著者
笹岡 直人
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

補聴器などに導入可能な突発性騒音抑圧システムの研究開発を実施した。現在、補聴器に用いられている騒音抑圧システムは騒音の特性が変動しないもしくは緩やかに変動することを前提としているため、衝撃音などの突発性騒音の抑圧は困難であった。そこで本研究では、音声と突発性騒音の特性差のある高次統計量を基にする適応フィルタにより音声成分のみの推定を可能とした。また、適応フィルタのみでは騒音の鳴り始めを抑圧することは困難であるため、高次統計量を用いた騒音検出及び抑圧についても検討を行い、その有効性を確認した。
著者
林 雅彦 腮尾 尚子 西岡 亜紀
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

三年間の研究活動を通して、中世・近世期を中心に、日本から東アジア・ヨーロッパまでを広く視野に入れながら、名も無き大衆の生と死にかかわる真摯な信仰・俗信を反映した、多種多様な図像を発掘し、その意味を解読・分析してきた。3人の研究者が、それぞれの分野の資料を集めたうえで、同時代の宗教的なテキストや民衆文学などを用いながら、図像の起源や来歴や社会的な役割などを分析した。そして、そうした研究内容を研究者だけでなく、広く一般社会に向けて発信するため、三年目に、明治大学博物館において、企画展「民衆の図像展」を開催し、貴重な実物資料を展示・解説し、多くの観覧者を動員した。また、これ以外にも、多くの一般向け講座での講演、国際図像解読研究会、国際熊野学会他の学術会議、『国文学解釈と観賞』における数回の特集の他の出版物などによる社会還元を果たした。
著者
中村 真樹
出版者
長崎純心大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、自閉スペクトラム症(研究開始時は広汎性発達障害、以下ASD)の児童と成人を対象とし、自己理解に関する調査研究及び心理劇の実践を通して、情動機能と自己の発達について検討した。その結果、ASDの情動機能と自己の発達について、(1)臨床実践及び質問紙調査等の多様なアプローチの有効性(2)定型発達との比較検討によるASDにおける自己理解の特性(3)生涯発達的観点による支援の重要性(4)心理劇による支援の有効性が示された。
著者
天野 雅郎 小関 彩子 佐藤 和正 永井 邦彦
出版者
和歌山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

21世紀は、大学の激動の時代である。この研究は、そのような大学の激動の時代において、大学の再生の可能性を教養教育の視点から考察したものである。そのために、この研究では日本の近代の教養教育が、これまで辿って来た歴史を振り返り、それをヨーロッパの教養教育の理念と比較しながら、その影響関係や齟齬について吟味し、さらに加えて、21世紀の新しい教養教育の可能性について、理論と実践の双方向から、教育哲学による提言を行なったものである。
著者
馬場谷 成
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

1型糖尿病は難治性疾患であり、早期発見・早期治療のための方策が必須である.本研究では、1型糖尿病予知(早期発見)システムの構築を目的とし、1型糖尿病診断前より検出されるインスリン抗体の、より高感度な検出法を確立し報告した.また同様に、1型糖尿病において検出されるIA-2抗体の、より高感度な検出法の開発を継続中である.これらと、DNA遺伝情報を組み合わせることで、より適切な早期発見のための方策を検討した.
著者
金 鉉哲
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度の研究は韓国の近代劇の先駆者である洪海星と築地小劇場の影響関係を中心に行った。洪海星(1894-1957)は韓国最初の演出家であり、韓国近代演劇の先覚者として非常に重要な人物である。特に洪海星は1924年-1929年の間、直接築地小劇場の俳優としても活躍した。そのために洪海星の演劇理論と演出作品に築地小劇場の影響が非常に大きかった。本年度の研究では、洪海星が本格的に韓国近代劇運動を始めた1930年一1935年を中心に、築地小劇場との関係を三つのポイントに基づいて明らかにした。第一は「実際公演と築地小劇場の関係」である。洪海星は韓国の近代劇運動の基盤を築きあげるために築地小劇場の演目をそのまま継承して公演した。洪海星の演出は当時の演劇人たちから肯定的な評価を受けたが、築地小劇場の反復に過ぎないという否定的な評価も少なくなかった。殊に第一回築地小劇場の公演でも話題になった表現主義劇である『海戦』の演出は洪海星の演出方式に関する賛否両論の論争の争点になった。第二は「築地小劇場と洪海星の演出方式」である。洪海星が築地小劇場の演目の中で最も高い評価を得た作品は『検察官』である。しかし、当時の演劇評を詳しく調べれば高い評価の根拠には築地小劇場の方式をそのまま生かした演出方式があげられる。即ち、洪海星の演出方式はただ築地小劇場の演出方式を紹介する程度で満足していたことである。第三は「劇芸術研究会の評価」である。洪海星の演劇活動中にいまだに解けない謎は突然劇芸術研究会を離れて大衆劇の劇団として有名な東洋劇場へ移動したのである。今までは経済的な問題が一番重要な原因として提起されているが、経済的な問題一つだけでは説明されない部分が多い。しかし、洪海星が参加した近代劇運動団体である劇芸術研究会における彼の位置を考えたら非常に簡単に釈明される。劇芸術研究会で洪海星は独創的な演出力を持っている演出家という評価とは程遠かった。単に、築地小劇場の体験を韓国に紹介する役割に過ぎなかった。結局、自由な演劇運動ができない劇芸術研究会を離れて東洋劇場へ移ったのである。
著者
正木 治恵 長江 弘子 坂井 さゆり 手島 恵 河井 伸子 松本 啓子 遠藤 和子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

国内外の文献レビューと専門家パネルならびにデルファイ調査により、高齢者の終生期ケア質指標(Quality Indicator)を開発した。前提と33項目からなる質指標は、意向の確認、看護倫理に基づく日常ケア、治療・ケア選択への関与、症状・苦痛緩和、臨死期の日常ケア、家族ケア、施設・組織の体制づくりの7つの大項目で構成された。開発した質指標はベストプラクティスを示すものと考えられ、高齢者ケアの質向上に役立つことが示唆された。
著者
福士 由紀
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、1950年代から70年代における中国における日本住血吸虫症対策に関する歴史資料の分析およびインタビュー調査などを通して、現代中国における農村医療・衛生事業の歴史的展開を実証的に把握することを目的とするものである。本研究では、(1)中国農村医療制度の歴史的展開と雲南省におけるその実態の把握,(2)中国農村医療システムの同時代における国際的評価の変遷、(3)雲南省における日本住血吸虫症対策の実態について検討した。
著者
板橋 久雄 撫 年浩 木村 信熙
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

牛用飼料のマイコトキシンがルーメン発酵に及ぼす影響とプロバイオテックスなどによるその制御について培養実験により検討した。添加したデオキシニバレノール(DON)またはゼアラレノン(ZEN)はルーメン内の揮発性脂肪酸(VFA)濃度などを低下させ、ルーメン発酵を抑制したが、その影響はZENの方がDONよりも大きかった。DONとZENの一部はルーメン微生物により代謝され、培養20時間では約50%が分解された。この分解には、ルーメン細菌よりもプロトゾアの方が大きく関わっていた。二糖類や酵母などの生菌剤はDONとZENの分解を促進することが明らかとなり、畜産現場で実用可能なことが示された。
著者
山本 宏昭
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

NANTEN2 望遠鏡を用いて複数の超新星残骸全体に対して^12CO(J=1-0, 2-1)、^13CO(J=1-0)輝線のスキャン観測を実施し、付随する分子雲の全貌を明らかにした。また、水素原子雲のデータも活用することにより、全星間陽子の分布を明らかにし、ガンマ線との比較を通して、ガンマ線放射の陽子起源説を指示する結果を得た。さらに宇宙線陽子のエネルギーが超新星残骸のエネルギーの 0.1-1%程度であることを明らかにした。
著者
玄 英麗
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

1)屋外温熱環境の質(Quality)を評価するための新たな指標の提案ある計画敷地を対象として、その屋外環境の質を屋外物理環境と社会的便益の面から評価するため、昨年提案した指標(Index1と2と3)に新たな指標(Index4と5)を追加し、検討を行った。Index1:計画敷地内でSET*(新標準有効温度、温熱快適性を表す指標)が許容上限値以下となる領域の面積Index2:Index1の値を計画敷地面積で基準化した数値Index3:Index1の値を敷地内のオープンスペースの面積で基準化した数値Index4:計画敷地内に住んでいるすべての人たちが楽しめる熱的に許容できる面積を計画敷地面積で基準化した数値(Index4=Index2*計画敷地における容積率)Index5:計画敷地内に住んでいる人たちの一人当たり楽しめる熱的に許容できる面積を計画敷地面積で基準化した数値(Index5=Index2/計画敷地における容積率)気候特性に適合した最適な建物配置はIndex4と5の値により決定される。2)広州と仙台における最適な隣棟間隔広州と仙台を対象として、建物隣棟間隔(D)と建物高さ(H)の比(D/H)を系統的に変化させた解析を実施し、1)で考案した評価指標を用いた評価を行った。この結果、広州と仙台でのD/Hの最適値は0.71となった。3)鉛直壁面が屋外温熱快適性に与える決定的な影響緯度の変化による屋外温熱環境の変化を把握するため、広州と仙台における表面温度の分布と平均放射温度の分布を比較した。この結果、広州における太陽高度が仙台に比べより高く、より多くのオープンスペースが日差しを受け入れるが、広州における平均放射温度がより低かった。これは、広州における太陽高度が高いため、鉛直壁面が受け入れる日射が仙台より少なく、表面温度が低かったためだった。これにより、鉛直壁面が屋外温熱環境に決定的な影響を与えることを明らかにした。
著者
石田 功 池本 守
出版者
帝京平成大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

Alfimeprase(A)は血中のα-2マクログロブリン(α-2M)と速やかに複合体を形成して活性が阻害されるため、臨床第2相でドロップした。Aにハブ毒HRlaのC末ドメインを結合させた融合体(AH)遺伝子に、フィブリンへの標的化ヒトプラスミノーゲンのクリングルドメイン1を融合させたAHP遺伝子を化学合成して大腸菌ベクター(pE-SUMO)で発現させた。これによって、Aのフィブリノゲン切断活性、ヒト血餅溶解活性のα-2Mによる阻害を回避することはできなかった。それはN末のSUMOペプチドの有無とは関係なかった。
著者
丹羽 孝良
出版者
桐生市立清流中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

研究の目的は、水の電気分解の電源として植物の光合成を利用した中学生向けの実験教材を開発することである。植物生体電位測定装置(μAを計測できるデジタルマルチメーターと電極粘着パッドまたは亜鉛板を電極として植物体内の電流値を計測できる装置)を使って、植物の生体電位(電流)の変化を観察した。この観察対象植物として、葉がしっかりしていて、かつ繁殖が容易なコダカラペンケイソウを選定し大量培養を7月から試みたが、10月をまわっても十分な成長が見られず、断念した。そこで、肉厚で亜鉛板電極が差し込みやすいサボテンを使って、厚さ1mm、幅1cmの亜鉛板の先1cmをサボテンの手前側と奥側の2カ所に差し込み、植物体内からの電流値を測定した。日陰での電流値は、亜鉛板を差し込んだ直後が最大(およそ60μA)で、時間の経過とともに減少したので、落ち着いたときの電流値を測定した(およそ40μA)。このサボテンを太陽光にあてると、若干の電流値の増加が見られた(+10%程度)。光合成との因果関係は不明だが、水の電気分解に必要な電流値(0.1A)は、2500鉢のサボテンを直列につなぐことで可能になるはずである。一方、白色LEDを光源にすると、若干の電流の現象が見られた(-10%程度)。LEDに代わる照明として植物生育用の蛍光灯の利用を考えたが、大量のサボテンに対する蛍光灯の数を考えると、電気分解に必要な電流を取り出す以上に電流を消費してしまうことになるので、光源としては、太陽光が最善であることがわかった。サボテンと亜鉛板の組み合わせで40μAをデジタルマルチメーターで計測する教材を試作した。結果として、サボテン単体から電流を取り出すことには成功したが、複数個のサボテンを直列につないで、電気分解に必要な0.1Aを取り出すことはできなかった。+極、一極の電気極性をそろえられないことが原因だと考えられるが、実証に至っていない。
著者
渡辺 勧持 薬師寺 明子 島田 博祐
出版者
美作大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

知的障害者に対するダイレクト・ペイメントを支援する制度として望まれるサークル・オブ・フレンズ(障害者本人を中心にして作られる家族、友人、知人、専門家等による支援の輪)の現状について英国を中心に聞き取り調査を実施した。ダイレクト・ペイメントの支援制度の多様化に伴い、本人への支援は、取り巻く地域社会の人々よりも行政の関与が多くなる傾向がある。サークル・オブ・フレンズは、現在でも、理想として求められるが、より定着するには、ソーシャルワーカーが幅広く地域社会へ関与できること、当事者団体の活動への支援、半市民的な役割をもつ支援ブローカーなどの活動への支援などの制度の発展が必要と思われる。
著者
八島 正知 石原 達己 藤井 孝太郎
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々の研究プロジェクト「d10金属酸化物新イオン伝導体の構造デザイン」の概要を記す。Pr2(Ni,Cu,Ga)O4イオン伝導性材料ではNi2.5+に比べて高い価数を持つGa3+を添加することで格子間酸素量(キャリア濃度)が増加して酸素透過率が向上すること見いだされた。新物質探索の結果、新しい構造ファミリーNdBaInO4を発見した。SrをNdBaInO4に添加すると酸化物イオン伝導度が向上することも見出した。Pr2(Ni,Cu,Ga)O4, PrBaCo2O5.5+delta, Ce0.5Zr0.5O2の酸化物イオンの拡散経路を研究した。K2NiF4型A2BO4酸化物の異方性熱膨張を研究した。
著者
泰岡 顕治
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

17年度,18年度に引き続き液晶の粗子化分子動力学シミュレーションおよび原始レベルでの分子動力学シミュレーションを行った.粗子化分子動力学シミュレーションについては,平板間に挟まれた液晶の振る舞い,拡散係数などについてシステムサイズ依存性について大規模計算を行った.また,粗子化シミュレーションとの対応を見るために,昨年度からの続きで原始レベルでの分子動力学シミュレーションを行った.特に今年度は,5CBを用いて,当方相と液晶相の間の相転移現象について計算を行った.既存の研究では,分子数が少なく,また長時間シミュレーションが行われていなかったため,粗子化シミュレーションとの比較も難しかった.本研究では,分子動力学専用計算機MDGPAPE-3を用い,500分子程度の系において, 0. lMPaにおける様々な温度で,約100nsほどのシミュレーションを行い,相転移現象を計算した.計算に汎用機を用いた場合には数十年かかることが予想されるが,本研究ではMDGRAPE-3を用いることで1年弱で計算を行うことができた.分子モデルとしてOPLS-UAモデルを用いたが,計算系を大きくし,計算時間を長く取ったことで,周期境界条件の影響が少なくなり,相転移の際のヒステリシスが小さくなったことで,転移点をより正確に見積もることが可能となった.転移点は実験結果より3%ほど小さくなった.また粗子化シミュレーションで得られた値とほぼ一致した.
著者
齋藤 実穂
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

「地球と太陽(太陽風)の相互作用からどのような物理過程で、オーロラ現象が引き起こされるのか」、その過程を明らかにするために、人工衛星の観測データの解析を行った。これまで調べることが難しかったオーロラ現象の源の構造、特に電流層の構造を調べることから、プラズマ物理を用いたオーロラ現象の説明を試みた。THEMIS衛星群を用いた電流観測から、「磁気圏尾部の電流経路」、「サブストームの発生源(起電力)」、「磁気圏のエネルギー収支」がわかるようになることが期待できる。また電流密度の構造と理論研究を合わせることにより磁気圏尾部プラズマシートが安定的に存在できるのか議論できるようにするための基礎的な知見を得ることができた。研究では、 複数の人工衛星を用いた磁気圏尾部の解析方法を開発し、電流密度を直接調べることを可能にした。開発した解析手法は、2007年にNASAが打ち上げたTHEMIS衛星群5機を用いて実際の観測データへ適用をした。2007年から2014年の観測事例を調べ統計的な性質を得ることができた。次に平均的な状態と比べて、サブストーム(オーロラ嵐)ときにどのような特徴が見られるのかを調べた。これまで磁気圏で電流密度が高くなる場合は、サブストームの成長相と考えられていたが、発達相にも高くなることを初めて示すことができた。ストーム開始時の電流系のモデルを構築し、プラズマシートの東西非対称の特徴を観測データから明らかにした。
著者
出川 洋介 勝山 輝男 田中 徳久 山岡 裕一 細矢 剛 佐久間 大輔 廣瀬 大 升屋 勇人 大坪 奏 城川 四郎 小林 享夫 原田 幸雄 松本 淳 勝本 謙 稲葉 重樹 佐藤 豊三 川上 新一 WALTER Gams
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

労力と時間を要すために研究が遅れてきた菌類のインベントリー調査を、博物館を介して専門研究者と市民とを繋ぐ3者連携体制を構築して実施した。多様な世代の70名以上の市民により5千点を超す標本が収蔵された10年に及ぶ事前調査を踏まえ、約50種の菌類を選定し、研究者の指導のもとに市民が正確な記載、図版を作成し菌類誌を刊行、デジタルデータを公表した。本研究事例は今後の生物相調査の推進に有効な指針を示すと期待される。
著者
伊福部 達 敦賀 健志 吉田 直樹 井野 秀一 吉永 泰 脇坂 裕一 上見 憲弘 和田 親宗 大西 敬三
出版者
北海道大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
1999

本課題の目的は、水素吸蔵合金(MH)アクチュエータを改良して新たな介助機器やリハビリ機器を開発し、高齢社会および地域産業に貢献することである。具体的には、1.寝たきりを防ぐために,被介助者をベッドから車椅子および車椅子からベッドへの移乗する機器,2.脳卒中などによる手足の麻痺や骨折による筋-関節系の拘縮のための関節可動域訓練で必要となるリハビリ機器(CPM)のために利用する。1については,昨年度から引き続き,MHアクチュエータの小型化,高速化、および軽量化を行い,被介助者の生体特性を踏まえた実用性の高い移乗機器の第2号を試作した。さらに、日本製鋼室蘭製作所に隣接する日鋼記念病院で実際の被介助者を対象として移乗介助機器を使用し、現場からの高い評価を得た。2のCPMのためのアクチュエータとしては高分子材料をベローズとして利用することで,極めて小型軽量にすることができ,関節周りに柔軟に装着できるような構造を実現でき,しかも水素漏れは数十日で5%程度であり,金属ベローズに比べて桁違いに廉価にすることができた。今後は,CPMのための最適なヒューマンインタフェースを構築するとともに,使い捨てのCPMを想定し,製品化の道を探る予定である。以上の成果が評価され、福祉機器の開発と販売を行っている会社の協力を得て、この介助機器とCPMを実用化するための組織ができ、科学技術振興事業団からの支援により,来年度から製品化へ向けての具体的な作業に入ることとなった。さらに、この課題の総括として、どのMHアクチュエータがどのような場面で、どのような被介助者に有効であるかを明確にし、将来の需要を見込みながら、高齢社会と地域産業にどこまで貢献できるかを展望した。
著者
福本 和貴
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

近年、合成金属触媒をタンパク質内部空間に導入した人工生体触媒が注目されている。この人工生体触媒では、タンパク質を3次元の優れた化学反応場として扱うことで、反応の立体選択性を実現することが可能となる。しかし、立体選択的な炭素―水素結合の活性化や炭素―炭素結合形成等、より魅力的で困難な触媒反応を実現した人工生体触媒は殆ど無い。そこで本研究者は、前年度までにユニークなタンパク質空孔を有するニトロバインディンを用いて、約65%のトランス体ポリフェニルアセチレンを得ることを見出し、タンパク質が反応の立体選択性に影響を及ぼすことを示した。本年度は、より高い立体選択性を実現するために、活性中心近傍のタンパク質内部空間に対して、詳細に再設計した10種類の異なる人工生体触媒を調製した。特に得られた人工生体触媒のうちのひとつに関しては、結晶構造解析にも成功し、ロジウム錯体がタンパク質内部空間に堅牢に収まっていることが確認された。さらに、それぞれ10種類の人工生体触媒を用いて、反応条件も最適化したうえで重合反応を実施し、得られたポリマーの立体選択性について評価したところ、トランス選択性を約80%に高めることを達成した。次に、MD計算を用いてタンパク質内部空間における金属錯体の挙動を解析し、人工生体触媒が調製したポリマーの立体選択性と比較検討したところ、ポリマーのトランス選択性の向上には、"ロジウム錯体が安定に位置することが可能で"かつ"モノマーの活性中心へのアプローチをコントロールできる"適切なタンパク質内部空間をもつ人工生体触媒が必要であることが明らかとなった。