2019年12月にGIGAスクール構想が示され,児童生徒一人に1台の情報端末が整備されようとしているが,これまでのICT機器に対する意識や経験の差などから,1人1台の情報端末が学習で活用されるものになるのか懸念がある.本研究ではICT環境の整備やICT活用に対する教員の期待や懸念を明らかにするために,児童生徒1人1台の情報端末の活用に対する初等中等教育の教員の意識を調査した.結果,1人1台の情報端末の活用は進んでおらず,情報端末は学びに役立つと期待がある一方,ICT環境の整備や児童生徒の心身の健康に対する不安も低くない.ICT機器を学習で活用し,児童生徒の生活を向上させるためには,まずはICT環境を整備し,ICT活用に対する理解を深め,児童生徒の心身への影響やトラブルに対する不安を解消していく必要がある.
著者
齋藤 誠子
出版者
慶應義塾大学大学院社会学研究科
雑誌
慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要 : 社会学・心理学・教育学 : 人間と社会の探究 (ISSN:0912456X)
巻号頁・発行日
no.82, pp.75-92, 2016

論文This research uses the KJ method to evaluate viewers' criticisms of Japanese TV programs through an examination of viewers' opinions appearing on the Broadcasting Ethics & Program Improvement Organization (BPO) website.The research indicated that : (1) viewers criticized the partiality of the news content in news programs and the modus operandi adopted for the reporting (2) ; viewers believed entertainment programs were coarse and harmful for young people and had no morality ; and (3) viewers criticized the lack of consideration for the cast and reliability of the information. However, few viewers expressed their opinions regarding television dramas and animation shows.Therefore, this research confirmed that : (1) owing to the extensive use of the Internet, TV viewers are aware of the strong criticism that TV programs are prone to ; (2) TV viewers and the Broadcasting station experience a "moral panic ; " and (3) TV viewers do not tend to criticize television dramas or animation programs because these are fictional in nature.It is essential that future research examines the relation between viewers' criticisms and psychological factors, such as the third-person effect and the hostile media effect, and explore various theories to understand this relation.
著者
鹿毛 敏夫 早坂 俊廣 山崎 岳 坂本 嘉弘 田中 裕介 吉田 寛 坪根 伸也 中西 義昌
出版者
新居浜工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

中国に残された文献史料によると、嘉靖36(1557)年に日本の戦国大名大友義鎮が浙江省に派遣した貿易船が、舟山島の岑港で沈没した。「巨舟」と記されたその船は、当該期東シナ海域を往来する船のなかで最大級の大型構造船であった。本研究の現地調査において、沈没船の時代に関わる考古遺物を確認できたとともに、船の母港の都市空間構造を明らかにすることができた。また、共通の意識を有する中国の研究者との連携体制を構築するとともに、国際学会を通じて研究成果を世界的に発信することができた。
著者
立花 浩司
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.19-35, 2021-08

「はこだて国際科学祭」は,北海道南西部・広域はこだて圏(函館市,北斗市および七飯町の2市1町)を基盤とする,地域のサイエンスフェスティバルである.2009年から毎年夏に定期的に開催しており,JST による支援が終了した後も自主財源を確保して事業を継続,はこだての地域に根ざし,楽しみながら科学を身近なものとして親しむ市民イベントとして定着している.これまで例年のべ10,000人を超える多くの人々が集う恒例イベントとして,地元での認知度を向上させてきた.ところが2020年度は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行に伴い,多くのイベントが開催中止,延期等の大幅な軌道修正を迫られた.「はこだて国際科学祭」においても例外に漏れず,一時はイベントの開催そのものが危ぶまれていた.この状況下において,「はこだて国際科学祭」はいち早くオンライン化に向けた新たな科学祭のイベントスタイルの可能性を見出し,オンラインで科学祭を実現するに至った.本稿では,コロナ禍の中で開催した,はこだて国際科学祭2020の設計と実践の経験を通じて得られた,オンライン開催のメリット/デメリットについて報告する.