著者
宮下 清 丹野 勲 中山 健 山本 寛 薄上 二郎 杉浦 正和 櫻木 晃裕 細海 昌一郎
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の成果として、資格を中心にホワイトカラー人材の育成、評価について日米英の比較から、新たな知見を見出すことができた。まず仕事に使えるよう知識や経験を応用・適用する力であることが重要とされた。日本にホワイトカラー資格は存在しないし、今後も浸透の可能性は低い。英米でも実務経験、OJTが重要で、企業で求められる専門性とは仕事をする力であり、職場・仕事こそが最高の人材育成の場であることが確認できた。
著者
伊藤 豊彰 田島 亮介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

有機栽培体系において、未利用廃棄物であるポリシリカ鉄浄水発生土と他のケイ酸資材は、水稲の収量、外観品質を向上させ、斑点米被害を低下させ、ケイ酸施用は根の量と活性を増加させた。さらに、ポリシリカ鉄浄水発生土は酸化鉄供給によって、水田からのメタン放出量を低下させる可能性を示めした。これらの結果より、PSI浄水発生土およびケイ酸資材の施用が環境保全型水稲生産体系の重要な要素技術になりうると結論した。
著者
稲田 浩子
出版者
久留米大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

子どものターミナルケアを行うにあたっては、患児自身・家族、医療スタッフの協力体制が最も要求される。それをふまえてターミナルケアの方針作りを行った。1. 家族と医療スタッフ間のコミュニケーション;様々な治療法が開発された現在、どの時点で支持療法に切り替えるのか、治験的な治療を進めるのか、選択も難しい。時間をかけて、時にはsecond opinionも聞きながら、納得行くまで話し合う必要がある。2. スタッフ間のミーティング;患児・家族への最良の対応を、話し合いながら検討していく。スタッフ自身の死生観を確立することも重要である。3. 患児の痛みの軽減;モルヒネ等を用いて、積極的に除痛することで、安心を与える。4. 子どもへのdeath education;現代社会は、死と直面する機会が少ない。日常の教育の中に、生と死を考える時間をもうけるべき。また、ターミナルステージにいる子どもに死を尋ねられたとき、医療スタッフは嘘をつかずに応える準備をしておくべき。5. 患児の要求をかなえる; 「家に帰りたい」という希望は誰にでもある。地域の訪問看護システム等を利用した在宅ケアも、お互いの充分な理解と協力があれば可能となる。頻回に話し合いの機会を持ちながら、できるだけ希望にそえるよう努力していく。病院の規則も緩和し、家に似た環境づくりを心がける。6. 家族・兄弟への支援;患児中心の生活から、家族の輪に歪みができることも少なくない。お互いの立場を尊重し、兄弟にも患児の状況を隠さず伝え、話し合う必要がある。7. 旅立ちの時;苦しみだけを延長させるような処置は避け、家族に見守られて穏やかに旅立つような状況をつくれるようにする。8. 患児死後の家族支援;受容までに通る5段階の感情を表出させ、苦しみを分かち合う機会を作る必要がある。私達が行っている追悼の会は、意義深いものとなった。
著者
久保田 優子
出版者
九州産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は植民地中期~末期朝鮮の「同化」政策における日本語(国語)教育の役割を三つの時期に区分し解明した。1922年の三・一独立運動後は、天皇への感謝・国家繁栄のために尽力する人材養成という役割が薄れた。1938~1940年は、日中戦争を背景に、日本への忠誠心を持たせる役割へ変化した。1941~1945年は、大東亜戦時体制強化を背景に、天皇が統治する国の民という自覚の強化、国語愛護、国土の防衛・拡大の精神養成という役割に変化した。
著者
柴崎 隆一 一井 康二 家田 仁 渡部 富博 家田 仁 渡部 富博
出版者
国土技術政策総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

港湾を中心とした社会基盤施設のもつネットワーク性に着目し,海上物流に関する地震被害の経済評価手法を開発するため,これまであまり考慮されることのなかった, (1)重力式岸壁以外の港湾施設における地震被災確率, (2)連続または近接する港湾施設の被災の相関, (3)国際海上コンテナ貨物以外の形態の貨物の経済被害, (4)国際輸送市場における均衡状態の変化が社会経済に与える長期的な影響の評価,について検討を行った.
著者
吉村 健清 溝上 哲也 徳井 教孝 渡邉 英伸 MARIO Miranda Gutierrez MIGUEL A. Garces
出版者
産業医科大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.目的:胃がんの疫学像は、Diffuse Type(DT)とIntestinal Type(IT)で異なっているため、胃がんのリスクファクターが組織型別に異なっているか否かを症例対照研究によって明らかにする。2.方法:組織学的に胃がんと確認された症例を症例群、症例と性、年令、病院をマッチしたがん以外の患者を対照群とした。生活習慣、食生活の情報は、質問表を用いて直接面接法によって得た。採決血清は、日本でH.PyloriとPrpsinogenについて測定した。解析はCoxの比例ハザードモデルを用いて、オッズ比(OR)を算出した。3.結果:《グアテマラ》1999年末までに胃がん例200例、対照例245例について面接調査が実施された。同年7月までのDT79組、IT107組、計186組について解析した。《コスタリカ》1999年末までに胃がん症例250例、対照症例259例について調査が実施された。そのうち同年7月までのDT74組、IT110組の計184組について検討した。主な結果は(1)冷蔵庫使用はDT、IT胃がんともにリスクを低める(グアテマラ)。しかし、コスタリカではリスクの上昇がみられた。(2)IT胃がんがDT胃がんより食品に関連が強い傾向が見られる。(3)DT、IT胃がんともH.Pylori感染がリスクを上げている結果は得られなかった。(4)Pepsinogen PGI/II比による萎縮性胃炎陽性者はDT、IT胃がんともにリスクを上げているが、コスタリカがより顕著である。今後、最終の症例収集を待って、最終解析を実施し、各分担分野に応じて、発表論文を作成する。
著者
杉松 治美 浦 環 小島 淳一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ガンジス河のナローラからカルナバス流域に棲息する15. 18頭のガンジスカワイルカの6ヶ月におよぶ長期観測を3年間にわたり実施し、取得したデータ解析により、ガンジスカワイルカの特異な音響特性が解明されてきた。また、日/月/季節/年による環境変動等に対応したイルカの特定場所への滞留傾向、子育て、移動等について、科学的データが蓄積、変動する河川環境に適応して行動を変化させるガンジスカワイルカのエコーロケーション戦略を解明することで、ガンジスカワイルカの保護活動に益する知見が得られている。
著者
行武 潔 HAVNES R. 吉本 敦 寺岡 行雄 加藤 隆 尾崎 統 HAYNES Richard TORRES Juan 伊藤 哲 EVISON David 庄司 功 斯波 恒正 CERDA Arcadi PAREDES Gonz BROOKS David HAYNES Richa 古井戸 宏通
出版者
宮崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本年度は、これまでの研究成果を踏まえて37カ国からなる国際研究集会を開催した。1) まず、国産材は低廉・均質な外材に押されて市場競争力を失ってきていること、また、日本の造林費が他国の5〜10倍にも達していること、その結果、利用可能な林齢に達してきた人工林の伐採が遅れ手入れ不足となってきていること、国産材の生産増加が期待できず持続可能な経営が非常に困難となってきていることが指摘される。2) 近年の環太平洋地域の木材貿易をめぐる変化に、(1)世界的に環境保護の動きが強まる中で天然林材あるいは2次林材を主な原料基盤としてきた国々が、環境規制の強化による伐採量の大幅な減少や原料コストの上昇により丸太や製品輸出に占める比率を大きく後退させ始めたこと、(2)対照的に、チリやニュージーランド、南アフリカなど外来樹種の導入による短伐期の人工林資源の造成を進めてきた国々からの加工製品の輸出が、原料供給力の拡大と加工部門への積極的投資を背景として急速に増加し始めていることがあげられる。3) 国内8地域の製材市場と海外の輸出入モデルによる空間均衡モデルを構築してシミュレーション分析を行った。まず、輸送費用削減効果をみたが、国産材の供給増加はみられない。これは、国内各地域の国産材供給関数が全て価格に対して極めて非弾力的であるため、輸送コストを下げてもその効果が現れないことによる。次に、米材丸太輸入減少効果をみると、国産材製材の供給増加よりも製材輸入の増加をもたらす。これは環境保護等の影響で米材丸太輸入規制があっても、国産材供給の増加は期待できないことを物語っている。4) 森林セクターモデルの課題として、まず林業政策の性質を熟知して政策決定に関わる因子を結合し、モデルを修正・拡張することがモデル構築に必要不可欠であること、今後マルチ市場レベルでの空間均衡モデルの開発などが中心になってくることが示唆される。
著者
山本 まゆみ
出版者
早稲田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

当研究は、1920年代長崎から和蘭領東インドに渡り、バタビアで旅館を経営した一般邦人男性が、1941年11月下旬最後の引き揚げ船で日本に戻りながらも、半年後に日本軍部の徴用でインドネシアに復帰し、戦後間もなくインドネシアでその生涯を閉じたその人生に焦点をあてた。男性の生涯を辿りつつ、20世紀前半のインドネシアにおける在留邦人社会および、祖国の政治に翻弄された彼らの異国での生活の軌跡を、明らかにすることを目的としている。軍部は、彼らの言語能力や文化知識を活用したい一方、人脈のある住み慣れた地に配属することで、諜報活動や軍部に抵抗される危険性を懸念するなど、協力を期待しながらも信頼しなかった。軍部からも疑われていた「復帰邦人」は、戦後オランダ及びインドネシアにおいても、戦争に関する記憶の中で、日本軍部の「スパイ」という、謂われざる汚名を受けることになったが、ディアスポーラのサバルタンの歴史を再構築し、誤解された言説を再編成することを目指した。研究方法としては、文献資料調査及び面接聞き取り調査で遂行した。国立国会図書館、早稲田大学図書館、オランダ公文書館(戦争資料研究所、国立公文書館、外務省)を中心に調査を行った。また、日本占領下インドネシアにおいて日本人軍属軍人と関係を持っていたオランダ人女性の研究で著名なオランダ戦争資料研究所のEveline Buchheim博士からもご助言をいただいた。当研究調査を通じ、現在にいたる戦争中の一般邦人に対する記憶は、日本およびオランダを問わず、両国間の政治あるいはそれぞれの国内事情により、社会に内在する偏見を顕著にした記憶となり定着する傾向があるのではないかという結論を導き出すことができた。現在なお記憶として再構築されている一般邦人の汚名は、戦後間もない時代また1990年代の戦争処理問題の言説と共に増幅されていったと考えることができた。
著者
下村 義治 吉田 博行 吉田 直亮 桐谷 道雄
出版者
広島大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

前年度迄に開発製作した極低温中性子照射した金属試料の電子顕微鏡用の4.2Kクライオ・トランスファー・ホルダーを改良して現在9K迄試料装填部の温度を下げる事に成功し4.2Kに今一歩に迫る性能向上をはたした。更に本年度はこのホルダーの先端試料部にクライオ・トランスファー時に取り付ける真空チェンバーの製作を完了した。これらホルダーおよび真空チェンバーを装備して中性子照射済の試料を中性子極低温照射用クライオスタットからホルダーに極低温にて移し変えてクライオ・トランスファー・チェンバーで真空引きしたままのせて電子顕微鏡試料室まで移動するための車およびそれに関連する装置も完成した。回転ターゲット核融合中性子源(RTNS-【II】)にて照射のための装置を総て開発完了後,日米科学技術協力事業(核融合)の実験の実施のため本試験研究にて開発した装置は昭和61年4月米国ローレンス・リバモア国立研究所に送り昭和61年6月及び昭和62年1月の二度にわたり本研究代表者らが派遣されて極低温核融合中性子照射した金属試料の極低温クライオ・トランスファー電子顕微鏡観察法による中性子照射損傷の基本単位である変位カスケード損傷欠陥の形成直後の観察に成功して、損傷過程の基礎過程の解明に大きく寄与した。核分裂中性子による極低温照射した試料のクライオ・トランスファーのための試料クライオ移送室の開発も考え方の点ではほぼ終了しているが、一部装置の製作を経費不足の点で残している。現在米国より送り返されているクライオ・トランスファー装置の日本への致着を待って残りの装置の製作を完了して京都大学原子炉実験所にて核分裂中性子照射実験をスタートする予定である。また重イオンによる低温照射した電子顕微鏡試料の極低温クライオ・トランスファー電子顕微鏡観察可能な照射試料室も今後製作して変位カスケード損傷過程の研究を行うよう続いて計画している。
著者
森部 豊 山下 将司 岩本 篤志 影山 悦子 福島 恵 中田 美絵
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

中央アジア出身のソグド人のうち、北朝・隋・唐時代の中国社会で活動した者たちを取り上げ、彼らの政治・軍事・文化史上の活動を、いわゆる正史などの編纂史料のみならず、既出・新出の墓誌銘をはじめとする石刻史料および考古学的発見による文物資料を利用し、検証を加えた。その結果、ソグド人の東方活動には、北朝・隋・唐初における活動の担い手と、それ以降の時期の活動の担い手において、断絶があるのではないかという仮説にいたった。また、ソグド人研究に必要な基本的資料の収集をほぼ終え、別途公開する基礎的作業が完成した。
著者
小林 隆志 濱野 真二郎 谷内 麻美 Haque Rashidul Mondal Dinesh
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

致命的な内臓型リーシュマニア症(VL)の制圧には、治療による全身症状寛解後に発症する皮膚病変(PKDL)の発症機序を理解し、PKDLを的確に診断・治療することが不可欠である。PKDLのリスクファクターを解明するため、バングラデシュのPKDL患者の調査を行い、VL治療薬別PKDL発症率を解析したが治療薬と発症率に因果関係は認められなかった。しかし、リーシュマニア原虫の Real-Time PCRによる定量的検出に成功し、ミルテフォシンがPKDL皮膚病変内リーシュマニア原虫排除に機能することを経時的、定量的に示した。更に、原虫を高感度で検出する乾燥LAMPの試作に成功し現地での実用性も検証された。
著者
石部 尚登
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ベルギーにおける「方言」の復権運動には、復権の目標の違いに起因する標準語の形態に対する立場の違いが存在するものの、教育への導入の目標、ICTを利用した活動、さらには公用語政策の影響により、他の地域語・少数言語の復権と同様に「標準語」の必要性が立場の違いを超えて共有されていることを明らかにした。ただし、そこで志向される「標準語」とは、他の地域語・少数言語の復権の場合とは異なり、複数の中心を持つことが可能な、より柔軟かつ寛容な形態であることを示した。
著者
岸本 年史
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

精神分裂病患者における水中毒は病的多飲を特徴とし、意識障害、痙攣などの重篤な症状を引き起こす。また、この水中毒は抗精神病薬の長期服用によっても発症することが報告されている。しかし、この水中毒の発症機構については未だ不明な点が多く、一致した見解はない。我々は、慢性の抗精神病薬服用患者における抗利尿ホルモン分泌不適合症候群(SIADH)が水中毒発症に関係していることを指摘している(Kishimoto et al, Jpn. J. Psychiatr. Nerurol. 43,161-169,1989)。今回、この水中毒発症機構の基礎的研究の一環として抗精神病薬長期投与とSIADHとの関係を明らかにする目的で、ラット視索上核(SON)への高張artificial cerebrospinal fluid (aCSF)の注入刺激後のアルギニンバソプレッシン(AVP)遊離と行動変化に及ぼすデカン酸ハロペリドール長期投与(20mg/kg/2weeks,i.m.)の効果について検討した。下記に、デカン酸ハロペリドールを8週間長期投与したラットにおいてえられた結果を示す。1)SONにおける高張性aCSF注入による刺激は、刺激終了後30分間の飲水行動量を増加させた。また、同処置ラットの移所運動量は増加する傾向を示した。2)SONにおけるAVP濃度は、上述の高張刺激後、同様に増加した。3)同処置ラットにおいて、線条体ドパミン濃度は対照群と比較して減少した。デカン酸ハロペリドール長期投与ラットにおいて、SONへの高張性aCSFの刺激は飲水行動量の増加および同部位のAVP遊離を引き起こした。また、デカン酸ハロペリドール長期投与によって線条体ドパミン濃度の減少が認められた。以上の結果から、SONへの高張性aCSF注入刺激によって発現する飲水行動の増加およびAVP遊離は、中枢ドパミン神経系との密接な関係が推測される。
著者
寺田 努
出版者
神戸大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

近年,モバイル技術および無線通信技術の発展により,人々が受け取る情報は飛躍的に増大しており,大量のデータから必要なデータのみを抽出する情報フィルタリング技術,必要なデータを的確にユーザに提示する情報提示技術の重要性が高まっている.本研究では,(1)ハードウェア・ソフトウェア連動型の低消費電力・高信頼な状況認識技術として,センサのサンプリングレートを動的に制御する低消費電力化方式や,センサ内で波形のピーク情報を抽出し送信データを削減することによる低消費電力化,(2)外部音の有無や明るさなどの周辺状況に応じて提示情報を適切にフィルタリングする機構およびそれらの機構を一般のアプリケーションプログラマが容易に記述できるモジュール化の実行,(3)上記の機構を容易に組み合わせてアプリケーションを記述できるエンジンであるWearable Toolkitの開発および拡張を行った.さらに,これらの基盤システム開発を応用し,ナビゲーションシステムや技術伝承システム,新たな文字入力システム,MCシステム,バイクレース支援システム,着ぐるみ装着者の支援システム,ダンスパフォーマンスの支援システムなどを開発し,枠組みの提案だけでなく提案機構が実際に運用に耐えるクオリティにあることを明らかにした.成果は学術論文誌やウェアラブルコンピューティング分野のトップカンファレンスであるISWC2010などで複数発表しており,高い評価を受けた.
著者
五味 正一 (三石 正一)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

遺構を恒久的に露出・展示しながら保存するために,遺構の乾燥化を防ぐ親水性ポリマーが土壌中の水分移動に与える影響をあきらかにするために研究をおこなった.実験に使用した試料土には立川ローム,供試ポリマーにはポリシロキサン-ポリオキシアルキレンオリゴマー(分子量700、以下SAO)と,ポリエチレングリコール(分子量400、以下PEG)を用いた.土壌の水分蒸発に影響を与えている供試ポリマーの浸透深さを知るために,供試ポリマー散布後の土壌中の水分ポテンシャル分布をWP4-Tを用いて測定した.その結果,SAOは深さ1cm,PEGは深さ1.5cmまで浸透していることがわかり,この結果から,乾土重あたりの供試ポリマーの比,すなわち混合ポリマー比を計算した.そして供試ポリマー混合試料土を作成し,水分保持特性曲線をWP4-Tを用いて作成した.水分保持特性から,PEGを混合した土壌の水性はSAOを混合した土壌の2倍の保水性を有することがわかった.また供試ポリマー混合試料の水分保持特性曲線をもちいて,供試ポリマー浸透層中の水通過抵抗係数をあきらかにした.その結果,SAO混合試料の水通過抵抗係数は1×10^<-13>cm s^<-1>,PEG混合試料は1×10^<-12>cm s^<-1>となり,PEGよりもSAO浸透層中の水は移動し難いことがあきらかになった.これまで得られた実験結果をもとに,供試ポリマー浸透層による輸送抵抗を考慮した土壌水分蒸発速度の予測をおこなった.輸送抵抗を組み込んだバルク式を用いて蒸発速度を計算した結果,蒸発速度を低く見積もった.その理由として,ポリマー浸透層中では水蒸気ではなく液体水が移動していることが考えられる.本研究では,供試ポリマーの添加による土壌の保水性の上昇と,ポリマー浸透層中の水分移動の相関はみられなかった.親水性ポリマーによる土壌の水分蒸発の抑制や水分蒸発量の予測には,土壌間隙中のポリマーの存在形態および水分子との関係の把握が必要であることがあきらかになった.
著者
澤木 聖子 尹 錫任
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

平成26年度は、日本国内の企業調査に加え、働く社会人を対象に「日本企業における社内公用語の英語化」に関するウエブ・アンケートを実施した。個々人のレベルでは、組織能力と英語力には正の相関があると認識しながらも、社内公用語英語化の導入に対する不安が高く示された。一方、調査対象となった企業の事例からは、外国人採用を含む国内のグローバル要員の育成方針を強化し、年功制の廃止や人材の評価尺度を統一化するグローバル人材データベース化によるグローバル・タレント・マネジメントを推進するなど、英語との親和性を伴う人事政策への転換を図る例も確認された。
著者
加藤 雄一
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

DNAで可溶化した単層カーボンナノチューブ(ナノチューブ)をコール酸ナトリウム水溶液に分散させた。この溶液に、レーザー光を照射し、カイラリティ選択的な可溶化剤の交換を試みた。当目的のためにナノチューブ可溶化剤の交換挙動について調査した。DNAは長さの異なるオリゴー本鎖DNAを用い、可溶化剤の被覆率を吸収スペクトルから求めた。そして反応の平衡定数、熱力学パラメータを、カイラリティの異なるナノチューブそれぞれについて実験的に決定した。これはナノチューブと可溶化剤の相互作用の解明への道を拓いたことを意味する重要な成果である。まず、DNAの長さの影響について興味深いことが分かった。長さによって、加熱によりコール酸ナトリウムからDNAへの交換が進行するか、逆のDNAからコール酸ナトリウムへの交換が進行するかが異なることが分かった。この成果の意義および重要性は、レーザー光照射による交換についての、濃度条件や温度条件などの基本的な実験条件を求めたことにある。この成果は論文としてScientific Reports誌において発表した。またInternational Association of Colloidand Interface Scientists,Conferenceなど国際学会および国内学会で発表を行った。コール酸ナトリウムの濃度が交換挙動に与える影響を調査し、ある濃度においてコール酸ナトリウムとナノチューブの相互作用が変化することを明らかにした。この成果は論文としてChemPhysChem誌において採択された。またこの成果に関する発表は九州コロイドコロキウムにおいてposterawardを受賞した。さらに上記可溶化剤分子のサイズと濃度とが相互作用に与える影響についての体系的な調査結果と、可溶化剤交換についてのノウハウを踏まえた結果、低分子化合物であるフラビン誘導体を可溶化剤に用いたカイラリティ分離と、その後の可溶化剤を除去し、別の可溶化剤に交換することによるナノチューブの再分散に成功した。この成果は、現在論文投稿準備中である。
著者
加賀谷 聡子 中島 恵美子
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、虚血性心疾患患者のセルフマネジメント教育プログラムの開発に向けて、病気に対するリスク認識とセルフマネジメントの現状について明らかにし、更に語りの影響と教育プログラム導入の可能性を検討することを目的とした。虚血性心疾患患者4名に対し半構成面接を行い、質的帰納的に分析した。分析の結果、リスク認識は【自分なりに病気体験の意味づけをする】などの5カテゴリーが、セルフマネジメントは【セルフマネジメントの困難感】など3カテゴリーが抽出された。また、面接後に対象者は気持ちの変化について語っており、語りを教育プログラムに取り入れることでセルフマネジメントが促される可能性が示唆された。
著者
河井 崇
出版者
阿南工業高等専門学校
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2008

干潟造成による底生生物の生息地創出の再現性を評価するため,徳島県阿南市大潟人工干潟(泥干潟)・徳島市マリンピア沖洲干潟(砂干潟)の2つの干潟において,隣接地にそれぞれ類似した物理的環境特性を持つ干潟を新たに創出しその後の底生生物の加入状況を追跡した.その結果,両新規創出干潟は共に現時点で既存干潟の状況を再現できておらず,種による分布特性の違い,及びその要因となる生態的特性と環境条件との関連性のより一層の理解が重要であることが示唆された.さらに,その評価過程においては,種間の環境に対する時間的反応性,生活史,寿命等の違いを考慮した,長期的な実験・観察が必要であると考えられる.